神の名を持つライダーはヒーロー志望 作:Katarina T
入学した当日から始まってしまった個性把握テスト、しかも成績最下位のものは除籍されるというおまけつき。いきなり始まったヒーローになるための試練にクラスメイトは困惑の表情を浮かべたがそれも一瞬のこと、彼らだって高い競争率をクリアして雄英に入ってきたヒーローの卵たちなのだ。
皆はすぐさま気を取り直し、自らの個性を生かしてこの試練を乗り越えようと意気込んだ。
静時も皆と同じように気を引き締めながら各種目に使うエナジーアイテムを頭の中で考えていた。何せ相澤先生は、その者にヒーローの素質がなければ本当に除籍処分をする人だ、例え最下位にならなくてもヒーローの素質を見せ見込みあり、と思わせなければならない。だからこそ半端にこのテストに臨むわけにはいかないのである。
(よし、使うメダルは決まった。他の皆は…)
静時は使用するエナジーアイテムを頭の中で決めると、周りのクラスメイトの様子を観察した。
(やはり皆雄英に来てるヒーロー志望なだけある。自分の個性で何ができるのか理解してるのか余裕がありそうだ……一人を除いて)
その一人とは 緑谷出久 である。当然といえば当然のことである。
彼はほんの1ヶ月前に初めて個性を持ったばかりで、それ以前は前世の日本でどこにでもいる学生のような無個性だったのだ。
そんな彼が、いきなり『平和の象徴』とさえ謳われる№1ヒーローの個性を貰って、持て余さないわけがない。
実際、今の彼は個性ワン・フォー・オールを0と100でしかコントロール出来ておらず、使えば強化した体の箇所が壊れ、使い物にならなくなる。
だからだろう、今の彼の表情からは他の皆にあるような余裕はなく、焦った表情をしていた。
(原作においては問題なかったが、果たしてどうなるか…)
そう。静時が気にしていることは、緑谷が無事に除籍処分を回避できるのかである。
原作において緑谷は見事機転をきかし、相澤先生に素質を見せ除籍処分を免れた。
しかし、現実となったこの世界において本当に原作と同じようになるとは確証がない、ここで緑谷が除籍処分になってしまったらこの先どうなるかなんて全く持って想像できない。
最悪、静時は自分からアドバイスをして気づかせるかとも考えたが、この先の展開から緑谷自身で気づき成長していかなければならないと思い、それは最後の手段と考えた。
(緑谷のことは気になるが今は様子を見よう、俺は俺で頑張らなくては)
と、そんなことを考えていると
「おい!さっきの凄かったな!」
と、爆豪以上のツンツン頭で赤髪の明るい少年 切島鋭児郎 が笑顔で話しかけてきた。
「おぅ、ありがとよ。ええっと?」
「ああ!俺、切島鋭児郎!よろしくな!」
「壇静時だ。こちらこそよろしく。」
(何気に初めて原作キャラに自己紹介した)切島と近くにいた 黄色髪で陽気な少年 上鳴電気 と耳たぶが長く、まるでイヤホンコードのようになっている少女 耳郎 響香 と自己紹介を交え、たわいない話をしながら次の種目を待った。
(こうして話していると、こいつらがいいやつだって改めて感じるな)
静時は、原作で知っていた彼らと話して改めて彼らの人柄の良さを感じていた。
次の種目は 50m走 静時とともに走るのは、まるでカエルのような見た目とよくケロと言葉にする少女 蛙吹梅雨 だ。
静時は開始の合図がなる前にメダルを一枚自分に投げた。
『高速化!』
『位置ニツイテ、ヨーイ……』バンっ!
測定機械より開始の合図がなると同時に強化されたスピード生かし50mを走り切った。
『2秒58』
走り切ったと同時に計測器から出た結果を聞き静時は、
(やはり生身だとこんなもんか)
出された数値を頭の中に入れた。
その後もテストは続き、種目も残り僅かとなった。
(そろそろ残る種目も少なくなってきたな、次は……ソフトボール投げか)
いよいよある意味この個性把握テストの山場ともいえる場面、ここまで静時はエナジーアイテムを駆使し、かなりいい記録を出せている。
しかし、緑谷は原作と同じようにここまであまりいい記録を出せていなかった。
――そしてついに緑谷の順番が回ってきた。
「な……今確かに使おうって……」
一投目はまた自滅覚悟に個性を使おうとし相澤先生に個性を消して止められた。
相澤先生と緑谷が話し終え、緑谷が二投目を投げる。
その際に見た緑谷の顔で、静時は自分の心配が杞憂であることを悟った。
「SMASH!!!!!!」
掛け声とともに大きく振りかぶった右腕からボールが強い衝撃波を起こしながら飛んでいく。
その記録は……700m越え、今回のテストで初めてのヒーローらしい記録を出した。
「先生……! まだ……動けます!」
変色した右手の人差し指-投げる際そこ一点のみ強化した-を構わず右手を握り、緑谷は相澤先生に言った。
痛みに唇をかんで耐えながら投げる前と同じー決して諦めてない強い眼差しーをしながら。
(やれやれ、ほんと―にスゲー奴だな)
その後もテストは続き、結果発表の時間になった。相澤先生が手に持つ機械から、テストの結果による順位が映し出された。
「あっ、因みに除籍の件は嘘だから。」
「「「はあああああああああ!!!!??」」」
相澤先生の言葉にクラスメイトたちは叫んだ。特に緑谷なんてマジでどうなってんのか解らない表情を浮かべながら叫んでいた。
「君たちの最大限を引き出す合理的虚偽」
「これにて、テストは終わりだ。教室にカリキュラムなどの書類があるから目を通しておくように」
相澤先生はそう言うと、いまだ騒いでいるクラスメイトを無視してグラウンドから去っていった。
相澤先生が去ったあとも、緊張が解けたことや自分たちが全力でやったのは何だったんだという気持ちもあって騒ぎ続けている生徒たちに
「あんなの嘘に決まっていうじゃありませんか…考えればわかりますわ」
そうポニーテールでスタイルがかなりいい少女 八百万百 が言うと、皆、落ち着きを取り戻し教室に戻っていった。
(本当は嘘じゃなくマジだったんだが……まあ、終わったことだしわざわざ言わなくてもいいか)
静時はなんとか総合成績一位を取ることが出来たことや、無事に誰も除籍処分にならなかったことに安堵し、皆と同じように教室に戻った。