仮想世界に立つ冬空の死神   作:マイケルみつお

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現在吹兎はソードスキル使えないであまり強い立ち位置ではありませんが当然これも物語が進めば変化します。


6話 ボス戦

 「オ、やっと起きたカ、フー坊」

 

宿の存在など知らない吹兎は安全圏の街の木の上で休んでいた。目が覚めるとそこには、ゲーム開始数日後に知り合った顔があった。

 

「アルゴ。どうして僕がいる場所が?」

 

「...相変わらずの機械オンチで何よりダ」

 

フレンド機能を使えばフレンドの現在地が分かるが...そんな事、死神の彼が知る訳が無い。

 

「まあいい。それよりもフー坊。なんで昨日の攻略会議来なかったんダ?」

 

「...?」

 

「キー坊も困ってたし、オレっちもメッセ送ったダロ?」

 

「...?」

 

メッセージ機能については一度キリトから教えてもらったのだが...吹兎はよく分からなかった。説明の中でリスト、アドレス、インターネットなどよく分からない単語があったから。

 

この後アルゴからおじいちゃんに教えるように説明され、ついに吹兎はメッセージを使いこなす事ができるようになった。

 

──────

 ボス攻略会議。ある程度の初心者プレイヤーが生きる術を見つけた事によって吹兎の目的もゲーム攻略へと移行した。低経験値のモンスターの撃破が中心ではあるがその撃破数はダントツであったためにレベルは攻略に出ても申し分のないものであろう。ただパラメーターの振り分けをしていなければ装備も初期装備のままであるが...。

 

今回のボス攻略の指揮はディアベルというプレイヤーが執るようだ。尤も、護廷十三隊の隊長として隊を率いてきた吹兎の方が指揮能力が高い事は間違いないだろう。だが吹兎は仮に自分が指揮の立場に立つ事ができたとしてもそれを拒んだ。死神にとって人間とは守るべき存在であるからだ。

 

敵を倒すために守るべき人間を危険に突っ込ませるような命令を彼が下せる訳が無い。理想は自分一人でボスを撃破する事だが...それは流石に不可能というものだ。彼は攻撃を避ける事に関しては全プレイヤー中最巧であろうがその攻撃力は攻略組の中では最弱に等しいからである。

 

アルゴから教えられた地図をもとに、彼はボス攻略へと向かった。一人のプレイヤーとして犠牲者を一人でも少なくするために。

 

──────

 吹兎はボス攻略会議に参加したが既に前日に多くのパーティが組まれたらしい。定員が余ってるパーティがあるかどうか吹兎は探しそして...

 

「お前フキトじゃないか!」

 

知り合いと再会した。

 

 

キリト達のパーティも二名と定員割れをしていたために吹兎はそこに入れてもらう。

 

「お前、なんで昨日は来なかったんだよ」

 

「ごめん。メッセージ気づかなかった。でも大丈夫。アルゴから教えてもらったから」

 

そう言ってから吹兎はアルゴとの特訓の成果を見せるべくキリトに対して簡単なメッセージを送った。

 

「!?!?」

 

キリトは腰を抜かして驚いた。

 

「それで、もう一人は?」

 

辺りを見渡すと、今来たのかローブを被った人間がキリトの隣に立った事に気づいた。その振る舞いから女性である事に吹兎は気づいていた。

 

「僕はフキトだ。よろしく」

 

右手を差し出し、ローブを纏ったパーティメンバーと握手を交わした。

 

──────

 これから挑戦する第一層のボスはイルファング・ザ・コボルドロード。その名の通り、コボルドの王様だ。身の丈大きく実際に対面してみると巨人のようである。大虚(メノスグランデ)のような大きさはないがそれでも脅威である。

 

「俺から言うことは一つだけだ。勝とうぜ!!」

 

「「「うおおおおおおおお!!!」」」

 

ディアベルの号令と共に、ボス攻略が始まった。

 

「フキト、アスナ! 俺たちも行くぞ!」

 

が、吹兎達の敵はコボルドロードではない。ルイン・コボルド・センチネル。ボスのHPゲージが一本なくなる毎にリポップする所謂取り巻きだ。吹兎達定員割れパーティの役割とは攻略メンバーが大ボス攻略に集中できるための雑魚の掃討。より危険の多い大ボスを人間に任せる事は吹兎にしてみれば耐えられない事ではあったが、陣形を乱す方が危険と自らを納得させ、与えられた役割を全うする。

 

「セイッ!」

 

2連撃の連続技、ホリゾンタル・アークによってキリトは取り巻きを撃破。

 

「ハァッ!」

 

細剣を使うフードを被ったアスナは三連突のトライアンギュラーによって取り巻きを撃破。

 

「フンッ!」

 

アスナと同等かそれ以上の速度かつキリトと同等かそれ以上の手数で吹兎も応戦する。ソードスキルではないため二人よりやや時間はかかったがこちらも問題なく撃破に成功した。

 

「やっぱやるな、フキト」

 

「そっちこそ」

 

取り巻きは全て撃破した。ただし大ボスの進捗でリポップするので彼らの仕事はまだ終わったとは言えず、大ボス戦の様子を見届けた。

 

 

 

「攻撃隊、散開!」

 

ディアベルが立てた作戦はいたってシンプルである。大ボスの攻撃をタンクが引きつけ、その間に攻撃隊が攻撃をするというもの。必然的にタンクはダメージを負い、危険な立ち位置ではあるがポーションなどで運用している。順調にHPを減らしていき、吹兎達もまたその都度撃破した上で大ボスのHPは赤へと差し掛かる。事前情報ではこの時、ボスの武器が曲刀へと変わるはずであった。

 

「下がれ、俺が出る!」

 

大ボスのHPは残り僅か。そんな時にディアベルは単騎で特攻し始めた。周りも盛り上がったテンションのせいか誰一人その行動を疑問に思わない。

 

「いけーディアベル!」

 

「決めてくれディアベルはん!」

 

仲間達の声援を受けてディアベルは進む。

 

「(曲刀の対処は既にシミュレーションしている!)」

 

ディアベルは入念な準備をしていたからこそ、大ボスの些細な変化に気づく事ができなかった。人は自分が十全な準備を整えたと思う時、勝利を掴んだと確信した時に足元を掬われるのだ。ディアベルも攻略メンバーも誰一人、ベータテストから正式サービス開始までの間に大ボスの間で下克上が起こった事。目の前のこのボスがベータテストの時とは別個体である事を知らなかった。

 

「(...おかしい)」

 

ただ一人、吹兎だけがその異変を察知していた。大ボスはまだ武器を取っていないが、その間合いの取り方、予備動作から違和感を感じ取っていた。この世界において吹兎の持ってる最大のアドバンテージとは戦闘経験の深さである。考えるより先に足が。反射で動いた。大ボスが掴んだのは情報とは異なり、より攻撃力の高い野太刀であった。

 

「なっ!」

 

自らのシミュレーションとは異なるその様子にディアベルは頭が真っ白になり、決定的な隙が生まれた。そんな隙だらけのディアベルに対して野太刀を振り下ろされ...ディアベルは絶命する...かに思われた。

 

「間に合えぇ!!」

 

身を挺してディアベルを守った吹兎によって運命は捻じ曲げられた。

 

──────

 状況は絶望的である。レベル上昇の際のパラメーター振り分けでVITを上げてない吹兎はそのレベルに対してあまりにも脆弱すぎた。ディアベルを守る際に刀に掠った程度でHPは赤色に達していた。一撃喰らえば吹兎は即死であろう。そしてディアベルは吹兎に守られた事でHPが赤色に達してこそいないが低確率で生じる麻痺を引き当ててしまった。無防備な状態で攻撃を受ければ...こちらも即死であろう。

 

そして大ボスが武器を野太刀に持ち変えた途端、今までとは比べ物にならないほど多くの取り巻きがリポップした。彼らは倒す事にそこまでの困難さはないが撃破せずに突破を許してくれるほど無力でもない。

 

吹兎は加勢が期待できない状況において動けないディアベルを、一撃でも喰らえば即死の攻撃を捌きながら守り抜かなければならない。普通の人間であればその困難さに脱力しそうだが冬空吹兎は護廷十三隊の隊長である。数々の死線を潜ってきた彼がこの程度で音を上げる訳が無い。

 

彼はパレットにて、唯一覚えたスキル、ヘイトチェンジによってディアベルに向けられたヘイトを自身に向けさせる。本来スキルはモーションによって発動させるものであってパレット操作で発動させるプレイヤーなどほぼいない。これは扱うスキルが()()()()()()()吹兎だからこそ採れる方法であった。

 

大ボスは野太刀を再び振り下ろす。避けるだけなら難しくない。しかしその延長線上には麻痺で動けないディアベルがいる。吹兎は跳躍した。

 

野太刀の側面を刀で叩いてもその重量が重すぎて剣を動かす事は難しいだろう。ソードスキルを覚えていなければ尚更である。

 

アインクラッド。この世界は世紀の天才、茅場晶彦が自らの全てをこめて作った世界である。この世界において、現実世界で生じるあらゆる物理原則は守られている。

 

「(それならば......)」

 

「セイッ!」

 

空中で上手く身を捻り、片手剣を支点代わりにする即興での梃子の原理。何倍にも膨れ上げた自らの体重を込めた蹴りでもって大ボスの剣を動かした。そしてその力、慣性のままに吹兎は降下し...大ボスを一度斬りつける。普段よりも勢いのついたその斬撃は効いたのか、大ボスは悶絶した声を響かせる。

 

「フキト!」

 

一連の剣戟を繰り返すとようやく増援が到達する。本隊の方はまだらしいが側面から回り込んできたキリトとアスナが到着した。

 

「僕が大ボスを引きつける。その間に攻撃をしてくれ」

 

「でもあなたそのHPじゃ...」

「分かった」

 

キリトは気づいたのである。大ボスの攻撃を完全に捌ききっている吹兎が異常なだけで自分達ではいずれ攻撃を受けてしまう事。そして吹兎は攻撃を掠っただけで赤色に達した事から、彼にとって残りHP量は意味を持たない事。平時であれば一撃で死亡するような状態ならむしろ下がれと言うべきなのだが、この異常事態にキリトもどこか順応し始めたのだ。目の前の光景を見て、吹兎なら一度も攻撃を受けずに捌ききってくれるかもしれないと思ってしまった。

 

「行くぞ!」

 

キリトのその号令でキリトとアスナは大ボスの背後に大きく跳躍。吹兎はヘイトを集めるように攻撃を避けながら小刻みに攻撃を加える。一連の剣戟で大ボスを動かした結果、最早ディアベルに当たる心配はない。

 

「アスナ! スイッチ!」

 

「了解!」

 

吹兎がヘイトを集め続ける事によって二人は楽に強攻撃を当て続ける事ができた。そして...

 

パリン

 

吹兎の攻撃が残り僅かの大ボスをHPを削り取って大ボスはポリゴン片へと変わった。




パレットによる操作ソードスキルがよく分からない方はALOで空を飛ぶために補助コントローラーを使用しなければ空を飛べないというのと同じものだと考えて下さい。

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