五等分の料理人   作:マスターM

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花火大会4

「一花が・・・女優って・・・?」

「一花ちゃんが・・・五つ子って・・・!?」

一花の方を見ながら、上杉とおじさんは言う。

 

「「マジ!?」」

最後には2人の声がシンクロした。

おじさんは一花の手を取って走り出した。上杉が花火はいいのかと聞くと、一花は少し振り返って作り笑顔で「みんなによろしくね」と言い行ってしまった。

 

「追うぞ上杉、三玖」

「待て東雲、三玖は足を怪我してるんだ」

追おうとする紫水に上杉が止める。

 

「分かった。俺が三玖を二乃達の下に送って行くから、上杉は一花を追いかけろ。俺も後から行く」

「分かった!」

紫水が言うと上杉は一花達が向かった方に向かった。

 

「三玖乗れ」

紫水はしゃがんで三久に背中に乗るよう言った。

 

「う、うん///」

三玖の頬がほんのり赤くなり躊躇しながら背中に乗った。

 

「よし、しっかり捕まってろよ」

そう言い紫水は三玖に負担がいかない加減で走り始めた。

 

「す、凄い・・・フータローとは違う。それにあんまり揺れない」

「ん?上杉も三玖を背負ったのか?」

「うん。直ぐにおろされたけど。重いって言われた・・・」

「(上杉ぃ・・・五月の事で学習してないな・・・)三玖は重くない。寧ろ軽い位だ。ちゃんと飯は食ってるか?」

紫水は食堂で五月で言った事から学習していない上杉に呆れ、体重の軽い三玖を心配した。

 

「う、うん二乃のご飯美味しいから残さず食べてるよ」

「そっか・・・今度新作の料理を作ろうと思ってるんだが、よかったら試食してくれないか?」

「!シスイの新作・・・絶対食べたい!」

三玖は二乃の料理が美味いと言い、しっかり食べてるなら大丈夫だと思い、次の料理の試食を頼むと、食い気味に頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「紫水!三玖よかった無事だったのね!」

屋上の扉を開けると二乃が駆け寄って来た。

 

「三玖を頼む。足を怪我してるみたいだ。後は一花だけだが・・・事情は三玖に聞いてくれ」

それだけ言うと紫水は駐車場に急いだ。

 

 

 

 

 

 

紫水が駐車場に着くと、丁度ブルーのスポーツカーに乗ろうとしていた。

 

「一花!」

「シスイ君も来たんだ」

一花は車に乗る所だったが、紫水に声をかけられて、振り返った。

 

「一花一言だけ言う。不安なら昨日の食事の光景を思い出せ」

「・・・うん!」

紫水の言葉に一花は大きく頷いた。

そして車は走り出した。

それを見送った上杉はおもむろにスマホを取り出した。

 

「・・・もしもし、らいはか。四葉に変わってくれるか」

「何をするつもりだ上杉?」

「打ち上げ花火は全員で見れないなら、別の花火を見ればいいだけだ」

「・・・成程な。場所はどこでやるつもりなんだ?」

「近くに公園がある。ここでやるつもりだ」

紫水が上杉に何をするつもりか聞くと、上杉は意味深な事を言ったが、紫水はらいは、四葉、花火の単語だけで上杉がする事を理解し、場所を聞くと、スマホで場所を教えた。

 

「よし俺はバイクをとって来て一花を待つ。上杉は先に行っておいてくれ」

「分かった」

紫水はバイクを取りに、上杉は一花を除く五つ子とらいはを迎えに動いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃の一花は浴衣から洋服に着がえ、オーディションを受けていた。

 

「『卒業おめでとう』」

男性審査員の一人が、相手役のセリフを事務的に読む。

 

「『先生、今までありがとう』」

一花の口元に自然と笑みが浮かび、審査員達が顔を上げ、おやっという表情になる。

 

(うまく笑えてるかな・・・ああ、こんな時、四葉なら、三玖なら、五月なら、二乃ならどうやって笑うんだろう)

一花はゆっくり目をつむって、紫水の言った事を思いだしていた。

 

『一花一言だけ言う。不安なら昨日の食事の光景を思い出せ』

紫水が言った一言。昨日の食事は忘れる事はないだろう。一口目で今まで食べた事がない衝撃の美味さが体全身を巡ったのだ。それに皆笑顔を浮かべていた。

 

(ああ、シスイ君が言った事が分かった気がする)

一花は理解し、頭の中で上杉が一花の前に立っていると想像し笑った。

 

「『あなたが先生でよかった・・・あなたの生徒でよかった!』」

「おお・・・!」

輝くような一花の笑顔に、審査員達の目が釘付けになった。

 

 

 

 

 

 

 

ドーン!ババババ・・・ババ~ン!

フィナーレの花火が夜空いっぱいに有終の美を飾り、最後の火花が消えた。

 

『第十四回、秋の花火大会は終了いたしました・・・』

見物客達がざわざわと帰って行く。

一花と社長は、オーディションを終えてロータリーに戻ってきた。

 

「オーディションは終わったみたいだな」

自分のバイクに寄りかかって紫水は言う。

 

「うん、おかげさまで」

「いやぁ、一花ちゃんにあんな表情がだせるとは・・・それを引き出したのは、おそらく君達だ。私も個人的に君達に興味がわいてきたよ。チュッ♡」

「あははは・・・じゃあ一花連れて行きますね」

一花は頷き、社長は紫水と上杉に興味をもったと言い、投げキッスをする。それを苦笑いで流し、一花にヘルメットを渡しバイクに乗るよう言った。

 

 

 

 

 

紫水のバイクは住宅街を走っていた。

 

「シスイ君どこに向かっているの?」

「近くの公園だ。皆待ってる」

それを聞いた一花は、申し訳なさそうに目を伏せた。

 

「皆怒ってるよね・・・花火大会見られなかったこと・・・」

「そうだな。だが、諦めるにはまだ早い」

バイクが停まり、公園を見る一花。

そこには公園の真ん中で、四人が手持ちの花火をしている。

 

「あ、一花に紫水さん!おかえりなさーい」

四葉が二人に気付いた。

言葉を失くしている一花に、紫水は笑って言う。

 

「打ち上げ花火に比べると、随分と見劣りするがな」

「紫水さん、準備万端です!我慢できずにおっ始めちゃいました」

四葉が立ち上がって、花火をブンブン振り回す。

 

「上杉がこれを考えたんだ。『打ち上げ花火は全員で見れないなら、別の花火を見ればいいだけだ』ってな。それと四葉花火を振り回すな」

「はーい」

四葉は大人しく座った。

 

「二乃悪かったな、全員連れてこれなくって」

「いいのよ。花火大会は一緒に見れなかったけど、今から一緒に花火するんだから。それと・・・ありがとう!」

紫水は二乃に近づき全員連れてこれなかった事を謝るが、二乃は気にしてなかった。

紫水が二乃と話している間に五月が一花を真ん中に連れて行き花火を渡していた。

美しい星空の下の小さな公園が、五つ子の新しい花火会場だ。

 

「じゃあ本格的に始めよっか」

二乃が花火を掲げた時。

 

「みんな!」

一花が四人の注目を集め、「ごめん!」と頭を下げた。

 

「・・・私の勝手で、こんなことになっちゃって・・・本当にごめんね」

「そんなに謝らなくっても」

「まったくよ!なんで連絡をくれなかったのよ。今回の原因の一端はアンタにあるわ」

五月が擁護するが、頭を下げ続ける一花に、二乃が声を上げた。

 

「あと、目的地を伝え忘れたアタシも悪い・・・」

きまり悪そうに視線を外して付け加えるよう言う二乃。

 

「私は自分の方向音痴に嫌気がさしました」

五月が自嘲気味に肩をすくめる。

 

「私も、今回は失敗ばかり・・・」

「よくわかりませんが、私も悪かったということで!屋台ばかり見てしまったので」

三玖と四葉も次々言った。

 

「みんな・・・」

やっと頭を上げた一花に二乃が花火を渡す。表情をやわらげて、一花は花火を受け取った。他の三人も花火を手に、一花を囲む。

 

「お母さんがよく言ってましたね」

五月の脳裏に、幼い頃花火を見ながら母親が娘達に言った言葉が蘇る。

 

「誰かの失敗は五人で乗り越えること。誰かの幸せは五人で分かち合うこと」

「喜びも・・・」

「悲しみも・・・」

「怒りも・・・」

「慈しみも」

四葉、三玖、二乃、一花が続ける。

 

「私達全員で五等分ですから」

最後に五月が締めくくった。

その光景を見ながら上杉兄妹のいるベンチに近づく紫水。

 

「上杉の案上手くいったようだな」

「ああ。これも四葉がらいはに花火を買ってくれたおかげだ。今回は四葉がMⅤPだ」

「そうだな」

 

「行くよ~~!」

その四葉が火をつけ、シュバッと音を立てて花火が打ち上がった。空中で小さくパーンと弾ける。

 

「しょぼい花火だな・・・」

「だが、あいつ等は幸せそうだな」

それを見て上杉は言う。紫水は五つ子を見てそう返した。

 

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