ダメ店主とヴァンパイア   作:丁太郎

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前後編からナンバリングに替えました


三話 鳩狩り-3

 蒼太達が協力したからと言って、トントン拍子に事が解決するわけではない。

 危害をもたらす対象が分かっただけで、結局は地道な捜索を行わなければならないのだ。

 といった事情があり、蒼太はこの一週間、せっせと魔石づくりを行っていた。

 

 

「こうしてるとさ、昔の事を思い出すんだよね。覚えてる? 金がなくてさ、たくさん魔石作りまくって売ってたんだっけ」

 

 

 今日もミラの家で魔石作りに勤しんでいる蒼太だが、ふと懐かしい感じを覚えた。傍らで魔法を刻んでいたミディも当時の事を思い起こしていた。

 

 

「あの時は一体どこからお金が湧いているのかと不思議でした。結構な大金を短時間で稼いでくるので、私はてっきり身売りしているのかと」

「身売りって……誰が買うんだよ。で、作った魔石売ってるのばれてしこたま怒られたっけ。足がついたらどうするんですか、って。あの時は稼ぐのに夢中で全く考えてなかったなー」

「割と今も考えなしですよ」

「酷くない!?」

 

 

 そんなふうに二人が思い出話に花を咲かせながら作業をこなしていると、にわかに外が騒がしくなってくる。

 蒼太は手を止めてミディに確認すると、彼女は心配は不要と首を振ってみせた。

 直後、ドアが開いたと同時に、ダイナマイトバディなナイスレディが飛び込んできた。そのまま勢いよくミディに抱き着きいて頭を抱え込む。

 

 

「お手柄よ、ミディちゃん!! これでようやく二人でゆっくりできるわね!」

「…………」

「ミラさん、ミディが窒息してる。返事できないから」

「セクハラよ」

「別におっぱいのせいとは言ってないっすよ」

「視線が」

「ベベベ別に見てな、あいたっ」

 

 

 慌てて蒼太が視線を逸らすも時すでに遅く、操作されたミディの影が背中を軽く突き刺した。

 その様子をけらけらと笑っている彼女の胸から、ミディが顔を出す。憮然とした表情だ。

 

 

「あーもー、かーわーいーいー! 心配しなくても私の体はミディちゃんの物だからねー!」

「あの、それはいいので状況の報告を頂きたいのですが……」

「んー? だからお手柄って言ったでしょー? ……それはともかく、二人が教えてくれた情報と魔石のおかげでかなりの数の『鳩狩り』を捕まえることができたわ。被害件数も目に見えて減ってきたし、国からもたっぷり褒賞が出る予定よ」

「なんか思いの外順調ですね」

 

 

 予想以上に結果が出たことに少し驚きを覚えるミディ。

 だが、ミラは仕事モードに切り替わったまま、戻ることなく報告を続けた。

 

 

「捕獲された『鳩狩り』は確かに魔法改造の痕跡があったわ。伝書鳩に追い付けるようになったのはそれが理由。でも、その程度じゃ特書鳩を狩れるには至らない。……悔しいけど、特書鳩を狩った鷹が見つからない限り、帝国の目論見を潰したことにはならないってことね」

「……今の方法で見つけられることはできますか?」

「わからないとしか言えないわね。探知できた鷹を全て捕獲できたわけじゃないし、逃げられた中にいた可能性もあるわ。けど捕まえられていない以上、脅威なのは変わらないでしょうね」

 

 

 悔しそうに言うミラの腕に、ミディはそっと手を重ねる。途端、嬉しそうに顔をほころばせながら彼女を抱き寄せたが、いつものようなハイテンションは戻らなかった。

 そんなミラに蒼太は思いついたことを言ってみた。

 

 

「見つからないなら囮でおびき寄せたらいいんじゃないですか?」

「特書鳩ってソータくんが思っている以上に貴重なの。皇国にはうちのも含めて100羽もいないし、1羽も所有していない貴族も多いのよ? それを囮に使うなんて誰も許可しないわ」

「いや、そこは見張りというか護衛を付けて狩られないようにすれば」

「あのねえ、伝書鳩ですら魔法を重ねて重ねてようやく追えるほど早いのに、特書鳩になんて追いつけるわけないでしょう」

 

 

 非常識なことを言う蒼太に呆れながら不可能な理由を告げるミラ。速度強化系の魔法は、術者にもよるが人が自動車並みに走れるようになるほどの効果がある。それを重ね掛けしてようやくというのは、蒼太の知る鳩とはあまりにも速度が違う。

 

 

「え? この世界の鳩ってそんな早いんですか?」

「特書鳩ならその日に皇国を往復するわよ」

「マジで!? ちょちょちょ、待って待って、一旦、一旦計算させて下さい」

 

 

 蒼太は教えられた速さに声を出して驚き、案外そうでもないという可能性を考えて計算してみることにした。

 

(端から端ってどれくらいだ? ミディは前に4000kmないぐらいって言ってたけど……4000kmを一日で!!? 時速300kmで飛ぶの!!!?)

 

 ちなみにミラは大雑把に情報を伝えているが、実際は1日もかからない。正確には朝6時に出した特書鳩が夜6時につく。

 この世界の鳩は固有の魔法を行使して飛翔している。伝書鳩は調教を行い、さらに飛行速度を上げているため、例え猛禽類であっても本来ならば捉えられる存在ではないのだ。特書なら尚更である。

 つまり、それを狩れるだけの速度を持つ『鳩狩り』を狩猟するのは至難の業なのだ。

 

 

「ってことは今の方法だと仮に見つかっても狩るのは難しい?」

「見つけて特定さえできれば、あとは国が何とかしてくれるわよ。……きっとね」

 

 

 蒼太の問いに力無くミラが答える。彼女とて本心では、皇国が総力を挙げてもすぐに『鳩狩り』の問題が解決できるとは思ってなかった。通信網は遮断される日々は続くだろう、と。

 だが、皇国の戦力には数えられえなくても、組合の協力者として事態を解決しうる存在が身近にいることを、彼女は知らなかった。

 ちょんちょん、と腕をつつかれたミラは、反射的に抱きしめる。

 

 

「ごめんねー、ほったらかしにしちゃって」

「……」

「また溺れてますよ」

「あら、ごめんなさい。どうしても収まりがよくてつい」

「そうですか。……それで、あの、お伝えしたいことがあるんですけど」

「それじゃあ新居探しに行かないといけないわね。できれば組合に近いところだと嬉しいんだけど、ミディちゃんはどこか希望はあるかしら?」

「誰も同棲する覚悟が決まったなんて言ってないっすよ」

「……私、特書鳩に追いつけますけど」

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