進藤ヒカルの妹   作:あきと。

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第三話

 

「おい。吉田も負けたみたいだぜ」

「えっ、進藤さんまた勝ったの?」

「本当かよ。吉田って今月二組で二位だったんだろ?」

 

そんな会話が研修室内で交わされる。

院生になってから、数週間。現在も私は最初の勢いに乗って連勝を続けていた。

その中には、今日のようにニ組でも上位に位置する人との対局もあり、色々と学ばせてもらっている。

 

(うん。我ながら上出来だった気がする)

 

検討を終え、碁筒に石を入れ再度打ち終えた一局を振り返る。

 

「結果は?」

「私途中から見てた。ヒカリちゃんの六目半勝ち」

 

(あれ?いつの間に)

 

気がつけば周囲には複数のギャラリーがいた。

 

でも、それだけ集中して打ってたって事だよね。

 

対局中に必要となってくるのは棋力はもちろん、常に盤面に向ける集中力である。

今回の一局でもそれがあるからこそ勝ち星を掴む事ができた事に繋がっている。それをヒカリは、自身が成長していると実感した。

 

「なぁ、進藤の今の戦績ってどんな感じなんだ?」

「あっ、はい。えと……今日の分も合わせると」

「全勝だよねヒカリちゃん!」

 

問いかけられた質問に答えようとすると、ひょこっと横から顔を出す女の子。

 

「蒼葉さん。はい。そうですね」

 

如月蒼葉(きさらぎあおば)さん。

院生一組。福井さんに次いで二位の実力を持つ、私と同い年の女の子だ。

 

「もーっ、タメなんだから敬語じゃなくていいのに」

「ごめんなさい。慣れてなくて」

 

同学年という事もあって、院生研修に通うようになって最初にできた友達でもある。

当然、その実力も相当であることが彼女の戦績からも現れている。

 

私より一年早く院生になり、今年のプロ試験を目標に頑張っていると聞いた。

 

「まっ、いいよ。それよりヒカリちゃん、このままいけば三ヶ月後の若獅子戦には余裕で出られるんじゃないかな?」

「若獅子戦?」

「あれ、もしかして知らないの? 院生と若手プロが戦うトーナメント戦だよ!」

「若手のプロと!本当ですか!?」

 

そういえば、お兄ちゃんも院生のころにプロを相手にする棋戦に出たって聞いたことがある。

 

それが若獅子戦だったんだ。

 

その時の結果は、一回戦で負けたって聞いたけど、プロになってから一度、優勝してるはず。その後については分からないけど……。

 

そんな機会、まだまだ先だと思ってたのに。まさか、いきなりチャンスがあるなんて。

 

「そうだよ! 私はやっぱり、塔矢アキラ様と打ってみたい」

「蒼葉さん塔矢さんのファンだって言ってましたね」

「うん! 私の憧れだよ」

 

憧れか……。塔矢さんには昔指導碁を打ってもらったことがある。

でも、私の憧れはやっぱりお兄ちゃんかな。

 

「ヒカリちゃんのお兄さんの、進藤プロも出てくるだろうし、若手でもトップの二人と戦えるかもしれないなんて。今からドキドキだよ〜」

「そっか。お兄ちゃんも」

 

お兄ちゃんとはしばらく、連絡取っていない。

院生試験の後からヒカルと顔を合わせる機会がなかったヒカリは近況報告などヒカルに話したい事が沢山あった。今となっては、若獅子戦についても聞いてみたい。

 

けれど、そんな話を聞いて思わずにはいられないことがあった。

 

とにかく、お兄ちゃんと打ちたい。打ってみたい。

 

今の自分がどれだけ追いついているのか、それをヒカリは知りたかった。

 

「でも、一組に。しかも、十六位以内に入らないといけないんだよね」

「ヒカリちゃんなら大丈夫だよ。私はヒカリちゃんとも早く打ちたい」

「が、がんばります」

 

数ヶ月後、そのトーナメントに自分は出れるのか。

プロになることを目標にしていたヒカリに新たに近い所での今後の目標が決まった。

 

五月初めに発表される順位。そこで、一組十六位までの院生が若手プロ十六人を含めた計三十二人で開催される対局。

 

それを叶える為には、最低条件の一組十六位を目指さないと!

 

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