宵闇夜桜魔   作:紅鎌 神邪

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第二段目です。


スパイに休暇はありません!(後編)

「よーし!今日は派手に遊ぶぞー!」

 

「転けないでよね、折角の楽しい気持ちが台無しになるよ。」

 

「魔八くん、大丈夫?」

 

「...ふわぁ~......うみゅ、大丈夫だよ...」

 

 眠い。昨日が特に疲れた。任務のオンパレードで帰ってこれたのが、深夜一時だ。それから直ぐに就寝。さて、今日は上手く泳げるのか。そして楽しめるのか...

 

「なあ!魔八マジで大丈夫なのか?」

 

「あぁ...哲也、大丈夫だぜ...!」

 

 グッとサインすると、哲也は僕と肩を組んだ。そのタイミングで僕も肩を組む。

 コイツは(ひいらぎ)哲也(てつや)。高校で独りで眠そうにしてたところを声かけられて以来、仲良くやってる。

 実は、哲也は僕と同じ、裏社会で活躍してるルーキーらしい。新人ランキングで3位を取っているので結構腕は良い。

 そして、今回来ている哲也の彼女が、観世(かんぜ) アリス。母親がイギリス生まれで父親が日本人のハーフとの事。家は豪邸で、夜桜邸と互角の大きさだ。

 

「そういや、僕何にも分からないのだけど、何して遊ぶの?」

 

「あぁ、そういえば魔八はボーッとしていたもんな。普通だぞ?ボール遊びしたり、水浴びしたり。」

 

「泳がねぇのかよ。」

 

「あぁ!泳ぐ気ないね!」

 

 自信満々に言う哲也。何しにプールに来たんだよと呆れる。やれやれと思っていると、哲也の彼女が近づいてきて哲也の肩を掴んだ。

 

「はいはい、哲也泳ぎに行くよ。」

 

「嫌だー!俺は100人連続ナンパをしに行くんだー!」

 

「友達作るみたいなノリでナンパしに行くな、バカ。」

 

 あーって言いながら連れてかれて行く親友。哀れなり、さようなら…親友…

 

「さて、目を覚ますため一泳ぎしますかね!胡桃も行くか?」

 

「うん行くよ。てか、眠たかったのね。」

 

「あはは、今日の深夜まで夏休みの課題の半分を終わらせたからね。」

 

「えっ!?もう半分も!?」

 

 眠そうに一つ頷く。確かに任務で遅くに帰ってきたけど、その後には、課題に手をつけていた。もう後は読書感想文と自由研究かな。自由研究は、七悪兄ちゃんに手伝ってもらえばすぐ終わるだろう。

 

「うん、ワークばっかりだしね。ちゃちゃっと終わらせたよ。」

 

「魔八くん強すぎ…」

 

 胡桃は素で驚いる。そういや、胡桃は毎年ギリギリまで終わらせないような子だったのを忘れていた。

 それから、プールにて──

 

「うおっ、冷たっ。」

 

「結構冷たいね♪」

 

「胡桃は平気なのかよ…?」

 

「かき氷一気に食べても大丈夫なの知ってるでしょ?」

 

「また別の話だろ、それ。」

 

 正直、凄い冷たい。さっきまで、地上に居たのだから当たり前なのだけど、でも慣れない。これで一泳ぎは、完璧に目が覚めるぞ。

 そう思い、息を長く吸い、顔を水に入れてみる。

 

「……ぷはぁ!」

 

「どう?」

 

「さいっこう!んじゃ一泳ぎしてくるわ!」

 

 僕はこの円型のプールをクロールで1周する勢いで泳ぎ始めた。その間に、胡桃を一人にしたのが悪かったのかもしれないと、後に後悔した。

 1周して帰ってくると、そこには高校生位の男子の2、3人が、胡桃を囲んで男の一人が、腕を引っ張っていた。

 ムカついた。胡桃が嫌がっているのが見えた。気付くと、既に体は動いていた。

 

「彼女の手から離してくれません?」

 

「あぁ?誰だテメェ。」

 

「彼女の彼氏なんですけど。」

 

「は?そんなひょろひょろが彼氏だ?」

 

「そんな口利いていいの?殺すよ?」

 

 呆れた。こんな脅しで僕がビビると思っているのか…怒った時の二刃姉さんの方が、その数十倍ビビるっての。

 一つ、勝率は低いが、思いついたので実行する。

 

「……はぁ…胡桃、息限界まで潜ってて。」

 

「えっ…うん!」

 

 勢いよく水中に潜る胡桃。そのタイミングで、一人の男の腕を持ち、プールから出すと、フワリと上がって地面に打たれた。それから、男二人が、勢いよく来たので一人で構えたが、一人の男が急に倒れた。

 

「哲也…!」

 

「あとは任せたぞ。俺は上をやる。」

 

 なんと、親友が手刀で気絶させたらしい。有難いことに勝率が上がった。

 何が起きたか理解出来ていない男に思い切りアッパーを食らわす。上に飛ぶ男がプールに浮かんだ。

 上では、哲也が、合気を使って全ての攻撃を受け流していた。そして、隙を作ると、ハッと近距離かめ○め波の様な攻撃をして男は気絶した。

 周りの人たちもこの時のことを見ていたらしく、拍手喝采が起きる。

 

「っし。」

 

「ありがとね、哲也。」

 

「おうよ。それよりも、彼女さんは大丈夫か?」

 

「え─くっ!くるみぃぃい!!」

 

 長時間水中に居すぎたせいか、プカーっと胡桃が浮いていた。急いでプールから上げて背中をバンバンと叩いた。

 何回か、叩くと水を吐き出して息が調ってきた。

 

「ゴホッゴホッ…うぅん…まや…?」

 

「大丈夫!?胡桃?」

 

「うん…だいじょーぶだよ。たすけてありがとね……」

 

「!!?」

 

 そう言って安心してホッとした瞬間に、胡桃が僕にキスしていた。何が起きたのか今度は僕の方が理解できないまま、10秒ほどキスしていると、息ができなくなったので胡桃との唇かれ離れた。

 

「なっ…何が…!?」

 

「うーん……!?ごっ、ごめっ…!!」

 

 朦朧としていた意識を取り戻した胡桃は、赤面になった。多分、僕は胡桃以上に顔が赤くなっているだろう。

 周りの反応を確認したところ、キャーキャー言っていた。ただ一人除いては…

 

「よっ、リア充おめでと。」

 

「喧しいわ!」

 

 今日のプールは、結局、胡桃とは会話できないまま終わってしまった。哲也には、クラスの皆には黙ってろと、八重を突きつけて黙らせた。哲也は、ヘラヘラとしていたけど、約束は必ず守る人だと昔から知っている。だけど、この場には、哲也以外のクラスメイトが居たのを忘れたまま帰宅したのだった。




次回、新展開。
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