仮面ライダーディケイド対ジャグラスジャグラーwithゼットさん   作:裕ーKI

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一:無幻魔人、破壊者に出会う!

 とある荒野に1人の男が立っていた。

 

 この世界には文明も無ければ人間もいない。

 

 乾いた大地と岩肌だけがどこまでも広がる殺風景な景色。

 

 ここは数多の世界を隔てる壁と壁の隙間に存在する、名も無き狭間の世界。

 

 別の世界の地球で、“ヘビクラ・ショウタ”という防衛組織の隊長を演じ、そしてその役目を全うした男は、ある日突然、眼前に現れた灰色のオーロラに導かれ、この狭間の世界に足を踏み入れた。

 

 男の名は、ジャグラスジャグラー。

 

 1度は闇に堕ちたものの、かけがえのない経験と仲間を得て、自分なりの新たな光を見出したジャグラーは、ここ暫くは当てのない旅を独り気ままに続けていた。

 

 そんな時に、偶然にもこの世界を訪れることになったのだが。

 

 

 

「ほう……。随分つまらない世界に来てしまったと思ったが、なんだ、楽しませてくれそうな奴らもいるじゃないか」

 

 

 

 今、ジャグラーの眼前には複数の怪物が立ち塞がっていた。

 

 数は6体。いずれも等身大サイズであり、どうやら異なる2つの種族が徒党を組んでいるようだった。

 

 1つは、鋭い牙を生やした獰猛な顔つきの生物、高次元捕食獣レッサーボガール。

 

 そしてもう1つは、一見愛嬌があるようにも見える丸い体形の生物、初級インベス。

 

 それぞれ3体ずつ。合計6体の怪物たちは、目の前のジャグラーを獲物と捉え、今まさに襲い掛かろうとしていた。

 

 

 

「面白い。暇つぶしに相手してやる。来な!」

 

 

 

 ジャグラーはたじろぐことなくそう言うと、愛用の刀――蛇心剣を握りしめて不敵に構えた。

 

 すると6体の怪物たちは、威嚇するように唸り声を上げながら、一斉に大地を蹴ってジャグラーに襲い掛かった。

 

 上等だと言わんばかりに、ニヤリと笑みを浮かべたジャグラーの体から、黒いオーラが吹き上がる。

 

 彼にはもう1つの姿がある。

 

 戦闘に特化した魔人の姿。

 

 しかしその姿を晒すよりも早く、ジャグラーに迫る怪物たちは全滅することになる。

 

 何故なら。

 

 

 

『ATTACK RIDE! CLOCK UP!』

 

 

 

 その瞬間、唐突に聞こえてきた謎の電子音声と共に、6体の怪物たちは何もできずに爆発四散した。

 

 狙いを定めたジャグラーに、指先ひとつ触れることもなく。

 

 それどころか、悲鳴を上げる有余すらも与えられずに。

 

 レッサーボガールも初級インベスも、謎の疾風に切り裂かれ消滅した。

 

 文字通りそれは、一瞬の出来事だった。

 

 

 

「今のは……」

 

 

 

 突然の出来事に思わず目を見開いたジャグラーは、刀を下ろし、纏った黒いオーラを引っ込めながら辺りを見回した。

 

 再び殺風景となった景色に視線を流し、怪物たちを仕留めた“何か”の姿を捜しだす。

 

 すると、不意に背後から気配を感じたジャグラーは、反射的に振り返った。

 

 次の瞬間、視界に飛び込んできたのは、カブトムシを連想させる赤い一本角を生やした謎の戦士の姿だった。

 

 

 

「何者だ、お前……」

 

 

 

 ジャグラーが訊ねると、一本角の戦士の姿にモザイクが掛かり、一瞬だけピンク――いや、マゼンタ色の別の姿が見えたかと思うと、それすらもすぐに残像となって消え、今度は1人の青年が現れた。

 

 首に2眼のトイカメラをぶら下げたスーツ姿の青年は、ジャグラーを見据えながら口を開いた。

 

 

 

「危ないところだったな。大丈夫か?」

 

 

 

 若干低めのテンションで言いながら、両手をスーツのポケットに入れてクールな佇まいを見せる青年。

 

 彼の名は門矢士。

 

 あらゆる世界を渡り歩く旅人だが、同時に世界を滅ぼす破壊者とも呼ばれている、謎多き仮面ライダー。

 

 時の王者となる運命を背負ったごく普通の高校生、常磐ソウゴ――仮面ライダージオウの物語を見届けた士は、ライバルである海東大樹に別れを告げ、ジオウの世界を後にした。

 

 その後、様々な世界を巡っているうちに、偶然辿り着いたのがこの狭間の世界だった。

 

 カメラマンとしての一面を持つ士は、この未知の世界に戸惑う様子もなく、まるで観光でもしているかのように、周りの風景を撮影しながら気ままに散策していた。

 

 そんな時、偶然目に留まったのが怪物たちに襲われるジャグラーの姿だった。

 

 

 

「なんだ、助けてもらって感謝……って顔じゃなさそうだな。寧ろ、余計なことをされてご立腹って感じか?」

 

 

 眼前に立つジャグラーの顔色を窺い、その表情の意味を読み取った士が、確認するように問いかける。

 

 言うまでもなく、ジャグラーの顔は不満げだった。

 

 

 

「まあな。せっかくの獲物を横取りされて、不機嫌にならない奴もいないだろ?」

 

 

 

 わざとらしく見せつけるように、握り締めた蛇心剣を肩に乗せながらジャグラーは言葉を返した。

 

 

 

「なるほど、大体わかった。確かに余計なお世話だったみたいだな」

 

 

 

 ジャグラーの刀を見て、士は納得した。

 

 手助けせずとも、こいつには自分の身を守る力があるのだと。

 

 

 

「それで? お前は一体何者だ? 何処かの星の宇宙人か? それともまた、光の巨人って奴か?」

 

 刀の切っ先を士に向けながら、ジャグラーは先刻と同じ疑問を呈した。

 

 しかし、士はジャグラーの予想を素っ気なく否定する。

 

 

 

「いや、どちらでもない。俺はただの破壊者だ」

 

「破壊者?」

 

「ああ、全てを滅ぼす……通りすがりの仮面ライダーだ……」

 

「ふん、通りすがりね……。にしては随分と物騒だな……。仮面ライダーってのはよくわからんが、そういう気取った奴なら、俺も1人知ってるぜ。まあ、あいつの場合は風来坊だが、同じようなもんだろ……。それで、通りすがりのナントカとやら」

 

「なんだ?」

 

「あんたは人助けのつもりで怪物どもを瞬殺したようだが、矛先を失った俺の昂りはどうしてくれる?」

 

「昂り? なんのことだ?」

 

「おいおい、惚けんなよ。わかってんだろ? 引き抜いた刀をどこへ向ければいいかって訊いているんだよ」

 

 

 

 刀身の向きを変え、刃に反射した光を士の顔に当てながらジャグラーは言い放つ。

 

 その言い方も仕草も、明らかに挑発しているようにしか見えない。

 

 彼の全身から醸し出される静かな殺気を感じ取った士は、眩しそうに光を手で遮りながらも、その意味を察するように軽く頷いた。

 

 

 

「なるほど。つまりお前は、代わりの喧嘩相手をご所望って訳か。で、それを俺がやれと?」

 

「当然だろう。人のおもちゃを横取りしたんだ、お前にはその責任がある。そうは思わないか?」

 

 

 

 ジャグラーの言葉に、士はやれやれと溜息をつきながらも、その要望を承諾するようにまっすぐとジャグラーの顔を見据えた。

 

 

 

「……いいだろう。こっちも気分転換だ。お前の付き合いに乗ってやる。だが、やるからには命懸けになるぜ?」

 

「当然! そうでなくちゃ面白くない! 仮面ライダーの力とやら、見せてもらうぞ!」

 

 

 

 ジャグラーは改めて全身から黒いオーラを放つと、胸の赤い三日月型の傷が印象的な、刺々しい魔人態へと変貌した。

 

 

 

「上等だ! 後で吠え面かくなよ!」

 

 

 士は左腰に携行されたライドブッカーからカードを1枚取り出し、前面に突き出した。

 

 そして。

 

 

 

「変身!」

 

 

 

 力強い叫び声と同時に翻したカードを、腰に装着した変身ベルト――ネオディケイドライバーに装填し、両手でマゼンタ色のバックルを閉じた。

 

 すると。

 

 

 

『KAMEN RIDE! DECADE!』

 

 

 

 現れた無数の残像が一斉に士に重なり、その姿を黒とマゼンタを基調とした戦士のものへと変化させた。

 

 仮面ライダーディケイド(ネオver.)。

 

 自身を合わせた総勢20人もの仮面ライダーの力を内包している、士のもう1つの姿。

 

 バーコードを模した顔をジャグラーに向け、緑の複眼でその姿を捉えたディケイドは、気だるげに両手を払い、戦闘態勢に入った。

 

 何もない荒野の大地を蹴り、2人の戦士は同時に駆けだした。

 

 最初の一撃はジャグラーからだった。

 

 シンプルな動作で真っ直ぐと蛇心剣を振り下ろす。

 

 ディケイドは体を僅かに横に逸らし、難なく斬撃をかわした。

 

 そしてすかさず繰り出す鋭い拳。

 

 ディケイドのパンチはジャグラーの顔面を狙ったものだった。

 

 しかし、ディケイドの動きを読んでいたかのように、ジャグラーもまた、首を傾げて相手の拳を紙一重で回避した。

 

 そこからは激しい攻防の連続だった。

 

 ジャグラーの躊躇のない素早い連続斬り。

 

 ディケイドはそれをいなし、受け止め、掻い潜り、負けじと拳や蹴りを放つ。

 

 左右交互にパンチを打ち込み、ローからハイ、さらに回し蹴りと、流れるように軽やかなキックの嵐をお見舞いする。

 

 しかしジャグラーも無駄のない動きで攻撃と防御を繰り返し、自分のペースを保ち続けた。

 

 やがて、ようやく命中した一撃をきっかけに戦いの流れは変わる。

 

 先に攻撃をヒットさせたのもジャグラーだった。

 

 蛇心剣の柄でディケイドの拳を弾いたジャグラーは、その瞬間にできた僅かな隙を狙って、死角から刀身を振り上げた。

 

 予想外の動きとスピードに対応が間に合わなかったディケイドは、その一撃を諸に受け、胸の装甲を切り裂かれながら背後に大きくよろめいてしまった。

 

 

 

「どうした! もう終わりか!」

 

 

 

 すかさず追い打ちを仕掛けようと、駆けるジャグラー。

 

 

 

「どうかな!」

 

 

 

 叫んだディケイドは、素早く取り出したカードをネオディケイドライバーに装填した。

 

 

 

『ATTACK RIDE! BLAST!』

 

 

 

 左腰から引き抜いたライドブッカーをガンモードに切り替え、その銃口を迫るジャグラーに向ける。

 

 次の瞬間、複数に分身した銃口から連射された光弾の弾幕が、ジャグラーの足を止めた。

 

 凄まじい剣捌きで弾幕を弾き、直撃は免れたものの、かすめたジャグラーの手足には焦げ跡が残った。

 

 

 

『ATTACK RIDE! SLASH!』

 

 

 

 動きが止まったジャグラー目掛けて、今度はディケイドが走る。

 

 ライドブッカーをソードモードに変え、先刻のジャグラーと同じように、真っ直ぐと刃を振り下ろした。

 

 ディケイドの一太刀は、カードの力で切れ味を強化した重い斬撃だった。

 

 しかしそれすらも、ジャグラーは蛇心剣の刀身で軽々と受け止めて見せた。

 

 

 

「へえ、やるねぇ~。そういえばお前、最初に見せた姿とは違うな。ひょっとして、そっちが本来の姿なのか?」

 

 

 

 刃と刃がぶつかり、ギリギリと金属が擦れ合うような音が響き渡る中、ジャグラーは先刻見た赤い1本角の姿を思い出した。

 ジャグラーが最初に見たのは、ディケイドが二段変身した仮面ライダーカブトの姿だった。最初の姿と今のマゼンタ色の姿が全く異なることに疑問を感じたジャグラーは、刀身の向こう側にいるディケイドに直接問いかけた。

 

 するとディケイドは、なんとか斬撃を押し切ろうと両腕に力を込めながら、ぶっきらぼうに答えた。

 

 

 

「まあな。こいつが俺の、破壊者としての姿みたいなもんだ……。それにしても……、こんな状況でも余裕でお喋りかよ……。お前の方こそ何者だ!?」

 

 

 

 鍔迫り合いの中、今度はディケイドがジャグラーに訊ねた。

 

 

 

「あ? ああ、俺もお前と似たようなもんだ! 通りすがったり、風来坊を真似てみたり……。破壊者って言葉も……まあ、当てはまっちゃあいるしな」

 

「どうやらお前も……、色々あったみたいだな……」

 

「そういうお前もな!」

 

 

 

 刃と刃の力勝負に飽きたジャグラーは、がら空きだったディケイドの腹に蹴りを入れた。

 

 

 

「ぐっ!?」

 

 

 

 何の前触れもなく突き飛ばされたディケイドは、蹴られた腹を抑えながら背後によろめいた。

 

 その隙にジャグラーは、蛇心剣の刀身にエネルギーを集中させる。

 

 でかい一撃が来る。すぐにそう察したディケイドは、自らも対抗するべく必殺のカードを手に取った。

 

 

 

『FINAL ATTACK RIDE! DE DE DE DECADE!』

 

 

 

 ベルトから鳴り響く電子音声を合図に、ディケイドは大地を蹴って空高く跳び上がる。右足を前面に突き出した姿勢のまま、空中に一列に並んだ無数のカード型のオーラを潜り抜けていく。

 

 

 

「てぃぁあああああ!!」

 

 

 

 

 ディケイド渾身の跳び蹴り、ディメンションキックがジャグラーに迫る。

 

 しかしジャグラーは臆することなく、闇の力を纏った刀身を一振りした。

 

 

 

「蛇心剣……新月斬波!!」

 

 

 

放たれた三日月状の赤黒い光刃が、すぐ間近まで迫っていたディケイドの右足に直撃した。

 

 2つの強力な力が正面からぶつかり合った瞬間、凄まじい爆発が起きて2人を同時に吹き飛ばした。

 

 砂埃を巻き上げながら、地面を転がるディケイドとジャグラー。

 

 

 

「くっそ……。なんて技だ……。右足を斬り飛ばされたかと思ったぞ……」

 

 

 咄嗟に上半身を起こしたディケイドは、斬撃を諸に受けた自身の右足の無事を確認しながら不満を垂れる。

 

 

 

「いやいやぁ、こっちも驚いたぜ……。まさか今の一撃を耐えるとはなぁ……」

 

 

 一方のジャグラーも、ふらつく体を杖にした蛇心剣で支えながら、なんとか立ち上がっていた。

 その様を見据えながら、ディケイドは腰を上げる。

 

 

 

「お前……、やはり只者じゃないな……」

 

「ふん、そういうお前こそな……」

 

 

 

 ジャグラーはどことなく嬉しそうな口調で言葉を返すと、雄々しく蛇心剣を構え直した。

 

 

 

「久しぶりに心の底から楽しめる戦いに巡り会えたんだ……。これで終わりなんて、つまんねえこと言うなよ?」

 

 

 

 まだまだやる気だと言わんばかりに切っ先を向けるジャグラーの姿に、ディケイドはフッと軽く笑みを浮かべた。

 

 

 

「……良いぜ。せっかく面白くなってきたんだ。こうなったら俺も、とことんまで付き合ってやるよ!」

 

「そうこなくっちゃな!」

 

 

 

 仕切り直すように向き合ったディケイドとジャグラーは、再び剣を握りしめ、再開した戦いに没頭していく。

 

 やがてそんな2人の前に、新たな来訪者が現れた。

 

 ジャグラーをこの狭間の世界に引き込んだ灰色のオーロラと同じものが、戦場の片隅に現れ、1人の青年を招き入れたのだ。

 

 しかし、戦いに夢中になっているディケイドとジャグラーは、来訪者の存在に気づかない。

 

 すると灰色のカーテンから現れた青年が、突然驚くように大声で叫んだ。

 

 

 

「あ! トゲトゲ星人! ……じゃなくて、隊長!」

 

 

 

 その一声に、ディケイドとジャグラーの戦いの手が一瞬緩んだ。

 

 とくにジャグラーは、その聞き覚えのある声がする方に視線を向けた途端、思わず目を見開いた。

 

 

 

「なっ!? ハルキ!? なんでお前が……」

 

 

 

 ディケイドとジャグラーの前に忽然と現れたのは、つなぎのようなコスチュームを身に纏った体育会系の青年――ナツカワ・ハルキだった。

 

 

 

 




別作品の執筆の合間に、気まぐれと思いつきで書いたお話。
故に色々と雑ですが、試しに投稿してみました。

一応、様子見ですが、状況次第で抹消するかも……。
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