素晴らしい世界へ鬼島津   作:syunin

8 / 10

お久ブリーフ。
内容はちょっと短い?かも。
ドリフ七巻凄かったっすね!!!!!!!!!
評価感想御侍史的感激感謝雨あられ。
皆様のおかげで文を書くことができています。
本当にありがとうございます。


七話:そうか

 

 「チェエアエエエアアエエィィイ!」

 

 猿叫と共に振り下ろされた刀が、マンティコアの頭を寸断する。

 そのまま血を撒き散らしながら斃れるマンティコアを前に、豊久は残心を解いた。

 

 「相変わらずというか……すっごい声だね」

 

 様子を見ていたクリスがそう呟いた。

 その言葉に、豊久は不満そうに返す。

 

 「まったく、もう少しまともな奴を相手にしよごたっもんじゃ」

 

 「マンティコアで満足しないのおトヨさんくらいだよ」

 

 「まんてぃこあ(・・・・・・)の首級もよか手柄じゃ。じゃっどん、妖ばっか狩っちょってもなぁ」

 

 「ああ、そういう問題……」

 

 クリスはマンティコアから素材を剥ぎとりながらそう言った。

 結局の所、豊久はこの異界の地に島津あり、と旗を建てたいのである。

 彼らは武士だ、名前をあげるにはやはり戦争が必要と考えるのが普通だ。

 そこまで考えると、ふとクリスの中に違和感が走る。

 

 「あれ?なんか忘れてるような……」

 

 「くえすとは終わったじゃろう。はよう帰ろ」

 

 そう言いながら、豊久は歩き出す。

 取り敢えず違和感は捨て置き、クリスは豊久の後を追った。

 

 

 

 

 

 「おトヨさん。首、隠しきれてないよ」

 

 「…………なんのことじゃ」

 

 「捨ててきなさい」

 

 数回の問答が続いた後、豊久は名残惜しそうにマンティコアの首を捨てていった模様。

 クリスも何だかんだで豊久の手綱捌きに手慣れてきた様だった。

 

 

 

 

 

 

⊕⊕⊕⊕⊕

 

 

 

 

 

 

 「しっかし、高難易度クエストもおトヨさんなら余裕だね」

 

 「はン。妖、いやあげん獣、他愛無か」

 

 クエスト完了の報告を行う為、豊久一行はギルドに向かっていた。

 

 「でも本当におトヨさんは強いね。なんか流派とかあるの?」

 

 「おいはタイ捨じゃ。示現が若い二才(にせ)で流行っちょったがの、あまり学ぶヒマがないごてじゃったが」

 

 「へぇ、タイ捨。そういえば現代にも残ってるのかな」

 

 余談だが、タイ捨流は現在でも熊本県を本拠として伝わっており、日本各地で稽古が行われている。

 

 そのままギルドの中に入っていくと、不意に装備のいい青年が叫び声を上げながらギルドから飛び出してきた。

 

 「ちくしょおおおおお!……ぶげぇっ!?」

 

 そのまま豊久にぶつかり、ひっくり返った。

 

 「なんじゃあ、お(まん)。前見て歩けや」

 

 「うぐぐ……すみません、錯乱してしまい」

 

 そう言いながら起き上がる青年は、ふと豊久の身なりを見て思わず目を見張る。

 

 「これは……小手?それに丸十字と野太刀…………まさか、貴方は日本人なのですか!?」

 

 「おうとも、(おい)は薩摩出身じゃ」

 

 「薩摩……鹿児島ではなく?」

 

 「なんじゃ、そんかごしま(・・・・)ちうもんは。聞いたことも無か」

 

 そういう豊久に、青年はごくりとつばを飲み込むと、思い切って勢いよく立ち上がり、問いを掛ける。

 

 「貴方の、(いや)、貴方様のお名前をうかがってもよろしいですか?」

 

 恐る恐るといった感じに青年が声をかけると、豊久はいつも通りの言葉を返す。

 

 「島津。島津中務少輔(なかつかさのしょうほ)豊久。島津家久が子じゃ」

 

 

 

 

 

 

 

⊕⊕⊕⊕⊕

 

 

 

 

 

 

 

 そのまま流れで場所を移すはいつもの酒場。

 そこには青年、豊久、クリス。そして引っ張り込まれたアクアとカズマの姿があった。

 青年____ミツルギと名乗った男が先ず口を開く。

 

 「というわけで、今日紹介するのはこの日本人の方だ。アクア様はご存じかと思われますが、名前は……」

 

 「知ってるよ、武士の島津豊久さんだろ?デュラハンの一件でもう知り合ってるよ。なあ豊久さん」

 

 「おうとも」

 

 ミツルギの言葉にカズマが返し、豊久も頷く。

 ミツルギはあからさま(・・・・・)に何もわかってないという表情を見せると、豊久に声をかける。

 

 「島津様、今一度詳細な名乗りをお願いします」

 

 「よかじゃろ」

 

 豊久はそういうと立ち上がり、静かだが力強く名乗りを上げる。

 

 「島津家久が一子、日向佐土原(ひゅうがさどわら)城主。島津中務少輔豊久(しまづなかつかさのしょうほとよひさ)

 

 その言葉を聞き一瞬固まるカズマだったが、次第に顔が青くなっていく。

 

 「ひゅ、日向って……」

 

 「当時の国だ」

 

 「佐土原城主って…………」

 

 「一国一城の主ってことね」

 

 カズマの一言一言に、ミツルギとアクアが答える。

 カズマは俯き、プルプルと震えだす。

 

 「だ、だ……」

 

 「そうね、トヨヒサは」

 

 「大名じゃねぇかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 アクアの言葉を続けるように絶叫するカズマの声は、酒場中に響き渡るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

⊕⊕⊕⊕⊕

 

 

 

 

 

 

 

 

 カズマの錯乱が収まると、再びミツルギから会話が始まる。

 

 「やはりその様子だと知らなかったか。少しマイナーではあるが、知る人ぞ知るといった名武将だぞ」

 

 「そんな凄ぇ人……いやお方だったのか」

 

 「凄いなんてものじゃないぞ。初陣で侍首、朝鮮出兵で数々の武功、果てには島津の退き口にて殿(しんがり)を務めた方なんだ」

 

 「マジかよ……すっすいません豊久さん舐めた口聞いてお慈悲をぉぉぉ!」

 

 ミツルギの解説を聞いて思わず豊久の足に縋りつくカズマ。

 

 「構わん、主君にも会えんおいは浪人の様な身じゃ。今まで通り接してくれ、みつるぎもそこまで畏まらじよか」

 

 「ありがとうございますぅぅぅ!」

 

 「恐縮です、島津殿」

 

 豊久の言葉に、カズマは泣きながら、ミツルギは畏まった様子で答えた。

 

 「そいに家臣も一人しかおらんしな」

 

 そう言ってクリスの頭にポンと手を当てると、クリスは思わず赤くなる顔を隠すために俯いた。

 

 (私ってそんなに絆され易かったのかな……)

 

 そうクリスが考えると、様子に気づいたカズマが悪態を吐く。

 

 「かぁーっ!やっぱ男は顔かよ!」

 

 「確かに、文献に残る通りのイケメンですね」

 

 ミツルギが続けて言うと、豊久が笑いながら首をかしげる。

 

 「さっきまで縮こまっちょったんに、かずまは豪胆な奴じゃな!だが、いけめん(・・・・)ってなんじゃ」

 

 「カッコいいってことよ、トヨヒサ」

 

 「自分ではようわからんな」

 

 アクアの言葉によくわからんといった様子で豊久は酒をあおった。

 

 「そ!れ!よ!り!折角戦国武将がいるんだから色々武功を聞きましょうよ!!」

 

 「すみません、僕からもいいですか?何百年たっても、やはり武士というのは男の夢なので」

 

 「俺からもお願いします!」

 

 「おトヨさん、あたしからもいいかな……?」

 

 四人からせがまれた豊久は、仕方が無いといった風に口を開く。

 

 「そうじゃな、沖田畷(おきたなわて)でん戦は……」

 

 

 

 「親父(おやっど)に上帯の結び方を教えてもろうてな……」

 

 「いいお父さんだったんですね」

 

 

 

 「漆川梁(しっせんりょう)ん戦では飛んで船を回って……」

 

 「さっすが島津の侍大将、まるで義経公の八艘飛びね」

 

 

 

 「彦陽(げんよう)城では単騎駆けをしたででな……」

 

 「凄ぇ!単騎で突っ込んで手柄上げたのかよ!」

 

 

 

 「関が原では、(おい)がおじ上に進言しっせぇ、おじ上ん指揮で家康本陣をかすむっごつ抜けてな……」

 

 「敵陣を中央突破……やる事が凄すぎるよおトヨさん」

 

 

 

 

 そうして、豊久の武功語りで夜が更けていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

⊕⊕⊕⊕⊕

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして宴が終わり、豊久とクリスが帰路に就く時、ふと後ろから声がかかる。

 

 「豊久殿!お伝えしたい事があります」

 

 「おじ上なら薩摩に戻られた。そんくらいわかっちょる」

 

 「その後の事です」

 

 声をかけてきたのはミツルギだった。

 豊久は振り返りもせずに応えたが、ミツルギは言葉を続ける。

 

 「徳川家はその後江戸に幕府を開きましたが……二百六十四年後、長州藩と薩摩藩、島津家久様のご子孫であられる藩主、島津忠義様によって倒幕がなされました」

 

 ミツルギの言葉を聞き、少し立ち止まる豊久。

 しかしすぐ歩き出し、豊久は少しこちらに顔を向けただ一言言い放つ。

 

 「そうか」

 

 月明かりの下、豊久が笑みを浮かべているのを、ミツルギとクリスだけが見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

⊕⊕⊕⊕⊕

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、その数日後。

 

 「貴様らに騎士道はないのかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 「あ、そういえば忘れてたね」

 

 クリスが呟いた。

 再び騒乱が、彼らのもとにやってきたのである。

 





次からはいよいよですよぉ。
エタるつもりはないです。
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