惑星ディールは、全体の二十パーセント程を陸地が占めている。その中でも最大の大陸に、人類は数百年前から入植していた。この大陸の大部分は、春から秋にかけて穏やかな気候が続き、移民する人々の間でも人気があった。しかし、秋の終わりから春にかけて、猛烈な嵐が吹き荒れる為、人々は蓄えをして冬が終わるのを待つのだ。陸地の多くを占める農場もその期間は冬ごもりの季節となる。
惑星最大の都市は、大陸の西海岸にあった。そこは、比較的冬も穏やかで、多くの住民はそこで生活している。
惑星エピリアでの宇宙艦墜落時の軽い怪我の為、ジョシュアとアンは、都市にある病院で数日間検査の為入院していた。病院に駆け付けた両親は、行方不明になっていた子どもたちが見つかったことで、安堵すると共に、こっぴどく叱っていた。マキムラは、ロックの手前、未成年の初犯だからという理由をつけて、軍艦への密航などの事実について、今回はお咎め無しとすることを伝えて安心させていた。本来であれば、未成年であろうと重罪だったはずなので、両親は泣いてマキムラに感謝したのだった。
しかし、軍の行動の理由などについては、軍の機密事項として明かさなかった。ジョシュアとアンにも、そこで見たことを秘密にすることで、無罪放免とする約束を密かに交わしていた。ジョシュアの父親であるロペスとしては、世話をしてきたロックに対しての疑念が湧いていたが、マキムラは、あくまでも惑星移民時の手続き上の問題で同行していたに過ぎないと説明してそれを払拭した。
「どこも悪く無いのに、なんで入院なんてしなきゃいけないの?」
「明日は退院出来るんでしょう?」
二人の病室を訪れていたロックは、二人のめげない様子を見てくすりと笑っていた。その日は、彼らの両親は不在だった。
「君たちは、暴走した反応炉の近くにいたから、その影響が懸念されている。恐らく問題ないだろうけど、念の為にね」
不満を口々に続ける二人に、ロックは少し真剣な表情で言った。
「二人とも。二度とあんなことはしちゃいけない」
ロックが見せる鋭い眼差しに、二人は彼を怒らせたのではないかと思ってしゅんとした。それを確認した彼は、少し表情を和らげてから話を続けた。
「でも、僕に対して、色々と疑問や興味を持っていたのは知っていたのに、曖昧な話をして誤魔化していた自分にも責任があるとは思っている」
それを聞いたアンは、再びいつもの調子を取り戻した。
「そ、そうだよ! だいたい、ロックさんって伝説の超人だってマキムラさんは言ってたけど……私、聞いたことあるよ! 不老不死だとか、無敵のエスパーだとか。本当にそうなの!?」
「それ、僕も知りたいです」
目を輝かせている二人を前に、ロックは口元を少し緩めた。
「そう言われているのは知ってるけど、別に不死でもないし、無敵でもないよ。その時、その時で懸命に生きてきた結果だから」
「あ、あと! 連邦軍とはどういう関係なの!? やっぱり、スパイか何かなの!?」
それを聞いたロックは目を丸くした。
「それは違うよ。でも、連邦軍情報部とは、昔、少し協力関係にあったこともあって、縁があるだけさ」
「昔って……一体、ロックさんは幾つなの?」
ロックは、苦笑いをして、何と答えるか迷った。
「これは、誤魔化している訳ではないんだけど、自分でも良く覚えていないんだよ」
「そのぐらい長く生きてるってこと?」
ロックは、その質問に頷いた。
そして、二人が少し落ち着くのを待ってから、ロックはアンを見つめた。
「アン、君に確認しなければならない事がある。君は、どうやって独房から出てきたんだい?」
ジョシュアは、宇宙艦にいた時のことを思い返していた。
「そういえば、独房の電子ロックがいつの間にか外れてたのは、不思議に思ってた」
ロックは、それに続けて言った。
「それに、あの女海賊のエスパーの攻撃から、君は自分自身とジョシュアを守っていたのを僕は見た。あの時は、それどころじゃなかったからね。だから今、それを確認している」
アンは困り果てていた。
「そ、そんなの覚えて無いんだけど……。そういえば、昔から、勝手に物が動いたりするのは、時々見たことがあったけど……」
ロックは目を閉じて暫し間を置いた。
「自覚は無いみたいだけど、君は、エスパーだ」
二人は、顔を見合わせて目を丸くしていた。
続く…
本作は、私のブログ、pixiv、ハーメルンで同一作品を投稿、またはその予定があります。