リペアラーは同情する   作:蟹ノ鋏

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アンドロイドのイラストをみて閃いた。みなさんの性癖の新たな開発の一助になれば幸いです。


#0001 ユユリ

 時は21xx年。世界中でアンドロイドが大流行していた。

 元々人型ロボットの開発は百年以上前から行われてきたが、感情プログラムの未完成さと家庭用としてはあまりにコストがかかり過ぎるせいで、精々富豪の玩具として取り扱われていた程度だった。

 しかし、20年前に技術革新が起こる。生体工学の発展により、より人に近い肉体素体によるアンドロイドが完成したのである。質感、気配、肌や瞳はもちろんのこと髪の毛から爪の先までほぼ人間にそっくりのアンドロイドが完成した。そして人工授精等の技術と合わせることによって人の子を産むことができるアンドロイドが登場したのだ。これによって金さえあればどんな人でも子供をなせるという、世のモテない男性諸君にとっては喜ばしい世界となったのだった。

 そうして世界ではアンドロイドが流行りに流行った。お金を稼いだらアンドロイドを買って家庭を築く。人口が減少の一途を辿っていた日本ではアンドロイド購入に補助金が降りるほど推奨された。

 人間が少ない世の中なので、周りを歩く人々の半数がアンドロイドになったほどだ。アンドロイドは顔が整っているので区別しやすい。

 アンドロイドブーム自体は悪いことではない。新産業として経済を大いに回してくれているし、出生率も高まっているのだから。

 ただ、旧型モデルのアンドロイドが大量に解雇・廃棄されるようになった。新型の人間のような素体は旧型に適用することができず、旧型は完全に時代に取り残されたのだ。パラダイムシフトによるモデルチェンジはよくあることだ。スマートフォンと呼ばれていた端末がウィズタムコアに移り変わったときと似ている。世代交代である。

 しかしこれはぼくたちリペアラーと呼ばれる、アンドロイドの修理屋にとっては痛い打撃だった。なんせ新型アンドロイドにはぼくたちリペアラー従来の知識は通用しないし、自己修復機能があるからそもそもの修理依頼も激減したし、何より大口顧客だった旧型の修理依頼が殆どゼロになったのだ。

 そんなわけでリペアラーを営んでいた人々の多くは廃業に追い込まれ、ぼくも仕事をたたみ現在は新聞と牛乳の配達員をしている。正確には新聞と牛乳を配達するロボットの補助だけど。

  

 仕事がなくなったことにそこまで文句はない。けれどもあの旧型アンドロイドを弄ることが好きでリペアラーの職についたぼくとしては現状に寂しさを感じてしまっていた。

 新型アンドロイドはたしかにいいものだ。値段は張るけれども性能は申し分ない。本物の人間のようだし、人よりも愛嬌がある。*1

 けれどもぼくとしては旧型の人型のメカ、人型の機械といったフォルムがとても好きだった。修理をするとき表面に張られている人の肌をもしたカバーを外して配線やフレームがぎっしりと詰まっている機械の体を弄るのが楽しかった。新技術が開発されるごとにパーツを付け替えていき、アップデートしていくのに心が踊った。カメラが搭載されている瞳が好きだった。関節部分の歯車が好きだった。外部接続するうなじのコネクター差込口が好きだった。

 でも今はもうない。

 あのメカメカしい機械然とした弄りがいのあるアンドロイドは人間の肉体とほぼ変わらない弄りようのない生体素体になってしまった。

 そして要らなくなった、旧型のアンドロイドはパーツごとに分解されてジャンク屋に売られているのがさらに悲しい。リペアラーのときにはジャンク部品にお世話になったが、ワゴンにまとめて旧型の頭部が詰め込まれていたのを目撃したときは思わず涙がこぼれてしまった。頭部パーツは昔は100万はしたんだぞ。コン畜生。いや機械だけど。

 ぼくのような使い物にならない人間もいずれはあのようにジャンク品としてあの世で売られるのかもしれないなー、とか自分の家の檀家すら知らないぼくが仕事終わりに牛乳とアンパン片手に益体もないことを考えていたときに思いついた。

 今なら格安で自分の作りたいアンドロイドを作れるのではないかと。

 思いついてからは早かった。有給を消化し、ぼくは有り金すべてを持ってジャンク屋に駆け込んだ。

 

#0001 ドスケベ貧乳アンドロイド、ユユリ

 

 殆どのパーツは格安で手に入った。新型アンドロイドの100分の1よりも安く。通帳から下ろした現金の大半ははすごすごとATMに戻っていった。えも言われぬ虚しさがそこにはあった。

 誤算だったのは巨乳パーツはやたら値が張ったため、今後の維持管理を考えると収入が少ない今の仕事についているうちは大きな負担になると考えて諦めた。どっかで正規社員として雇ってもらってからまた考えよう。巨乳部位は傷みやすい。

 アンドロイド全身の組み立ては行ったことがなかったため、データの海に沈んでいたマニュアルをサルベージして三日三晩寝ずに組立作業に励んだ。組み立てて気がついたが口紅やアイシャドウなどの化粧品やアクセサリーや衣服等のジャンク屋に売っていない品々を買い込むことを忘れていたため、すっぴんですっぽんぽんの生まれたままの姿で完成となった。このままでは公の場には持っていけないため後日アマゾネスプライムに発注しておこう。

 さて、化粧とかアクセとか服とかそんなディティールはどうでも良いのだ。問題はこれから入れる魂――つまるところ人格・感情プログラムのインストールについてだ。アンドロイドは一般的な行動・規範プログラムだけでなく、人格・感情プログラムまで追加する。これは旧型・新型関係なくプロセスは同じで、生体素体を扱うため新型は旧型よりも容量が多く値段が高くなるが大まかなプログラムは変わっていない。つまるところ、旧型のプログラムもそれを取り扱うにはかなりのお金がかかる。

 インストールして合わないから書き換えるというわけにもいかない。上書きはよきせぬエラーを引き起こす可能性があり、インストールも基本的に一回限りで同じプログラムをインストールするにしても買い直さなければならないのだ。ライセンス関連の問題なのでこのあたりは仕方ない。

 そのため慎重にプログラムを選ぶ必要があるのだが、そもそもの旧型用のプログラムがあまり売られていないことに気がついた。旧型の需要が激減したことで一般家庭向きの人格・感情プログラムは販売減少や取り止めになっていたのだ。選択肢がなくなり、企業向けの家政婦や接客モデルのプログラムばかり売られていた。

 確かに家政婦モデルのアンドロイドもそれはそれで良いものである。メイドは素晴らしい。最終的にはメイドプログラムも組み込む予定ではある。でも今求めているのはそういった実用的なプログラムではない。もっと言えばぼくはアンドロイドに家政婦の要素を求めていない。愛玩としてのアンドロイド、いや言葉を選ばずに言おう、ぼくはアンドロイドにラブドールとしての要素を求めているのだ。*2

 つまりエッチなプログラムとかエロエロな人格・感情を欲していた。

 いいだろう、僕が作ったんだから何をしたって。*3

 そんなこんなでカタログを眺めながらネットの海に漂っていると、リペアラーのときよく見ていたジャンク屋のサイトに気になるものが売っていた。

 『旧型アンドロイドコア、感情プログラムインストール済み大特価』

 ほむ。え、やっす!?こんなん小学生でも買えるで!!*4

 いや待て、こういったものはたいてい曰く付きだ。何かしら問題があるはずだ。*5 

 詳細を確認すれば個人が制作したプログラムを使用しているため動くかどうかは保証されてないらしい。

 プログラムの内容は一応男性向き()だが確認が取れていないとのこと。

 地雷も地雷の大地雷。アンドロイドブームで婚期を逃して焦っている独身アラサー女性ほどの地雷だ。*6

「だがそこがいい!!*7売られた喧嘩は安値で買う!!*8

 てなわけで購入ボタンをポチりと押して次の日まる一日寝たあと、玄関前に置き配されている猫神ヤマトの箱を回収。

 スペックは今組み立てているコアよりも少し新型で、少々持て余すほどの性能になるが高い分には問題ない。このスペックだったからこそ地雷と分かっていながら買った節がある。最悪致命的なエラーが見つかったら初期化してプログラムを入れ直そう。手間はかかるけど。

 ではではぶち込んでやるぜー!!*9

 

 そんなわけで、ぼくの初めて()のアンドロイドは完成した。

 藤色のロングヘアーの頭髪パーツ、アメジストに近い色のアイカメラ、十代後半の容姿をした頭部モデル、スレンダー体型ド貧乳のボディ、白魚のような肌のボディカバー。ジャンク品で組んでいるためすべてが思い通りになったわけではないけれど、素晴らしい作品。

 さあ、起動だ。

 充電コネクタを取り外し、胸部中心の主電源ボタンを押す。

 パチリとアンドロイドのまぶたが開く。

 宝石のような瞳が動きぼくのことを認識する。

 

「Hello world。起動を確認、プログラムを確認しています……完了。該当モデルY00141421_φ。初期設定を行います」

 

 落ち着いた音声が流れ出す。少し大人びていて、けれど少女らしい可愛さがある。初期設定の機械的な会話だから淡々とした印象を感じるけど外れではないとすぐに分かる。

 

「なまえをきめてください」

 うんうんと頷いているぼくを他所に初期設定は開始されていく。

 

 

「ユユリ」

 

「ユユリでよろしいですか?」

 

「OK」

 

名前は決めていた。頭部と体躯がそれぞれY型女性モデルなのでユユと俗に呼ばれていて、そこにリペアのRを付け足してユユリである。可愛い名前が思いついてよかった。

 

「マスターの個人登録を行います。瞳を合わせてください」

 

 言われた通りぼくはユユリの前に立ち顔の高さを合わせて、目止めを合わせる。

 瞳から生体認証をとり、これからぼくをマスターとして認識する。マスター登録は複数人でも可能で家政婦モデルとかは家族全員を登録したりする。

 

「登録完了いたしました。マスターの呼び名を登録します。変更がない場合はマスターとお呼びします」

 

「変更なしで」

 

「承りました。これからよろしくお願いします、マスター」

 

 そう音声が響いて、ユユリは手を前で重ねてペコリとお辞儀をした。この光景を見ただけでも作った甲斐があるというものだ。感無量。

 今まで人のアンドロイドを直してきたが、自分のアンドロイドを持ったときはなかった。高価であるというのも理由だが、機械弄りのほうに熱中してアンドロイドそのものの魅力を忘れていた。

 自分専用のアンドロイドはやはりいいものである。

 

 諸々の初期設定が終わったあとのことである。

 

「マスター、私は何をすればよろしいでしょうか?」

 

 と、ユユリが聞いてきた。行動設定をしなければアンドロイドは働けない。初期設定とは違い行動設定は自由に変えられる。

 ただし、プログラムを超える行為はフリーズしたりエラーを引き起こすため、高度な学習プログラムを積んでいない限りやめておこう。

 

「ユユリにはぼくのパートナーとして活動してもらう。具体的な業務はぼくの身の回りの世話、炊事、洗濯、掃除かな。買い出しとか、ごみ捨てはまたユユリの衣服等が届いてから頼むことになる」

 

「かしこまりました」

 

 パートナーは所謂彼女や嫁に近い。申請すればアンドロイドも戸籍をもらえるので籍を入れることも可能である。とはいえユユリは新型ではなく、生殖機能とかはつけていないため正式な夫婦としての結婚はできない。これは人口減少抑制のため生殖機能のないアンドロイドとは夫婦としての籍を入れることのできないという法律が定められたからだ。なので戸籍をとったとしてもユユリとの関係は親族、妹という扱いになる。*10関係性はどうでもいいのだが。因みに旧型でも生殖機能はつけることはできる。結構無理やりなオプションで高価でしかも一回きりしか使えないため、今のところ検討は考えていない。あのオプションはユユリが二十体くらい作れるくらいには高いのだ。

 

「じゃあ、これからよろしくね。ユユリ」

 

「はい、よろしくお願いいたします。マスター――早速ですがお掃除を開始しますね」

 

 そう言って動き出したユユリはぼくの方へ近づいてきた。

 何をするのかわからないが黙って見守っていると、ユユリは徐にぼくのシャツへと手を伸ばす。

 

「ヨイショ、ヨイショ」

 

 あざとい声とともにユユリはぼくのシャツのボタンを外し始めた。

 

「……あの、ユユリさん。一体何をしていらっしゃるので?」

 

「マスターの衣服を脱がせようとしています。マスター、敬称も敬語も私には不要ですよ。気軽にお呼びください」

 

 ユユリさんはぼくの方をむいて上目遣いをしながらもシャツのボタンを外す手は止めなかった。

 手慣れてないかコイツ!?

 

「なんでシャツを脱がせるのかな?」

 

「お掃除をしようと思いまして、手始めにマスターが汗をかいているようなので衣服を脱がして――」

 

「ああ、洗濯か」

 

「汗を舐めとろうかと」

 

「なんでだよ!!」

 

 思わず大声でツッコミを入れてしまった。

 どんな思考回路でその結論が導かれるのか。

 

「ええと、汗をそのままにしては不快だと思いますので」

 

「それはそうだけど」

 

「なので……はい、バンザイしてください」

 

 ∩(・ω・)∩ばんじゃーい*11

 

「ありがとうございます。マスターって体が引き締まっていてキレイですね。汗の匂いも相まって……すごくそそります」

 

 ガリガリに痩せているだけだ。

 ユユリのプログラムを書いた人の性癖がモロに現れているな。

 ぼくの性癖ではないから。ぼくの性癖ではないから。

 嫌いじゃないけど。

 

 ユユリはぼくのシャツを回収すると素早い手付きで畳み、傍らに置いた。

 

「では、失礼します――」

 

「ストップ」

 

「ペロリ」

 

「ペロリじゃねーよ!!とまれよ!!」

 

 コイツ可愛い擬音を発しながら大胆に舐めたぞ!!ベロンだったぞ!!*12ショートケーキのフィルムについたクリームを舐めとるような勢いだったぞ!!

 

「すみません、急には動作を停止できないものでして」

 

「じゃあ、もうやめようね。口を開けない。頬ずりしない。離れなさい!!」

 

 ユユリの自制が効いてない。

 これは意図的に自制しないようにプログラムを組んでいるっぽいな。

 なるほど、たしかに地雷だ。

 

「マスター、お嫌でしたでしたか?」

 

 ユユリは上目遣いで聞いてくる。

 うーむ。予想よりもグイグイくるプログラムだな。こんなプログラムを組んだ奴は相当な変態に違いない。*13

 

「嫌なわけではないけど、唐突なことで驚いている。舐めるときは次から許可をとってからにしてくれ」

 

 恥ずかしいし、照れくさいし、こそばゆいからね。

 ――変な性癖に目覚めそうだし。*14

 

「分かりました!!では、舐めますね」

 

「止めなさい」

 

 と、概ねこんな感じでほくと旧型アンドロイドであるユユリの生活は始まった。

*1
個人の意見

*2
三徹明け

*3
深夜テンション

*4
突然の関西弁

*5
名推理

*6
偏見

*7
狂乱

*8
徹夜明けテンション

*9

*10
義妹或いは偽妹

*11
無抵抗

*12
コインを一回投げて表なら相手のバトルポケモンをマヒにする

*13
確信

*14
手遅れである




ユユリ(cv結月ゆかり)

運営さんに怒られたら年齢指定のタグつけます。

気軽にリクエスト募集中。書いてほしいアンドロイドとかシチュエーションを感想にでも書いてね。書けたら書く。
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