仮想世界に立つ冬空の死神   作:マイケルみつお

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吹兎はキリトやアスナと全然年齢は違いますが特に下に見る事はなく、対等に接するように書いていこうと思っています。



12話 チェックアウト&チェックメイト

 出会いがあれば別れもある。始まりがあれば終わりもある。人が()()、いづれ死に至ると同様に物事に永遠などありはしない。だから......

 

「そ、そうなんだね......」

 

チェックインもあればチェックアウトもあるのだ。

 

 

 

 

吹兎とアスナはひょんなきっかけ(幽霊)でツインベッドの寝室に寝泊まりしていた。アスナはその期間に吹兎を赤面させるためにあらゆる手を尽くしたが......結局一度たりとも成し遂げる事はできなかった。

吹兎とアスナがツインベッドの部屋に寝泊まりしていたのはたまたまでしかない。そして......ついにアスナにとって絶望のその日(チェックアウト)が来てしまった。

 

「前回の反省を活かして既にシングル二部屋を用意してるから安心して!」

 

「そ、そうなんだね......」

 

百パーセント善意からくる吹兎の微笑みに、アスナは苦笑いで返す事しかできなかった。

 

──────

 「それじゃあ僕はフィールドに行ってくるけど......」

 

宿を出て、フィールドに向かう吹兎はアスナの意思を尋ねるが......

 

「まあパーティはそのままだし次の層からまたよろしくね」

 

アスナの少ない弱点の一つが幽霊である。だからこそ吹兎とアスナは今日までツインベッドの部屋で寝泊まりしていたのだ。

この第10層、「ソウルソサエティ」では出現するモンスター全てが虚であり悪霊である。アスナがこの層のフィールドを探索したがらない事を吹兎は分かっていた。

 

「それじゃ!」

 

アスナがその提案に首を縦に振る難しさを理解していた吹兎は返答を待たずしてフィールドに飛び出して行った。

 

 

 

 

フィールドに出ればモンスターがいる。モンスター名はグランドフィッシャー。尸魂界からも追加給金が掛けられているほどの虚である。アスナが恐怖を覚えるきっかけとなったフィッシュボーンDのような雑魚ではない。

パーティメンバーのアスナがいないため吹兎はソロで虚に挑む。

 

「ハッ!」

 

現実の死神状態であれば訳ないが、今の平隊員(相当とされる)実力では攻撃を一度受けるだけでおそらくかなり危険な状態に陥る。吹兎は虚の触腕による攻撃をバックステップにてかわす。

 

「フッ! ハァッ!」

 

瞬歩による回避も鬼道による防御も不可。適度な霊圧を足にこめて虚の触腕による連続攻撃をかわしていく。そして......

 

「テヤッ!」

 

虚の弱点は頭の仮面を叩き割ると相場で決まっている。グランドフィッシャーの攻撃の後に生まれた大きな隙をカウンターで突き、虚の仮面を斬りつけた。

 

「ウォォォォォッッ!!」

 

現実の死神状態ならこの一撃で勝負は終わっていた。が、虚は大声をあげるだけでポリゴン片となって消滅する兆しは見えない。

 

「(どちらにせよ、超速再生はないようで良かった)」

 

虚には超速再生という特性がある。人間や死神は怪我をしたところで肉体が回復する事はないが虚の場合、四肢をもがれたところで少し時間が経てばまた生えてくるし傷も癒える。それもあって背後から一撃で仮面を叩き斬る事が討伐のセオリーとされているのだ。

だがこのゲーム、「ソードアートオンライン」では厳密に数字で攻撃力が定められている。

現時点ではどのプレイヤーも最前線のモンスターを一撃で屠る事は不可能である。それは攻略組の者とて例外ではない。

が、目の前の虚は欠損したHPが戻る兆しは見えない。超速再生は再現されていないという事だ。

それを確認した後、吹兎は虚からの反撃を喰らわないようにバックステップで離脱する。

虚の攻撃パターンは吹兎の想定そのままであり、攻撃を余裕を持って避ける事ができている。

 

「(僕の記憶から読み取ったからか......虚の行動パターンは僕の想定そのまんまだね。......素直に喜べないけど)」

 

吹兎は再び虚に肉薄し、正面から一度、そして反撃を防ぐため背後に回り込み弱点の仮面に対して二連撃を繰り出し......虚をポリゴン片に変えた。

 

──────

 ソロの剣士、キリトは偶然にも見知ったプレイヤーの戦闘を目にした。敵は......先ほど自分が苦戦しながらも何とか討伐に成功したグランドフィッシャーであった。

 

「(やはり......敵の攻撃を見切る目と体捌きに関してあいつは凄すぎる)」

 

普通であれば討伐に協力するべきなのだろうが、そのプレイヤーとは吹兎であった。彼であれば倒される事は考えにくい。

彼の戦闘を俯瞰的に見る機会はそうない。戦闘を学ぶため、キリトは吹兎の戦闘を見学する事にした。

もしピンチに陥ればすぐに助勢に入れるように抜刀した状態で。

 

吹兎は敵の攻撃を掠る事なく避け、そして反撃の一撃を加える。その剣戟にキリトは強い違和感を覚えた。

先ほど吹兎はモンスターの左側面に着地し刀は上段の構えをとっていた。それなら普通、そのまま刀を振り下ろして左腕を()()選択を採るのが自然だ。

しかし吹兎はそうせず刀を握り返え、虚の仮面目掛けて斬り込んだ。

 

「(まさかフキトは知っているのか? 虚の弱点が頭の仮面だという事を。俺が何度も検証して、ようやく先ほど見つけた情報だ。まだアルゴが出した攻略本のどこにも書かれていないはず。あいつもこの層で何度も確かめたのか?)」

 

キリトが思考を続けているとパリンとした音と共に、プレイヤーよりも一回りも二回りも大きい虚がポリゴン片となって消えていく。

 

「(早すぎる......)」

 

それはキリトの時よりも圧倒的に早い討伐速度であった。

 

「フキト、グッジョブ!」

 

色々確かめたい事もあったため、キリトは彼に話しかける事にした。今し方やって来たような素振りで。

 

 

 

 

「まるで今やってきたような口ぶりだね」

 

全部バレていた。

 

「よ、ようフキト! 偶然だな!」

 

吹兎の目線を無視してキリトは続ける。尤も、吹兎を見かけてから暫く見続けていたが見かけたのは偶然なのであながち嘘でもない。

 

「せっかくだし一緒に攻略しないか?」

 

吹兎の戦闘をより観察するためにキリトは吹兎を攻略に誘う。

 

「いいよ」

 

キリトのその意図に吹兎は気づいていたが、特に何の問題もなかったので了承した。

 

「じゃあパーティを組もうか」

 

そう言ってキリトは吹兎に対してパーティ申請をする。が、吹兎はその申し出を受ける事はできない。

 

「ごめん、今はアスナとパーティ組んでるから」

 

キリトとパーティを組む場合、アスナとのパーティを解消しなければならない。

 

「分かった。じゃあそのまま行こう」

 

二人はパーティを組まない、所謂形式的には野良パーティのような形で攻略に挑む事となった。

 

──────

 「セイッ! フキト! スイッチ!」

 

「了解! フンッ!」

 

キリトからのスイッチを受けた吹兎の一撃で虚はポリゴン片となって消えた。吹兎とキリトはあれからコンビを組んで攻略をしていた。

 

「(手練がいるとやっぱり倒すのが早いな。それに俺が動きやすいように立ち振る舞ってくれている)」

 

キリトと吹兎が共に戦ったのはボス戦の時のレイドを組んだ時のみであったが、卓越した戦闘経験を持つ吹兎は連携を重視した立ち振る舞いをしていた。

 

 

 

「ん? あれは......」

 

フィールドのモンスター倒しながら進んでいくと、キリトは敵の気配に気づき、吹兎と共に即座に物陰に隠れた。

 

「(で、デカい......)」

 

この層のモンスター、虚は今までのモンスターに比べて雑兵でも巨大な姿をしていた。が、今目の前にいるモンスターは今までのそれよりも巨大な姿をしていた。

 

「(ネームドモンスターか......。もし危なくなれば逃げればいい。俺とフキトの二人なら......いける!)」

 

「行くぞ! フキト!」

 

「了解!」

 

キリトと吹兎は抜刀して件のネームドモンスター、「ヒュージホロウ」目掛けて突進していった。

 

 

 

 

巨大虚......ヒュージホロウは現実世界と同様に巨大な爪を活かした攻撃をする。体躯が大きく、HPも膨大ではあるが攻撃パターン自体は単調。しかしその攻撃力は高く、確実に攻撃を避けなければならない。

 

「ハァッ!」

 

戦闘の火蓋はキリトによるソードスキル「バーチカル」によって切られた。

 

「フキト! スイッチ!」

 

「了解!」

 

キリトは離脱し、背後から跳躍していた吹兎がヒュージホロウの頭目掛けて浅打を振り下ろす。HPの1割もまだ削りきれていないが二人は戦闘の主導権を握る事に成功した。

 

「(おかしい......)」

 

そんな中、キリトはまたしても強い違和感に襲われた。キリトと吹兎は正式なパーティを組んでいないため相棒がどれだけのダメージを与えたのか、正確な数値は分からない。しかしキリトが与えたダメージよりも吹兎が与えたダメージの方が大きかったのは明らかであった。

 

「(さっき、フキトのステータスを見せてもらった。攻撃に関してSTRは俺の方が上だ。それなのにどうして......?)」

 

最初と同様、二回目、三回目も同じような剣戟で順調にヒュージホロウのダメージを削っていったが......やはり吹兎の方が与えるダメージは依然として大きかった。二人が与えるダメージ量の差異はたまたまではなかったのだ。

 

「(何かがある......。俺とフキトの違いと言えば......一つしかない!)」

 

キリトは自分が習得する事ができなかった、死神スキルのチュートリアルの内容を思い出す。「死神とは魂のバランサーである」という事。そしてこの層のモンスターである虚はこれまでの亡霊系モンスターとも系統が異なる。

 

「(もしかするとこの層のモンスターは死神の世界のモンスターの事かもしれない!)」

 

「フキト! 一旦死神スキルをオフにして斬りかかってみてくれ!」

 

「分かった!」

 

ゲームの事に関しては吹兎よりもキリトの方に一日の長がある。なぜ彼がそんな事を言うのか分からなかったが、しかしキリトが言うのなら何か意味があるのだなと考える。死神スキルを解除したため、9層までと同じ初期装備の短剣に武器が持ち変わる。

 

「スイッチ!」

 

「スイッチ了解!」

 

そして短剣で今までと同じようにヒュージホロウの頭を攻撃した。

 

「ッ!」

 

当然、今までの死神状態のダメージに比べれば雀の涙ほどのダメージを与える事しかできなかった。吹兎はそれを見て歯噛みをするが......

 

「ありがとうフキト! もう大丈夫だ! 死神スキルに戻ってくれ!」

 

キリトは自らの仮説が証明された事を認識する。

 

「(さっきのフキト、STR値から考えていつもと同じだった。やはり死神スキルには虚に対する特効効果のようなものがあるんだ!)」

 

「ラストだ! スイッチフキト!」

 

「スイッチ了解!」

 

死神スキルをオンにし、再び斬魄刀を手にした吹兎は跳躍し、上段からヒュージホロウ目掛けて振り下ろし......ポリゴン片へと変えた。そして......レベルアップの音が鳴った。




〜後書きは本作とは全く関係ないのに長文なのでご注意を〜

「夕闇のスケルツォ」を今度観に行くので前回、映画館行き損ねて観れなかった「星なき夜のアリア」をストリーミングで見ました。ネットでミトがクズって言われてる理由がやっと分かりました()

ただ個人的にはミトはクズというよりどちらかと言えば臆病なのでは?と感じました。それもコミュ障口下手が混じった、より厄介なタイプの。
ベクトルとしては「悪い」というより「弱い」の方向というか......そんな感じ。キリトとかアスナが他人を守るために簡単に自分の命を賭けているから忘れがちなんだけど、仲間が死ぬのを見たくない!死にたくない!ってなっちゃうのは至極当然なんじゃないかな?って。デスゲームという空間に閉じ込められた精神状態なら尚更。
1層のボス部屋で謝らないってのも、そもそも謝罪をアスナが望んでいなかった。だから今更したとしてもそれは自分の罪悪感をなくす自己満足な行為でしかないって事に気づいてやめたんじゃないのかな?多分本人は凄く謝りたかったと思う。
だから悪い事をしたってのは分かるんだけどミトの人格がクズってのはちょっと違うんじゃねぇかな?と思っただけです。意外と長くなっちゃった......

あ、それとミトのキャラデザめっちゃ好きでした、ハイ。


なんか映画見た感想書き殴りしましたが......ここまで読んでくれてありがとうございました。スケルツォ楽しんできます。

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