Dies iraeに空の魔王ぶっ込んでみた 作:ノボットMK-42
混乱していた。ただ混乱の極みにあった。
ブレンナーを怒らせたことではない。自慢じゃないが、ガーデルマンに『人を怒らせる程度の能力の持ち主ですよ貴方は』と呆れた様子で言われる程度には失言が多い私だ。本当に自慢じゃないが。
頬を叩かれたことでもない。その程度なら母や幼馴染、偶にガーデルマンにも顔面が変形する一歩手前までやられたことがある。少しトラウマになっている節はあるが。
彼女の平手打ちに痛みを感じたことでもない。それなりに頑丈だと自負している霊的装甲をどうやって抜いて来たのか甚だ疑問ではあるが。
とにかく、そんなことは今はどうでも良いのだ、然して重要なことではない。私が驚かされたのは彼女の言葉にだ。先程も言ったように、呼吸をするように人を怒らせる言動を吐く私が会話の流れについて語るのも可笑しなことだが、脈略も糞もあったもんじゃない意味不明な台詞だし、相手の頬を叩いてから言う言葉とも思えない。
だが不思議な事に、その一言が決して出鱈目な狂言の類などとは思わなかった。寧ろ、内心その通りであると納得している自分がいる。更に不思議なのが、私自身何を根拠にした納得なのかも分からないということだ。ただ漠然とそれが正しいということだけは理解出来た。
「なぁブレンナー。失っていないとは、どういうことなんだ?教えてくれないか?」
妥当性だの細かいことはこの際問わない。ただ彼女から見た私が果たして本当に何も取り落とさないままでいられているのかを聞きたかった。単なる勘だが、彼女はこういう場で嘘をつくタイプではないと思う。
「貴方はあの子…キルヒアイゼン中尉に戦時中の事を話した。そうですね?」
「ああ。そうだ」
「貴方は一晩中話していられる程に沢山の思い出を持っている。
前線で戦っていた事もそう。仲間達と過ごした日々もそう。
一夜で語り尽くせないような出来事の数々を何もかも覚えているんでしょう?」
「ああ、その通りだ。全て覚えている」
彼女は、教師が出来の悪い生徒に言い聞かせるような、一言一言噛み締めるような口調で問い掛けて来る。先程までの目上の者に対する言葉遣いはすっかり息を潜めているが気にすまい。黙って話に耳を傾ける私の様子に、彼女は更に話を進めた。
一つは私が戦時中の出来事を今も忘れずに覚えていること、一つはそれらがかけがえのない物だと認識していること、一つは私が過去の出来事について何の感慨も抱けないこと、最後に私がそんな現状を悔やんでいること。
これだけ聞けば先程の私の言葉を抜粋しただけだ。果たして答えなのか途中式なのかも分からない。だがそれこそが重要な事なのだという。ならば何故そうなのかと言う疑問が生まれるのは当然のことで、理由を尋ねれば事前に予想していたかの如く速攻で答えが返って来る。
「貴方は自分の過去に何も感じなくなってしまったことが『大事な思い出を内心では無価値だと思うようになってしまったから』と考えているんでしょう。
でも無価値としか思っていないような記憶を貴方みたいな人がいつまでも後生大事に抱えていられる筈がないのよ」
「“私のような”とは?」
「単純で鈍感なお馬鹿さんよ」
「………は?」
突然罵倒された。一々誰かに言われるまでも無く自分が馬鹿だと理解してはいるが、今それを言われるとは思わなかった。意表を突く言葉に、平手打ちの衝撃から落ち着きを取り戻しつつあった思考が再び停止してしまった。
というより単純馬鹿だから何だというのか。そりゃぁ私は物覚えは悪い癖に物忘れは割と激しいが大事なことはちゃんと覚えている方だ……稀に忘れる事もあるにはあるが。兎に角、それとこれとは無関係ではなかろうか。
問題なのは覚えていることに対して何の感慨も湧かない事なのだ。私の場合ただ覚えているだけでは意味が無い。
例え頭でそうでないと考えていようが内心では彼等を無価値と思ってしまっている。これでは何の為にラインハルトと戦おうというのかも分からない。その上、同朋の為に今まで戦って来たこれまでの人生を否定するも同然だ。私はそれが何よりも許せない。
だというのに、頭で理解出来てさえいれば問題無いと言う。彼女の言葉の意味はやはり分からない。
そんな私のこんがらがった頭の中身もお見通しのようで、溜息を一つ洩らしたブレンナーは腕を組み、挑むように此方を見上げて来る。言いたいことがあるなら好きなだけ反論するがいいとでも言わんばかりだ。
非常に情けないことだが、何も言い返す気にもなれない。何故なら私は拳を突き合う喧嘩は兎も角、言葉で刺し合う喧嘩は壊滅的に弱いのだ。
そこそこ長いこれまでの人生を通して見ても口喧嘩の勝率はかなり低い…というか勝てた試しがあっただろうか。少なくとも思い当たる節が無い程度には黒星を重ねていることは確かだ。
特に幼馴染相手にはそれが顕著だった。嘗て負傷した私の見舞い序でと言わんばかりに説教の雨霰も見舞っていった彼女を見て、ガーデルマンが『基本的に男は口喧嘩で女性には勝てねぇんですよ』と言っていたのも今となっては頷ける。
ならば私の拙い口先でブレンナーを言い負かすなんぞ、イワン共の戦車でスツーカから逃げ切ろうとするようなものだ。こんなことならあのデカイだけが取り柄の騒音水管に拳銃一丁で挑む方がよほどマシである。
少し話が逸れた。要するに私は彼女の気迫に押されて言葉を発する事が出来なかったのである。要するにビビっていた。
「大事だと思った事ならどれだけ些細な事でも覚えていられるかもしれないけど、要らないことは例えそれが客観的に見て重要な事でも記憶に残らない。覚えようとすらしない。眼中にすら無いんじゃない?
勲章を貰った時とか、それこそ総統閣下と話した内容なんて欠片も覚えていないでしょう?上官からの命令を右から左に聞き流す何て日常茶飯事なんじゃない?」
「あ~確かになぁ。思い当たる節が無ことで逆に思い当たったぞ。
しかし何故君にそんな事が分かるんだ?面と向かって言うのもなんだが私と君はまともに話したことすら無いというのに、どうやってそんな人となりを察することが出来る」
「だから言ったでしょう?単純だって。
貴方は自分が思っている以上に開けっ広げに振る舞い過ぎなの。強さも弱さも相手に見せすぎている。だからある程度人を見る目があれば大体の事は分かってしまう。
土台『自分はこういう人間だ』って宣言しながら回ってるような性格してるんだから何となくでも察しはつくのものよ。ベイ中尉やベアトリス中尉を見て思わなかった?『多分こういう人なんだろうな』って」
そう言われると分からないでもない。初対面の時でもベアトリスが控え目でお淑やかなお嬢様には見えなかったし、普通はヴィルヘルムを見て人懐っこい子犬のような男だとは思わないだろう。お互い良くも悪くも明るい性格や獰猛な気質が一目で見て取れた。
要するに第一印象から判断したということなのだろうか。ヴィルヘルムに関してはまともに会話する前から印象に残る出来事があったとは言え、割と早めに大まかながら人間性は掴めた。私も彼等のように、第一印象からして彼女が言うような人格と性質の持ち主だと察せられるのだろうか。
「実を言えばベルリンで貴方を見て、そのすぐ後に貴方が黒円卓にやって来た時にはもう貴方がそういう人なんだっていうことは薄々気づいてたの」
「何故だ?」
「ベルリンでの貴方はハイドリヒ卿しか見えていなかった。黒円卓にやって来た日の貴方は私達のいる場所を見ているようでいてハイドリヒ卿のことだけを考えていた。
私達の事なんて背景か何かと同じにしか見えてない」
「何が言いたいんだ?嫌味ではないが、正直あの時のことは良く覚えてはいない。頭に血が昇っていたせいかいまいち周りが見えなくなってだな」
「今もそうよ」
「何だと?」
「今でもまだ頭に血が昇ってるって言ってるの。もう一度言うけど貴方の目にはたった一人しか写っていない。ベルリンの時からね。
ホントに呆れた……本当に自分の感情一つ把握出来ていないのね。可笑しな所だけ何処かの誰かとそっくりだなんて皮肉のつもり?」
「すまん。話が見えんのだが私にも分かるように説明してくれないか?」
「無理よ」
「えぇ…」
きっぱりと断言されて思わず情けない声が漏れた。だがこちらとしてもいつの間にやら話が訳の分からない方向に転がっているのだから無理もないと思う。言葉の意味を聞こうとしたら説明する側に突然それを放棄されるなど、これでは一体どうしろというのか。
ブレンナーも先程までの諭すような口調も崩れ、砕けた物言いが目立つようになってきた。それに追従するようにして彼私に対する苛立ちと思しき感情を徐々に顕にしようとしているように見える。そんな彼女の態度に微かな違和感を覚えた。
どうやら彼女自身らしくないことを口にしている自覚はあるらしく気を落ち着かせようとしているのだろう。額に手の甲を当てながら天を仰いでいる。
話し相手に無用な負担を与えてしまっていることには一抹の罪悪感が募る。しかし私が一人勝手に沈んでいることすら今の彼女は快く思わないらしい。また一つ溜息が溢れていた。
「大佐、ハイドリヒ卿のことを思い浮かべてみて、副首領もよ」
「何だと?」
言われてすぐに脳裏に浮かんだ怨敵の姿。正しく腸が煮え返るような不快な熱が走るのを感じた。咄嗟にそれを押さえ込んだものの自分でも分かる程度には表情を歪めてしまう。
今考えるだけでも忌々しい、あの不愉快極まる笑みをたたえた面は覚えていたくもないというのに、尚も目に焼き付いて離れないと来ているのだから嫌になる。薄ぼんやりとした当時の記憶の中で黄金色の光と傍らに侍る朧げな影だけがくっきりと色づいていた。
「貴方、今自分がどんな顔したのか分かる?貴方がそれに気づかずに…と言うより、その意味を理解しないまま怒りと殺意を燻らせている証拠よ」
「意味とは?」
「だから、貴方はハイドリヒ卿と戦った日に抱いた、それこそ記憶すらも曖昧になるような二人への怒りのせいで半ば我を忘れているのよ。今もね」
「馬鹿な。それでは私は当時からずっと怒り狂って正気を失っているというのか?」
彼女は無言で首を縦に振った。静かな肯定の意は下手に言葉を並べて理論付けるよりも真実味を帯びさせる。論じるまでもない事柄について無駄な考察を垂れ流すなど時間の無駄というのか。それほどまでに彼女が言ったような状態に陥っているというのか私は。
俄かには信じ難い。今もこうして思考を巡らせるだけの余裕があるというのに、あの破壊的なまでの怒りが未だ収まっていないなどと。
「あの日、ベルリンで貴方の中に芽生えたモノは貴方の感覚で捉え切れる限界を遥かに超えている。
麓からでは山の全容を見渡せないのと同じように、貴方は自分の感情を把握出来ていない。
そんなものを抱えたまま頭の中にお花畑咲かせていられるほど貴方は器用な人間なのかしら?まぁ、それが出来そうなくらい能天気ではありそうだけど」
「流石にそれは無い。しかし、なるほど……」
元々、複数のことを同時にこなす事など出来ない不器用人間の私が、それこそ山の如く重いものを抱えたまま自分の有様だの戦う意義だのについて考えてまともな答えなんぞ出せるわけもない。
もしも、あのベルリンで芽生えた怒りが一切収まらぬままであるのなら、私はラインハルトとカールクラフトへの怒りしか感じられない状態に陥っているということを意味している。他の感情を抱く余裕すら無いということ。
私が他の団員のことを背景か何かとしか認知していなかったのと同じように、同胞達のことを無価値なものとしか思えなくなってしまったのも、結局は怒りのあまりにトチ狂って他のことを考える余裕が無くなっているだけなのだという。
あまり良い例では無いが、親が死んだ直後に友人と昔語りで馬鹿騒ぎしたり楽しい気持ちになったりするなんぞ無理な話だろう。
「理屈は分かるが…実感が無いせいか、どうも納得出来んなぁ」
「出来るならこんな話をしてるわけがないでしょうに。本当に今の貴方を見ていると腹が立つわ」
「それなんだがブレンナー。私がどんな状態なのかは…納得し切れていないにせよ理解はした。ならば何故君はそこまで怒っているんだ?他人のことだというのに何故なんだ?」
「持つ者に持たざる者の気持ちは分からないものよ。その逆もまた然りってところかしら。
貴方の頭じゃ説明するだけ無駄でしょうけど」
腕を組みそっぽを向くブレンナーの言葉は更に辛辣になっていた。見た目に反してこんな一面もあるとは思わなかっただけに以外に思える。最早上官に対する敬意は微塵も見られない。それだけ態度に表れるほど、私の言葉は彼女の機嫌を損ねたのだろう。
その上で図々しいことを言うのは気が咎めるが、まだ重要なことを聞けていない。自分で考えた方がいいのだろうが、彼女も言っていた通りまともな事を考えられる状態ではないのが現状だ。
言葉をかけるか否か、しばらく躊躇って数分の間は互いに無言を貫いていた。彼女が『言いたいことがあるならさっさと言え』と言わんばかりに横目で此方を見ていることに気がついたのは更に数分間黙り通した後のことだった。気づくや否や慌てて喉の辺りに引っかかっていた言葉を吐き出した。
「なぁブレンナー」
「何でしょうか大佐?」
「私がどんな状態なのかは把握した。君がそれを見て不愉快な思いをしているのも分かった。
ならば私は一体どうするべきなのだ?図々しいようですまないが教えてくれないだろうか?頼む、この通りだ」
「……そうですね」
頭を下げ、自分なりに誠意を見せたつもりで頼んではみたものの相変わらず彼女の態度は素っ気無い。明後日の方を向いて考えこむような素振りをしている姿が何処か在りし日のガーデルマンと重なって見えた。
そんなことを思った途端に頭の中で何かが噛み合うような感覚が走った。
(ああ…そうか)
ここに来て、妙に彼女の言葉を素直に受け入れてしまっている理由が分かった。
嘗て私に道を示し続けてくれた相棒のように、彼女は苛立ちを募らせながらも私の間違いを正そうとしてくれているのだろう。
彼女なりの思惑はあるのかもしれないが、消して偽りを述べるのでも耳障りの良い言葉で誤魔化すのでもない。ただ無遠慮に事実を突きつけることで、どうしようもなく察しの悪い私に理解すべきことを教えてくれようとしているのだ。
相棒の言葉がいつも正しかったように、彼女の言葉もきっと正しいのだろう。だからこそ、問いに対するリザの答えを私は疑うことなく受け入れた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
黒円卓の面々が身を潜めている屋敷の一室。
黒円卓の第五位たるベアトリス・ヴァルトルート・フォン・キルヒアイゼンは当分の間は何の役目も無く、有り体に言えば暇であるのを良い事に惰眠を貪っていた。
今は現世から離れている彼女の上官がその場にいればあまりの堕落っぷりに烈火のごとく怒り狂い情け容赦の無い矯正地獄へ叩き落とされることは間違いないだろう。
しかし、嬉し懐かし地獄の扱きも近頃行動を共にしている破天荒な男もいない今となっては別段早起きしなければならないという理由もない。
実際のところ早めに起きたところでやることなどないのも事実だ。他の団員と雑談に興じようにもまともに会話出来る人間など一人もいない。
これといった趣味がある訳でもなく、只管に鍛錬に励むという気にもなれない。唯一友人と言えるだけの関係を結んだ男は他の団員を共に連れて何処ぞかへと出かけたきり音座田無しだ。
いつ帰ってくるかも分からない以上、暫くの間こうしてベッドに横たわっている時間が続きそうだ。
幸いなことにベアトリスはダラダラとした生活も苦にならない程度にはのんびり屋な一面を持っている。外に出てごく一部の戦闘狂に絡まれるくらいならこの小さな安寧を噛み締める方が好ましい。
そう自分の中で結論づけた彼女はとりあえず寝相の悪さ故にズレた毛布を被り直し深い眠りの世界に降りようとする。
しかし、彼女が望んだ安寧は長続きしなかった。突然部屋の扉が蹴破られる手前の勢いで開け放たれたのだ。
二度寝を決め込んだとは言え未だ早朝と言える時間帯である。そんな朝っぱらからこのような騒がしい真似をするなど彼女が考える限りでは一人しかいないが、次の瞬間部屋に響いたのは思い浮かべた人物の声ではなく、帰りを待っていた友人のものであった。
「ベアトリス!!今戻ったぞ!!!」
「うひゃい?!」
最早大声というより咆哮のような声量に思わず飛び起き、そのままベッドの上から上半身が滑り落ちて頭頂部を床に激突させる。
魔人である彼女の体に痛みが走ることはないにせよ、倒叙として襲いかかった衝撃は彼女の意識を微睡みから引きずり起こしてあまりあった。
「え~と……お帰りなさい?」
「応っ!ただいまだ!」
いつになく上機嫌且つ興奮した様子の友人ことハンス・ウルリッヒ・ルーデルに当惑気味のベアトリスは寝間着姿で、しかもベッドから滑り落ちて逆さになった体勢のまま応答するが、如何せん状況が把握出来ず混乱のままに身体を起こそうという考えにすら至れない。
そんなことはお構いなしにハンスは弾けんばかりの笑顔を浮かべたまま更に言い放つ。大気が震え衝撃波でも飛んできそうなほどの凄まじい声量で。
「帰還早々すまんが重要な報告があるのだ!!真っ先に君に伝えたくてな!!こうして朝早くからやって来たわけだ!フハハハハハハ!!!!」
「あの……ホントにどうしたんです?あからさまなくらいテンションが可笑しなことになってるんですけど大丈夫ですか?」
「ああ!!大丈夫だとも!!寧ろ絶好調だぞ!!歌い出したいほどに晴れ晴れとした良い気分だ!!ガーデルマンが言う所の『最高に「ハイ!」ってやつだアアアアアア!!』アハハハハハハハハハハーッ!!!!!!」
一連の発言から咄嗟にまともな対話が不可能であることを悟ったベアトリスは理由はどうあれ、エネルギーの塊のような人間が常にエンジン全開の大暴走を始めようとしていることに今更ながら嫌な予感を覚え始める。
「と、とりあえず聞かせて欲しいんですけど何かあったんですか?出かける前と比べて明らかに色々と違い過ぎてて訳分かんないことになってるんですけど!?」
「何かあったかだと?そうだな!!あったな!!まぁ色々と吹っ切れたと言う事だ!!」
「いやいやそれって説明になってないですよね?答えになってないですよね?とにかくなんで今そんな暑苦しいことになってるのか、原因を教えてくださいホントに!!」
とりあえず逆さになった状態かた体勢を整え、ハンスを落ち着かせるべく混沌とした現状の原因を探ろうと試みる。
既に轟音の域に達している目の前の大男の声に掻き消されないように自然とベアトリスの声量も高まり先程まで彼女の寝息しか音という音のなかった部屋は魔人同士のの大声で振動を始める。
「ブレンナーに悩み相談をしてな!!そこでとても為になる助言を貰ったのだ!!そして私はとある結論に辿り着いたァ!!!!」
「じゃぁその結論って何なんですかぁ!?正直嫌な予感しかしないので非常に聞きたくないんですけども!!」
「応っ!!よく聞けベアトリス!!私はっ!!私は考えるのをやめるぞオオオオオオオオ!!!!」
「アンタ一体何吹き込まれて来たのおおおお?!!?」
最後に発せられた雄叫びは遂に火山噴火の如き衝撃を放ちベアトリスの部屋を突き破って壁の先に抜けて出る。
屋敷は愚か天まで轟くハンスの雄叫びは舞台が次の演目へと移ることを知らせる号砲として世界を震わせた。
最近の閣下が大人しすぎるからやった。自重も後悔も一切しない(マジキチスマイル)