神の名を持つライダーはヒーロー志望 作:Katarina T
「……は、脳無が……」
オールマイトを倒すために連れてきたはずの怪人が、圧倒されたことに死柄木は困惑し、それ以上に苛立ちが湧いてきていた。
「なんで、脳無があんなガキにやられんだよ!オールマイト用に作ったんじゃないのかよ!ふざけんなよクソ!」
死柄木は完全に冷静さを欠き、自分の思い通りにならない事に苛立ち、ひたすら首を掻きむしっていた。
「そもそもあのガキは何なんだよ!邪魔ばかりするし、いきなり姿が変わったかと思ったらクソ強くなるし、このチート野郎が!!」
「あんな奴がいるなんて聞かされなかったぞ!」
「死柄木弔!落ち着け!」
黒霧は、いまだ苛立ち続けている死柄木を何とか落ち着けようとした。
「奴が何者かは、分からないですが、脳無をああも簡単に倒せるような奴です。今戦うのは得策ではない。」
「それにじきに雄英のプロヒーローたちがやってきてしまう。ここは一度引くべきだ。」
黒霧は極めて冷静に現状を把握し、捕まらないよう最善の行動をとろうとしていた。
だが頭に血が上り切っている死柄木の耳には届いていないようで、今もなお子供のように喚きながらクロノスを睨み付けている。
そんな中突然入り口から轟音と砂埃が生じた。
その砂埃の中からゆっくりと姿を現したのは、
「みんな、よく頑張った……!」
「もう大丈夫………」
「私が来た!」
いつもの皆を安心させる笑顔ではなく、怒りの表情を浮かべた平和の象徴にして、№1ヒーロー
―――――オールマイトだった。
「オールマイト!!」
「やったぁ……」
オールマイトが来たことで、クラスメイト達は安心しきったかのように喜んだ。
「オールマイト……社会のゴミめ……っ」
一方で死柄木は怒りに満ちた声でそう呟きながら、オールマイトを睨んだ。
オールマイトは凄まじいスピードで道中のヴィランを倒しながら広場まで来ると、死柄木と黒霧そして………クロノスを、油断なく見据えながら戦う姿勢をとった。
「待って下さい!オールマイト!!」
「あの仮面の人は、檀君なんです!」
「なにっ!?壇少年!本当なのか?」
心配して戻ってきた緑谷にクロノスの正体を教えられたオールマイトは、驚きながらクロノスに声をかけた。
それに対しクロノスが首を縦に動かし、肯定するとオールマイトはクロノスの正体が静時であることを信じ、改めて二人のヴィランに相対した。
「壇少年疑ってしまったこと、そして来るのが遅くなってしまったこと本当にすまない…。」
「そして皆を守ってくれてありがとう❕❕ここからは私に任せてくれ❕❕」
「ああ、ああああ!!クソ!何でこうも上手くいかないんだよ!!」
「死柄木弔!!」
黒霧のひときわ大きな声に少し冷静になって、話し出した。
「…………脳無も倒された…………じきにプロヒーローも来る…………もう本当にゲームオーバーだ……引き上げるしかないか…………」
「逃がすと思ってるのか!」
死柄木がそう言うと黒霧が自身の靄を大きくし、自分と死柄木を転移させようとした。
オールマイトはそれを止めようと二人に走り出した。
その時、どさりという何かが倒れるような音がした。
その音とは――――クロノスの変身が解けた静時が倒れる音だった。
「檀君!!」
「壇少年!!」
倒れた静時の様子は、顔色が悪く、激しく呼吸をしながら、苦しそうに胸を押さえていた。
「はぁ…はぁ…はぁ……」
明らかに異常な静時の様子に緑谷は急いで駆け寄っていき、オールマイトも動きを止め静時の様子を伺ってしまった。
死柄木達はその隙に逃げてしまった。
オールマイトは慌てて振り向いたがすでに二人の姿はなかった。
「ぐっ、Shit!」
オールマイトは悔しそうに拳を握っていた。
(く……そ……)
静時も捕まえられなかった悔しさを抱きながら意識を失っていった…。
静時が目を覚ますとそこは、雄英の保健室のベットの上だった。
どうやら気を失った後、運び込まれたらしい。
(やっぱりこうなってしまうか……)
静時はベットに横になりながら、『仮面ライダークロノス』について考えた。
本来仮面ライダークロノスに変身するためには、バグスターウイルスというウイルスの完全な抗体を持ってなければならないという条件があり、もし抗体を持たずに変身をすると肉体が消滅してしまう危険があった。
勿論、静時はそんな抗体を持っていないし、静時の変身する仮面ライダークロノスにはそのような条件はなかった。
しかし、その代わりなのか静時がクロノスに変身すると体に途轍もないほど負担がかかってしまう。
それは、初めて静時が変身した時、ほんの十秒間変身するのがやっとだったほどだ。
そのため、迂闊にクロノスに変身すると今回のように動けなくなったり、無理に変身を続けると寿命を縮めてしまうかもしれないリスクがあった。
特訓の結果、少しはクロノスを扱えるようになったとはいえ、まだまだ実戦で使うには不安要素が多かった。
だから静時は、これまであまり変身をしてこなかったのだ。
(だけど、今回のことで確信した……)
(これからの戦いには、エナジーアイテムだけじゃだめだ……。絶対にクロノスの力が必要になってくる。)
静時は窓から差し込んでくる夕日に顔を向けながら一人自分の中で誓った。
(必ずクロノスの力を自分のものにする。)
(敵に負けないように…、誰かを守れるように…)
(何より……ヒーローになるために)