海賊船は、発射地点に到着すると、静かに音も無くD弾を発射した。
推進機が、一定時間噴射して、高速で惑星ディールの都市上空への落下コースを辿った。落下地点に到着したそれは、弾頭部分を切り離すと、慣性で惑星に落ちて行った。
「……!」
ロックは、都市が爆弾で崩壊し、人々が大勢亡くなって行く光景が、脳裏に浮かんでいた。
突然、椅子を倒して立ち上がったロックは、一瞬だけ躊躇した。急に勢いよく立ち上がったロックを、ロペス家の家族やアンが怪訝な表情で彼に注目していた。しかし、なりふり構っている時間は無いと判断した彼は、瞬間移動でその場から消えた。
後に残された一家とアンは、驚きを隠せなかった。
「き、消えた!?」
「ロックさん!?」
ロペス一家が何が起こったのか分からず、口々に疑問を吐き出す中で、アンは、ロックが消える直前にイメージしていた映像のようなものを感じ取っていた。
「え……? 何? 爆弾……?」
ロックは、都市の上空に姿を現していた。空を見上げると、流れ星のようなものが、都市を目指して落下して行くのが見えた。地上に落ちるまで、五分もかからないと知った彼は、もう一度瞬間移動した。
再び現れたロックは、猛烈な勢いで落下する、白熱した物体の真上に膝をついた。
それが、D弾の弾頭だとすぐに分かった彼は、弾頭を宇宙へと持ち上げようとした。しかし、弾頭にはご丁寧に、ESPジャマーが組み込まれており、彼の能力をすぐに発揮する事を許さなかった。
「くっ……!」
ロックは、ジャマーの効果に苦しみながら、懸命にその位置を探った。
ようやくその装置の位置を見つけたロックは、ジャマーを上回る力で、それを破壊した。
「くそ……! もう、間に合わない!」
時、既に遅く、もはや弾頭を宇宙へと持ち上げるだけの時間が無かった。それに、高速で移動する弾頭は、高熱と激しい揺れがあった。ロックは、懸命に海へと方向転換をしようと試みたが、それも間に合いそうも無い。弾頭の飛行するコースに乗るなら、大陸の奥の方へと向かう嵐に乗って方向を変える方が早いと、即座に判断した。
嵐に乗って弾頭の方角を変えたロックは、点々と農家がある大陸の何処へ弾頭を落下させるか考えた。しかし、それを考えるには時間が無さ過ぎた。彼は、仕方なく周囲に家が無いロペスの家の付近へと、弾頭の向きを変えようとした。みるみる地上が近付いて来る。もう残り時間は、一分も無いだろう。ロックが懸命に力を使って向きを変えると、ようやく方向が定まった。残り時間は三十秒も無い。ロックは、瞬間移動して弾頭の真上から消えた。
再びロペス家に現れたロックは、衣服は焼け焦げ、息を切らしてふらふらの状態だった。
「なっ、何!?」
「どうなってんだ、こりゃあ!?」
アンとジョシュア以外の一家は、突然現れたロックの姿に驚愕し、恐れをあらわにしていた。
アンとジョシュアは、ロックの状態に驚いて近寄ったが、彼に制された。
「皆、ここから動いちゃだめだ……!」
ロックは、真剣な表情ではっきりと言った。
その数秒後に、室内は光で包まれた。地響きと、地震のような激しい揺れが襲った。その激しい揺れで、一家は、立っていられなくなり、床に倒れ込んだ。十数秒続いたと思われる激しい揺れが収まると、室外の光も収まって来た。しかし、外は真っ赤な炎に包まれており、室内を赤く染めていた。
家は、嵐の揺れとは異なる、小刻みな揺れを繰り返していた。
恐慌をきたした一家は、起き上がると外の様子を眺めた。
「何が起こってるんだ?」
「見て、木が全部燃えてる!」
ロペスは、微動だにせずにしているロックの方を振り返った。
「お、お前が何かやったのか!?」
ロックは、この家全体にバリアを張り続けて、強力な爆発の爆風と高熱から一家を守ろうと力を使い続けていた。
「違う……。爆弾が落ちた」
ロックは、苦しそうな表情でロペスの目を見た。
「お、お前がやったんだな!」
ジョシュアの兄、ジョージはあまりの恐怖からパニックを起こしていた。
「化け物め! 母さんも父さんも、ジョシュアも逃げるんだ!」
彼は、母サマンサの手を取って、一目散に玄関へと掛けて行こうとしていた。
「出ちゃだめだ……。外は数千度の高熱……」
ロックの目には、それがスローモーションのように映っていた。
駄目だ、止められない……。
そうだ。そういえば、前にもこんなことがあった……。
ロックは、絶望感に打ちひしがれそうになっていた。
「だめ!」
突然、大きな音を立てて、食卓のテーブルが浮き上がった。それは、宙を飛ぶと、玄関に叩きつけられた。玄関へ向かっていたジョージとサマンサは、驚いて尻もちをついていた。
「ひいいっ!」
そして、他の家具が一斉に玄関へと移動して、出口を塞いだ。
「アン?」
ジョシュアは、アンの様子をうかがった。彼女は、身体を震わせて玄関を睨んでいる。
「ロックの言う通りにして! そうでなきゃ、皆死ぬ!」
ロックは、力を使い続けて、疲弊していたが、目を細めてアンを見つめた。そして、自分が一人で無かったことに感謝した。
「ありがとう……」
続く…
本作は、私のブログ、pixiv、ハーメルンで同一作品を投稿、またはその予定があります。