仮面ライダーディケイド対ジャグラスジャグラーwithゼットさん 作:裕ーKI
かつて、ファイナルフォームライドしたディケイドは、巨大な仮面ライダー――仮面ライダーJと一体化し、自身も巨人と化したことがあった。
その時は、仮面ライダーディケイド・コンプリートフォームジャンボフォーメーションとなり、大ショッカーの幹部であるキングダークを撃破した。
しかし今回は、Jとの融合の時とはまた違った変化が起きていた。
ジャンボネオディケイドライバーを身につけたウルトラマンゼットの体色が、ディケイドを象徴するマゼンタ色へと変わり、頭部にもバーコードを模した無数の黒いラインが付加された。
まるでディケイドと1つになったかのような、本来あり得るはずのない姿。
当然ながら、自身の肉体の変化にゼットは戸惑いを隠せなかった。
「ちょ!? なんだこれ!? どうなってんの!? どうなりましたの、俺!?」
怪獣たちの眼前であることもお構いなしに、ジタバタと狼狽えまくるゼット。
「ゼットさん! これって一体……」
同じくインナースペース内のハルキも、初めての事態に困惑の表情を浮かべていた。
するとその背後から、1人の青年が歩み寄ってきた。
気配を感じ、ハルキが振り返ると、そこにいたのは先刻までディケイドとしてジャグラーと戦っていた男――門矢士だった。
ディケイドとしての姿でしか顔を合わせていないため、ハルキとゼットにとっては、士は初対面の人物。その上、平然とインナースペースに侵入してきたこともあって、2人は士の存在を警戒せずにはいられなかった。
しかし、表情を強張らせるハルキとは裏腹に、士は普段通りの尊大な態度だった。
「ふ~ん。ここがウルトラマンの中かぁ。妙に空気が澄んでるが、随分と殺風景なんだな」
「誰っすかあんた……。どうやってここに……」
警戒するあまり、反射的に空手の構えを取るハルキに対し、士は冷静な口調で言葉を返した。
「落ち着け。俺はただの……通りすがりの仮面ライダーだ」
「仮面……ライダー? なんすか、それ……」
「地上にいるお前の知り合い、あいつと戦っていた奴がいただろ? それが俺だ」
「隊長と戦っていた奴って……、あのピンク色の宇宙人?」
「だからピンクじゃなくて……ああ、もうそれはいい! っていうか誰が宇宙人だ! 俺はれっきとした人間だ! 破壊者ではあるがな……」
「え? はかい? って、今なんて?」
「何でもない、気にするな。……それとな、一応俺はお前らを手伝いに来たんだ。さっさと怪獣どもを倒さないと、お前の言う隊長とやらがご立腹だぞ?」
「いや、そんなこと言われても……、こいつら皆、思った以上に強敵で……」
唐突にやって来た士の言葉に、ハルキが困り果てていると、インナースペース内に慌てふためくゼットの叫び声が木霊した。
「ちょっとちょっと! それよりこの体だって! 俺の体、どうなっちゃってるの!?」
そんな囂しい声に向かって士は訊ねる。
「お前確か、他のウルトラマンの力を借りて姿を変えられるんだろ?」
「なんでそのことを!? ホントに何者でございますか、あなた……」
「俺も似たようなもんだから大体わかる。それより聞け。今お前に、俺の力を分け与えてやった。俺の力――ディケイドの力をな!」
「でぃけいどの力? ……ってなんどすえ?」
「お前、喋り方変だな……。まあいい。お前に宿したのは、すなわち……仮面ライダーの力だ。ウルトラマンの力と仮面ライダーの力、その2つの力を上手く使って、さっさと目の前の怪獣どもを倒せ!」
「え、ちょ……ちょっと待って! っていうとなに? 今の俺って仮面ライダーなの!? ウルトラマンじゃないの!?」
「そうじゃない! お前がいつも他のウルトラマンの力を借りているのと同じ理屈だ! 俺の力を借りて、お前が新しい姿に変身したってだけの話だ。お前はお前、ウルトラマンゼットのままだ!」
と、士が状況を説明していると、横からハルキまでもが口を出してきた。
「でも……、その“仮面ライダーの力”ってのを身につけているなら、それはもう……本来のウルトラマンじゃないっすよね? ウルトラマンと仮面ライダーの力を持った、全く別の戦士ってことになるんじゃ……」
「お前までややこしいことを言うな! 何でもいいから、さっさと戦え!」
面倒くさそうに声を荒げる士。
しかしどうしても納得できないゼットが、それ以上に声のトーンを上げる。
「何でも良くない! 俺にもウルトラマンとしての誇りがだな――」
3人がそんな口論をしている間にも、怪獣たちは臨戦態勢を整えようとしている。一斉攻撃が繰り出されるのも時間の問題だった。
「名前! せめて名前だけでもハッキリさせて! じゃないとゼロ師匠に語るときに困りますから!」
「ウルトラマンと仮面ライダーだから……、『ウルトラ仮面』? いや、『仮面トラマン』? ……あ、『ライダーマン』とか!」
ハルキがいくつか候補を上げていると、その1つに対して途端に士が反論した。具体的には、言うまでもなく“ライダーマン”というワードに対してだが。
「却下だ! それだと俺が叱られる。もっと単純に……『ウルトライダー』とかでいいだろ! 『ウルトライダー
「なんか長ったらしいし、カッコ悪いでございます……」
士の提案に不満の声を上げつつも、ゼットは渋々といった様子で構えを取った。
「……わかりましたよ。とりあえず今は、コイツらをぶっ飛ばすことに集中するか。――行くぜ、ハルキ! それとえっと……ディケイド!」
こうして、2つのヒーローの力を複合した新たな巨人が誕生した。
ウルトラマンでなければ仮面ライダーでもない。
もしくは、ウルトラマンでもあり仮面ライダーでもある。
本来なら、交わることなど決して許されない禁断の姿。
その名も、ウルトライダー
・・・
3体の怪獣たちに包囲されながらも生まれた新たな戦士。
その様子を、戦いの影響が届かない少し離れた場所から、静かに観察している1人の男がいた。
チューリップハットと茶色いロングコートに身を包み、目元に掛けた眼鏡をキラリと光らせている、怪しげな雰囲気を纏った中年の男。
彼は岩山の上に佇みながら、怪獣たちと対峙する巨人に向かって呟いた。
誰にも気づかれない場所で、誰にも届かない声でひっそりと。
「おのれディケイド……。貴様のせいで、また1つ垣根が破壊された……」
・・・
ハルキの腰に携行されているゼットホルダーの蓋が勝手に開き、中に収納されていた全てのウルトラメダルが外に飛び出した。
インナースペースの中で宙を舞った20枚のウルトラメダルは、突然その形をカード状に変えて、士の左腰に携行されているライドブッカーの中へと吸い込まれていった。
「あ! 俺のメダルが!」
当然のように戸惑うハルキだったが、士は相変わらず平然とした態度で口を開いた。
「心配するな。少しの間借りるだけだ」
「借りるだけって……」
「いいから戦いに集中しろ! 来るぞ!」
士の言うとおり、怪獣たちは容赦なく攻撃を仕掛けてきた。
コダイゴンジアザーが釣り竿を振るい、パワードドラコが鎌を投擲。同時にボガールモンスが首の角から破壊光線を発射した。
「キィアッ!」
ウルトラマンゼット改め、ウルトライダーDゼットは大地を蹴って大きく跳躍。3体がかりの攻撃を回避すると、華麗に宙を舞ってコダイゴンジアザーの背後に着地した。
そしてすかさず回し蹴りを打ち込み、振り返ろうとするコダイゴンジアザーを蹴り飛ばした。
頑丈な体にダメージは通らないが、体勢を崩させることぐらいならばできる。
敵がもたついている間に、すぐさま次なる行動を起こす必要があるが、しかしそうしたのは、本体であるゼットでもなければ、同化しているハルキでもない。
誰よりも先に動いたのは、インナースペース内にいるハルキの横に佇んでいた門矢士だった。
士は徐にライドブッカーを開き、1枚のカードを取り出した。
それは、普段士がディケイドとして使用しているカードとは少し違う。
仮面ライダーの力が宿っている“ライダーカード”ではなく、士が引いたそれは、ウルトラ戦士の姿が描かれた、まさに“ウルトラカード”とでも言うべきものだった。
「お前らに面白い戦い方をさせてやる!」
士は横に立つハルキとゼットの意識に向けてそう言うと、手にしたウルトラカードをネオディケイドライバーに装填した。
『ULTRIDE! ULTRAMAN!』
ネオディケイドライバーから聞き慣れない電子音声が鳴り響いた次の瞬間、Dゼットの姿が赤と銀を基調とした栄光なる巨人――初代ウルトラマンへと変化した。
ウルトラカードはハルキが所持していたウルトラメダルが形を変えたもの。
そのカードから伝わる力に従うように、初代ウルトラマンの姿となったDゼットは、反射的に拳を前に突き出した。
「ウルトラアタック光線!」
Dゼットが若々しいゼットの声で無意識に叫ぶと、突き出した腕から螺旋状の光線が放たれた。
凄まじい破壊力を持った螺旋状の光線は、真っ直ぐと伸びてコダイゴンジアザーに直撃。先刻までの苦戦が嘘のように、たった1撃でその堅固な胴体に複数の亀裂を走らせた。
「おお! ウルトラすげえ威力! さすがマン兄さんの力! ……って……えっ? ちょっと待って……。まさか俺、俺が今……マン兄さんになってるぅ!?」
Dゼット――ゼットが自身の容姿の異変に気づいたのは、技を撃った後のことだった。
「なんで!? どゆこと!? なんで俺がマン兄さんの見た目に!?」
「いちいち喚くな! 今は説明してる暇はない!」
「ゼットさん! いつも通りで良いんすよ! いつも通り、先輩方の力に身を委ねて、自然に体を動かせばいいんです!」
「ハルキお前……、受け入れるの早くない……? ……仕方ない! やってやるぜ! やってやりますとも!」
インナースペース内にいる士とハルキに説得され、混乱しながらもゼット――初代ウルトラマンの姿をしたDゼットは再び身構えた。
一方、敵の方も黙ってやられるようなことはしない。コダイゴンジアザーの後ろに控えていたボガールモンスが、再び首の角から破壊光線を発射した。
ハルキの言うとおり、ウルトラカードに宿る初代ウルトラマンの力に身を任せたDゼットは、両腕を腰に当て、分厚く逞しい大胸筋を大きく張って見せた。
初代ウルトラマンの鋼のような胸の筋肉は、ボガールモンスの破壊光線を真正面から受け止めた。しかしその体はビクともせず、初代ウルトラマンの姿をしたDゼットは仁王立ちのままだった。
「凄いっすね、ゼットさん! あの光線に耐えるなんて」
「ああ! まさにマン兄さんの肉体美の賜物だぜ!」
「言ってる場合か! 次の攻撃が来るぞ!」
初代ウルトラマンの肉体の有能さに興奮するハルキとゼットを他所に、士は相変わらず冷静さを貫いていた。
「今度はこれでどうだ!」
士は次のカードを引き抜き、ネオディケイドライバーに投げ入れた。
『ULTRIDE! ACE!』
次の瞬間、初代ウルトラマンの姿をしていたDゼットの体が再び眩い光に包まれた。
光の中から現れたのは、“光線技の名手”“超獣退治の専門家”と謳われているウルトラ6兄弟の5番目――ウルトラマンエース。
士が使用したカードの力を受けて、Dゼットがエースの姿に二段変身を遂げたのだ。
「うぉおおおお! 今度はエース兄さんかぁ! ウルトラ感激だぁ~!」
ゼットにとって、ウルトラマンエースは尊敬する偉大な先輩の1人であると同時に、名付け親というかけがえのない存在でもある。そんなエースの姿と力を借り受けたことに、ゼットは感銘を受けずにはいられなかった。
「ゼットさん! 先輩の御姿に恥じぬよう、全力でいきますよ!」
「勿論ですとも! ウルトラ張り切るぜぇ!」
ハルキの気合いの言葉に同調するように、エースの容姿を借りたDゼット――Dゼットエースは、力強く拳を握り、構えを取った。そして大地を踏みしめ、眼前の怪獣たちに向かって勢いよく突っ込んでいった。
一見慌ただしささえも感じさせる、嵐のように次々と繰り出される拳、手刀、そして蹴り。
容赦などなく、それでいて僅かな隙さえも見せることのない激しい猛攻。
まさにそれは、元来のエースの戦法を忠実に再現しているかのような戦いっぷりだった。
「エースブレード!」
勢いに乗ったDゼットエースは、その手に鋭利な剣を出現させた。
キラリと光る白銀の刀身を巧みに振るい、パワードドラコの鎌を弾きつつ、ボガールモンスとコダイゴンジアザーに斬撃を2発3発と浴びせていく。
3体の怪獣の中で最も防御力が低いであろうボガールモンスは、刃の威力に圧倒され、ズシンと地響きを立てながら豪快に倒れ込んだ。
「やっぱりエース兄さんの切れ味は、一味も二味も違うぜぇ!」
「ノリノリのところ悪いが、今の俺たちは、半分はライダーだってこと忘れるなよ!」
見る見るテンションを上げていくハルキとゼットを尻目に、士はさらに1枚のカードを取り出した。
それは先刻までのウルトラカードではなく、お馴染みのライダーカードに属する1枚。士はそれを、ハルキやゼットに判断を仰ぐこともなくネオディケイドライバーに装填した。
『ATTACK RIDE! SLASH!』
士が選んだのは、先刻のジャグラーとの戦闘でも使用した“スラッシュ”のカード。その効果は、斬撃の切れ味強化。
ライドブッカー・ソードモードと同じように、カードの恩恵を受けたエースブレードは、敵を斬るたびに虚空に残像を描いた。
ただでさえ強力だったエースブレードの切れ味に、さらなる鋭さが増し、敵の装甲を紙の如く斬り裂いていく。
光の巨人と仮面ライダーの融合。ゼットとディケイドが1つとなり誕生した戦士――ウルトライダーDゼット・コンポジットフォーム21の最大の特徴は、ウルトラマンと仮面ライダーの力を同時に行使し、そして重ね合わせて大幅に強化できること。
ハルキが所持していた20枚のウルトラメダルと同じ数だけの巨人の姿と、士が持つライダーカードの様々な力。その2つを自在に組み合わせ、ありとあらゆる戦法を生み出すことができるのだ。
『FINAL ATTACK RIDE! B B B BLADE!』
そしてまた、士が1枚のライダーカードを引き抜いた。
それは、封印した不死生物アンデッドの力で戦う仮面の戦士――仮面ライダーブレイドの必殺技を発動させるためのカード。
Dゼットエースの前に、スペードのカテゴリー10、J、Q、K、Aの光のギルドラウズカードが一列に並んだ。
Dゼットエースは眼前の光のカードの列に向かって構えると、両腕を勢いよく上下に開き、三日月状のエネルギー刃を射出した。
「ロイヤルストレート……バーチカルギロチン!」
ベータクレセントスラッシュとも類似した巨大な光刃は真っ直ぐと飛び、5枚の光のカードの中心を次々と通過していく。
そして次の瞬間、ギルドラウズカードの力を吸収し、金色に輝いたそれはコダイゴンジアザーに直撃。その全身をいとも簡単に両断した。
直前のウルトラアタック光線とエースブレードによる猛攻により、既にコダイゴンジアザーの体はズタズタになり、相当の強度を失っていた。
その甲斐もあってか、まるで豆腐を斬るかの如く軽々と真っ二つに割れ、コダイゴンジアザー自身も自分の身に一体何が起こったのか、一瞬理解することができなかった。
左右に別れていく自分の体に戸惑った様子を見せるコダイゴンジアザーを前に、Dゼットエースは追い討ちをかけるように腰を捻り、振り向きざまに両腕をL字型に組んだ。
「もらったぁ! メタリウム光線!」
Dゼットエースの腕から放たれた虹色の光が、分断されたコダイゴンジアザーの体を包み込んだ。
高威力の光線を浴びた巨大な木彫りは、刹那に木っ端微塵に爆発。
ようやくコダイゴンジアザーを撃破した。
残存する敵は、残り2体。
Dゼットエースは休む間もなく次の標的に目を移した。
続けて狙いを定めた相手は、高次元捕食獣ボガールモンス。
『ULTRIDE! GEED!』
Dゼットエースは、悪の戦士ウルトラマンベリアルの息子――ウルトラマンジード・プリミティブの姿を纏い、Dゼットジードとなった。
「リク君先輩、御力お借りします!」
「ジーッとしてても、ドーにもなりませぬ!」
ハルキとゼットが気合いの言葉を叫ぶと、Dゼットジードは青く鋭い視線をボガールモンスに向けて、野獣の如く飛び掛かっていった。
・・・
「最早何でもありだな、あいつら……」
目の前で繰り広げられる壮絶な巨大戦。荒野の上に取り残されたジャグラーとべリアロクは、Dゼットと怪獣たちの戦いを傍観者気取りで眺めていた。
呆れ気味に呟いたべリアロクの言葉に、同じく呆然としていたジャグラーが同意するように応えた。
「まったくな……。しかしいいのか、べリアロク。奴らの戦いに混ざらなくて」
「ふん。今のあいつらに、俺様が割り込む隙など無いだろう。そういう貴様こそ参加しないのか? 俺様の力を使えば、貴様を巨大化させることも不可能ではないかもしれんぞ?」
「あ~、なぁんか白けちまってな。今日のところはもういいや。……それによ、せっかく斬りがいのある奴がまた1人増えたんだ。お楽しみは取っておかないとな」
「お楽しみ? あの
「だろ? 時を改めて、いつかまたじっくりと斬り刻んでやるさ。そん時はべリアロク、お前もまた付き合えよ」
「ふん、機会があればな……」
「ま、後のことはあいつらに任せようぜ。あれはあれで、滅多にない余興だしな……」
すっかり戦意を失ったジャグラーとべリアロクは、Dゼットと怪獣たちとの戦いには加わらず、このまま見物に興じることにした。
彼らが見つめる先で、仮面の戦士と1つになった光の巨人の戦いは、間もなく終焉を迎えようとしていた。
・・・
ウルトラマンジードの姿と力で戦うDゼットは、手にした二又の鉤爪――ジードクローでボガールモンスを一方的に攻め立てる。
途中、背中で殺気を感じて振り向くと、不意討ちを狙うパワードドラコが両腕の鎌を構えていた。
その様子をインナースペース内から目にした士は、咄嗟にライドブッカーからカードを1枚引き抜き、ネオディケイドライバーに装填した。
『ATTACK RIDE! SHIELD!』
防御のために士が選んだのは、宇宙の神秘なる力――コズミックエナジーを秘めた様々なスイッチを駆使して戦う戦士、仮面ライダーフォーゼのシールドモジュールを再現するカード。
スペースシャトルを模した盾を左腕に装備したDゼットジードは、パワードドラコが射出した2本の鎌をあっさりと弾いて見せた。
『ATTACK RIDE! MAX FLARE!』
続けて士が発動させたのは、車の力を授かりし警察ライダー――仮面ライダードライブが操る熱き炎、マックスフレア。
ジードクローの先端に真っ赤な炎を集中させたDゼットジードは、素早い灼熱の連打をボガールモンスに叩き込み、その巨体を背後に吹き飛ばした。
転倒するボガールモンスを尻目に、今度はジードクローからタイヤ型の炎の塊を出現させる。
Dゼットジードは右足を豪快に振り上げると、パワードドラコ目掛けて炎の塊を蹴り飛ばした。
回転しながら空を走る炎のタイヤは、瞬く間にパワードドラコに直撃。その体をメラメラと揺らめく炎で包み込んだ。
あらゆる攻撃を弾く外骨格には大したダメージは通らない。しかしそれでも、燃え盛る炎の勢いに怯み、パワードドラコの動きが僅かながら止まったのも確かだった。
その隙にボガールモンスを確実に打ち倒すため、Dゼットジードは勝負に出る。
「おい、ゼット! 奴に向かって右手を突き出せ!」
本体であるゼットに指示を出しながら、士はまた1枚カードを引き抜いた。
『ATTACK RIDE! BLIZZARD!』
「右手!? こ、こうか!」
士に言われた通り、Dゼットジードはボガールモンスに向けて右手を開いた。
すると次の瞬間、Dゼットジードの掌から大きな魔方陣が展開し、そこから超低温の冷気が放たれた。
それは指輪の魔法使い、仮面ライダーウィザード・ウォータードラゴンの魔法の1つ、ブリザードの効果だった。
渦を巻きながら放出される凄まじい勢いの冷気に飲み込まれ、ボガールモンスの肉体は一瞬にして凍結した。
悲鳴の咆哮すら上げることもなく、全身が氷漬けになり、まさに氷像と化したボガールモンス。
「このまま一気に打ち砕け!」
士の言葉を合図に、ハルキが身構え、その動きに連動するようにDゼットジードがジードクローを手に身構えた。
「押忍! いきますよ、ゼットさん!」
「おお! これがジード先輩の力! コークスクリュージャミング!!」
「チェストォ―!!」
ジードクローを前面に突き出したDゼットジードは、全身を高速回転させながら突進を仕掛けた。
赤いエネルギーを身に纏い、まるで巨大なドリルのように猛然と突っ込んだDゼットジードは、氷に覆われたボガールモンスを貫き粉砕した。
粉々に砕け散ったボガールモンスは、無数の破片となって地面の上に崩れ落ちていく。
砕け散り、ただの氷の山と化したボガールモンスの末路を見届けたDゼットジードは、ウルトラマンジードの姿を解除し、一旦本来のマゼンタ色の姿に戻った。
Dゼットは、ディケイドの癖を引き継いだかのように両手を払いながら、残った最後の敵であるパワードドラコを見据えた。
「この戦い方にもようやく慣れてきたみたいだな」
「押忍! この調子でどんどん攻めますよ!」
「ちょ! ちょっと待ってくれ、ハルキ!」
勢いに乗り、このままパワードドラコを追い詰めようとしていた矢先、水を差すようにゼットが口を挟んだ。
「え!? どうかしたんすか、ゼットさん」
不思議そうな顔でハルキが訊ねると、インナースペース内に響くゼットの声が歯切れ悪そうに答えた。
「いや……、実はその……、ディケイドに折り入って頼みがあるのです……」
「頼み?」
ゼットの切り出しに、士は何事かと首を傾げる。
「ひょっとしてなんだが……、先輩方の御姿に変われるということは……、ゼ、ゼロ師匠にもなれたりするんだろうかと思ってだな……」
「ゼロ師匠?」
「ウルトラマンゼロ。ゼットさんが最も尊敬している師匠だそうです」
「ゼロねぇ……。こいつのことか?」
士の疑問に、ゼットに代わってハルキが答える。
するとその説明を受けた士は、ライドブッカーから1枚のカードを取り出し、確認するようにハルキに見せつけた。
そこにはウルトラセブンの息子である鋭い眼光の戦士――ウルトラマンゼロの姿が描かれていた。
「この機を逃したら、もう2度とこんなチャンス無い気がしましてな。だから……御頼み申し上げます! もし可能なら、1度でいいからゼロ師匠の御姿にならせてもらえまへんか?」
ゼットの要求に、やれやれと言わんばかりに軽い溜息をつきながらも、士は渋々承諾することにした。
「しょうがない。まあいいだろう」
そして指に挟んだカードをネオディケイドライバーに装填し、ゼットの要望を叶えて見せた。
『ULTRIDE! ZERO!』
その瞬間、眩い光に包まれたDゼットは、望み通り師匠(?)の姿を借りた形態――Dゼットゼロへと変化を遂げた。
真っ白い後光を背に、幻想的な威厳と堂々とした貫禄を醸し出しながら大地に立つゼロの姿。
だがしかし――。
そんな神々しさが場の空気を支配したのもほんの一瞬のことだった。
何故なら次の瞬間――。
「うぉおおおおおおおお゛お゛お゛!!! やばいやばいやばいぃいいい!!! ついにきたぁあああああ!!! ホントになれたぁああああああ!!! 感動の嵐!!! 雨霰!!! 信じられないでございますぅううううう!!! まさか俺がぁあああああ!!!! この俺がぁあああああ!!!! ゼロ師匠の御姿にぃいいいいいぃぃ!!!!!」
火山が大噴火するかの如く、ゼットの興奮が最高潮を迎えたからである。
人生最大級と言っても過言ではないほどの絶叫と共に、歓喜に打ち震えるDゼットゼロ。
インナースペース内に轟くゼットの大音声に圧倒されたハルキと士は、思わずビクッと肩を跳ね上げ言葉を失った。
「ああそうだぁ!!! せっかくのシチュエーション!!! ゼロ師匠の決め台詞、ここで言わなきゃ勿体ないでありますなぁあああああ!!!」
身に纏ったゼロの気高さを、思いっきり台無しにしかねないほどの燥ぎっぷりを晒しながらも、やがてDゼットゼロは本家ゼロの真似事をしようと、「ゴホンッ!」と露骨に咳払いをして喉を整えた。
ピンと背筋を張り、人差し指と中指を立てた所謂裏ピースを構えながら、倒すべき敵であるパワードドラコを真っ直ぐと射抜くように見据える。
それはまさに、本家ゼロの威圧的態度を再現するかのようだった。
そしてついに、Dゼットゼロは満を持して声を発した。
声高らかに。
力強く。
はっきりと宣言する。
「俺に勝とうなんざ、2万ねn――」
『FINAL ATTACK RIDE! RYU RYU RYU RYUKI!』
「あ……」
刹那、それは誰がどう見ても、嫌がらせと言われても仕方ないほどに、あからさまに意図的――つまりわざとだった。
敬愛する師匠の決め台詞を再現するために、渾身の想いで叫ぶゼットの言葉を、あえて遮るようなタイミングで士がカードを装填したのだ。
おかげでゼットの渾身の言葉はネオディケイドライバーの電子音声にかき消され、決め台詞の再現は虚しくも強制終了、不発に終わった。
一瞬何が起こったのかわからないまま立ち尽くすDゼットゼロ――というより、ゼットの呆然自失な気持ちもお構いなしに、カードの力で召喚された赤い東洋龍型のミラーモンスターが、Dゼットゼロの周りを旋回し始めた。
「いつまでもお前のノリに付き合ってもいられないからな。さっさと終わらせてもらうぞ。……ハルキ、お前が決めろ!」
「お、押忍……。なんかすみません、ゼットさん。ちょっと、失礼して!」
出鼻を挫かれたゼットの心境を察して気の毒に思いつつも、ハルキは士に言われるがままに、ゼットから肉体の主導権を引き継いだ。
空へと舞い上がる赤い東洋龍型のミラーモンスター――巨人の体躯に合わせて大柄となって現れたドラグレッダーと共に、Dゼットゼロは大地を蹴って大きくジャンプした。
上空でドラグレッダーが吐き出した灼熱の炎を全身に纏い、右足を前に突き出しながら猛スピードで急降下していく。
それは、鏡の中で生き残りの戦いを繰り広げる13人のライダーの1人――仮面ライダー龍騎のファイナルベント『ドラゴンライダーキック』と、ウルトラマンゼロが得意としている格闘技の1つ、『ウルトラゼロキック』を組み合わせた新たな蹴り技。
その名も――。
「ドラゴンゼロォ……キィーック!! チェストォ―!!!」
腹の底から湧き出るようなハルキの力強い叫びと同時に、Dゼットゼロの火球のような跳び蹴りがパワードドラコの胴体に炸裂した。
燃え盛る足先がワインレッドの胴体に直撃した瞬間、先刻まであらゆる攻撃を受け付けず、無敵とさえ思わせるような防御力を誇っていた外骨格が、ビキビキと音を立てながらついに粉砕。
僅かな深さではあったが、その胸に足跡を確かに残し、いくつもの細かい亀裂を刻み込んだ。
キックの衝撃に耐えきれなかったパワードドラコは、踏み潰されるように転倒。その勢いに引きずられ、両翼を備えた背中を地べたに擦りつけた。
「やった! あの硬い体にヒビが!」
「案外、これまでのダメージも蓄積されていたのかもな。だとしたら、攻撃の甲斐もあったってもんだ」
「そうっすね!」
攻撃に手応えを感じ、ハルキと士の気持ちは自然と上向いていく。
だがそんな2人とは対照的に、ゼットの心は落ち込んでいた。
「いや、ちょっと待って……。俺を差し置いて、2人で盛り上がらないで……」
「ゼ、ゼットさん……? あの……大丈夫っすか……?」
ハルキが恐る恐る訊ねると、その瞬間、悲しげに震えるゼットの声がインナースペース内に響き渡った。
「大丈夫じゃないでございますよぉ~! ディケイドさぁ~、さすがに今のは酷くない!? せっかくの見せ場だったのに被せるなんてぇ~……。俺、ウルトラショックで悲しゅうございますよぉ……」
「おいおい……。ウルトラマンのくせに情けない声を出すなよ……」
「いや、だってぇ~……」
「あぁもう、わかった! なら次の攻撃はお前が決めろ!」
ゼットの嘆きに観念したのか、士は呆れながらカードを引き抜き、ネオディケイドライバーに挿入した。
『FORM RIDE! ZERO! STRONG CORONA!』
直後、Dゼットゼロの体が真っ赤な光に覆われ、その姿を赤と銀色を基調としたパワー型の形態、ストロングコロナゼロへと変化した。
「おおぉ! この御姿は! たしかダイナ先輩とコスモス先輩との絆の力で生まれたという……! よし、これなら……。気を取り直して、今度こそウルトラ決めるぜぇ!」
ウルトラマンダイナ・ストロングタイプとウルトラマンコスモス・コロナモード。2つの力を併せ持った師匠の姿を借り受けたことで、なんとか機嫌を直したゼットは、Dゼットゼロとして、改めてパワードドラコと向き合い身構えた。
パワードドラコは振袖状の両腕から次々と漆黒の鎌を投擲し、Dゼットゼロの攻勢を妨げようと必死になるが、ストロングコロナゼロとなったDゼットゼロは、ものともせずに回避しながら、一気に間合いを詰めていった。
そして射程内に入った瞬間、すかさず繰り出したのは拳から放つオレンジ色の熱線。
「ガァルネイトォ……バスタァー!!」
先刻の不満を打ち消すほどの、ゼットの叫び声が轟いた。
それと同時に放出された高熱のエネルギー波が、パワードドラコの胸の亀裂を撃ち抜いた。
ドラゴンゼロキックによって刻まれた乱雑な網目模様の亀裂は、熱線に打ち砕かれてさらに複雑に、深々と広がっていく。
「もう一発、おまけだ!」
もう一息と見た士は、続けざまにカードを1枚装填した。
『FINAL ATTACK RIDE! W W W W!』
発動させたのは、風の街を護る2色の探偵――仮面ライダーダブルの必殺技。高熱の格闘技を得意とするヒートジョーカーの、2つ目のマキシマムドライブを再現したものだった。
「「ジョーカーバックドラフトォ!」」
呼吸を合わせたハルキとゼットが同時に叫んだ瞬間、Dゼットゼロ・ストロングコロナは、炎を纏った右手の拳を打ち出した。
捩じり込むように放たれた鋭い炎のパンチが、パワードドラコの胸の亀裂を一気に抉り飛ばした。
外骨格の破片が四散し、隠れていた薄ピンク色の肉肌が露出する。
「キャェエエエエエエ……!!!」
悲鳴のような甲高い咆哮と共に、苦しそうに後退るパワードドラコ。
勝利を確信した士は、ハルキとゼットに向かって言い放つ。
「勝負あったな。次で決めるぞ!」
その言葉を合図にするように、Dゼットゼロ・ストロングコロナの姿がモザイクに覆われ、元のDゼットへと戻った。
「これで……終わりだ!」
宣言通り、士はとどめを刺すために最後のカードを引き抜いた。
『FINAL ATTACK RIDE! DE DE DE DECADE! Z Z Z Z!』
士がカードをネオディケイドライバーに装填した瞬間、鳴り響く電子音声を背に、ハルキは神経を集中させるように空手の型を身構える。
ハルキの気合いを受け取ったゼット――Dゼットは、両腕を胸の前で力強く構えた。
眼前に現れたのは、一列に並ぶ無数のカード型のオーラ。
Dゼットはそのカードの列に向かって、両腕を斜めに開く。
そして次の瞬間。
「「ゼスティメンション……光線!!!!」」
重なるハルキとゼットの絶叫と共に、十字に組んだDゼットの腕から青白い光線が放たれた。
それ自体は、ゼットのゼスティウム光線そのもの。しかしカード型オーラの列を通過し始めた途端、青白い光線はモザイクがかったマゼンタ色へと変化した。
ディケイドを象徴する色を纏い、カード型のオーラを潜るたびにパワーが増幅し強化されていく。それこそが、Dゼット渾身の必殺技――ゼスティメンション光線。
マゼンタ色に輝きながら真っ直ぐと伸びていく光のシャワーが、
その瞬間、
ついに強敵パワードドラコの胸を貫いた。
防御の要であった外骨格を失い、剥き出しになったピンクの肉肌へ直撃を受けたパワードドラコは、断末魔の声を上げる間もなく、全身を激しい光に包まれて木っ端微塵に爆発した。
全ての怪獣や戦艦、そして無数のモンスターたちは倒された。
ようやく、この狭間の世界での戦いが終わりを迎えたのだった。
・・・
「やっと終わったか……。ったく、手間取り過ぎだっての……」
べリアロクと共に、Dゼットの戦いを静観していたジャグラスジャグラーは、悪態をつきながらもホッと胸を撫で下ろした。
その姿は、いつの間にか魔人態から元の人間の姿へと戻っていた。
「ふん。なんだかんだ言っても、やはり奴らのことが心配のようだな」
「は? 冗談だろ」
揶揄うように言うべリアロクの言葉に、ジャグラーはたまらず苦笑を浮かべる。
「だが戦いと呼ぶには、いささか気の抜けた光景だったな」
「戦いというより、殆ど遊びみたいなもんだっただろ、あいつらのは……。俺が求めるのは、命を懸けた本気の斬り合いだからな……。ああいう甘ったるいのは、正直どうかと思うが……。まあただ……、なかなか面白いものが見れたのも事実だ。色々と、これからが楽しみだよ……」
そう答えると、ジャグラーはどこか物憂げな表情を見せた。
「さて……。あいつらが戻ってくると面倒になりそうだからな。その前に俺はおさらばするぜ」
「なんだ? 奴らの顔を見ていかないのか?」
「べリアロク、まさかお前に、そんな気遣いをされるとはな……。必要ねえよ。別に名残惜しくもねえからな。生きていりゃあ、そのうちまたどこかで会うこともあるだろうよ。お前にも、ハルキにも。それに……、通りすがりの仮面ライダーって奴にも……。お楽しみは……じっくりと堪能しなきゃだろ……」
「ふん。『次に会うのが待ち遠しい』と、正直に言えばいいものを……。相変わらず素直ではないな、貴様は」
「はっ! お前にだけは言われたくねえよ、べリアロク」
笑みを浮かべながらそう言うと、ジャグラーは宙に浮くべリアロクに背を向けてゆっくりと歩きだした。
「行くのか?」
べリアロクが訊ねると、ジャグラーは1度だけ足を止めて肩越しに振り向いた。
そしてたった一言だけ、言葉を返すのだった。
「じゃあな!」
・・・
巨大戦を終え、変身を解いたハルキと士はべリアロクの元に戻った。
ジャグラーが一足先に旅立ったことをべリアロクから聴かされたハルキは、再会の挨拶を交わせなかったことを残念に思い、少し寂しそうに俯いた。
すると士がハルキに声を掛けた。
「そう落ち込むな。奴は言ったんだろ、『生きていればまた会うこともある』ってな。その通りだろう。別に2度と会えないと決まった訳じゃない」
「士さん……」
顔を上げるハルキに、士はさらに続ける。
「なかなか面白い奴だったしな。俺もまた、奴に会えるのを楽しみにしとくよ。そのためにも、俺は旅を続ける。旅先の世界で、偶然顔を合わせることもあるだろうしな。だからハルキ、お前も決して足を止めるなよ。またあいつに会いたいんだったらな……」
「そうっすね……。絶対に俺、隊長にもう1度会いたいっす! だから俺も……、士さんの言うとおり、前に進み続けます! ゼットさんと、べリアロクさんと一緒に、これからも戦い続けるっす!」
「ああ。まあ、せいぜい頑張れ」
力強い言葉と共に笑顔を浮かべるハルキに対し、士もまた、柄にもなく笑みを返すのだった。
その後、カードの形から元に戻ったウルトラメダルを全て返還してもらった上で、ハルキは士が開いた灰色のオーロラを通って元の世界へと帰っていった。
そして、ひとり狭間の世界の荒野に残った士は、実は先刻から背中で感じていたとある気配に意識を向けた。
「で? 相変わらず、お前は何がしたいんだ? ハルキやジャグラーをこの世界に引き込んだのも、怪獣を寄せ集めたのも、全部おまえなんだろ? なあ――」
うんざりした態度で言いながら、ゆっくりと振り返る。
するとそこには、いつの間にか1人の男が立っていた。
チューリップハットと茶色いロングコート姿の、眼鏡をかけた中年の男。
士はその男のことを良く知っていた。
いや、実際のところ、良くは知らない。その男が何者で、何が目的なのかは今でもほとんどわかってはいない。
しかしそれでも、士はその男が誰かは知っていた。
なんだかんだ言っても長い付き合いだから。
所謂、腐れ縁という奴なのだろう。
視線が合った途端、ニヤリとほくそ笑む中年の男の名を、士は溜息と共に吐き出すのだった。
「――なあ、鳴滝」
・・・
士やハルキがいた所から数十キロほど離れた場所にある岩壁に、魚の形をした巨大な木彫りのようなものが突き刺さっていた。
それは、ウルトラマンゼットと怪獣たちの戦いの中で、ベータスマッシュのゼスティウムアッパーを受けて空の彼方へと消えていった、コダイゴンジアザーの鯛砲だった。
今、岩壁に頭から突っ込んで活動を停止している鯛砲の姿を、金色の渦巻き模様が特徴的な1人の宇宙人が眺めていた。
彼はあらゆる星々を股に掛け、様々なお宝を略奪して回っている海賊宇宙人バロッサ星人。
のちに四代目と称される彼は、放置された鯛砲をゴクジョーのお宝として狙いを定め、我が物にしようと調子付いていた。
「オヤビ~ン! こいつは相当のお宝ミャ~! さっそく頂くとするミャ~!」
「バルゥ! バルバルバル、バロッサァ~!」
右肩に乗せた相棒、翼竜のような怪獣の雛――ベビーザンドリアスのケダミャーと共に、バロッサ星人は海賊稼業に精を出す。
近い将来、悪事を働く彼らもまた、光の巨人と対峙することになる。
しかしそれは、既に語られている別の話。
―DATA―
・ウルトライダー
仮面ライダーディケイドが自らをファイナルフォームライドさせたジャンボネオディケイドライバーを、ウルトラマンゼットが身につけたことで誕生した複合戦士。
バーコード柄の頭部や、黒とマゼンタ色を基調とした体色など、その容姿の各部には融合したディケイドの特徴が表れている。
ハルキが所持していた20種のウルトラメダルがカードと化しており、それらを士が装備しているネオディケイドライバーに装填することで、カードに描かれたウルトラ戦士の姿に変身ができる。
同時に士が所持しているライダーカードの力も使用可能であり、ウルトラ戦士の力との組み合わせで多種多様な攻撃を繰り出すことができる。
必殺技は十字に組んだ腕から放つマゼンタ色の光線、ゼスティメンション光線。