素晴らしい世界へ鬼島津   作:syunin

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 お待たせ、待った?
 無職になってしまったもんで、だいぶ時間が取れなくなりました。
 今回から九州出身の奴がやらかして音信不通なので、薩摩弁は大分不安定です。
 誤字報告評価感想、励みになってます。
 ありがとうごわた。


六話:それはそれでよか

 

 「それじゃ、魔王軍幹部の撃退?かどうかは微妙だけど、ついでに早すぎる再会を祝って!」

 

 乾杯!!

 

 と、アクアが言った後酒の入ったグラスを一気に傾ける。

 そして、飲み干した所で辺りが静止しているのに気付いた。

 

 「なによ、そんな呆けた顔して。みんなが飲まないと私が飲みづらくなるじゃないの」

 

 そう言いながら流れるように追加の注文をすると、茶髪の少年が声を上げる。

 

 「なによじゃねぇよ。まだこの人が誰なのかわかってないんだからな」

 

 「そうですよ。というか魔王軍幹部が来てたってのによくもまあ酒場で騒げますね」

 

カズマのあきれ交じりの言葉に、眼帯をした少女が賛同する。

 

 「私も同意だ。アクアはそこの御仁と知り合いみたいだが、ここはひとつ自己紹介から行きたい」

 

そう言って立ち上がる金髪の女性。

 

 「私の名はダクネス、クルセイダー(聖騎士)が職業だ。そして感謝を。あの時アクアとめぐみんの間に入ってくれてありがとう」

 

 「構わん。もとより(おい)が戦相手として前に出ただけじゃ」

 

 「そうか……それでも、感謝する」

 

 深々と頭を下げるダクネス。

 

 「あっ、私からも。ありがとうございます、さっきも言いましたが、こほん。我が名はめぐ____」

 

 「さっきやっただろそれ。えっと、俺も先程言いましたが佐藤和真です。カズマでいいです。こっちがめぐみん」

 

 「____って、紅魔族の伝統をそれ扱いしないでくださいよ!」

 

 続くめぐみんの言葉を途中で遮る様にカズマが言った

 そしてぎゃあぎゃあと騒ぎ始めるカズマとめぐみん。

 いつもなら暫く続く事もあるが、今回は思いもよらぬところから止めが入った。

 

 「ほらほら、そこまでにしなさい。トヨヒサが困ってるじゃないの」

 

 「……全く、いつもはトラブルメーカーのお前が言うんだ。余程の人なんだろ。すみません、お名前を伺ってもいいですか?」

 

 アクアの制止に、カズマが尋ねる。

 その先は、赤い衣に小具足を身につける男。

 カズマの言葉に、無言で立ち上がり名乗りを上げる。

 

 「島津。島津中務少輔(なかつかさのしょうほ)豊久。島津家久が子じゃ」

 

 腕を組み、声を上げるは戦国末期を駆け抜けた武士(もののふ)

 酒場の為声を張り上げる様な事をしなかったのは、クリスの再三に渡る説得のおかげである。

 薩摩隼人という利かん坊代表みたいな奴にTPOを少しでも教える事ができたのは、おそらくクリスのみではないだろうか。

 

 「島津……」

 

 「ナカツカサノショウホ……」

 

 「トヨヒサ?」

 

 上から、カズマ・ダクネス・めぐみんの順である。

 

 「島津って、あの島津製作所の?」

 

 「なんじゃそれ」

 

 カズマからの問いに、首を傾げる豊久。

 現代人であり、ヒキニートのカズマからしてみれば、島津と言う名で真っ先に浮かぶのは島津製作所であった。

 因みに理化学に精通する島津製作所には社章として豊久の背負う丸十字が使われているが、豊久との血縁関係はなく武将としての島津家とは無関係である。

 

 「その、ナカツカサノショウホと言う名前は聞き覚えはないのだが、貴方はもしや貴族であるのか?」

 

 「きぞく?なんじゃそれ」

 

 ダクネスはその名の長さから貴族ではないかと疑ったが、勿論そんな事実はない。

 

 「中務少輔というのは、トヨヒサのいた国での官位よ。まあ貴族ではないけど、そこそこのお家よ、島津家は」

 

 ダクネスの問いに代わりに答えたのはアクアであった。

 

 「官位って……なあ島津さん、あんたは日本人なんだよな」

 

 「(おい)は日ノ本ん武士(もののふ)じゃ」

 

 「武士(もののふ)か……はぁ!?武士(ぶし)!?」

 

 驚きの声を上げるカズマ。

 それもそのはず、現代日本人がまさか異世界で武士を名乗る人物と出会うとは思わないだろう。

 

 「あの……ほんとに?」

 

 「なんじゃ、疑うんか」

 

 「カズマさん、断言するわ(・・・・・)。この人は正真正銘の武士よ」

 

 「あっ、そうか。お前が連れてきただもんな、すんませんでした。……失礼でしたよね」

 

 「構わん」

 

 アクアの補足を聞いたカズマが謝辞を示すと、豊久は至極温厚にそれを受ける。

 

 「と言うかクリス、お前固定パーティ組んだんだな」

 

 「それには私も驚いた。しかもこんな強者とはな」

 

 「あはは……まあ成り行きと言うか、目が離せなかったというか」

 

 カズマとダクネスの言葉に、クリスが返す。

 それと同時に、なんか少しらしくないなぁ、クリスは思った。

 というのも____

 

 「はん、なんじゃ。さっきから(おい)の顔を不躾に」

 

 ____豊久が温厚すぎるのである。

 先程のカズマの言葉もそうだ。

 武士であることを疑われるなど、到底許される事ではないだろう。

 そうクリスが考えていると、豊久はカズマに向かって問いかける。

 

 「かずまよ、お(まん)は日ノ本ん民じゃな」

 

 「ああ、えっと。はい、俺は日本人です」

 

 「そうか」

 

 ただそう言い、豊久は酒を口にする。

 

 「(わい)らとは、随分と(ちご)う装いじゃな」

 

 「ああー……随分と()ですからね、俺は」

 

 「なんとなく、わかってた」

 

 そう言い、また酒を口に含む。

 異郷の酒に大分慣れた豊久の喉を通るそれが、クリスにはなんだか苦々しく思えた。

 

 「世の中、無常じゃな……」

 

 豊久の言葉に、めぐみんとダクネスは首をかしげる。

 しかし、カズマとアクア。

 そしてクリスにはわかってしまった。

 豊久の言葉の意味を。

 その心境を。

 その郷愁を。

 

 

 

 

 

 「それはそうと、アクアさん?ちょっとこっちに来てもらえますか?」

 

 「あら?どうしたのクリス。なんか顔が怖いんだけど」

 

 「いいから来てください」

 

 「ちょっと!顔がすっごい怖いんだけど!女の子がしちゃいけない顔してるんだけど!!」

 

 酒場裏にて、哀れな女神の叫び声が響くのは、また別の話。

 

 

 

 

 

⊕⊕⊕⊕⊕

 

 

 

 

 

 宴も終わり、帰路に就く途中。

 顔を真っ青にしたアクアを率いるカズマ一行と、別れた時。

 先に話し始めたのは、クリスだった。

 

 「やっぱりさ、おトヨさんも感じるの?」

 

 「何がじゃ」

 

 「ほら、故郷が寂しいとか」

 

 「(おい)は死んだ」

 

 クリスの言葉を、豊久はバッサリと切り捨てる。

 

 「あの関ヶ原で、(おい)は討たれた。薩摩には帰れんかった」

 

 豊久が歩きながら言う。

 

 「そこに未練はなか。おじ上が薩摩に戻られたのなら、それでよか」

 

 黙ってクリスは隣をついていく。

 

 「あんかずま(・・・)ちいう奴は、日ノ本から来た。それも何十年、いや何百年もあとの日ノ本から」

 

 そこで、漸くクリスは自分の勘違いに気づく。

 

 「見てすぐわかった。数百年後の日ノ本には、もう武士はいないんじゃな」

 

 豊久は、故郷を侘しく思っているのではない。

 武士と言う存在を、侘しく思っているのだ。

 

 「世は無常じゃ。(わい)らはもういらぬものになっていた。それはもう、それでよかかもしれん」

 

 この世界には、結構な日本人が存在する。

 その影響はちらほら見れるし、なんなら王都に行けば実際に活動している日本人にも出会えよう。

 しかし。

 豊久にとっての同郷は、もうこの世には存在しないのだ。

 クリスにはそれがとても悲しいことに思えた。

 思わず俯くクリスに、豊久は歩みを止める。

 

 「じゃっどん、武士はここにおる。島津ん旗は(おい)がもっちょる」

 

 その言葉に顔を上げるクリス。

 豊久の顔は、にんまりと笑みを浮かべていた。

 

 「この浮世にはまだ武士が必要じゃ。ならば、(おい)がやることは変わらぬ」

 

 そう言い、豊久は屈みクリスの頭を撫でた。

 

 「ここに島津ん旗ば建てる。島津家此処にありと、(おい)が声を上げる。やることはなんも変わらん」

 

 そう言い、クリスの頭から手を放す豊久。

 

 「じゃから、そんな顔せんでよか。(おい)(おい)の道を行くのみ。ついてくるんじゃろ?」

 

 その言葉に、クリスは頷く事しか出来ない。

 そんな自分を恥じてしまう。

 クリスは……クリス(エリス)は幸運を司る女神である。

 それと同時に、この世界で亡くなった者を導く存在である。

 そんな自分が、一人の人間の心すら慮ることすらできない。

 そんな事実が、クリス(エリス)にとって重くのしかかる。

 そんな様子のクリスを見て、豊久は困ったように言う。

 

 「気にせんでいいち言っとるのに……そうだ、(おい)は大将じゃ」

 

 豊久は、クリスの頬にそっと手を触れて言う。

 

 「臣とするなら、(おい)についてこい。(おい)にもクリスが必要じゃ」

 

 その言葉に、クリスは豊久の目を見て答える。

 

 「うん……有難う。おトヨさん」

 

 そいじゃ、早うかえってやすむど、と豊久は歩き出す。

 その隣をクリスは歩く。

 ごめんね、と言うクリス(エリス)の一言が豊久の耳に入ったのかはわからなかった。

 

 

 

 

 

⊕⊕⊕⊕⊕

 

 

 

 

 

 「まったく、エリスったら怒りすぎなのよ」

 

 道端にて、アクアがうめく。

 

 「そりゃあまあ、分からなくはねえわ。というか、武士とか呼び出していいもんなのか?」

 

 頭を押さえるアクアに、カズマが尋ねた。

 

 「まあ発案は私だけど、きちんと上の許可もとってるし問題ないわよ。それに人選も完ぺきだと思うわよ」

 

 「そういうものなのか……それなら、もっとこうビッグネーム呼び出してもよかったんじゃないのか?信長とか」

 

 「ダメに決まってるじゃない」

 

 カズマの問いに、アクアは即座に答える。

 

 「あの第六天魔王とか呼び出してみなさい、新しい国とか立ち上げられて、信長VS魔王VSそのほかの国とかになって混沌が生まれるわよ」

 

 「それなら、なおさら武士を呼んだのはやばいんじゃないのか?あの豊久って人も同じことを____」

 

 「それはあり得ないから安心しなさい」

 

 「____って、そうなのか?」

 

 カズマの言葉を遮る様に言うアクア。

 

 「豊久は根っからの侍大将よ。それにエリスもついてるわ」

 

 「そういうものなのか?お前が言うと信用ならないんだが」

 

 「ふふん、あまり舐めないでほしいわね」

 

 カズマの言葉に自信ありげに答えるアクア。

 

 「いままで何人の日本人(・・・・・・・・・・)を送った(・・・・)と思っているの?大丈夫よ」

 

 「すっげぇ不安なんだけど」

 

 アクアの言葉に思わずこぼすカズマ。

 しかし、侮るなかれ。

 女神アクアもまた、れっきとした人を導く神なのだから。

 





 トヨさんちょっとセンチになりすぎかな。
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