仮面ライダーディケイド対ジャグラスジャグラーwithゼットさん 作:裕ーKI
ウルトラマンゼット・アルファエッジが、俊敏で鋭い拳法技を駆使して怪獣たちに立ち向かっている一方、スピードで相手を翻弄しているのはディケイドも同じだった。
『ATTACK RIDE! KOUSOKU KA!』
仮面ライダーエグゼイドの力を身に纏ったディケイドエグゼイドは、元来のエグゼイドが使用するエナジーアイテムと同種の力を持ったカードを発動させた。
今、ディケイドエグゼイドがネオディケイドライバーに装填したのは、エナジーアイテム・高速化を再現したカード。その力を肉体に宿し、ディケイドエグゼイドは目にも留まらぬ高速移動でジャグラーを追い詰める。
「ちっ! ちょこまかと鬱陶しい奴だな!」
ジャグラーは持ち前の超人的な反射神経を行使し、ディケイドエグゼイドのスピードになんとか喰らいついて防御に徹した。
周囲を行き交うディケイドエグゼイドの気配を、感覚を研ぎ澄ませて察知し、両手の蛇心剣とべリアロクで紙一重に攻撃を弾き続けた。
しかし体力の消耗もあってか、ジャグラーの反応にも少しずつ遅れが生じ始める。
防ぎ損ねた攻撃が何度か身体を掠め、ジャグラーは体勢を崩しかけた。
その瞬間をチャンスと見たディケイドエグゼイドは、さらにカードを取り出し装填する。
『ATTACK RIDE! MASSURU KA!』
エナジーアイテム・マッスル化と同様の効果を受け、攻撃力を大幅にアップさせたディケイドエグゼイドは、ガシャコンブレイカーをソードモードに変えて、渾身の力を込めた斬撃をジャグラーに浴びせた。
「ぐっ……」
防御が間に合わなかったジャグラーは胴体を斬り裂かれ、HITのエフェクトが飛び出ると同時に背後に吹き飛んだ。
「ぅうう……。今のは効いたぜ……。お返しだ!」
しかし怯むことなくすぐに立ち上がると、空中のチョコブロックの上に舞い戻ったディケイドエグゼイドに向けて、逆手持ちのべリアロクを掲げた。
ジャグラーの意図を阿吽の呼吸で読み取ったべリアロクは、その思惑に応えるかのように力強く叫んだ。
「デスシウムファング!」
次の瞬間、べリアロクから放たれた凶悪な漆黒の顔が、ディケイドエグゼイドを嚙み砕こうと大きく口を開いた。
「なんだ、随分と悪役めいた技だな……!」
迫りくるべリアロクの巨大な顔の圧力に呆気にとられつつも、ディケイドエグゼイドは咄嗟にカードを引き抜き、ネオディケイドライバーに投げ入れた。
『ATTACK RIDE! KOUTETSU KA!』
エナジーアイテム・鋼鉄化と同じ効果が発動。ディケイドエグゼイドは自身の体を硬化させ、防御の姿勢を取った。
ところが。
「ぐわぁあああ……」
べリアロクが放った一撃は想像以上に強力だった。
ディケイドエグゼイドに牙を立てた瞬間、漆黒の顔は閃光を散らしながら炸裂。刹那に飛散した轟音と爆煙が、ディケイドエグゼイドの姿を覆い隠した。
爆発の中で地面を転がるディケイドエグゼイドの姿が、元のディケイドへと戻ってしまった。
二段変身を強制的に解除させるほどの威力。それほどまでに、べリアロクの力は凄まじい。しかしそうであっても、ディケイドは負けじと動きを止めなかった。
舞い上がる砂塵の中で立ち上がったディケイドは、ジャグラーの追撃が来るよりも早く、次なるカードを引き抜いた。
『FORM RIDE! BUILD! HAWK GATLING!』
カードをネオディケイドライバーに装填した瞬間、ディケイドは異なる2つの力を実験のように組み合わせながら戦う戦士――仮面ライダービルドのベストマッチフォームの1つ、ホークガトリングフォームへと姿を変えた。
背面に装備されたタカの両翼を大きく展開したディケイドビルド・ホークガトリングフォームは、周囲を舞う砂塵や爆煙を羽風で吹き飛ばしながら、ジャグラーの手が届かない空に向かって真っ直ぐと飛び上がった。
機関銃型の専用武器――ホークガトリンガ―を構えたディケイドビルドは、地上に立つジャグラーの周りを旋回するように飛翔しながら、弾丸の雨を連射した。
前後左右から次々と降り注ぐ夥しい数の弾丸に、さすがのジャグラーも苦笑を浮かべる。
「こいつを捌き切るのは……、俺でも骨が折れるぜ……」
回避行動を取りつつ、いかに蛇心剣とべリアロクを駆使しようとも、全ての弾丸を防ぐことは不可能に等しかった。
「さてどうするか」と、両手の刃をフル稼働させながら策を講じるジャグラー。
するとべリアロクが、そんなジャグラーに対抗策を授けた。
「おい! 奴に狙いを定めろ! 俺様が奴の動きを止めてやる!」
「できるのか?」
「造作もない! 俺様を誰だと思っている!」
「いいだろう……。ならやってみせろよ!」
そう言うとジャグラーは、べリアロクの指示通りにディケイドビルドの隙を窺った。
ディケイドビルドは空中を縦横無尽に飛び回り、弾幕を張り続けている。
降り注ぐ弾丸の雨を掻い潜りながら、ジャグラーは目を凝らしてその動きを観察し、軌道の流れを見極めた。
そして、数秒先のディケイドビルドの位置を予測したジャグラーは、べリアロクを握る手に力を込めて構えると、そのタイミングを狙って切っ先を地面に突き刺した。
次の瞬間、べリアロクは叫んだ。
「デスシウムクロー!」
地中にめり込んだ切っ先から放出された漆黒の波動が、巨大な爪となって地面を突き破り現れた。
そこは空を飛行するディケイドビルドの真下。上空からジャグラーを狙うディケイドビルドにとっては、まさに死角となる位置だった。
「マジか!?」
気づいた時には遅かった。
地面から生えるように出現した、巨大な黒き爪に鷲掴みにされたディケイドビルドは、空中で身動きが取れなくなってしまった。
その様はまるで、捕獲された小鳥のよう。
そんなディケイドビルドに向かって、ジャグラーは躊躇なく蛇心剣を振り下ろした。
「もらった! 新月斬波!」
「がはぁっ……」
放たれた赤黒い斬撃が、ディケイドビルドを吹き飛ばした。
ジャグラーの強力な一撃を諸に浴び、大ダメージを負ったディケイドビルドは、再び基本形態に戻りながら地面に落下した。
「どうやら俺の勝ちのようだな! これでとどめだ!」
勝利を確信したジャグラーが、べリアロクを順手に持ち替えた。
「デスシウムスラッシュ!」
叫ぶべリアロクの刀身にエネルギーが集中し、長大な光の刀身へと変わる。
それを振り上げたジャグラーは、ディケイドに向けて渾身の一撃を放った。
闇の一閃が今、ディケイドの首を捉え、そして躊躇なく刎ね――。
いや、そうではない。
そうはならなかった。
次の瞬間、べリアロクが斬ったのはディケイドの首とは違う、全く別のものだった。
ジャグラーがべリアロクを振るう直前、空から無数の何かが落ちてきた。
それは大量の岩であり、その様はまるで噴石のような光景だったが、もちろんこれは自然現象などではない。
無数に降り注ぐ岩石の正体を、ジャグラーは一足先に気づいていた。
その正体とは、言うなれば傍らで繰り広げられている、ウルトラマンゼットと怪獣たちの戦いの余波。
ボガールモンスが発射した光線をゼットが回避したことで、光線が近くにあった岩山に着弾し爆発。吹き飛んだ岩山の破片の一部が、ディケイドの頭上に向かって落ちてきたのだ。
ジャグラーのデスシウムスラッシュは、ダメージの影響で動けないディケイドに迫る無数の岩石を、一瞬にして斬り飛ばした。
戦いの最中でありながら、
戦況は優勢でありながら、
そして、敵同士でありながら、
ジャグラーは勝利の瞬間を掴み取るよりも、ディケイドを危機から救い出すことを優先したのだ。
「おまえ……」
勝利を目前にしながらも、予想外の行動を見せたジャグラーに、ディケイドは驚きの声を上げた。
「一番いいところだってのに、岩に潰されて御陀仏……なんて、マヌケな死に方されちゃあ堪ったもんじゃねえからな」
地面に膝をつくディケイドを見据えながら、ジャグラーは振り抜いたべリアロクを太々しく肩に乗せた。
「なんだ、空から降ってきた岩に、俺が気づいていないとでも思ったのか?」
助けられたことに感謝の言葉を述べるどころか、不愛想に反論するディケイドの姿を改めて凝視して、ジャグラーはディケイドの態度の意味を理解した。
ディケイドの手には、いつの間にかガンモードのライドブッカーが握られていた。
つまり、ディケイドは最初から岩石の接近を感知し、ジャグラーが手助けせずとも自力で窮地を脱するつもりだったのだ。
「なるほど。今度は俺の方が、余計なことをしちまったようだな……」
そう言って、フッと鼻で笑うジャグラーに、ディケイドは立ち上がり、両手を払いながら言葉を返す。
「そんなところだ。ま、これでお互い様だけどな。……それで? まだ続けるか?」
「そうしたいのは山々だが、さっきから随分と外野が騒がしくてな」
ジャグラーは傍らで怪獣たちの相手を続けるウルトラマンゼットに目を向けると、彼らの耳に届くように大声で叫んだ。
「おい! ハルキ! 戦う時は周りには気をつけろって前にも言ったろ!」
「お、押忍! すみません! 隊長!」
ストレイジの隊長時代を想起させるジャグラーの発言に、インナースペース内のハルキが思わずピンと背筋を伸ばした。
「ったく……。しかし思ったよりも随分と苦戦しているようだな、あいつら……」
「俺様が助力を放棄したからな」
「ならあいつらのピンチはお前の責任だな、べリアロク」
「馬鹿言え。半分は俺様を誘った貴様の責任だろうが。大体、あの程度の敵に苦戦するのは、奴らがまだまだ未熟なだけだ」
ゼットと怪獣たちの戦いの様子を眺めながら、ジャグラーとべリアロクが口論していると、脇からディケイドが口を挟んだ。
「あのでかい連中が気掛かりで、こっちの戦いに集中できないってところか?」
「気掛かり? ただ目障りなだけだ」
「ふん、どっちでもいい。とにかく、あいつらの劣勢をなんとかできればいいんだろ? さっきの礼だ。ちょっくらあいつらの助太刀に行ってやるよ!」
「助太刀って、この体格差でか? お前、巨人にもなれるのか?」
「案外、何でもできるんだぜ、俺は。まあ見てな!」
ジャグラーにそう言うと、ディケイドはライドブッカーから1枚のカードを取り出した。
「お前……、実はまだまだ手の内を隠してるだろ? 今の戦いも、かなり手を抜いていたんじゃないのか?」
「さあ? どうだろうな……。だが、さっきの攻撃は結構効いたぜ、マジで……」
「はっ、冗談だろ?」
「本当さ。おかげで昼間食ったポトフ、吐くかと思ったぜ!」
仮面の下で、ジャグラーに向かって肩越しに微笑を浮かべたディケイドは、手にしたカードをネオディケイドライバーに挿入した。
『FINAL FORM RIDE! DE DE DE DECADE!』
その瞬間、ディケイドは自らの体を巨大なネオディケイドライバーへと変形させ、空へと舞い上がっていった。
M78流・竜巻閃光斬やギャラクシーバーストといった強力な技をもってしても、怪獣たちを押し切れず、苦戦を強いられていたゼット。
そんなゼットの元に駆けつけたディケイドのファイナルフォームライド形態――ジャンボネオディケイドライバーは、半ば強制的にゼットの腰に巻きつき取り付いた。
すると、ディケイドの力がゼットの肉体に流れ込み、彼を新たな形態へと変化させた。
ウルトラマンと仮面ライダー。
異なる2人の戦士の力が混ざり合い、ここに今、未知なるゼットが誕生する。