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さぁなんやかんやで第五話。思ってたより続くもんです。
じる君との面会編が思ったより長くなったので中編、後編の二つに分けることにしました。
後編に関しては近日中に公開出来そうです。お楽しみに。
遂にその日がやってきた。
帝国魔法学院の誇る一流講師、アインズ・ウールゴウンが、バハルス帝国皇帝ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスと初めて直接顔を合わせる日が。
面会当日。
アインズは講義を午前中までに終え、現在は学院の前で迎えに来るという騎士団の馬車を待っていた。
「大丈夫ですか、師匠? 顔色が変ですけど」
「まぁ、なんとか・・・・・・」
見送りにきた弟子のアルシェに容体を心配されていた。
まだ帝城に着いてもいないのにこの緊張具合。
皇帝と顔を合わせたら死ぬんじゃなかろうか。
顔を見た瞬間嘔吐してそのまま「この無礼者! 死刑!」とか。
死刑は別として、「顔を見た瞬間嘔吐」という現象に何故か覚えがあるような気がする・・・・・・?
とにかく、全くそういった可能性がないと言えない相手だから笑えない。
会ったことはないのだが。
(いや、もしかしたら結構フレンドリーな人かもしれないしな。うん、先入観は良くない)
でもやっぱりちょっと怖いよなぁ・・・・・・とアインズが小市民的な思考を浮かべていると、こちらへと向かってくる馬車が見えてきた。
掲げられているのは帝国の国旗と、騎士団の紋章。
「来たみたいです、師匠」
「あぁ、そのようだな」
(不本意ながらなっている)学院一の魔法講師としての仮面を被り、気持ちを入れ替える。
使いの騎士たちに恥ずかしいところは見せられないし見せたくない。
馬車が二人の前で停止し、今更ながら車体を引いていた動物がただの馬ではないと気づいた。
「嘘、スレイプニール・・・・・・?」
大貴族でも所有している者は少ないという、非常に希少で高価な馬。
八本の脚を持ち、一頭だけでも一財産になる。
アルシェも貴族だったが、こんな貴重な馬は当然家では保有していなかった。
これを見せてきたということは、皇帝は並々ならぬ関心を自分の師匠に持っていることなのかとアルシェが推測していると、馬車から使いと思われる騎士が降りてきた。
重厚な鎧姿だが、兜は着けておらず、素顔が丸見えだ。
金髪に顎髭を生やし、あまり騎士といった風貌ではないが、感じる力は今まで会ったどの騎士よりも大きい。
「バジウッド!?」
「よ、久しぶりだな。迎えにきたぜ、アインズ」
迎えにきたという騎士は、アルシェでも聞いたことのある相手だった。
バジウッド・ペシュメル。
雷光の名をもつ、帝国最強の四騎士筆頭。
アダマンタイトの鎧を身に纏う偉丈夫で、バジウッドと呼ばれているならまず間違いないだろう。
思わぬ大物の登場に驚いた、とは違う意味で驚く師の様子にアルシェが驚かされた。
反応を見るに知り合いらしい。
それも、かなり親しげだ。
「お知り合いだったんですか、師匠」
「あぁ。学生の頃にちょっとね」
「ついでに言うなら俺が騎士見習いになった頃にな。カッツェ平野で修行中に偶々パーティを組んで、それからな」
「本当に久しぶりだ。来るならそうと言ってくれてもよかったろうに」
どうやら自分が思っていたより長い付き合いらしい。
それより。
「師匠、一人でカッツェ平野に行ってたんですか?
「なぜ一人だと・・・・・・いや、一人だったんだけど」
弟子から言外に「お前学生の頃から友達いないだろ」と言われた気がしてアインズは少し傷ついた。
いなかったわけではないが、誰もカッツェ平野までは付いてきてくれなかっただけだ。
あれ、今考えると俺って人望がなかったのか・・・・・・? と振り返るべきではない過去に思考を割いていると、同じく過去を思い出したらしい騎士はくつくつと笑っていた。
「あん時は驚いたぜ。ヒョロイ魔法詠唱者が一人でカッツェ平野をうろうろしてるんだからよ。しかも話を聞いたら学生で、『実験中だ』って言ってよ」
「君だって一人だっただろう。しかも装備だってろくな物が無かった」
「そりゃお互い様だったろ」
バジウッドが驚いたというのも無理はない。
あの平野には多数のアンデッドが存在し、
そんな強力なアンデッドが出没する危険地帯に一人で行くなど、危険極まりない。
人によっては自殺と捉えるだろう。
「実験って、なんの実験だったんですか?」
「大した・・・・・・いや、大事な実験をね」
こっちの世界でもモンスターを倒すことでレベルを上げられるか、というアインズにとっては当時かなり大事な実験だった。
レベルを上げれば、より上位の魔法を行使できるようになると考えての行動だったが、ハッキリ言ってかなり効率の悪いものだったと今も思う。
低レベルの魔法詠唱者一人では、倒す相手の質も数もかなり限られる。
そのため平野の中でも比較的霧の少ない場所でアンデッドを狩っていた。
バジウッドと組んでからは効率が上がり、その甲斐あって互いのレベルは上がったわけだが。
(それでも結局学生の頃は第二位階までしか使えなかったんだよなぁ)
第十位階とかいつになったら使えるのかと考えていると、さてとバジウッドが切り出した。
「昔話もいいが、そろそろ行かねぇとな。陛下が待ちくたびれちまう」
「・・・・・・それは大変だ、な」
「おい、どうしたよ急に。元気ねぇな」
今になって皇帝と会うことを思い出したのか、アインズは胃を抑えている。
いつものやつか、と弟子は特に気に留めなかった。
「大丈夫です、バジウッド様。発作のようなものなので」
「あーお弟子さんがいうなら大丈夫か。じゃ、先生を借りてくぜお嬢さん」
バジウッドに肩を担がれて馬車に運ばれる師匠を見ながら、アルシェは心配になった。
馬車の中で帰りたいとか言い出さないかを。
魔法に関しては頼り甲斐があるが、地位のある人物を相手にした時の信用はない。
偉い人に対する耐性を全く持ってない師の出立を弟子は見送った。
「帰りたくなってきた」
「ここまで来たんなら諦めな」
帝城に着き、皇帝が待つという部屋まで目と鼻の先。
アインズはここまで来て、いやここまできたからこそ猛烈に帰りたくなっていた。
入城してからも警護の騎士や宮廷魔術師、官僚たちの視線に晒され、その時点で限界だった。
圧倒的なアウェー感。
バジウッドが居てくれたことに心から感謝していた。
すっかり気力を使い果たしたが、ようやく目的の部屋の前にたどり着いた。
扉の前には、バジウッドが着用しているものとよく似た鎧を纏った一人の女性が。
すごく見覚えがある女性だった。
「ようこそいらっしゃいました、アインズ様。皇帝陛下は中でお待ちです」
「・・・・・・お久しぶりです、レイナースさん」
「はい、お久しぶりです。例のアイテムの開発の進捗はいかがでしょうか?」
「じゅ、順調です、ハイ!」
かつてアインズに解呪のアイテムの開発を依頼した彼女は、バジウッドと同じ四騎士の一人。
「重爆」レイナース・ロックブルズ。
女性ながら四騎士一の攻撃力をほこるという女傑。
かつてモンスターから受けたという呪いを隠すため、彼女の顔の右半分は布のような金髪に覆われている。
その呪いを解くためなら何でもやるという覚悟の持ち主で、依頼を持ちかけられた時も凄まじい勢いだった。
美人だが、目的のために一途すぎる姿勢がどこか自分の師と通じるところがあってアインズは少し苦手だった。
「実は師匠・・・・・・フールーダ様や神殿の神官さん達にも協力してもらって、何とか形にはなりそうなんですよ。完成したら神殿に渡す条件だったんですけど。あとはその魔法をアイテムに込められる腕を持つ信仰系の魔法詠唱者が必要で、法国に協力してもらえればもしかしたら・・・・・・」
「分かりました私にお任せください陛下にも必ず協力していただけるようお願いしておきますわ(早口)」
「そ、そっすか・・・・・・」
これ断ったら皇帝死ぬんじゃないかな、とアインズは思った。
彼女はヤると言ったらヤる。(確信)
「じゃ、俺と重爆は扉の警護があるからここまでだ」
「えっ!!?」
唯一の味方に裏切られた!? という悲壮感あふれる表情でバジウッドを見たが、「仕方ないだろ」とあしらわれた。
「陛下の命令なんでな。こっから先は一人で入ってくれ」
「え、いや、一人でか・・・・・・?」
「陛下、レイナースです。アインズ・ウールゴウン講師が来られました」
「レイナースさん!!??」
まさかの裏切りpart.2。レイナース、お前もか。
心の準備が整っていない当事者のことなど知らんとばかりに話が進む。
扉の向こうから「入れ」と入室の許可が下りた。
騎士二人にさっさと行けという視線で見られ、アインズは(やっと)覚悟を決めた。
気分は処刑台に送られる罪人のよう。いや、出荷される養豚場の豚に近い。
扉が開かれる。
ふと、アインズは未だ己が何故ここに来たのかを知らないことを思い出した。
「なぁ、なんで俺は陛下に会うんだ?」
「え? フールーダ様から聞いてねぇのか?」
「え?」
「え?」
かくして呼ばれた理由もあずかり知らぬまま、運命の面会が幕を開けるーー!
(あ、あのクソジジイーーーーー!!??)
「ぶぅぇくしょい」
次回やっと直接対峙です。
長くてすまない・・・・・・でも六話ほぼほぼ出来てるんでもうちょっと待ってくだちい。
一次創作も作ってると時間がががが