Dies iraeに空の魔王ぶっ込んでみた   作:ノボットMK-42

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あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
俺は朝起きて牛乳飲んで体操してからパソコンを開いたらアクセス数とお気に入り数がとんでもないことになってた上にランキング一位にまで食い込んでた
な…何を言っているのかわからねーと思うが 
俺も何が起きたのか分からなかった…
頭がどうにかなりそうだった…
見間違いだとか妄想だとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ
もっと恐ろしい閣下効果の片鱗を味わったぜ

結論、やっぱり閣下は偉大でござんす




そんなこんなで読者の皆様この度は私めの駄作にお付き合い下さり大変ありがとうございます。
初め見た時は本当にポルナレフなことになってました。あと牛乳飲んで体操したのも本当です、どうでもいいですねハイ。

何はともあれ感謝のあまり言葉もありません。
正直作者は閣下の魅力にたかっているだけの駄作者だと自覚しているのですが過分な評価を頂き喜びと恐れ多さで混乱気味です。
出来る事ならばこれからも皆様にお楽しみ頂けるようなストーリーを作れるよう精進していきます。


Act.02-A

 私の眼前に、黒い軍服を身に纏った十人程の男女が立っていた。

 

 私は幾人かに覚えがあった。しかし本来それは在り得ないことで、彼らはここにはいる筈の無い者達ばかりであったのだ。

 

 味方にすら牙を剥いたことで粛清された男がいた、深紅の髪をたなびかせる半身を焼かれた女性がいた、嘗て英雄と呼ばれた筋骨隆々とした男がいた。

 

 そして一目で分かってしまった、彼らは私と同じく外法を授けられ人の範疇を超えた存在であることに。

 

 それも、保有する力は私のそれとは比較するまでも無く上であろう。

 

 私は自身の持つ力の事をあまりにも知らない。あの影絵の男は私にこの力の何たるかを全くと言っていい程に教えなかったのだから。

 

 その男は空に輝く方陣を背にして此方を不快感すら感じる程に楽しげな顔で見下ろしていた。

 

 

「カール・クラフト……!!」

 

 

 地の底から湧き出て来たのではないかという程に低い声が洩れた。

 

 そうだ、考えてもみれば可笑しなことではない。

 

 私以外にこの力を持つ者がいないなどと、奴が力を与えたのが私だけなどという保証はどこにもなかった。

 

 奴が後々この国に不吉を呼び込むことなど初めの邂逅の時から分かりきっていた筈なのに。

 

 私が目を光らせたとて奴の暗躍を防げはしなかっただろうが、この地獄を作り上げた要因の一端であるカール・クラフトへの怒りを湧き上がらせずにはいられなかった。

 

 血が滲むほどに強く拳を握りしめる。あんな男に縋ってしまった自分が恥ずかしくてたまらなかった。

 

 

「良い目だ。空の英雄」

 

 

 声が響いた、カール・クラフトのすぐ側に立つ男の声が。

 

 魔女の鍋と化したベルリンの 天/ヒンメル に立つ黄金色の獣が声を発した。

 

 鬣の如き髪と総てを見下ろす王者の瞳を黄金に輝かせる男は美しくも悍ましい光を放っている。

 

 この男もまた、既に現世に居るはずの無い筈の存在であった。

 

 傍らに影絵の男を侍らせて、眼下に爪牙達を従わせる金の獣。

 

 その男の名をラインハルト・トリスタン・オイゲン・ハイドリヒと言った。

 

 暗殺によりこの世を去った筈のゲシュタポの長官、そのあまりの優秀さから味方にすら危険視された男であった。

 

 

「地獄の業火の如き怒りと憎悪、カールが竜と比喩するのも頷ける。力によって頂点に立つ者、人が思い描くであろう絶対者。卿は生まれ落ちた日よりその定めを負っていたのであろうな」

 

 

 男の声には聴いただけで人間を魅了し、恐慌させ、或いは昏倒せしめる程の力が宿っていた。

 

 ただの声だけで圧倒的な力を感じさせる人ならざる者は、刃のように鋭い眼光でその身を射抜く私を心底愛おしそうな目で見下ろしていた。

 

 絶対者などと言いながら、奴はその更に上を行く存在であるのだろう。奴の言葉には自分が既に私達とは違う次元から見下ろしているような達観と全能性を垣間見ることが出来る。

 

 地上に生きる生命の頂点に立つ絶対強者すらも、天上に座するこの黄金の獣を前にしては威光を陰らせざるを得ない。

 

 だが、竜と比喩された者は魔の言霊を全身に浴びようとも燃え盛る激情を収めることはしない。

 

 大小様々な傷のつけられた相貌を悪鬼の如く歪め、引き裂けんばかりに見開かれた黒曜石のような黒い瞳は弱卒ならば視界に入っただけでも圧死しかねない程に強烈な殺意を放っている。

 

 黄金を喰らおうとする闇色の光は降り注ぐ化外の存在感を前にして徐々に膨らんでいく。

 

 

「何をした」

 

 

 そしてただ一言、そう呟いた。

 

 決して大きくない声量は底冷えする威圧感を伴い突風となってこの場にいる者達へと吹き付ける。

 

 刹那の間に空気が重量を帯びた。

 

 見下ろす男はそれすら心地良く受け止め、己へと投げかけられた問いに迷うこと無く答えるのだった。

 

 

「願いを問うたのだ。何を求めるのか、勝利を求めるのかを。

そして彼等は答えた。勝利を我らに与えてくれ(ジークハイル・ヴィクトーリア)と。

故に余さず向かい入れたのだよ、我が軍団(レギオン)に。」

 

 

 結局、返って来た解答の意味は理解出来なかった。

 

 向かい入れただと?ここにいるのは須らく死人のみではないか、この帝都を貪り尽くした大虐殺(ホロコースト)の痕を見るが良い。一体誰が貴様に付き従ったというのか。

 

 何も残されてはいない、続く者など誰一人として居はしない。

 

この男は土壇場で祖国を裏切り同朋達を血の海に沈めた、それだけだ。

 

 

「戯言をほざくな!

貴様が全て殺したのだ、貴様が全て壊したのだ!」

 

 

 同朋達を死に追い遣ったのはこの男で間違いない、ならばこの際理由などはどうでも良かった。

 

 この惨状を前にして僅かにも心を揺らさない人でなし、外道、裏切者。それさえ分かれば塵殺する理由には事欠かない。

 

 恐らく私は人生で初めて心の底から人を恨み憎んだ。私の同朋達を奪った男を、この喪失感を胸に刻み込んだ男を心底殺してやりたいと切に願った。

 

 イワン共にすら抱いたことの無い明確な悪意はとうとう私の胸中には収まりきらず、体のそこかしこから流れだして空気を軋ませ始める。

 

 守るべき者を殺し尽くした憎き男、ラインハルト・ハイドリヒは、この重圧を身に受け非現実的なまでに整った麗貌に深い亀裂を刻み込む。

 

 

「そうとも、私が壊した(愛した)。我が愛は即ち破壊、それ以外知らぬが故に。私は彼等を須らく壊し(愛し)そして向かい入れた、それだけのことだ。果たして何を疑問に思うことがある?」

 

 

 大仰に、尊大に言い放つ様には一片の迷いも後悔も無い。

 

 この男は当然の事のように同朋達を虐殺せしめたのだと嫌でも理解出来た。

 

 加えて腹立たしいのが奴自身、己の行動に欠片ほどの悪意も持ってなどいないことだ。

 

 奴の言葉には虐殺による心の起伏が感じられない、それこそ虫でも踏みつぶした程度の感動しか覚えていない。

 

 それはこの男が何処までも高みにいる存在だから。

 

 あるのは幼子の持つ無垢なる狂気にも似た破壊的な愛、ラインハルト・ハイドリヒという男は全ての人間を見下しながらも愛している、そしてそれ故に壊すのだ。

 

 何と言う矛盾…否、奴にとってはこの歪んだ発想こそが真理なのだろう。

 

 だがそれが何だ。

 

 根幹にあるものが愛であるとして、同朋達を殺めた事実は揺るぎはしない。訳の分からん狂人の理屈を引っ張り出した虐殺者への怒りは増していくばかりだ。

 

 嗚呼、赦せない。

 

 狂おしい程の怒りが力と共に溢れ出す。

 

 それはとても悍ましくて心地よくて、だからこそ何処までも悲しかった。

 

 

「カールよ、卿の言った通りだな。

守ることを願いながらも喪うことでより強く羽ばたく姿は、正しく死者の魂を翼に背負う 悪竜/ニーズヘグ 。卿が入れ込むのも頷ける」

 

「いえ、まだこんなものではありますまい。その身は既に竜なれども人の皮を被ったまま。未だ黒鉄の鱗に身を包みし誠の姿を晒してはおりませぬ。ならば古き皮、この場で引き剥がしてみせるのも一興かと」

 

「それも探求の一環か?」

 

「然様。彼の御人は既に定められた道筋を大きく踏み外し、新たな宿命に身を投じている。

その先に待つ結末は私ですら予期出来ぬほどに複雑怪奇極まるのです、それだけに興味を引かれる。」

 

「外道に引き込んだ卿がそれを言うか?

しかし、彼の者の新生か……確かにそれは何処までも雄々しく、悍ましく、そして美しいのであろうな。

ならば良いだろう、興が乗った。

空の英雄、ハンス・ウルリッヒ・ルーデルよ、卿が壊れ生まれ変わるその様を見たくなった。卿の放つ暗き輝きを以てして、我らの地獄へと続く旅路を飾るが良い」

 

 

 その言葉で奴の爪牙を自覚する者達が一斉に殺気を滾らせる。

 

 一人一人が私よりも一段階上の次元に立つ化け物、このまま挑むなど愚の骨頂と言えるだろう。

 

 増して、今の私はたった一人。味方は居らず、この背を見守ってくれる者もいない。

 

 だがそれこそが、その孤独こそが私に新たな力を与えた。

 

 先に感じた浮遊感、それは絶望感であるのと同時に一種の解放感でもあったのだ。

 

 同朋を失い、彼等を守らねばならないという私自身が課した責務から解放された瞬間、私の魂は途端に軽くなった。

 

 あまりにも虚しい、悲しいことだ。これではまるで――――――

 

 

――――――戦友、力、名声、勝利。誰もが羨み称賛するモノを君は持っている。そして持つが故に、抱えたもの全てを乗せた翼は次第に羽ばたくことすら満足に出来ぬほど重くなっていく――――――

 

 

 ふと、いつか聞いたカール・クラフトの言葉を思い出した。

 

 そして理解する、私の抱いていた思いを。

 

 私の願い、私の渇望、私にとって同朋達が何であったのか、私が本当はどうしたかったのか。

 

 理解した、してしまった。

 

 胸の内を空虚が覆う、しかしして激情はそれすらも糧にして更に燃え上がる。この虚しさも全て纏めて燃え尽きろと言わんばかりに暗い色の炎が轟々と肥大化していく。

 

 そして気が付けば紡いでいた、それまで知らなかった筈の言葉を。

 

 

 

 

遠き日の記憶 無垢なる言葉

Die Weisheitslehre dieser Knaben

 

幾時経ようと忘れはしない

Sey ewig mir ins Herz gegraben

 

 

 

 

 一言発する度に、今までの私が崩壊していく。

 

 

 

 

迷い惑い問い続け 見上げた先を幻視した

Wo bin ich nun - Was wird mit mir

 

それは祈り 導き求める愚者の声

Ist dies der Sitz der Götter hier

 

全能なる者は告げた 愚かで無知な私へと

Es zeigen die Pforten, es zeigen die Säulen

 

 

 

 

 それはハンス・ウルリッヒ・ルーデルの人としての終わり、新たな誕生。

 

 カール・クラフトの言った通り、これは脱皮のようなものなのだろう。

 

 古い皮を捨て去ることで新しい自分に新生する。

 

 深層に秘めるものは変わらずとも、そこにいるのは嘗ての自分ではない。

 

 

 

 

羽ばたく者は歓喜する 這いずる者は堕落する

Wo Thätigkeit thronet, und Müssiggang weicht

 

この理ある限り 我が飛翔 何人にも阻むこと叶わず

Erhält seine Herrschaft das Laster nicht leicht

 

 

 

 

 だが今はそれを悲しむ時ではない、私にはやらねばならないことがある。

 

 敵わずとも良い、兎に角この荒れ狂う力を吐き出さねば収まらないのだ。

 

故にもっと燃えろ。

 

 私の怒りよ、私の空虚よ、もっともっと激しく燃え上がれ、森羅万象一切を灰燼に帰すまで。

 

 

 

 

今こそ飛び立て あの空へ 思うままに何処までも

Ich mache mich muthig zur Pforte hinein

 

朽ちる事無き遥かな夢よ 穢れる事無き蒼穹よ

Die Absicht ist edel, und lauter und rein

 

お前を目指す 翼の真名を今明かそう

Und Sterbliche den Göttern gleich

 

 

 

 

 あの二人が愉快極まりないと言った様子で私を見ている。カール・クラフトは特にそれが顕著であった。

 

 そんなに楽しいか?そんなに私が変わって(壊れて)行く様は面白いのか?ならばとくと見せてやろう、余りの光で貴様らの目が焼き潰れる程の輝きを放ってやろう。

 

 躊躇いなどかなぐり捨てた。

 

 音を立てながら剥がれ落ちていく人の皮を、私は自ら引き裂いた。

 

 

 

創造

Briah――……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 かくして第二次世界大戦は終わる。

 

 ドイツは世界に戦いを挑み、敗北した。

 

 髑髏の帝国が滅びた日

 

 死都と化した街には、どこまでも恐ろしく、悲しい吹鳴が響いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




詠唱についてはちゃんと元ネタもあるんですが出来栄えはご覧の有様です。
閣下の空への思いを念頭に置いた内容にしたつもりなのですがイメージに合わないと思われた方には謝罪するしかありません。




同朋を失った喪失感と孤独感で創造位階に到達したルーデル。
それは嘗て相棒を失った喪失感から生まれた活力と同じものであった。
喪うほどに、独りになるほどに強くなっていく……これが意味することとは?


次回『怒りの 悪竜/ニーズへグ 』












(*´∀`) なんちゃってwww
 

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