ダメ店主とヴァンパイア   作:丁太郎

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うまくまとめられず分割になってしまいました


二話 地竜狩り-3

 ミラの作成した資料に沿って進み、二人は地竜の棲み処と思われる場所へと到着した。

 

 

「……千里眼でも持ってんのあの人」

「当たりですね」

 

 

 周囲は異様に地面が隆起しており、使用された魔力の残滓が色濃く残っている。

 間違いなく地竜によるものだ。

 ミラの慧眼に畏怖を覚えながら、慎重に蒼太は魔石を取り出した。既にミディは空を飛び、警戒に当たっていた。

 強く握って魔力を込める。発動させたのは『魔力探知(マナ・サーチ)』魔力を持つものを探し当てる魔法である。

 

 

「うっわ」

「どうしましたか?」

 

 

 蒼太の驚いた声が聞こえたのか、ミディが降りてきた。

 声を潜めるようジェスチャーして、小声で判明した居場所を伝える。

 

 

「ちょうどここの下で寝てるっぽい」

 

 

 彼らの真下、2mほどの地中で強い反応が見られた。間違いなく地竜の魔力だろう。

 ミディも魔法で調べた所、確かにそこで眠っているようだ。

 

「周りには何かいた?」

「微弱な反応ばかりです。恐らく監視は付けていないかと」

 

 

 そう言いながら、ミディは槍を手に取った。彼女の影で造形した真っ黒な槍だ。どうやらさっさと倒すことに決めたようだ。

 

 

「早めに終わらせるつもりですが、何かあったらフォローをお願いします」

「オッケー。準備はしてあるから任せてくれ」

 

 

 魔石をいくつか取り出して蒼太は下がっていく。対照的に、ミディは翼を広げ宙へと舞い上がった。

 

 

「いきます」

 

 

 そう言うと、ひときわ大きく羽ばたいて地面に槍を投擲する。魔力、そして物理的エネルギーをすべて速度に変え、槍は大地に突き刺さる。それは地中で眠っていた地竜へ到達し、その鱗を容易く貫いた。

 途端に地面が大きく揺れ始める。ミディが蒼太の方へ視線を向けると、首を横に振っていた。どうやら仕留めるには至らなかったようだ。

 

 

「さすがに一撃は無理ですね」

 

 

 そう呟いて槍を影に戻す。直後、穿たれた穴ごと地面を粉砕して地竜が現れた。そのまま巨体をよじり、ドスンと四足で着地する。

 その体躯をみて、思わず蒼太は目を見開いた。

 

 

「デカくない!?」

「これは……15m近くはあるかもしれません」

「マジでか……」

 

 

 地竜は平均5m、大きくなっても10mには届かない程度だ。だが、目の前の地竜はそのサイズを優に超えていた。そのあまりに規格外なサイズに、二人の思惑が一致する。

 

((帝国の実験体……!))

 

 とはいえ、少しだけ不安は解消された。飼いならすにしろ操るにしろあまりにでかすぎる。既に帝国の手に負えない脱走個体だろうと二人は考えた。

 先ほどの一撃が致命傷にならなかったのもこの巨体ゆえだろう。核の辺りを狙えていたのだが届いていないようだ。とはいえかなり痛い一撃なのは間違いない。現に目が血走り、獰猛な気配が周囲に満ちている。怒り心頭といった様子だ。

 蒼太の存在がばれる前に、ミディは地面におりて敢えて姿を見せつける。

 

 

「こちらです」

 

 

 ついでに分かりやすく槍を持ち、地面を叩く。敵を視認した地竜は瞬時に飛び掛かった。

 迫りくる巨大な顎。強靭な肉体をもつヴァンパイアとはいえ、まともに食らえば即座に噛み砕かれるだろう。ミディは素早く槍を軸にして跳び上がる。そして今度は投擲せず、全体重をかけて突貫した。落下速度に黒翼による推進力が合わさり必殺の一撃となる、はずだった。

 狙いをつけていた地竜の体表に魔力が集まる。まるで金属の塊のようにその質感が変わる。

 ミディの一撃は甲高い音を残して弾かれてしまった。

 

 

「!?」

 

 

 刃先が弾かれ、体が激突する直前、ミディは身を翻して横に跳んだ。急な動きの連続に体が悲鳴を上げるも、なんとか無事に距離を取ることに成功する。

 地竜もまた、動きを止めてぶるり、と体を揺らした。先ほど変質していた甲殻は既に戻っていた。

 

(まさか鉱物も纏うとは……とんでもない魔物を生み出しましたね)

 

 魔法に熟達した地竜は時に石などで身を守ることがある。この個体は石どころか金属を鎧としているようだ。その硬さはミディの一撃を凌ぐほどである。どうやって倒そうかと思案を巡らせていると、

 

 

「ミディ!」

 

 

 蒼太が声をかけると同時に何かを投げてくる。それはただの魔石だったが、既に魔力が込められていた。

 衝撃を加えれば即爆発する。ミディは全力で影を使って柔らかく受け止めた。そしてそれを手に取り、込められた魔力に思わず取り落とすところだった。

 

(……いくらなんでも込めすぎです)

 

 見れば蒼太は笑顔で親指を立てている。使えと言うことだろう。

 おあつらえ向きに、真下からは地竜が襲い掛かろうとしている。すぐに空へ飛ぶ。その刹那、足元が弾け、地竜が姿を現した。だが、最初の攻撃とは異なり、宙にいる彼女へ届く勢いだ。

 噛みつきにくる大口目掛けて、ミディは渡された魔石を投げつけた。口腔をすり抜けて、喉に当たった瞬間、爆炎が迸る。体内からの強烈な一撃に怯んだ隙を狙い、槍による二射目が投擲される。

 見事に核を貫き、宙に舞ったまま地竜は絶命した。

 力を失った巨体が地響きを立てて地面に落ちた。

 一仕事終えて地面に降りたミディが、駆け寄ってくる蒼太の方へと振り向く。

 

 

「……ミディ、危ないって!!」

「えっ」

 

 

 その声に反応して振り向くと、既に視界いっぱいに開かれた地竜の顎が迫っていた。

 影魔法は解除した。もう避けられるタイミングではない。

 せめてもの抵抗に、彼女はその身を硬化させ目を閉じた。

 

 

 

「……?」

「間に合ったぁ……」

 

 

 いつまでたっても衝撃が無く、そばでは安堵したような声が聞こえてきた。

 彼女が目を開けると、目の前で蒼太がひのきのぼうを構えてたっていた。

 がっちりと地竜の顎につっかえている。

 折れないことを確認して、蒼太は直ぐに顎に手をまわした。地竜は閉じる力はあるが開く力は弱いからだ。

 

 

「ミディ、こいつ、まだ、反応あるからっ、そこをっ」

「……わかりました」

 

 

 振りほどかれない様抑えつけている間に、ミディが地竜の頭蓋を貫いた。

 ようやく抵抗がやみ、そして魔力の反応も消えた。

 

 

「ふう、マジで間一髪だったよ」

 

 

 蒼太が額の汗をぬぐいながらひのきのぼうを拾い上げる。その傍ではミディが必死に頭を下げていた。

 

 

「すみません! 油断していました」

「いや、俺も魔力探知使ってなかったら気づかなかったから、しょうがないと思う。ミディは間違いなくコアを砕いてたし」

「ですが、確認を怠って……ソータさんまで危ない目に」

 

 

 普段しっかりしているだけに、油断してしまったのが相当堪えているようだ。

 とはいえ今回の件、なんとなく理由を察している蒼太としてはミディにこれ以上謝られたくはなかった。なぜなら。

 

(多分、俺のせいで魔力探知が鈍ってるんだろうなあ)

 

 もともと彼女自身、かなりの魔力量のため微細な反応を探すのを苦手としている。そこに人間魔力貯蔵庫(マナタンク)とまで揶揄された蒼太と生活を共にしているのだ。さらに蒼太が限界まで魔力を込めた魔石の爆発直後である。気づけないのも無理はない。

 だが、それを伝えたところで気休めにはならないだろう。

 

 

「一旦それは置いておいて、コイツが動き出した原因を調べようか」

「……はい」

 

 

 まずは異常事態の解明である。いまだ曇った表情のミディを気にしながら、蒼太はどうしたものかと手を動かすのであった。

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