休日中野家
三玖に呼ばれてダイニングテーブルにやって来た四葉は、テーブルの上のモノをじっくり覗き込んで言った。
「何これ?」
真っ黒な固形物体が皿に3つほど乗っかっている。
「コロッケ・・・」
三玖がおずおずと答えた。
「石・・・じゃなくて?」
「味は、自信ある・・・食べてみて」
「じゃあ、食べるよ」
四葉が箸で真っ黒コロッケを挟んだ時、上杉が横からひょいと顔を出した。
「おはぎ作ったのか?いただき」
一つつまみ、四葉と同時に口に入れる。
「コロッケか、普通に美味い!」
「あんまりおいしくない!」
お互いに逆の意見を言う。
「どっち・・・?」
困惑する三玖。
「なんだ、四葉。お前意外とグルメだな」
「上杉さんが味おんちなだけですよ!あんち!あんち!」
「あんちでもなんでもいいよ。そしたら、試験の復習を・・・」
「待って!」
勉強を始めようとした上杉と四葉に三玖がムスッとして言った。
「完璧に美味しくなるまで作るから食べて」
やる気に火が付いた三玖が何度も真っ黒のコロッケを量産する。
「(は、腹が・・・東雲がいれば・・・東雲!?そうだその手がある!!)三玖提案だが東雲に聞くのはどうだ?本職に聞いた方がいいと思うが」
「・・・確かに一理ある」
上杉の説得で三玖は納得した。
そこにオシャレをした二乃と五月がリビングに下りて来た。
「2人共何処か行くのか?」
「ええ、ランチを食べに。上杉君は勉強もしないでなにしているのですか?」
上杉が聞くと五月が答え、上杉は小声で説明する。
(三玖が頑なに美味いコロッケを作るから食えって言って、満足しないから、東雲に意見を聞きに行くんだ)
(ああ、そう言う事ですか・・・)
上杉の言葉に、五月は真っ黒のコロッケを見る。
「そうだ!二乃と五月も一緒に紫水さんのお店に行きましょうよ!」
名案とばかりに四葉が言う。
「何アンタ達勉強しないで紫水のお店行くつもり?」
「三玖の為だ仕方ない」
「フータロー///」
「早く行きましょうよー!」
5人は紫水の店に向かった。
「凄い人だな・・・」
5人の前には待ってるであろう人の列が並んでいる。
「しかたないですよ。食べログの評価4.8あるんですから」
「まあ紫水だし。これを見て」
上杉の呟きに五月が紫水の店の評価をいい、二乃がスマホを皆に見せた。そこには・・・
『100年いや1000年に一度の超天才料理人東雲紫水。神の舌と言われる超味覚と超嗅覚を持ち、料理業界に颯爽と現れた期待のシェフ。幼少の頃から調理コンテストに参加し、過去最高の記録を次々に更新する偉業を達成。料理界の重鎮達のご意見番やアドバイザーをしており、ある時期まで広く活動していた。近年表舞台から引いていたが、現在店を出していると業界では話題になっている。未成年の為画像や詳しいプロフィールは掲示出来ない』
と、記されていた。
「はー東雲って凄かったんだな」
「凄いってもんじゃないでしょう」
「そうですね、紫水君の料理の腕前は只者ではないと思っていましたが、ここまでとは・・・」
「私達そんな凄い人の料理を食べていたんですね」
「シスイの腕は確か・・・」
5人が話していると店のドアが開いた。
「2名様でお待ちの前川様。お待たせいたしました、お席のご用意ができましたので、ご案内致します」
紫水が現れ一番前のお客を店に入れた。
「あれお前達どうした?」
新しく待っているお客の名前を聞いて回っていると、紫水が上杉達に気が付き話しかけた。
「俺と四葉と三玖は三玖のコロッケの意見を聞きに、二乃と五月はランチに」
「私は普通に紫水さんの料理食べたいです」
上杉が言った後に四葉が手を挙げながら言う。
「事情は分かった。お前達裏口に回って待っていろ。五月階段の前まで案内頼むな」
「分かりました」
紫水は裏に回るように言い、五月に案内を頼んだ。
裏に回って10分
「待たせたな入ってくれ」
裏口のドアが開き紫水は上杉達を入れた。
「厨房を通るが少しバタバタしてるから気を付けてくれ」
「アタシ達が厨房に入って大丈夫なの?」
「厨房を通らないと案内できないから、厨房の人達には言ってある」
厨房を通ると聞き二乃が自分達が厨房を通っていいのか聞くと、厨房を通らないと案内出来ないと紫水が言い、全員邪魔にならないよう紫水について行く。
「皆友人が通るが気にしないでくれ」
厨房に入る前に紫水が厨房にいる従業員に一言いい、入った。上杉達は紫水に続いた。
上杉達はゆっくり見たかったが、迷惑をかけてはいけないと思い、キョロキョロしないで真っ直ぐ紫水について行く。
少し歩くと前に入った個室部屋についた。
「今日はここ使う予定はないからここで待ってくれ。10分後にオーダーを聞きにくるからそれまで決めといてくれ。三玖のコロッケの件は、今日俺は前半終わりだから終わるまでこの部屋で待っててくれ」
「わかった悪いな」
「ありがとう紫水」
「「ありがとうございます。紫水君/さん」」
「ありがとうシスイ」
紫水が言うと5人は礼を言った。
「皆は何にします?私はカレーにします」
「そうね・・・アタシは唐揚げ定食にしょうかしら」
「俺はコロッケセットにしよ」
「私もコロッケセットにします」
「同じく」
五月はカレー、二乃は唐揚げ定食、上杉、四葉、三玖はコロッケセットに決めた。
10分後に来た紫水に決めていたオーダーを頼み、雑談をしていると料理が運ばれて来た。
「お待たせしました。まず6種類のスパイスを独自配合したカレーライスです」
「スパイスのいい匂いがします!」
最初は五月カレーが運ばれてきて、匂いで五月はもう涎をたらす。
「次に醤油と塩の麹を使った唐揚げ定食です」
「へーえ麹でここまで変わるんだ」
次に二乃の唐揚げ定食は、前に開店前に作った麹をさらに味わい深くしたモノだ。
「最後にコロッケセット3つです」
そして上杉達が頼んだコロッケセットだ。
「そうそうこれです」
「三玖コロッケはこれが正解だからな」
「私のはもっと黒い」
真っ黒でないコロッケに四葉はこれこれと言い、上杉は正しいコロッケだと三玖に言い、三玖は自分の作ったやつはもっと黒いと呟いた。
「それではごゆっくりどうぞ」
一礼して紫水は退室した。
「それじゃあいただきましょう」
「「「「「いただきます!!」」」」
全員で合掌してそれどれが注文した物に手を付けた。
「んー!!スパイスが効いて美味しいです♪」
「麹一つでここまで味が変わるのね」
「やっぱコロッケってのはこれだな」
「外はサクサクして、中はホクホクして美味しいです」
「流石シスイ。勉強になる」
姉妹達はそれどれ交換して食べてる中、上杉は1人黙々と食べていた。
食べ終わったタイミングを見計らったようにデザートのケーキとコーヒーが運ばれて来た。
「もう少しかかりそうだからこれでも食べて、のんびりしといてくれ」
そう言う紫水に礼を言い、紫水が来るまで雑談をしていた。
そして1時間経って私服姿の紫水が入って来た。
「待たせたな。家の方に移動するぞ」
「あ、紫水お会計は?」
「ん?ああ大丈夫だ。俺のおごりとしてもう払っといた」
「ええ!?悪いですよ紫水君!」
「そうよ!上杉達3人は別としてアタシと五月は普通に食べに来たのに悪いわよ!!」
「流石に悪いな」
「そうですよ紫水さん!」
「流石にそれは悪いよシスイ」
移動すると言い、二乃が会計を聞くと、紫水が既に払ったと言い、二乃達のもう抗議の嵐を受ける紫水。
「まあまあ落ち着け。お代の代わりに感想を聞かせてくれたらいい。まだまだ改良の余地があるかもしれないしな」
「まぁ、紫水がそう言うなら、そう言う事にしときましょう。皆もそれでいい?」
二乃が上杉達に言うと、上杉達は頷いた。
また厨房を通り裏口から出て2階の居住スペースに向かった。
「さて三玖のコロッケだが、明らかに高温の油で揚げ時間が長い。油の温度は約170℃~175℃だ。温度計を使って温度を確認するといい。温度計がない場合はパン粉をひとつまみして、加熱した油に入れて、すぐに浮き上がってきたら大丈夫だ。次にコロッケを揚げるさいは大きい鍋でも油が多くても2個までにしろよ?そうしないと温度が急激に下がって失敗する。コロッケの衣に色がついてきたら一度ひっくり返す。色がついてない状態で触ると衣に穴が空くから注意しろよ。コロッケが浮かんで来たらすぐに鍋から取り出して油を1分程きると完成だ。タネを用意しているから今言った事を頭に入れてやってみろ」
「うん。分かった」
紫水の説明をメモして聞いていた三玖は、メモを置いて鍋の前に立った。
そして紫水の説明通りコロッケを揚げた三玖は最初に自分が作ったコロッケと見比べ落ち込んだ。
「全然違う・・・。でももう大丈夫。フータローまた今度コロッケ作ったら食べてくれる?」
「おう。いいぞ」
三玖が次コロッケを作ったら食べてくれるか上杉に聞くと、三玖が揚げたコロッケを全員で食べていた上杉が頷いた。
「タネはまだ残っているから、持って帰って一花にも食べさせてやれ」
「分かった。ありがとう紫水。二乃今日はコロッケでいい?」
「ええ。帰りに夕食の材料を買って帰りましょう」
三玖が二乃に夕食はコロッケでいいかと聞くと、二乃は夕食の献立を考え、足りない物をピックアップして、買いに行くと言った。
「紫水君今日はありがとうございました」
「悪いな東雲奢ってもらって」
「紫水さん美味しかったです!」
「シスイ今日はありがとう。また教えてくれる?」
「三玖あんまり紫水に迷惑かけちゃダメよ。紫水今日はありがとう」
「気にするな上杉。時間があれば教えよう。二乃も教えてほしい事があれば、勉強でも料理でも教えるぞ」
姉妹達はマンションに、上杉はアパートに向かって帰った。
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