アインズ・ウールゴウンの事件簿   作:伊勢うこ

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近日中に公開できると言ったな?あれは嘘だ()

はい、すいませんでした。あーでもないこーでもないとやってたらいつの間にか・・・。
とりあえず戦争編までは頑張って書きたいと思ってます。

応援よろしくお願いします。
それでは第六話です。


講師と皇帝 後編

 アインズが帝城に到着する少し前。

 

 

 帝国四騎士の一人「激風」のニンブル・アーク・デイル・アノックは、自分の主人に今回の面会に対する疑問を投げかけていた。

 

 

「陛下、何故今回は扉の警備にバジウッド殿を? 彼がウールゴウン講師と知己だというのなら、そのまま部屋で陛下の護衛に就かせた方が良かったのでは?」

 

 本日の面会の際、皇帝の身を守るように指示されたのはニンブルと、「不動」のナザミ・エネックの二人。

 四騎士一の防御能力を持つナザミはともかく、なぜ自分が警護に充てられたのか。

 

 

「簡単だ。お前達二人が、例の講師と面識がないからだよ」

 

「あえてあの二人を部屋の外に配置したと?」

 

「そうだ。この面会の目的についてはお前たちにも話したな」

 

 

 それは彼が次代の帝国主席宮廷魔術師に相応しいか人物か見定めること。

 あの偉大すぎる逸脱者の後を継げるか、否か。

 

 

「あえて知っているものを部屋から排除し、敵地のような緊張感を作り出す。そこで狼狽えるようであれば失格。無論、労を労う目的で呼んだことにしている以上友好的に接するが、そうなれば早く切り上げる」

 

「しかしこうして機会を設けたということは、期待されているのでは?」

 

「まぁな。なにせフールーダのお墨付きだ、期待くらいはさせてもらわなくては」

 

 

 こう言っているが、実のところジルクニフとて本気でそんな人物があっさりと見つかるとは思っていない。

 あくまで皇帝としての義務感のようなものだ。

 

 何せ先代があのフールーダだ。

 流石に彼と同様の魔法の腕があるとは期待しない。そんな者は大陸中を探してもいるかどうか。

 

 故に多少魔法詠唱者として劣っていても問題はない。

 むしろ求めるのは魔法以外の部分。

 人格も重要だが、将来の皇帝を支えるだけの政治的判断力、国の問題を見抜く観察力、洞察力。

 

 尤もそんな人物は今の宮廷魔術師の中にもいない。

 いたら今頃とっくにこき使っているだろうから。

 

 だが、話に聞く件の魔法講師はどうだろうか。

 フールーダが認める程魔法の知識を保有し、あの魔法学院で短期間のうちに確固たる地位を築いたという。

 

 魔法学院も一枚岩ではない。

 日々講師たちの様々な思惑が飛び交い、生徒たちの目もあり、常に己の評価を問われ続ける。

 貴族の子女も通っている中では、相応の処世術が求められるだろう。

 

 そんな環境で、彼は学院一の講師と呼ばれるようになった。

 講師としての腕前だけでなく、そういった分野にも長けているということだ。

 

(実に楽しみじゃないか)

 

 

 扉から、入室の許可を求めるレイナースの声がした。

 ジルクニフが期待する男が到着したらしい。

 許可を出し、扉が開かれた。

 

 入ってきたのは漆黒のローブに身を包んだ、黒髪黒瞳の男。

 

 自らが呼び出した帝国魔法学園一の講師、アインズ・ウールゴウンだった。

 

 

 

 

 皇帝のいる客間に入った時点で、既にアインズは限界を迎えようといていた。

 

 (胃の)限界を。

 

 

(もう、帰っちゃダメかなぁ・・・・・・)

 

 

 胃が痛い。皇帝との対談など胃に負担がかかり過ぎる。

 胃だけではない。体中が不調を訴えかけていた。

 

 顔面の筋肉が硬直し、引き攣っている。

 脚が震えて生まれたての八足馬のようだ。生まれたての八足馬の脚が震えているかは知らないが。

 部屋の豪華さに当てられたせいか、視線も定まっていない気がする。

 

 そして何より彼に負荷をかけていたのは、未だに自分が何の為に呼ばれたのか理解していないことだった。

 先程の馴染みの騎士曰く自分の師匠は知っているらしいが、肝心の本人に伝えるという工程が欠けている。

 あの老人に対する復讐を心に誓う。

 

(と、とにかく教わった通りにやろう。適当に話を合わせて用件を聞いて、それを終わらせたらすぐに帰る!)

 

 

 まずは挨拶だ。失礼のないようにしなければ。

「挨拶は大事。古事記にもそう書いてある」と言っていたのは弐式炎雷だったか、いや、武人建御雷だったか・・・?

 

 

 

 

「お初にお目にかかります、皇帝陛下。私が魔法学院でしがない講師をしております、アインズ・ウールゴウンでございます」

 

 堂々とした足並みで入室し、自身の前で礼をとるアインズを、ジルクニフはその眼で見た。

 一流の講師としての自負を感じさせる、一部の隙も感じさせない所作。

 狼狽するような様子は微塵もない、が。

 

 

(一瞬だが、何かを警戒した・・・・・・?)

 

 

 ジルクニフの観察眼は確かだ。

 視覚からの情報だけでなく、聴覚や嗅覚までも巧みに使いこなし、微かに漂う香辛料の香りだけで裏切り者を言い当てたこともあるほど。

 初めて来た場所への関心ではなく、何か別の意味が込められた視線。

 

 自分にしか気付けぬ小さな違和感。だが、それゆえに目に付いた。

 少し予想外の反応だが、問題はない。

 

 

「よく来てくれた、ウールゴウン講師。多忙の中、私の呼びかけに応じてくれた事に感謝する」

 

「もったいないお言葉。陛下のお望みとあらば直ぐに参るべきところを遅くなってしまい、申し訳ありません」

 

「構わないとも、ウールゴウン講師」

 

 

(ここまでは全く油断した様子はなしか)

 

 ジルクニフとしては、皇帝が相手だからと変に媚びない姿勢に好感が持てた。

 距離を縮めるべく、一歩踏み込む。

 

 

「君のことは爺・・・・・・フールーダから聞いていてね。素晴らしい弟子を持ったと褒めていた。私も幼少の頃、彼から魔法の教育を受けてね。勝手ながら親近感を覚えていたんだ」

 

「左様でございましたか。では、よろしければ私のことは是非アインズとお呼びください。ウールゴウンでは少々呼びづらいでしょうし、皆私をそう呼んでおりますので」

 

「そうか! ではそうさせてもらおう。よろしく頼む、アインズ」

 

 

(私を相手にこの振る舞い、相当慣れているな)

 

 あの学院で上り詰めた手腕は伊達では無いらしいと評価し、着席を促した。

 

 

「先に後ろの二人を紹介しておこう。どちらも四騎士の者でね。私からみて右が『激風』のニンブル、左が『不動』のナザミだ。私の護衛として今回参加させるのだが、構わないかな? 口を挟むことは無いと思うが」

 

 形だけの確認。

 断られるとは考えていない。

 

「もちろんです。陛下の望まれるままになさって下さい。お二人も、よろしくお願いします」

 

 二人の騎士が頭を傾け礼をとる。

 

「ありがとう、アインズ。では互いに多忙の身だ、早速始めるとしよう」

 

 

 

 

 

「さて、今回君を呼んだのは君の功績に見合うだけの報酬を渡したいと思っていてね。何か望むものはあるかな?」

 

 

(キタ! 要件って報酬を渡すことだったのか。でも何に対する報酬なんだ? 特に何もしてないはずだけど・・・・・・)

 

 

 とりあえずクビとかじゃなくてよかったと安心し、アインズは返事をする。

 

「過分な評価、痛み入ります。ですが私は自分がやるべき責務を果たしただけです。陛下から何かを頂くようなことは何も」

 

「謙遜することはないさ、アインズ。君の働きは多くのものが評価している。現に君が講師になってから、帝国の魔法詠唱者の質は近年上昇していると聞いた。帝国にこれ程尽力している者の働きを無碍にするのは、この国の皇帝として出来ないことだ」

 

 その上でどうだろう、とジルクニフは告げる。

 

「君さえ良ければ、貴族位を与えようと思っているんだが」

 

 

 

(無理です結構です勘弁してくださいっ・・・!)

 

 

 最初から無理だった。

 なんかもう、それだけは無理なやつがいきなり来た。

 

 褒美をもらうのはいいとして、それが貴族になることなど冗談ではない。

 仮になったとしてもこっちはただでさえ講師生活が忙しいのだ。第一柄ではない。

 

 

(断るしかないよなぁ、流石にこれだけは・・・・・・)

 

 

「ありがたい申し出ではありますが、陛下。私では帝国貴族には相応しく無いかと」

 

「そうかね? 私は君のような人物こそ、その位に就くべきだと思うが」

 

「私は現状の立ち位置で満足しております。それに恥ずかしながら自分では貴族の務めを果たすことが出来ず、陛下のお顔に泥を塗ることになるかと」

 

「・・・・・・そうか、君がそういうなら報酬は別の形で取らせよう」

 

 

 

 

(地位には関心が無いのか。あるいは粛清されると恐れている?)

 

 

 提案を断られたが、ジルクニフにとってはこれも想定した道の一つ。

 自分の過去の行いから、拒否されることは予想がついていた。

 だが今のは囮。次の手が本命だ。

 

「では、何か望むものはあるかな。よほどの物でなければ用意できると思うが」

 

 皇帝に成るとかは勘弁してくれよ、とジョークを交えて相手の次の手を待つ。

 欲望は人の鏡だ。

 何を欲しているかで、相手の思考、本性を探ることができる。

 

(さぁ、どう出る。何を要求してくる)

 

 

 

 

(褒美か・・・・・・別に今特別欲しい物ってあったか?)

 

 ここに来るまでに考えておくべきだったかもしれないが、もらえると聞かされていなかったので今考える必要がある。

 アインズは頭を捻る。

 強いていうなら休暇だろうか。

 

(まさか皇帝に休み下さいとは言えないよなぁ。学長に言えって話だし)

 

 しかしそうなるとーー

 

 

「・・・・・・今は何も思い当たらなく。陛下のお心遣いを無為にしてしまい、申し訳なく思います」

 

「謝る必要はないさ、アインズ。では次回君とまた会った時に、改めて聞かせてくれ」

 

「畏まりました」

 

(よかった、意外とあっさり引いて・・・・・・今次回って言った??)

 

 え、これまたあるの?

 アインズはメチャメチャ狼狽えた。素が出そうだった。

 

 

 

 

(ここまでして何も求めてこないか。無欲なのか、あるいは)

 

 一方そんなアインズの心境を知らないジルクニフは、予想以上に相手を見極めきれないことから打つ手を変えようとしていた。

 

「話は変わるんだが、実は今日君に是非相談したいことがあってね」

 

「私でよければ」

 

「ありがとう。相談というのは、これからの帝国の魔法教育についてでね。実際に教壇に立ち、講師として確かな腕を持つ君の意見を参考にさせてもらいたい」

 

「分かりました。具体的にはどのような?」

 

「簡単にいうとだ。これから我が帝国はどんな分野の魔法に注力し、どういった魔法詠唱者を育てていくべきか。魔法使いは現在も成長しているが、全員が全く同じ系統というのもね。故に、どういった系統の魔法が今後必要か、ということさ」

 

 

 帝国はフールーダという偉大な先人の影響か、彼が修めた系統の魔法に使用者が偏る傾向にある。

 それが悪いことではないが、そうなると魔法の多様性がなく出来る事の幅が狭くなる。

 一見すると一流の講師に尋ねるに値する質問だが、皇帝にとってはアインズがどれだけ帝国魔法界という広い範囲を見渡しているかという意図も含めたものだった。

 

「そうですね。私としては情報系の魔法が重要かと」

 

「理由を聞いても?」

 

「はい、これは情報というものの重要性から来るものです。情報系の魔法の中には拠点から動くことなく、一方的に相手の情報を探ることができる魔法があります」

 

「なるほど」

 

 それならジルクニフも知っている。

 あの老人は得意ではないと言っていたが、それによって助けられたことは多い。

 情報局のことといい、諜報に力を入れていくべきとは前から自分も考えていた。

 どうやらこの講師の目は確からしい。

 

 ただ、とアインズが続ける。

 

「私としては、そういった魔法に対する魔法。探知妨害などの、対情報系の魔法を研究していくべきかと思っております」

 

「対情報系の魔法?」

 

「はい。これがあれば魔法で探られても阻止することが叶います。高位の魔法の中には、探ってきた相手に爆発などのカウンターを食らわせることができますから」

 

「なっ!?」

 

(冗談ではない! そんなもの、知らずに行えば凄まじい被害が・・・・・・!?)

 

「ですので、非常に重要だと私は思っております。陛下も情報系の魔法を利用する際は、十分にお気をつけください」

 

(お気をつけ下さいと言われたところで、どうにかなるものなのか!?)

 

 いや、とそこで考える。

 今のは自分の身を案じる忠告ではなく、警告ではないのか? 

 

(こいつはその対情報系魔法を使えて、自分に余計な詮索をするなというメッセージじゃないのか? 情報系の魔法で自分を覗いたらただでは済まさないという・・・・・・いや待て。いくら何でも脅しにしては直接的すぎる。何か別の意味が・・・・・・)

 

 

 

(ユグドラシルだと情報戦じゃ必須だったもんなぁ。)

 

 ジルクニフが思うような意味は特にない。

 単純にアインズの、前世の経験からくるアドバイスだった。

 情報魔法への対策を怠れば最悪敵に情報が筒抜けになり、凄まじい損害を被ることになる。

 「誰でも楽々PK術」の基礎として、ぷにっと萌えに教え込まれたのが懐かしい。

 

 純粋な善意からの助言だったが、どうも皇帝の顔色が悪い。

 はて、何か不味いことでも言っただろうか?

 

「いかがなさいましたか、陛下?」

 

 

 

「っ!・・・・・・いや、何でもないさアインズ」

 

(読めない・・・・・・この私を、俺をもってしても・・・・・・!)

 

 歴代最優の皇帝・ジルクニフであっても、アインズ・ウールゴウンという人物の底を見極めることが出来ない。

 その事実が、皇帝から徐々に余裕を奪っていった。

 それだけではない。

 

 いつの間にか会話の主導権すら握られていた。

 自分の内面を悟らせず、相手の動揺を誘い会話の流れを掌握する。

 それも皇帝(自分)を相手に。並の人間ではない。

 

 自分は今、アインズ・ウールゴウンの手のひらで踊らされているのではないかーー?

 

 そんな考えすら頭を過った。

 ありえない。ありえないはずだが、現実がその甘い考えを否定する。

 

 では何故こうなったのか?

 見極めるつもりで呼んだ相手に、逆にこっちが見極められようとしている。

 

 まさかーー

 

 

(最初から、こうなることを読んでいた? 魔法か何かでこちらの情報を事前に把握し、自分の望む流れを作り出すために・・・・・・!?)

 

 

 いや、本当に魔法を使ったかは分からない。むしろ慎重に、魔法以外の手段で把握した可能性が高い。

 今日まで自分の周りで探られるような動きは無かった。なら、この会談が始まってから?

 だが、そんな素振りはーー

 

(ヤツは最初、何かを警戒するように周りを見ていた。あの一瞥で、何かを掴んだというのか!?)

 

 だとすれば、化け物じみた洞察力だ。ともすればあの女と同等か、それ以上の。

 それだけではない。

 

(あの情報系魔法の話を出したのも、偶然ではない・・・? 最初から私がどんな話題を振り、どんな反応をするか予想していたーー!?)

 

 終始余裕がある態度だったのは、そのせいなのか。

 これではまるで、教師に手解きを受ける生徒のようではないか。

 

 認めたくはないが、認めざるを得ない。

 

ーーアインズ・ウールゴウンは、己を超える知略家だ。

 

 

 

 

「今日は大変有意義な時間を過ごすことが出来た。礼を言うよ、アインズ」

 

「光栄であります。私の方こそ貴重な時間を過ごさせていただきました。本日は、これで失礼させていただきます」

 

「あぁ。帰りも騎士達に護衛させるが、道中気をつけてくれ」

 

「お心遣いありがとうございます、陛下。では、御前失礼致します」

 

 

 アインズが部屋から去り、扉が閉ざされた。

 魔法講師が退出したことで、室内のどこか緊迫した空気が緩和されたのをニンブルは感じた。

 

「いかがでしたか、陛下? 彼はーー」

 

「フ、ハハハハ・・・・・・!」

 

「へ、陛下? どうなさいましたか!?」

 

「爺め、とんでもないヤツを育てたな・・・・・・!」

 

「で、では・・・・・・!?」

 

「あぁ、喜べお前達。帝国の未来は明るいやも知れんぞ」

 

 

 

 

「あとは、王国との戦争か」

 

 

 

 




こっからしばらく戦争編かな、と。

え、事件? 目処も立ってません!!
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