Dies iraeに空の魔王ぶっ込んでみた   作:ノボットMK-42

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やっと投稿出来た…
くら寿司って大変な仕事なんですね


Act.04-A

 

 

 ベルリンが滅び、多くの同胞達を生贄にして私達はスワスチカを開いた。

 

 全ては我らが主の為。

 

 この国の闇の中で生まれた怪物達と、私が崇拝とも言うべき畏敬の念を抱いた人も嬉々として大虐殺(ホロコースト)を行った。

 

 そして私は悟った、彼女が自らの意志で戻ってくることはもう無いと。

 

 正直言って絶望した。以前のような厳しくも凛々しく、誇り高かったあの頃に戻って欲しかったのに、結局その願いが届くことはなかったのだ。

 

 そんな折に彼は現れた。

 

 ドイツ国民、増して軍人であるのならば知らぬものなしと断ずるに値する英雄。

 

 多くの戦場に立ち、夥しい戦果と勝利を齎した人。

 

 私だって彼の事は聞き及んでいた。実際に会ったことはなくても彼の功績の数々、そして明らかに尾ひれがついたとしか思えないような所業は良く噂されているから。

 

 嘗ての彼女が彼の噂を聞いて『夢見がちな新兵の与太話かプロパガンダ利用が目的の高官が馬鹿を御輿にしただけ』と吐き捨てていたのを覚えている。

 

 鋼鉄の女とも言うべき程に軍規を重んじる彼女にとって、命令無視、或いは違反の常習犯である彼の話は耳に心地の良いものではなかったのだろう。

 

 対する私は彼の話を聞く度に、まるでお伽噺を聞く子供のようにはしゃいでいた。その度に彼女からは怒られたのだが。

 

 曰く空の英雄、戦車撃墜王、不死身の男、急降下爆撃狂、被撃墜王、牛乳中毒等、様々な呼び名を持つ彼は、正しく雲の上に居る人だった。

 

 そんな彼と、私は考え得る中でも最悪な場面で初対面を果たすことになった。

 

 彼は私達の手によって滅ぼされたベルリンを前にして怒りに震えていた。

 

 当然の事だろう、あのままソ連軍に蹂躙されれば良かったなどとは言わないが、人外に殺されて魂まで食い物にされるなんて間違っても人の死に方じゃない。それを為したのが味方であった筈の者達だったのだから尚更だ。

 

 だから本心はどうあれ、虐殺に加担した私にも罪の一端はあった。

 

彼が一切怯むことなくハイドリヒ卿に言い放つ怒声が酷く胸に刺さる。

 

 それは身を焦がすような怒りの発露、そして守るべき者達を喪った悲しい慟哭だった。

 

 この国で並び立つ者などいない英雄が涙を流さずして泣いている。私にはそういう風に思えた。

 

 腐敗しきっていた第三帝国にあって同僚、戦友、上官から始まり、高官に将軍に挙句の果てには総統にまで彼は絶大な信頼を寄せられていたのだという。

 

 そんな同朋達の惨たらしい死に様を目にして彼を苛んだ絶望のどれほど大きなことか。

 

 中途半端に魔人となったせいで、彼はまだ痛みにも苦しみにも人並みに敏感なままだったのだろう。

 

 未だ残されていた一面で心の痛みを受け止め、耐えがたい苦しみを怒りに変えることで彼は私達に、ハイドリヒ卿に挑んだ。

 

 副首領閣下が何を思って彼に力を授けたのかは分からないが、此方を傷つけ得る力を持っているのだとすれば黙って撃たれるままではいられない。

 

 決して彼を油断して掛かれる相手とは思っていなかった。とはいえ多勢に無勢の状況に加えて現時点で大して力を使いこなせていないのでは話にならない。

 

 端的に言って彼が私達に勝てる要素など一切無かった。それこそ当時の彼はシュピーネにすらも翻弄されかねない程度の力しか持ってはいなかったのだから。

 

 だがそんな甘い発想は一瞬で消え去った。

 

 湧き上がる濃密な敵意と殺意、そこに居るだけでも空間を軋ませる気迫、そして見ているだけで心が虚しさに覆い隠されるような怖気。

 

 こんな常識外れで次元外れな気配を放つ相手など私達は一人しか知らない。私を含めた全員が嘗て黒円卓の面々が意図せずして集い、ハイドリヒ卿一人に捩じ伏せられたあの夜を思い出していたことだろう。

 

 誰も彼もが驚愕し、恐怖した。

 

 先程まで人の姿をしていた相手が一瞬で恐ろしい竜と化す、そのような光景を幻視したのだ。

 

 恐らく私が見たモノは幻であって幻ではない。彼はその時、確かにヒトから別のナニカへ変貌した。憎き敵を殺す為に。

 

 そこから先は戦いにすらならなかった。

 

 同じ創造位階であろうが関係ない。あらゆる攻撃は彼を傷つけることは無く、持てるだけの異能は一切合財通じない。

 

 彼が腕を一振りすればそれだけで3人は吹き飛んで立ち上がれなくなった。

 

 音速を遥かに超えて突進して来る狂獣を風圧一つで吹き飛ばし、死を齎す拳を放つ事もさせず一方的に封殺し、挙句の果てには地獄の業火も蝋燭の火を吹き消すかのような気安さで消失させる。

 

 あの規格外の三人ですら虫けらのように叩き潰す姿は正しく怪物。

 

 とっくに打ち伏せられて力なく横たわっていた私は、その光景を遠目に眺めている事しかできなかった。

 

 あれほどの怪物に叩きのめされたのだから死んでいても可笑しくはなかった筈なのに、何故こうして命を繋いでいられたのか、それは土台彼が私達を殺すつもりが無かったからなのだろう。

 

 ただ勘違いしてはいけないのが、決して彼は私達に情けをかけたのではないということだ。

 

 彼の全身から湧き上がる殺意には嘗ての同朋への情だとか優しさだとかそんなものは一切感じられない。

 

 ただ、それらの矛先は双首領にのみ向いていて、私達を狙いすましたものではなかったのである。

 

 私達が彼を迎撃したのも、彼にとっては獲物と自分との間に目障りな障害物が立ちはだかった程度の事でしかなかった。

 

 だから彼は私達を攻撃したのではなく、ただ退かしただけ。鬱陶しく纏わりつく蝿を手で払ったような感覚で私達全員を退けてみせた。

 

 正に次元が違った。同じ土俵にすら立っていなかった。

 

 最後まで立っていた彼女が紅い髪を血飛沫のように大きく乱しながら倒れ伏す。

 

 徐々に薄れゆく意識の中で、私は彼が獣のような咆哮を上げたのを耳にした。

 

 その声色はやはりどこか悲しげで、恐怖で身体が震えるよりも先に胸が締め付けられるような息苦しさに襲われた。

 

 そんな気持ちを噛み締めている内に私は意識を手放しており、次目覚めた時には既に戦いは終わっていた。

 

 彼はハイドリヒ卿に挑み、そして勝つことは叶わなかった。その証拠にこうして黒円卓は存続しているのだから。

 

 あの後、彼はどうなったのか。

 

 普通に考えてハイドリヒ卿に真っ向から挑んで敵う筈もないのだが、彼は普通とは違う。

 

 常識から外れた存在になった私達にとっても彼は規格外の怪物に相違無い。

 

 ならば或いは、という思いを抱くには十分だった。

 

 そして、ハイドリヒ卿が三騎士を連れ、この世から旅立ってから程なくして、その思いが間違いではなかったことが証明された。

 

 黒円卓を囲む現世に残ったメンバーの前に、彼は以前と同様に突然現れ言い放つのだった

 

 

「おはよう諸君。私はハンス・ウルリッヒ・ルーデル。君達の首領を殺す為にやって来た者だ。宜しく頼む。」

 




なんかここまで書いてて今更って感じなんですけど閣下の武装形態どうしようか悩んでます。
普通に乗り込むタイプにすべきか、ラジコンみたいに遠隔操作すべきか、武器だけ部分展開してISの非固定ユニットみたいにするか、機銃と機関砲を手足にくっつけてベヨネッタみたいにしてみるかとか色々考えてるんですがどれも微妙な気がして……アンケート取ろっかな

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