話を聞くと、何か思い残したことがあるらしい金太郎が帰りたくないと主張し始め、深く考えもせずに小春とユウジがお泊りを希望して、いつもならば面倒だと言うであろう財前が今回ばかりはまさかの「そうしましょう」と助け船を出したそうなのだ。
本来ならば予定になかった外泊を許可されるはずもなく、彼らが何と言おうと当初の予定通りその日の内に大阪へ帰るのが当然だろう。
そうならなかったのは、彼らを引率する教師がノリで動いていたからである。
「こんばんは~。先にいただいてますぅ。いやーもうオサムちゃん大歓喜。泊めてもらえる上にこんなおいしいお酒までいただいてしもて、ほんまありがとうございます」
「いーのいーの。どーせガキンチョどもは飲めないんだから気にしたってしょうがない。まあまあもひとつ」
「あやや、こりゃ失礼。おっとっとっと」
四天宝寺中テニス部の顧問、
リョーマの父親、越前南次郎と酒盛りをしているらしい。すでにご陽気なようでへらへら笑いかけてきたかと思えば、すぐさま酒に向き合う姿に思わず閉口してしまう。
「あんな顧問ですいません」
「いや、まあ、いいんじゃない? あれが大人の嗜みっていうか」
「酒くさっ」
「正直に言うのやめなさい」
財前に謝られて悠介は苦笑し、すぐに状況を受け入れた。
そのすぐ後にリョーマが堂々と不満を口にするものだから咄嗟に彼の頭を掴んで止めさせる。
部屋の入口に立った彼らを見て、あっと声を漏らした菜々子が手を軽く振ってきた。悠介が小さく手を振り返して無事を伝える。
「なぁ~ゆーすけ! やろうやー! ワイとダブルス!」
「まだ言ってる」
「ちょっとでええから~!」
「やめとけって言ってるじゃん。これでもこの人起きたばっかりなんだから」
騒ぐ金太郎が先程からずっと悠介に対してねだっているが、流石に目覚めたばかりで無理をさせるのはよくないと、冷ややかな態度でリョーマが断っている。
倒れる直前に比べればスッキリした顔をしていて足取りもおかしくない。とはいえ、極度の疲労で気絶したのは確かなのだ。断りにくそうにしていたが本人も避けたい状況ではあっただろう。
どうも悠介は素直に甘えてくる金太郎に弱いらしい。ともすればどうしようかと本気で考え出す彼に対してもリョーマは憮然とした態度で厳しく注意していた。
居間に現れて財前と合流した悠介は彼にも笑みを見せる。
無事であることを伝えて、表情の変化は乏しいとはいえ心配する様子の財前に、ひらりと軽く手を振ってまず彼の隣へ座った。
「なんか久しぶり」
「昼まで会ってましたよ。まあ、結構寝てたんでそう思ても仕方ないっすね」
「うわ、もう日跨ぐじゃん」
「コシマエ君のお母さんはもう遅いから子供ははよ寝ろって言うてたんやけど、おっさんらが味方になってくれて待ってたんすわ。君が起きるんを」
悠介の傍には何も言わずに杏が座って、背中には先程からやかましい金太郎が張り付いていて、呆れるリョーマは少し距離を置くことにしたようだ。
すでに遅い時間だった。普段ならとっくに眠っている。しかしみんなが集まり、越前家へ泊るという旅行気分がテンションを上げているのだろう。金太郎はもちろん、小春やユウジも何やら楽しそうに小走りで近付いてきた。
「おはよう悠介君! もう夜やからおそようやけどね!」
「俺ら泊まることになりましたー! お、お泊りやぞ! どうする⁉ どうしよう⁉ ひとつ屋根の下に小春がおるんやぞ……! あぁあああ胸の動悸がっ‼」
「あら、なあにユウ君? 何を想像してるのかしら? ウフフフフ……」
「ぐおおおおっ⁉ 唐突に来るええ女ムーヴ! クルわぁ、あかんクルわぁああああっ……!」
「先輩らうるさいっすわ。黙って向こうでいちゃついててください」
「えぇ~いややわぁ財前、もうちょっとぉ、いちゃつくやなんて!」
「そうやぞ財前! へへっ、いくら俺らが仲良しやからってなぁ」
「ちょっとやめてよ、ほんまに嫌やわ! それだけは嫌! 絶対に嫌!」
「ええっ⁉ うそっ……⁉ ほ、ほんまに……? そんなに嫌なん……?」
相変わらずの騒がしさで耳が痛くなりそうだ。悠介は彼らのやり取りに苦笑していた。
財前だけ様子が違う。
クールで落ち着いているのは朝に会った時と同じなのだが、何か違うと思うのは、彼がどこか真剣な態度に見えたからだろうか。
「体は大丈夫っすか?」
「うん、多分。なんとなくスッキリしてる感じはあるし」
「それやったらええやん! なぁ~ゆーすけぇ、やろうやー。ワイあれやってみたい~。一球だけでええからテニスしよ? な?」
「金ちゃん、重いって」
「コシマエの家すごいねんで! 寺にテニスコートあんねん! コシマエのおっちゃんに聞いたら自由に使ってええって言うてたからあそこでできるで!」
後ろから抱き着いただけでなくぐいぐい押されながら顔を覗き込まれる。
玩具を買ってもらいたいとねだる子供のようなしつこさに、周囲の数人は呆れているが悠介自身は悪い気はしていない。真剣に訴えてくる金太郎の声に耳を傾けようとして、深く考えもせず受け入れようとしていた。
「ワイは待ってたんや。テニスしたかったけど、普通にやってたってあかん。ゆーすけと一緒にダブルスがやりたい」
「え? なんでそんなに」
「あのぶわぁってやつがすごかったからやんか! ワイもあれやってみたい! そしたらなんか、もっとおもろいことになりそうな気がすんねん……!」
金太郎の声から様々な感情が読み取れた。うずうずしているような、感動しているような、反対に今にも泣きだしそうな、複雑な気持ちが混ざり合っている。混乱している様子なのは改めて彼を見た悠介にはすぐに伝わった。
なぜなのかは理解できていないがそうしなければならないと強く思っている。それを衝動と言うのだろう。どうしても、という強い意思をぶつけられていた。
助け舟を出したのは意外な人物だった。
杏やリョーマが悠介を気遣うよりも早く、正面に彼を見据えた財前が口を開く。
真剣な態度はやはり勘違いなどではなくて、彼からも強い衝動を感じた。
「俺もおんなじ気持ちっすわ。宮瀬君には悪いけど、今回ばっかりはこいつを止める気になれん」
「え……? 財前君も?」
「ここに残るって決めたんも、君が起きるんまで待ってたんも、心配やったんは確かにあるけどそれ以上に俺の都合や。君と戦ってみたかった」
クールに見える彼からは想像もできなかった強い気持ち。それを恥ずかしがることもなく正直に伝えられる。
うやむやにしていい問題ではなくて、金太郎が相手だった時からそうだったが、正面から受け止めようとした悠介は驚きを隠せずに固まっていた。
「君は俺にはないもんを持ってる。それがなんなんか、自分で戦って知りたい。そんなこと思たんは生まれて初めてや」
「え……や、でも、財前君はすごいプレイヤーだって聞いてるし、俺なんかより全然」
「なんでそう思うんかは自分でもわからん。でもそういうことやないんや。君よりうちの先輩らの方がずっと強いんやろう。でも、あの人ら見ててもこんな気持ちにはならんかった」
「そや! 白石とかは強いけどなんか違うかった! ワイも初めて! ゆーすけのテニス見てたらワイまでぶわぁってなったんや! だから一緒にやってみたい!」
「確かめたいと思ったんや。それまでは帰れん。だから無理を承知で言わせてほしい」
財前にじっと目を見つめられて、金太郎は笑顔で顔を覗き込んでくる。
明らかに表情が変わっていた悠介を見てリョーマはあーあと嘆息し、同じく彼の返事が予想できてしまった杏は苦笑した。
「一球だけ、俺と戦ってください」
「ワイも! 一緒にダブルスやろー!」
「あー、えー……じゃあ、やろうか。一球だけ」
あんな風に頼まれたら断れるはずがない。
大方の予想通り、悠介は二人の頼みを受け入れて小さく頷いた。
家の裏にある寺の境内へやってきて、静かに鎮座するコートへ足を踏み入れた。
リョーマや悠介にとっては通い慣れた場所であったが、初めて訪れる小春やユウジは間抜けな顔でへーだのほーだの言いながら感心した様子をしきりに見せていて、金太郎はついにこの時が来たとはしゃいでおり、財前は何も言わずに冷静な顔をしている。
今日はいつもよりギャラリーが多い。
所有者であろう南次郎はもちろん、ほろ酔いで良い気分のオサムがついてきた。
時折見学に来る菜々子と、すでに彼女と親しくなったらしい杏が肩を並べて立っている。
ラケットを持った悠介がコートの前に立つ。
疲労は残っているとはいえ、大したものではない。
それよりも気になるのは自身に起きた変化について。あの時の自分はどうかしていた。それは確実なのだが、あの瞬間の感覚を思い出すと、どうかしていたいという気持ちを抱く。果たして自分の意思で扱えるのか。試す時が想像よりもずっと早く来た。
「ゆーすけ! な~に緊張しとんねん!」
木製のラケットを握って走ってきた金太郎にバシンと背中を叩かれる。小柄だが異常に力が強いことがたった今わかった。身悶えた悠介は思わず体をくねらせる。
金太郎は一目でわかるほど上機嫌でうきうきしていた。
期待に応えられるのか、それも心配の種だったが、まるで彼の性格を見越していたかのように無邪気な笑顔で覗き込まれる。
「楽しくやろーや! それが一番ええやろ! な!」
「お……うん、そうだな。とにかくやってみよう」
「楽しかったらもっといっぱいやってええんやで! 一球やなくて十球でも百球でも!」
「いや、それは流石に多過ぎ」
裏表がなく、天真爛漫でテンションが高い。何より常に前向きだ。彼に引っ張られて悠介の肩の力が抜けて笑みが柔らかくなる。
早速始めようかというそのタイミングで、金太郎が悠介に向けてんっと手を出した。
「ほなあれやろ。ぶわぁってやつ」
「できるかなぁ? あの時は無我夢中だったし、正直俺もどうやってたのか……」
「えー? わからんのん?」
「手ぇ合わせたらできるのかな? 流石にそれだけじゃ無理か」
指を広げて右手を差し出す金太郎に対し、悠介も手を出して掌を合わせる。
おそらくきっかけの一つにリョーマと手を触れていたことがあると思うのだが、そこから何をすればいいのかわからない。念じればいいのか、それとも強い気持ちが必要なのか。
とりあえず合わせてみた後で困る二人を見て、助力が必要そうだと小春が声をかけた。
「たまにおるんよ。オーラ出して強くなるプレイヤーが」
「へ? たまに居るんですか、そんな人」
「ふっ、自分が出してたのにえらい言いようやないの。アタシは出来へんねんけどね、たまに強い人なんかは奥の手として出してきよんのよ」
「珍しいと思うけどなぁ。変な力やねん。強いからって絶対使えるわけでもないし、でも使える奴はほぼ全員強いねんな」
小春の手助けをするつもりでユウジも解説に加わる。
にやりと笑った小春が意気揚々と言う一方、会話を聞いていた南次郎が興味を持った。
「まあ、アタシは使われへんから詳しいことはわからんのやけどね!」
「えっ⁉ 教えてくれる感じで話しかけてきたのに!」
「可愛いでぇ! お茶目な小春も可愛いでぇ!」
「概念としてはそれとなく知ってるわよ。でもどう使えばいいんですかって聞かれたら自分じゃようわからんから下手なこと言われへんもん」
「じゃあ状況は何も変わらずですね……」
「なんだなんだ、オーラが出たって? 宮瀬君か? そりゃ面白いな」
ズカズカと割って入ってきた南次郎が嬉しそうに笑う。反対にリョーマは不満そうな顔をした。
「入ってこないでよ。向こうで酒飲んでりゃいいじゃん」
「いいじゃねぇか別に。お前親父のことを邪険に扱うもんじゃないよ」
「見せて恥ずかしい親父だから言ってんだって」
「まあそう言うな。テニスに関しちゃこんなに頼もしい大人は居ないぞ。俺に任せなさい」
嘆息する息子を意に介さずに、ずいっと前へ出てきた南次郎が悠介の前に立った。
やる気を見せる姿が変に目立っていてリョーマの気持ちがわからないでもない。
注目が集まった状態で彼は嬉々として話し出した。
「心配するな宮瀬君。君の中で目覚めたんならそれはもう君の力だ。難しく考える必要はないぞ」
「はぁ」
「集中してみろ。その力が目覚めた時、君は何を思ってた? 何かしらの衝動があったはずだ」
言われて悠介は疑問が晴れた気がした。
そうだ、あの試合の最中、初めての感情があったはず。今までにないくらい強い気持ちだった。
ちらりとリョーマを確認して、言語化できないとしてもその気持ちは思い出せた気がする。
改めて金太郎に視線を戻すと目を閉じて、触れたままだった手に意識を集中させる。
きっと一人で目覚めた力ではない。二人だったから、ダブルスだったから目覚めたわけで、自分だけに意識していては使えないはずだ。
二人の体を繋ぐように。相手の存在を強く意識してイメージする。
ライトアップされているとはいえ、暗い夜の闇の中、静かな光がふわりと現れた。
二人を包むその光は優しく、柔らかで、滑らかな動きで循環しているように見える。初めて当事者としてではなく傍から見たリョーマは「ああなっていたのか」と感心した。
悠介と金太郎はオーラで出来た一本の線によって繋がっていて、あれこそが肝なのだろうと誰もが予想する。
自身を覆ったオーラに金太郎が喜びを見せ、感情を爆発させるように笑顔になった。
「おおっ! これやこれ! できるやんかゆーすけ!」
「おおっ、本当にできた……!」
「ふーむなるほど、こりゃ面白い。ひょっとしてダブルス専門か? いやいや判断は早いと思うんだが面白い力だな」
各々が驚きを見せる一方、思わず呟いた南次郎の言葉に反応する者は多かった。
どういう意味だと聞きたがる彼らに視線を向けられて、うほんと咳払いを一つして、状態を整えてから彼は楽しそうに話し出す。
「オーラを纏うプレイヤーは確かに居る。そういう奴は得てして何らかのスペシャリストか、特に秀でた武器を持ってるもんだ。オーラを纏うとそいつが最も得意とする能力をさらに昇華させる。だから大抵はいやらしい奴ばっかりだ。宮瀬君のダブルスが特別であっても不思議じゃない」
「なんか難しい話嫌やなぁ」
「あの、でも大事な話みたいだから。後で俺から説明する」
嫌な顔をする金太郎をなだめて悠介は前のめりに耳を傾けた。
「だがこいつは不思議な力でな、何かの能力を一つ得るだけかと思いきやそうとも言い切れねぇ。結局個人の性質に左右されるからな。一つの場合もありゃ二つ三つ持ってる可能性もある。ただ確実に言えるのは、オーラを纏った人間の身体能力はかなり向上する」
「えっ、そうなんですか?」
「要は強なるってことやろ? そんなん当たり前ちゃうん? こんなん
「いやそれはそうなんだけど。確認は大事じゃんか」
「そりゃ確かにそうだ! 金太郎の言う通り、ごちゃごちゃしたこたぁ言いっこなし。難しいことは置いといて要するに強くなるってことだよ」
金太郎が口を挟んだからか、豪快に笑った南次郎が説明を終えてしまった。彼にしてみれば強くなるという事実だけ理解していればそれで良かったのかもしれない。
後を継ぐようにしてオサムが悠介へ語り掛ける。
「問題なんは何ができて、何ができないか。ちゃんと理解しとく必要があるねぇ」
「あ、そうですね。それは確かに」
「それとオーラは使えたら強いけど不確かなもんや。使用者の精神次第で強さも能力の質も変わるそうやから、あんまりふわふわしとると危ないよぉ」
「うっ……」
心当たりのある悠介は声を詰まらせ、返事ができずに苦々しい顔をした。
どこまで知られているかは知らないが四天宝寺の面々が何か言ったのかもしれない。オサムは悠介の反応を見てからから笑う。
興味を持っている態度を見て再び南次郎が口を挟んだ。
「一芸に特化した強さを手に入れる反面、精神状態に左右される脆さは確かにある。だがこいつに目覚めた奴はある意味扉に手をかけることができたってことだ」
「とびらぁ? どこの?」
「比喩だよ金ちゃん」
「こいつを超えた先にその領域はある。自分の本質を見極めて、己の限界を超えた時、人間の理解が及ばない力に目覚めるのよ」
その力が何なのか。何を意味するのだろうか。
今はわからないのだが、いつかはわかる時が来るのかもしれない。少なくともその可能性は手に入れたのだと指摘されたのだ。
「気になるか? それなら練習あるのみだ。迷わず走れよ青少年」
わからないながらも悠介は自分の胸が高鳴ったのを感じ、期待していることを自覚する。
自分がまだ知らない領域があって、もしかするとそこへ行けるかもしれない。
俺はまだ強くなれる。
その気持ちが彼に笑みを浮かべさせ、その表情を見た金太郎はわずかに羨ましそうに、それ以上に期待と喜びを見せて満面の笑みを浮かべた。
「なあ、それってすごいことやろ? ようわからんけど!」
「まあ、多分、そういう話なんだと思う……」
「すごいなゆーすけ! 今よりもっと強くなれるんやで! 今でも十分すごいのに!」
素直な感嘆に悠介がハッとした。
ここまで素直に褒めてくれる相手が何人居るだろう。部内には何人か心当たりがあるとはいえ、普段行動を共にしている後輩が生意気で口が悪いせいか、褒められた内容よりも素直な態度に感銘を受けてしまい、感動すら覚えていたようだ。
キラキラと輝きながら真っすぐ見上げてくる目が眩しくて仕方ない。自分たちを包むオーラなど相手にならないと思えた。
思わず苦しそうな顔で怯んだ悠介が、おそらく精神に影響されてオーラの流れを乱した。
「うっ、すごい後輩力だ……! 眩し過ぎて立ってられない……!」
「後輩力って何? ワイにそんな力ないで」
「普段ちょっとアレなもので」
「コシマエか? あいつ生意気そうやもんなぁ」
「そうなんだよほんと。俺のこと敬ってないの。口が悪くて反抗的でさぁ」
会話の内容は聞かれていなかったはずだが、視界の外からじろりと睨まれたのを悟って再び悠介がハッとした。何か言われる前から背筋を伸ばして焦り始める。
金太郎は、何も言わずとも彼の心情がダイレクトに伝わってくる状況に驚いていた。
オーラで繋がった影響なのだろう。理解するまでが早く、好奇心が刺激され、プレーが始まる前からこの状態に馴染みつつある。
「でもすごくいい後輩だけどね! 気が利いて優しくて!」
「絶対うそやん。絶対優しないわ。だってゆーすけ焦ってるもん。めっちゃビビりやで」
「そんなことあるもんか! 俺嘘つかないから!」
「って言ってるのがうそやもん。なんやこれ、すごいな! ゆーすけのこと全部わかる!」
「やめろもう! 今のなし! もう終わり終わり!」
「え~っ⁉ なんでやねん! せっかく使えて今からやのにぃ!」
和気あいあいとしている二人の動きや感情に左右され、オーラが明滅したり激しく動いたりと、声のみならず外見まで騒がしい。しかし相性は悪くなさそうだ。
財前に止められるまで二人の会話は止まらず、その間も繋がったままのオーラによって互いの感情は手に取るようにわかり、まるで喧嘩のようなじゃれ合いが楽しそうだった。