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お気に入りがぐっとふえてとてもうれちい。
ベルディアは歓喜していた。
まさか駆け出しの町、アクセルにてあのような猛者と出会えるとは思ってもみなかった。
一週間の猶予、その間にどれだけ準備できるか。
ベルディアはあえて味方の配置を変えずにいた。
あのような猛者に籠城など失礼極まりない、何なら自ら打って出て野戦にでもしようかと考える。
そうしてベルディアは廃城の中で楽しみに待っていたのだ。
一日目、何も来ない。
流石に初日から仕掛けてくるかとも思ったが、あの男から何が飛び出してくるのか想像できない。
故にベルディアは臨戦態勢で廃城にて待ち続ける。
二日目、何も来ない。
もしや戦の準備に手間取ってるか、そんな考えはベルディアには微塵も無い。
ただひたすら、あの男が来るのを待ち続ける。
三日目、爆裂魔法が飛んできた。
ついに来たか、と自らの身に力が滾るベルディアだったが、最初の攻撃以降は何もない。
ハラスメントに徹しているのか、なかなかの戦上手かとベルディアは考える。
四日目、爆裂魔法が飛んできた。
その後は何もない、なかなか焦らしてくれる。
五日後、爆裂魔法が飛んできた。
その後は何もない、だが決戦の日は近い。
六日後、爆裂魔法が飛んできた。
その後は何もない、なれば明日か、とベルディアは決戦に備える。
七日後、爆裂魔法が飛んできた。
今か今かと待ち焦がれるベルディア、しかしいつまでたってもあの男は来ない。
そして夜明けを迎え、八日後。
爆裂魔法が飛んできた。
ベルディア、キレた________!
⊕⊕⊕⊕⊕
「なぜトヨヒサを死なせたぁぁぁぁ!!」
ベルディアがアクセルの町、正門前にて叫ぶ。
ぞろぞろと冒険者がやってくるが、まるで気にせずベルディアは咆哮を放つ。
「貴様らが!あの男をこの街に留めておいたのだろう!わが身可愛さに!!」
ベルディの怒りは収まらない。
「騎士道のかけらもない愚劣共が!!貴様ら一人残らず!!この俺が切り捨てて……」
そんな言葉を吐いていると、冒険者がまるで道を譲るかのように二つに分かれる。
そして、中央を歩いてきたのは____
「なんじゃ、
____豊久、クリス。
二人が歩いてきたのであった。
「あ、あるぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
一週間をとうに過ぎたというのに、健在な豊久に思わず目をむくベルディア。
「なんで!?トヨヒサなんで生きてる!?呪いは!?」
「呪いならアクアさんが祓ったよ」
「祓ったの!?呪いを!?祓えたの!?呪いを!?」
ベルディアの言葉にクリスが返し、尚動揺が収まらないベルディア。
「つーかなんで来ないんだよトヨヒサ!!あれほど心待ちにしてたのに!!めっちゃかっこよく戦いの約束したのに!!!!」
「あぁ……」
ベルディアの問いに、少し居た堪れない豊久がそっと答えた。
「すまん、忘れちょった」
「忘れるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
豊久の言葉に、思わず膝をつくベルディア。
「すっごい楽しみだったのに……めっちゃ心待ちにしてたのに…………」
「そうだったんだ……」
ベルディアのうめき声に、クリスが呟いた。
その様子を見た豊久は、ベルディアの前に立ち、膝をつく。
そして、深々と頭を下げる。
「そんたすまんやった、士道に反した行いやった」
「ええぇ……めっちゃ素直に謝るじゃん、めっちゃ騎士道にのっとってるじゃん」
豊久の様子に、かなり動揺を隠せないベルディア。
「おい、クリスといったか」
「なに?薄汚いアンデッド風情が」
「めっちゃ辛辣……」
ベルディアが、豊久の隣にいるクリスに聞く。
「トヨヒサって、もしかして……」
「腐りきったアンデッドと一緒なのは嫌だけど……ちょっと、アレなのは同意」
薄々勘づいてたベルディアは、ガックシとうなだれた。
「そっかー……どうするよこれ」
「どうもこうもなか」
ベルディアの言葉に、毅然と言い放つ豊久。
「そちらが許すなら、今ここで。野戦と相成ろうじゃらせんか」
その言葉に、思わず顔を上げるベルディア。
そして、豊久と目が合う。
その眼をのぞき見る。
そこには、強い火があった。
「ふっ、ククク……」
そうかそうかと立ち上がるベルディア、それに合わせて立ち上がる豊久。
両者の眼が交差する。
「馬鹿は馬鹿でも戦馬鹿だったか!お前は!!」
「そいで、返答は如何に」
豊久の言葉に、ベルディアは高らかに宣言する。
「野戦だ!戦だ!」
「あいわかった」
そして、両者の言葉が混じり合う。
「「戦で決着を付ける!!」」
⊕⊕⊕⊕⊕
「えっマジ?マジでこれから戦うの?」
その一部始終を見ていたカズマが思わず漏らす。
無論、その思いはカズマだけのものではない。
「おい、あいつ魔王軍の幹部だぞ」
「俺達、あんな強い奴と戦うなんて聞いてないぞ……」
「いくらミツルギさんがいるからって……」
集まった冒険者たちからは、少なからず怖気ずく声が上がっている。
そんな中、踵を返し豊久が戻って来た。
そして冒険者たちを一瞥する。
不安、恐怖。
そんな感情を隠しきれない冒険者たちに、豊久は、告げる。
「そげん怖じかか、あ奴が。なら逃ぐっか、こん街を捨てて」
その言葉に、誰かのゴクリとつばを飲み込む音がした。
「ぎるどんしも、商人の店主も、酒場んおんじも見捨てっせぇ、街ん皆をあ奴に殺さすっとな」
誰も豊久から目を離せない。
豊久はただ事実を告げているだけなのに。
____自分たちが逃げれば、街の皆は簡単に殺されてしまう、という事実を述べているだけなのに。
「そん刀は飾りか、お
片刃の剣を下げた男に、豊久は問う。
「そん杖はただの棒切れか、お前」
杖を携えた魔法使いに、豊久は問う。
「そいで恥ずかしくないんか、お前達」
冒険者全員に、豊久は問いを投げかける。
「は、恥ずかしくないワケ無いだろッ……」
どこかから、声が上がる。
「この剣は、あいつらモンスターを狩って名を上げるためにある!」
片刃の剣を携えた男が言う。
「この杖は、仲間を守るための杖よ!」
魔法使いの女が言う。
次第に、冒険者たちの目に火がともりだす。
「そうだ、俺たちは……」
「家族がこの街にいるんだ……」
「仲間と一緒なんだ」
次々と冒険者たちが声を上げる。
それを見て、豊久が最後の問いをかける。
「這うて悔いて逃げ出すか、疾って街を守って死ぬか、どちらにする!?今ここで決めろ!!」
冒険者たちの返答はすぐ返って来た。
「街を守る!」
「俺達も戦う!」
____俺達は、冒険者だ!!
いつしか、そこに集まる冒険者すべての目に火がともっていた。
それはダクネス、めぐみん、カズマですら例外ではない。
ここにいるすべての
「良か、ならば野戦じゃ、戦じゃ!!皆で
号ッッ!!
冒険者達の勇ましい声が返ってきた。
そしてそれを、クリスは呆然と眺める。
「なんで、どうして……?さっきまであんなに怖がってたみんなが」
「それがトヨヒサの強さよ、エリス」
思わず呟いた
「かつてトヨヒサは、家中の者を一人一人呼び、皆を勇気づけた」
それは、朝鮮の役での話である。
薩摩出身の外交官・荒川巳治から「島津豊久ことのほか美少年なりし。征韓の役に臨み、家中の勇士を一人一人前へ呼んで思いざしせり。それゆえ猛士みなおのれ一人を主君はことに愛せらると思い、みなみな一気に猛戦せしということなりし」との話がされたという逸話が残っている。
「だからみんなついていく。だからみんな背を追いかける。誰もが彼と死地へと飛び込む」
「アクア先輩……」
「そうね……
不思議なことに、その言葉は異なる可能性にて豊久と直面した、あの織田信長と同じものであった。
「さ、エリス。私たちもやるわよ、トヨヒサに置いて行かれる前に」
「わかりましたよ先輩、あとエリスじゃなくてクリスです。今の私は」
「そうだったわね」
この場で二人、いや二柱だけ、豊久にのまれていない者たちの会話であった。
⊕⊕⊕⊕⊕
そして向かい合う両陣営。
ベルディアは様々なアンデッドを召喚し、後方に待機。
対照的に豊久は最前列、その中央に位置した。
「さあ、人間共よ____」
「よぉし、いくどぉ____」
そして、両者が。
「____来るがいい!!」
「____ひっ飛べ!!」
今、激突する!!
また焦らしてごめんなさい。
いよいよ開戦!!