素晴らしい世界へ鬼島津   作:syunin

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 そして新作日間やったぜ。





五話:俺らは人ぞ

 

 アクセルの街、路地裏。

 

 「それで、それで先に下界に降りたからって私に全部押し付けて……」

 

 「ほうかほうか」

 

 そこには三十にもなる男が、圧倒的上の存在である女神をなだめている姿があった。

 かがんでいる豊久と、エリス神の地上での仮初の姿であるクリスである。

 

 「ふぐっ、ぐしゅぅ……もうおうちかえるぅ」

 

 「(おい)には子がおらんかったでな、ほんのこて難しか……ええい、泣き止め」

 

 へたりこみ号泣するクリスを前に、豊久はつぶやいた。

 豊久は婚姻していたが、子はいなかった。

 どうしたものかと考えていたが、ふとクリスがつぶやく。

 

 「うう、どうすればよかったんですか?どうすれば…………」

 

 その問いに、豊久は立ち上がりながら答えた。

 

 「そげんの、最初から間違えちょる」

 

 その言葉に、顔を上げるクリス。

 

 「お(まん)ら、(おい)らを駒かなんかと考えちょる」

 

 泣きじゃくりながらではあるが、クリスは豊久へ事情(・・)を話し、豊久はそれを把握していた。

 故に、豊久は告げる。

 

 「(わい)らは駒では無か(・・・・・)(ぬしゃ)らがどんな法度(はっと)で動いてるかしらぬが、(おい)には関係なか」

 

 

 

 「(わい)らは人ぞ」

 

 

 

 そう言う豊久を、クリスはいつの間にか泣き止み、静かに見つめていた。

 

___理解(わか)らない。この人が、何を考えているのかが。

 

 そう考え、ぽつりぽつりとクリスは話し始める。

 

 「私は……私たちは、多くの命を思って行動してきました」

 

 豊久は黙って聞く。

 

 「何度も何度も、皆で話し合い、考え、最善を尽くそうとしてきました」

 

 「今まで来た日本人の方たちは、世界を救うため、お金のため、新たな出会いのためなど様々な理由でこの世界へ来ることを了承しました」

 

 「では、あなたはなぜこの世界に来てくれたのですか……?」

 

 そう問いかけるクリスに、豊久は静かに答える。

 

 「(おい)の祖先は、初代鎌倉殿、源頼朝公に命じられ、御家人となった」

 

 クリスはまるですがるような眼で聞いている。

 

 「源氏には、源頼光ちゅう、化生殺しがおった。酒呑童子ん首級(くび)とった、えらい御仁じゃ」

 

 「こん世界には、たくさんの妖がおるち聞うとる。頼光越えは(さぶらい)ん誉ぞ」

 

 「そいで、島津ん旗ば立てる。こいが(おい)が来た理由(わけ)ぞ」

 

  そう言った豊久に、再度クリスが尋ねる。

  

 「では、あなたの行動原理(・・・・)はなんですか?」

 

 今度の問いは、力強くそして覚悟を秘めた問いだった。

 もし我々の道理を違えれば、たとえ越権行為だとしても自らの全力(・・・・・)でもってして止めるという、覚悟が。

 

 「何度も言うちょる、(わい)らは人ぞ。(わい)らは(わい)らの理で疾走(はし)る」

 

 「例えば、(おい)は女首は取らぬ、これが(おい)法度(はっと)ぞ。(わい)らはこれを、士道(・・)とよんどる」

 

 「シドウ……」

 

 豊久の言葉に、クリスが無意識につぶやく。

 

 「シドウ、というものがどういうものか、私にはよくわかりません」

 

 クリスの言葉に、豊久は黙って耳を貸す。

 

 「ですが、貴方に(よこしま)な気持ちがないことは感じます」

 

 「応」

 

 「なので」

 

 クリスが立ち上がり、目元の涙を拭う。

 

 「あたしがクリスとして、君のシドウを見る。そして私がエリスとして、貴方のシドウを見極めます」

 

 「なので!……なので、貴方の徒党(パーティー)に入れてよ、おトヨさん」

 

 その言葉に、豊久は背を向いた。

 そのまま歩き去っていく豊久に、思わずうつむくクリス。

 

 「なにしちょる」

 

 豊久の言葉だ。

 

 「二人だけじゃ、徒党ば組めん。もっと人手ば集めんといかん。行くど、クリス」

 

 足を止め、振り返りながら言う豊久に、クリスは笑顔でうなずいた。

 

 「うん……うん!」

 

 そう言って、豊久のもとへ駆け寄るクリス。

 そして二人が並んだ時にそれは流れた。

 

 『緊急!緊急!』

 

 瞬間、二人は駆けだす。

 

 「またきゃべつち言う奴か」

 

 「いや、もう時期は過ぎてる!様子がおかしい」

 

 『全冒険者の皆さんは、直ちに武装し、戦闘態勢で街の正門に集まってくださいっっ!』

 

 クリスの言葉に答えるように、大音量のアナウンスが響いた。

 

 「正門……まさか、襲撃!」

 

 「そうじゃなあ。戦じゃ!誉じゃ!まさかこんな早う首級(くび)とる機会があっとは」

 

 嬉しそうに笑う豊久。

 その横を黙って駆けるクリス。

 

___見極めます。最期まで、貴方の隣で。

 

 エリス(クリス)はそう思いながら、豊久とともに駆ける。

 

 そして、クリス(エリス)は祈る。

 

___どうか、貴方の道に(ほまれ)があることを。

 

 それはまさしく、女神の祝福(・・)であった。

 

 

 

 

 

 

 「そういえばおトヨさんってキャベツ狩り参加してたの?」

 

 「そがいなもの、知らん。不気味すぎるわ」

 

 あっ、その感想はほかの日本人と同じなんだ。

 やっぱ祖先なんだなあと、クリスは思った。

 

 

 

 

 

 

⊕⊕⊕⊕⊕

 

 

 

 

 

 アクセルの街、正門。

 そこにたどり着いた豊久一行は、事態を把握する。

 

 「俺は、つい先日、この近くに越してきた魔王軍の幹部の者だが……」

 

 「毎日欠かさず爆裂魔法撃ち込んでく頭のおかしい大馬鹿は、誰だあああああー!!」

 

 そう叫ぶのは、デュラハン。

 

 人に死の宣告を行う化け物。

 圧倒的な膂力を持ち、特殊な技を手に入れたモンスター。

 その凄まじい威圧感に、ではない。

 その左脇に、大事に抱えられたそれを見て豊久は呟く。

 

 「首……首が、もうおちとる」

 

 「あれがデュラハン。人ならざるすでに死んだ存在(アンデッド)だよ」

 

 デュラハンとは、騎士が不条理な処刑にて首を落とされた際に恨みをもってアンデッド化するモンスターだ。

 その為、首が最初から落ちてるのである。

 

 「不思議じゃのう。首ば落ちとるのに生きてるとはのう」

 

 「違うよ、おトヨさん」

 

 クリスが嫌悪を交えて話す。

 

 「あれはすでに死んでるの。なのに動くししゃべる。生命の理に唾を吐くような、悪魔と同じまさに私達にとっての不倶戴天の敵」

 

 「なっほどなあ」

 

 そう呟く豊久をよそに、ことは進んで行く。

 怒り狂うデュラハンを前に、とある少女が進んでいった。

 そして名乗りを上げる。

 

 「我が名はめぐみん。アークウィザードにして、爆裂魔法を操る者……!」

 

 「……めぐみんって何だ。馬鹿にしてんのか?」

 

 「ち、違わい!」

 

 名乗りを受けたデュラハンに突っ込まれ、思わず声を上げるめぐみんという少女。

 果敢にも魔王軍の幹部を名乗るモンスターに対峙する小さな少女の姿を見て、当然心配する声も上がる。

 

 「おいおい、大丈夫なのか」

 

 「とはいってもねえ」

 

 相手は彼の高名なデュラハンだ、うかつに手を出すと最悪アクセルの街が廃墟と化す。

 そして、事態は急展開を迎える。

 

 「先生、お願いします!」

 

 めぐみんと名乗る少女の声にこたえたのは、青い髪をしたアークプリースト(首位祭司)

 

 「しょうがないわねー!あたしが_____」

 

 

 「そういえば、頼光(ライコウ)が首無し武者を倒したちゅう話は聞かんな」

 

 

 「_____って、へ?」

 

 その時、ここにいる者の全てが。

 鬼の咆哮を、聞いた。

 

 

 

 

 

 

⊕⊕⊕⊕⊕

 

 

 

 

 

 

 「ぷっは、はははは!」

 

 それは笑い声。

 

 「わはははははははは!!」

 

 まるで、鬼の咆哮の様(鬼島津)な笑い声を上げながら歩きだす一人の男。

 

 「まさか、こんなにも早う頼光越えん機会ばくるとはなあ」

 

 まるで逃げるように、その男の先を開ける人間共。

 そして、そいつは俺の、この魔王軍幹部でありデュラハンの【ベルディア】の間合い一歩手前で止まった。

 

 俺はその男に声をかける。

 

 「貴様、ただ者ではないな」

 

 そうだろう、こいつはただ者ではない。

 何故なら。

 この男には、数多の死者の怨念が纏わり付いている。

 堪らず、俺が質問をする。

 

 「今迄、何人殺した」

 

 「ほうじゃのう、沖田畷(おきたなわて)根白坂(ねじろざか)、朝鮮の役……そがいなこと、覚えきれんわ」

 

 やはり、と俺は納得する。

 こいつの身体から、腰に下げる武器から。

 夥しいほどの、血の香りを感じるのだ。

 

 「貴様の名を聞かせてもらおうか」

 

 「島津豊久。島津家久が子じゃ」

 

 シマヅ・トヨヒサ。

 聞いたことが無い名前だが、似た響き(日本人)の名は何度も聞いている。

 そいつらは武器ばかりが強く、肝心の力量がなってないことが多かったが。

 こいつは楽しめそうだ。

 だが、先ずは作法からだ。

 名乗りを上げさせたのなら、こちらも返さねば無作法というもの。

 

 「俺の名はベルディア。かつては騎士をやっていた」

 

 「きし(・・)ち言うもんは知らんが、(わい)らと似たようなもんかの」

 

 そうか、と一言だけ答える。

 そうか、そうなのだ。

 こいつは俺が誰とか、どういう種族とかには興味が無い。

 ただただ目の前の敵を見据えるだけなのだ。

 

 「フハ、フハハハハハハハハ!!」

 

 堪らず笑い声が漏れる。

 そうだ、こうでなくては。

 

 「いいぞ、シマヅ・トヨヒサ!貴様はいい(・・)!たまらないな!だが___」

 

 だが、俺はデュラハンだ。

 

 「___汝に死の宣告を!お前は一週間後に死ぬだろう!!」

 

 「な、お、おトヨさん!?」

 

 シマヅ・トヨヒサの身体が一瞬、ほんのりと黒く光る。

 銀髪のガキが慌てて飛び出し、トヨヒサの身体をまさぐるが、そんなことはどうだっていい(・・・・・・・)

 

 「なんじゃあ、そりゃ」

 

 「理解できないでいい。いいか、これは時間制限だ」

 

 そうだ、これだけを理解しておけ。

 

 「本来は頭のおかしい小娘に爆裂魔法を止めさせに来たのだが、まあいいだろう。貴様に一週間の猶予を与えた」

 

 そう言い、俺は自分の馬に乗る。

 

 「俺の城に来い。場所はそこの紅魔族のガキにでも聞け。最上階の俺の部屋にて、待つ。期待しているぞ」

 

 「良か、城攻めじゃな!戦じゃな!!」

 

 シマヅ・トヨヒサの言葉を聞き、俺は馬を走らせた。

 この街には低レベルの冒険者しかいないと思っていたが、まさかこんな掘り出し物を見つけるとは。

 ああ、堪らない。

 堪らないなあ、待ちきれないなあ。

 そんな俺の思いが伝わったのか、俺の愛馬の速度が上がる。

 そうだよなあ、お前も滾るよなあ。

 滾る思いを胸にしながら、俺は自らの城へと帰っていった。

 

 

 

 

 

 

⊕⊕⊕⊕⊕

 

 

 

 

 

 

 「(まず)いよおトヨさん!」

 

 「なんじゃあ、クリス。(おい)に傷一つないが」

 

 そう言う豊久に思わず叫ぶクリス。

 

 「いい?おトヨさんは今【死の宣告】を受けたの!このままだと一週間後に死んじゃうよ!」

 

 「ほうか」

 

 クリスの危惧をその一言で豊久は済ませる。

 

 「ほうかって、死んじゃうんだよ!?」

 

 「戦ばやるんじゃ、死ぬも死なぬもわからんものじゃ」

 

 「そういう意味じゃない!」と叫ぶクリスをよそに、豊久は集まった冒険者に向き直り叫ぶ。

 

 「聞けェい!!」

 

 まるで空気が震えるような声に、冒険者たちは動きを止める。

 

 「(おい)らはこれから、あのべるでぃあち言う奴の城ば攻める。そのための徒党をギルドで集める!」

 

 一言一言が、冒険者の間に染み渡る。

 

 「嫌なもんは来んでよか。(おい)らは征くだけ、兵子者(へごもん)のみ来よ!」

 

 「待ってください!」

 

 そう言って歩き始める豊久に、一人の少女が立ちふさがる。

 

 「我が……我が名はめぐみん。アークウィザードにして、爆裂魔法を操る者!」

 

 「ほう、なかなか(かぶ)いた名乗りじゃ」

 

 そう言い、めぐみんの紅い瞳を見つめる豊久。

 

 「…………今回の事は、私の責任です。私が行きます」

 

 「これは(おい)がうけた戦ぞ」

 

 めぐみんの言葉を遮る様に豊久が言った。

 

 「(おい)がうけた戦に、(おい)が行かんでどうする」

 

 「ですが、いえそれならば私もあなたと共に……」

 

 「同情はいらん」

 

 そう言い放つ豊久。

 

 「(おい)は言ったはずじゃ、兵子者のみ来よと。己の意で来ん奴は来んでよか、物の役ば立たんど」

 

 そう言い今度こそ歩き去ろうとする豊久に、さらに待ったがかかる。

 

 「待ってくれ!俺は、佐藤和真(さとうかずま)。あんたと同じ日本人だ」

 

 そう言うのは、茶髪に緑色の目をした少年。

 

 「こいつは俺のパーティーメンバーだ、俺にも責任がある」

 

 「言うたはずじゃ。同情は必要なか」

 

 「それに!」

 

 豊久が断るが、この少年は言葉を続ける。

 

 「それに……俺には勝算がある」

 

 「ほう」

 

 その言葉に、豊久の歩みが止まる。

 

 「なんじゃ、言うてみい」

 

 「ああ、先ず、俺は___」

 

 

 「その必要はないわ!!」

 

 

 「___って、あれ?」

 

 少年、サトウカズマの言葉を遮る様に叫ばれた声。

 それは先ほどの青い髪をしたアークプリーストからであった。

 

 「『セイクリッド・ブレイクスペル』!」

 

 その青い髪の少女が唱えると、豊久の身体が淡く光る。

 そして、少女が嬉々として言った。

 

 「この私にかかれば、デュラハンの呪いの解除なんて楽勝よ!……そして久しぶりね、トヨヒサ」

 

 「お(まん)は……」

 

 「なによ、わかんないの?アクアよ、貴方をここ(・・)に連れてきた張本人よ」

 

 そう言い胸を張るのは、女神アクア。

 豊久を異世界に送り込んだ、張本人だった。

 

 

 





 試しに主観での描写をやってみたんですけど、こんな感じでどうですかね。
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