素晴らしい世界へ鬼島津   作:syunin

9 / 10
ちょっと変な切り方だけど脂ののっているうちに投稿しちゃうの。
評価感想誤字報告いつも感謝しています。
お気に入りがぐっとふえてとてもうれちい。


八話:戦さで

 

 ベルディアは歓喜していた。

 まさか駆け出しの町、アクセルにてあのような猛者と出会えるとは思ってもみなかった。

 一週間の猶予、その間にどれだけ準備できるか。

 ベルディアはあえて味方の配置を変えずにいた。

 あのような猛者に籠城など失礼極まりない、何なら自ら打って出て野戦にでもしようかと考える。

 そうしてベルディアは廃城の中で楽しみに待っていたのだ。

 

 

 

 一日目、何も来ない。

 流石に初日から仕掛けてくるかとも思ったが、あの男から何が飛び出してくるのか想像できない。

 故にベルディアは臨戦態勢で廃城にて待ち続ける。

 

 

 

 二日目、何も来ない。

 もしや戦の準備に手間取ってるか、そんな考えはベルディアには微塵も無い。

 ただひたすら、あの男が来るのを待ち続ける。

 

 

 

 三日目、爆裂魔法が飛んできた。

 ついに来たか、と自らの身に力が滾るベルディアだったが、最初の攻撃以降は何もない。

 ハラスメントに徹しているのか、なかなかの戦上手かとベルディアは考える。

 

 

 

 四日目、爆裂魔法が飛んできた。

 その後は何もない、なかなか焦らしてくれる。

 

 

 

 五日後、爆裂魔法が飛んできた。

 その後は何もない、だが決戦の日は近い。

 

 

 

 六日後、爆裂魔法が飛んできた。

 その後は何もない、なれば明日か、とベルディアは決戦に備える。

 

 

 

 七日後、爆裂魔法が飛んできた。

 今か今かと待ち焦がれるベルディア、しかしいつまでたってもあの男は来ない。

 

 

 

 そして夜明けを迎え、八日後。

 爆裂魔法が飛んできた。

 

 ベルディア、キレた________!

 

 

 

 

 

 

 

⊕⊕⊕⊕⊕

 

 

 

 

 

 

 「なぜトヨヒサを死なせたぁぁぁぁ!!」

 

 ベルディアがアクセルの町、正門前にて叫ぶ。

 ぞろぞろと冒険者がやってくるが、まるで気にせずベルディアは咆哮を放つ。

 

 「貴様らが!あの男をこの街に留めておいたのだろう!わが身可愛さに!!」

 

 ベルディの怒りは収まらない。

 

 「騎士道のかけらもない愚劣共が!!貴様ら一人残らず!!この俺が切り捨てて……」

 

 そんな言葉を吐いていると、冒険者がまるで道を譲るかのように二つに分かれる。

 そして、中央を歩いてきたのは____

 

 「なんじゃ、せからし(やかましい)かね」

 

 ____豊久、クリス。

 二人が歩いてきたのであった。

 

 「あ、あるぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

 一週間をとうに過ぎたというのに、健在な豊久に思わず目をむくベルディア。

 

 「なんで!?トヨヒサなんで生きてる!?呪いは!?」

 

 「呪いならアクアさんが祓ったよ」

 

 「祓ったの!?呪いを!?祓えたの!?呪いを!?」

 

 ベルディアの言葉にクリスが返し、尚動揺が収まらないベルディア。

 

 「つーかなんで来ないんだよトヨヒサ!!あれほど心待ちにしてたのに!!めっちゃかっこよく戦いの約束したのに!!!!」

 

 「あぁ……」

 

 ベルディアの問いに、少し居た堪れない豊久がそっと答えた。

 

 「すまん、忘れちょった」

 

 「忘れるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 豊久の言葉に、思わず膝をつくベルディア。

 

 「すっごい楽しみだったのに……めっちゃ心待ちにしてたのに…………」

 

 「そうだったんだ……」

 

 ベルディアのうめき声に、クリスが呟いた。

 その様子を見た豊久は、ベルディアの前に立ち、膝をつく。

 そして、深々と頭を下げる。

 

 「そんたすまんやった、士道に反した行いやった」

 

 「ええぇ……めっちゃ素直に謝るじゃん、めっちゃ騎士道にのっとってるじゃん」

 

 豊久の様子に、かなり動揺を隠せないベルディア。

 

 「おい、クリスといったか」

 

 「なに?薄汚いアンデッド風情が」

 

 「めっちゃ辛辣……」

 

 ベルディアが、豊久の隣にいるクリスに聞く。

 

 「トヨヒサって、もしかして……」

 

 「腐りきったアンデッドと一緒なのは嫌だけど……ちょっと、アレなのは同意」

 

 薄々勘づいてたベルディアは、ガックシとうなだれた。

 

 「そっかー……どうするよこれ」

 

 「どうもこうもなか」

 

 ベルディアの言葉に、毅然と言い放つ豊久。

 

 「そちらが許すなら、今ここで。野戦と相成ろうじゃらせんか」

 

 その言葉に、思わず顔を上げるベルディア。

 そして、豊久と目が合う。

 その眼をのぞき見る。

 

 そこには、強い火があった。

 

 「ふっ、ククク……」

 

 そうかそうかと立ち上がるベルディア、それに合わせて立ち上がる豊久。

 両者の眼が交差する。

 

 「馬鹿は馬鹿でも戦馬鹿だったか!お前は!!」

 

 「そいで、返答は如何に」

 

 豊久の言葉に、ベルディアは高らかに宣言する。

 

 「野戦だ!戦だ!」

 

 「あいわかった」

 

 そして、両者の言葉が混じり合う。

 

 「「戦で決着を付ける!!」」

 

 

 

 

 

 

 

⊕⊕⊕⊕⊕

 

 

 

 

 

 

 

 

 「えっマジ?マジでこれから戦うの?」

 

 その一部始終を見ていたカズマが思わず漏らす。

 無論、その思いはカズマだけのものではない。

 

 「おい、あいつ魔王軍の幹部だぞ」

 

 「俺達、あんな強い奴と戦うなんて聞いてないぞ……」

 

 「いくらミツルギさんがいるからって……」

 

 集まった冒険者たちからは、少なからず怖気ずく声が上がっている。

 そんな中、踵を返し豊久が戻って来た。

 そして冒険者たちを一瞥する。

 不安、恐怖。

 そんな感情を隠しきれない冒険者たちに、豊久は、告げる。

 

 「そげん怖じかか、あ奴が。なら逃ぐっか、こん街を捨てて」

 

 その言葉に、誰かのゴクリとつばを飲み込む音がした。

 

 「ぎるどんしも、商人の店主も、酒場んおんじも見捨てっせぇ、街ん皆をあ奴に殺さすっとな」

 

 誰も豊久から目を離せない。

 豊久はただ事実を告げているだけなのに。

 ____自分たちが逃げれば、街の皆は簡単に殺されてしまう、という事実を述べているだけなのに。

 

 「そん刀は飾りか、お(まん)

 

 片刃の剣を下げた男に、豊久は問う。

 

 「そん杖はただの棒切れか、お前」

 

 杖を携えた魔法使いに、豊久は問う。

 

 「そいで恥ずかしくないんか、お前達」

 

 冒険者全員に、豊久は問いを投げかける。

 

 「は、恥ずかしくないワケ無いだろッ……」

 

 どこかから、声が上がる。

 

 「この剣は、あいつらモンスターを狩って名を上げるためにある!」

 

 片刃の剣を携えた男が言う。

 

 「この杖は、仲間を守るための杖よ!」

 

 魔法使いの女が言う。 

 次第に、冒険者たちの目に火がともりだす。

 

 「そうだ、俺たちは……」

 

 「家族がこの街にいるんだ……」

 

 「仲間と一緒なんだ」

 

 次々と冒険者たちが声を上げる。

 それを見て、豊久が最後の問いをかける。

 

 

 「這うて悔いて逃げ出すか、疾って街を守って死ぬか、どちらにする!?今ここで決めろ!!」

 

 

 冒険者たちの返答はすぐ返って来た。

 

 「街を守る!」

 

 「俺達も戦う!」

 

 ____俺達は、冒険者だ!!

 

 いつしか、そこに集まる冒険者すべての目に火がともっていた。

 それはダクネス、めぐみん、カズマですら例外ではない。

 ここにいるすべての人間(・・)に、火が付いたのだ。

 

 「良か、ならば野戦じゃ、戦じゃ!!皆でべるでぃあ(・・・・・)を斃す!!」

 

 

 号ッッ!!

 

 

 冒険者達の勇ましい声が返ってきた。

 そしてそれを、クリスは呆然と眺める。

 

 「なんで、どうして……?さっきまであんなに怖がってたみんなが」

 

 「それがトヨヒサの強さよ、エリス」

 

 思わず呟いたクリス(エリス)に、いつの間にか隣に来ていたアクアが声をかける。

 

 「かつてトヨヒサは、家中の者を一人一人呼び、皆を勇気づけた」

 

 それは、朝鮮の役での話である。

 薩摩出身の外交官・荒川巳治から「島津豊久ことのほか美少年なりし。征韓の役に臨み、家中の勇士を一人一人前へ呼んで思いざしせり。それゆえ猛士みなおのれ一人を主君はことに愛せらると思い、みなみな一気に猛戦せしということなりし」との話がされたという逸話が残っている。

 

 「だからみんなついていく。だからみんな背を追いかける。誰もが彼と死地へと飛び込む」

 

 「アクア先輩……」

 

 「そうね……狂奔(きょうほん)、とでも呼べばいいのかしら」

 

 不思議なことに、その言葉は異なる可能性にて豊久と直面した、あの織田信長と同じものであった。

 

 「さ、エリス。私たちもやるわよ、トヨヒサに置いて行かれる前に」

 

 「わかりましたよ先輩、あとエリスじゃなくてクリスです。今の私は」

 

 「そうだったわね」

 

 この場で二人、いや二柱だけ、豊久にのまれていない者たちの会話であった。

 

 

 

 

 

 

 

⊕⊕⊕⊕⊕

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして向かい合う両陣営。

 ベルディアは様々なアンデッドを召喚し、後方に待機。

 対照的に豊久は最前列、その中央に位置した。

 

 「さあ、人間共よ____」

 

 「よぉし、いくどぉ____」

 

 そして、両者が。

 

 「____来るがいい!!」

 

 「____ひっ飛べ!!」

 

 今、激突する!!




また焦らしてごめんなさい。
いよいよ開戦!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。