Dies iraeに空の魔王ぶっ込んでみた   作:ノボットMK-42

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遅くなって申し訳ありません。


Act.06-A

 黒円卓に於いてハンス・ウルリッヒ・ルーデルという男は言うまでも無く周囲から浮いた存在である。

 

 双首領への殺意を隠そうともしない時点で聖槍十三騎士団に真っ向から喧嘩を売っていると言えるのだからそれは当然だ。土台、明確な敵としての立場を崩さない彼が易々と受け入れられる筈もないなどということは分かりきっている。

 

 彼がラインハルトを殺すなどと単なる口先で大言壮語を並べ立てるだけの愚か者なら団員達の手で即刻排除してそれまでの話だが、厄介な事にハンスはそのような対応が罷り通るような相手ではない。単純に強すぎるのだから排除する術など無いのだ。

 

力づくという手段など以ての外、関わらぬように接していた所で何時かは否でも対峙せねばならない状況に陥ることが確定しているのだから堪ったものではない。

 

出来ることといえば極力目をつけられないように注意しつつどうにかして彼の脅威から逃れる術を模索する、つまりは終始逃げの姿勢。

 

触らぬ神に祟り無し。過半数のメンバーはハンスをさりげなく観察しつつ距離を置いているのが現状であった。

 

 例外と言えば彼が番外位という形で黒円卓の一員となった日より交流を始めているベアトリス・キルヒアイゼンくらいのものである。

 

 彼女の行動は他の面々からしてみればさぞや肝の据わった行為に映っていることだろう。

 

 ハンスはシャンバラにて行われる闘争に敵として参戦することが決まっており、彼自身それを了承しているとはいえラインハルトへの殺意が微塵も衰えぬまま開戦の時まで大人しく待っていてくれるかは甚だ疑問だ。

 

 痺れを切らして此方に牙を剥く可能性は無きにしも非ず、元よりベルリンを蹂躙した時点で黒円卓の面々は恨みを買うだけの理由を持っている。

 

それをハンスが殺しにかかることは何ら可笑しな事ではなく彼の心境如何によっては一足先の開戦と言う形で嘗ての蹂躙劇が再現されるのも考えられた。

 

 事実、彼が何の行動も起こさずに仇敵の率いる軍団の末席に収まっているのもラインハルトを現世に呼び戻す手段を現状スワスチカの完成以外に知らないからだ。

 

 黄金の獣を現世に呼び戻して己の手で殺す為に動く。黒円卓に関わっている者、その存在を知っている者が聞けば余りの無謀さに卒倒しかねないような狂った行動理念によって彼は恥も外聞も関係なく獣の爪牙、鬣の一部を装っている。

 

 だがその必要が無い事を彼が知れば事態は急速に動き始める事だろう。

 

 ラインハルトを現世に呼び戻す為には必ずしもスワスチカを全て開く必要は無い。5、6個も開けば不完全な形であっても現界させることは可能であるし、もっと手っ取り早い手段もある事にはある。

 

 その時が来ることを恐れる者達はどうにかしていつかやって来るであろう脅威を退ける、或いは逃れる為に水面下で動きを見せていた。唯一の例外はただ二人。

 

 一人は言うまでも無くベアトリスだ。

 

彼女とハンスは対面当初から行動を共にしており関係も非常に良好だ。単にウマが合ったのもそうだが、黒円卓にあって双首領に魂を売り渡していない者同士引かれ合う何かがあったのかもしれない。

 

 そしてもう一人は、先に言っておくとベアトリスのように親しい間柄かと問われれば誰もが否定するような相手だ。片方は初対面の時からも害意を曝け出し、それでいて嫌悪感はお互いに抱いていない。

 

 接触する時間も彼女と比べれば短く、それでいてある種の濃密さがあると言う点では黒円卓の面々の中でもハンスに強い印象を与えているかもしれない。

 

 その人物とハンスとの掛け合いはいつも唐突に始まっては呆気無く終わるのだ。

 

 今日に於いてもそれは同じこと。ハンスがいつものようにベアトリスと一通り談笑を楽しんだ後にそれは起こるのだった。

 

 

「あははは!それで先輩の言葉を馬鹿正直に信じて爆撃機隊に入ったんですか?周りの人たちが皆して戦闘機隊に行く中で?いくらなんでも単純過ぎますって大佐~!あははははは!」

 

 

 腹を抱えて大笑いしているのはベアトリスだ。目じりに涙を浮かべてヒーヒーと苦しそうに呼吸をしていることから余程ハンスが口にした話が愉快で仕方が無かったらしい。

 

 彼から聞かされたのは空軍学校を卒業する間際からのこと。先輩に当たる人物が盛大に言い放ったありもしない事を碌に疑いもせず真に受けた結果、動機が戦闘機隊入りする中で自分一人だけが爆撃機隊に編入されてしまったと言う過去。

 

 英雄の誕生秘話の冒頭を飾るにしては余りにも間抜け過ぎる彼の所業にベアトリスは驚きすら通り越して笑うしかなかった。

 

 対するハンスは悔いるのでも恥じるのでもなく、ただしみじみと在りし日のことを思い浮かべては噛み締めているようで盛大に笑われていてもこれといって不愉快な様子は見せない。

 

 

「うむ。確かにあの時は私もとんだ出鱈目を真に受けたものだと思う。ガーデルマンも『貴方って機体から降りたら大砲鳥ならぬ唯のカモですよ。』などと鼻で笑っていたよ。」

 

「度々思うんですけどガーデルマン大尉って大佐よりも階級とか普通に下ですよね?いくら相棒だからって発言の数々が無礼とかそんな生易しい領域を超えちゃってる気がするんですけどそこのところ散々に言われているご本人はどう思ってたり?」

 

「まぁガーデルマンだからなぁ。あの口の悪さあってことの彼とも言えるし無ければ彼ではないだろう。

仮に彼が公務以外でも私相手に礼儀正しく振る舞おうものならばそれは次の瞬間には砲弾の雨が降る程の凶兆に他ならんだろうよ。」

 

「うわ~この人もこの人で遠慮が無いと言う……」

 

 

 呆れたように苦笑してはいるが現在進行形で十二分に非礼と受け取れる言動を改めない彼女も彼女で問題有りとは考えないのだろうか。

 

 敵の組織である黒円卓にあって嘗ての階級などが如何程の意味を持つのかは疑問なところだが、それにしても自分の事を棚上げしている事に変わりはないのだからベ随分と調子の良いことだ。

 

 とは言え、それを一切窘めないどころか彼女のような対応が半ば正常なものとして認識してしまっている方もそれはそれで軍人としては大きな間違いを犯しているだろうが。

 

 その後も二人の会話は恙なく続いていく。

 

 と言っても、これと言って特別な会話はなく主な話題はお互いの昔語りやそれについて互いに思ったこと等が大半を占めている。特にハンスの話は本人が正しく波乱万丈な人生を送って来ただけに矢鱈と生々しい上に壮絶だ。

 

 ベアトリスからすれば彼の話は聞いていて飽きず、感心出来る点が多い。やはり一人の軍人としてはハンス・ウルリッヒ・ルーデル程の男の武勇談をじっくりと本人の口から聞くことが出来るのは胸に来るものがあった。

 

 それでいて本人は自分の過去を大したこととは捉えておらず、いつも当たり前のように言うのだから思わず苦笑してしまうこともしばしばある。

 

 このような具合に、話し方の特徴や人となりをある程度把握出来る程度にはベアトリスはハンスと打ち解けることが出来ていた。

 

 立場で言えば敵同士、階級では相手の方が明らかに上、身分や立ち位置の違いは多々あれど、彼女にとってのハンスは歳の離れた友人のような存在であった。

 

 敬愛する上官とはまた違う、それでも敬意を抱いているのは確か。尊敬はしているのだがこうして直に向き合ってみるとそういった大層な感情よりも気安さと親しみが先行してしまう。

 

 彼女がハンスに対して馴れ馴れしいとも言うべき態度を取ることが出来ている理由の一端はそんなものだ。友人どころかまともな話し相手もいない黒円卓の中で彼がベアトリスにとって貴重な存在であることは確かである。

 

 しかし、彼女には兼ねてよりの悩みがあった。それはハンスとの会話が日課になり始めた当初より始まったことである。

 

 先にも述べたが、ハンスに積極的に近寄ろうとする人物は黒円卓には殆どいない。基本的に彼と接触することがあるのは自分ぐらいのもの。ただしそれは“自分だけ”であることを意味しない。

 

 和やかな空気が流れる空間に近寄る足音。それにハンスはいち早く気づいた。

 

 

「おっと、誰か来たようだ。」

 

「何か言い知れぬ不安を感じますね、その言い方。っていうかそれって…」

 

 

 ベアトリスも近づいてくる者の正体に覚えがあったらしい。その人物について一言申し立てようと口を開くよりも先に二人の居た部屋の扉が乱暴に開け放たれた。

 

 その先には一人の男。その姿を見るなりベアトリスは露骨に不快感を露わにし、何をしに来たのだと視線で訴えかけている。邪魔だからとっとと失せろという拒絶の意志すら感じられた。

 

 先程の彼女からは想像も出来ないような鋭い気迫に男は寧ろ笑みを深めた。まるでそれが心地よくてならないように。

 

 そんな二人を横目にハンスは呑気に手元に置かれていたジョッキのように大きなコップを仰いでいる。一応中身が牛乳であることも述べておこう。

 

 この場にやって来てから少しばかり時を経たが、ハンスは黒円卓内の人間関係というものを全く知らない。ベアトリスからも黒円卓についての話題が出る事は無く、基本的に昔の話や世間話が話題の大半を占めていたのが原因だ。

 

 たった今押し入って来た男とは以前からも今回と同じようなシチュエーションで対峙したことはあるが、その度にこうしてベアトリスが威嚇するような睨みを効かせるのを見て来た。

 

 そのことから二人が、或いはベアトリスが男に対して悪感情を抱いているのは見ただけですぐに理解出来るが、理由がまだ分からない。

 

 今まではその場の雰囲気に合わせて沈黙を以てやり過ごすか他事に意識を向けてやり過ごしてきた静寂。ただし、今日のハンスはいつものように沈黙を選択しなかった。

 

 思い切って聞いてみる事にしたのだ、他ならぬ本人達に。

 

 

「君達は何というか仲が良いんだな。ベアトリス、それにヴィルヘルム。」

 

 

 とりあえず口から滑らせてみた一言。

 

 それに男は笑い、ベアトリスは思わず表情を強張らせながらハンスの言葉を純粋な嫌悪感を以て否定するのだった。

 




どうでも良い事ですけどガンダムオンラインって怖いゲームですよね。かなり書く時間をそっちに割いちゃってた感があるんですけど少しやってみればブラックホール染みたカオスが広がっている事を知りました。

なのでこれからは当分パソコンゲームとかに浮気することは無くなると思います。それに伴い文章書く時間も増えると思うので次回も頑張って書いてきます。
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