五等分の料理人   作:マスターM

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タブレット ID 47748359


林間学校1

「五つ子ゲーム!」

「イエーイ!」

林間学校に向かう車中で始まったこの五つ子ゲームとは、一花=親指、二乃=人さし指、三玖=中指、四葉=薬指、五月=小指に見立て、隠した手から伸びる指が誰かを当てるゲームである。

 

「私はだーれだ?」

二列目の座席の窓側に座った二乃が問題を出す。

 

「二乃」

真っ先に答えたのは、助手席の三玖だ。

 

「三玖かな」

「四葉!」

二乃の反対の窓側に座った一花と真ん中の四葉が、それぞれ答える。

 

「二乃です」

「三玖だな」

三列目の座席から、五月と紫水が言う。

二乃の後ろに座っていた上杉は指を触って確かめようと手を伸ばした。

 

「ちょっと、触るの禁止!つーか触るな!」

「くっ・・・二乃だ!」

触るのを諦めた上杉は二乃と言った。

 

「残念、三玖でした」

二乃がニマッと笑い、覆っていた手を下ろす。

 

「何故裏返ってる?」

上杉に手の甲を向け、中指を立てている。‶くたばれ〟のサインだ。

 

「くそ・・・次、俺な!」

拳を握って気合を入れる上杉を隣に座った五月が怪訝そうに見る。

 

「やけにハイテンションですね」

「お前達の家を除けば、外泊なんて小学校以来だ。もう誰も俺を止められないぜ!」

暇つぶしのゲームに、そんなエンジン全開で挑まれても・・・五つ子達が、やや引きつり笑いで上杉を見る。

 

「・・・まぁ、もう一時間以上も、足止め食らってるんですけどね・・・」

四葉が窓の外を見ながら言う。

視界は白一色、車の外をビュオオオと雪混じりの冷たい風が吹きすさぶ。

突如の猛吹雪に見舞われ、車は立ち往生を余儀なくされていた。

 

 

 

 

紫水、上杉、五つ子達一行は、やむなく途中の旅館に一拍する事になった。

 

「おおっ、いい部屋だな!」

ごく普通の部屋であるが、上杉は開口一番、喜色満面で言った。

 

「はあ上杉状況を考えろ。男女同じ部屋は不味いだろ」

そう団体の客が急に入り、この一部屋しか空いていなかったのだ。

二乃は最後まで上杉と同じ部屋は断固拒否していたが、姉妹達に宥められて渋々許した。

 

コンコン

 

「お客様すこしよろしいでしょうか?」

「あ、はい今開けます」

ドアがノックされ女将が言うと五月が答え、ドアを開ける。

そこには女将と板前が立っていた。

 

「突然申し訳ございません。こちらに東雲紫水さんがいると聞きまして、少しお願いしたいことが・・・」

「自分が東雲ですが、どうしましたか?」

上杉と話していた紫水が、自分の名前が呼ばれ、女将の前まで行って聞いた。

 

「実は本日板長が体調不良で休んでいるのですが、急に団体のお客様が入られまして厨房の人員だけでは調理が間に合わない可能性がございまして・・・厚かましいのは重々承知ですがお力をお貸しいただけないでしょうか?」

女将はそう言い頭を下げた。後ろにいた板前も頭を下げた。

 

「そう言う事情なら喜んでお手伝いさせていただきます」

「ありがとうございます。早速ですが、今からお願いしてもよろしいでしょうか?」

「はい、大丈夫ですよ。って事でちょっと手伝ってくるな」

紫水は了承し、女将から今からお願いされ、紫水は部屋にいる上杉達にそう言った。

 

「いってらっしゃーい」

「紫水無理しないでね」

「ガンバシスイ」

「頑張って下さいね!」

「期待してます!」

「頑張れよ東雲」

一花達の応援を受け、紫水は女将達についって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

着替えた紫水は二番手の板前・灘から今日の献立のメニューとレシピを渡され目を通していた。

 

「東雲さんには板長が何時もやっている仕込みをお願いします」

「自分でいいのですか?板長不在の今灘さんがやるのかと・・・」

「いえ自分なんて東雲さんの足元にも及びませんので。それに東雲さんが厨房の指揮を執る事に不満を持つ者達はいません。寧ろ喜んでいますよ。なんせアノ東雲紫水の調理を真近くで見られるなんて幸運ですよ」

紫水は灘に板長代理で厨房の指揮を執ってほしいと言われ、灘の勢いもあって了承した。

 

 

 

 

 

紫水は板長の仕込みと並行して板前達にアドバイスと、従業員の賄いも作っていた。

 

「東雲さん凄すぎないか?」

「ああ。あの人1人で5人分の仕事をこなしてるぞ」

「しかもアドバイスも的確ですよ」

「俺味見お願いされて、一口食べたけど・・・言葉で言い表せない美味さだった」

「お前達東雲さんは元々お客様だったんだぞ。口を動かさず手を動かせ」

『『『はい!副長!!』』』

板前達が紫水の動きを見て話していたら、灘から注意され作業に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大皿の天麩羅に伊勢海老のお造り、イワナの塩焼き。それどれの席に牛肉の陶板焼きやら刺身の盛り合わせやら生麩の田楽やら、豪華な夕食が、座卓に並べられた。

 

「すっげぇ~豪華だな!」

「シスイ君が作ったなら、味は間違いないね」

「で、その紫水は?」

「明日の朝の仕込みだって」

「それになんかインスピレーションが湧いたって言って」

「試作始めちゃいました。板前さん達も一緒に盛り上がってました」

上杉が夕食を見て更にテンションを上げ、一花は紫水が作った料理にハズレは無いと言うと、その夕食を作った紫水がここにいない事に二乃が全員に聞くと、三玖が朝の仕込みと言い、続けて四葉と五月も紫水の料理人の情熱が燃え、板前達と一緒に試作していると言う。

 

「紫水って結構料理馬鹿なのかしらね?」

「なんかフータローと同じテンションだった」

「そう言えば紫水君朝の4時から仕込みをしていたと言ってましたね」

「もしかして深夜テンション?」

「紫水さん大丈夫かな?」

五つ子達は紫水の心配をしつつ、紫水の料理に舌鼓をうつ。

 

 

 

 

 

 

 

 

一花達が温泉に向かっていると前から浴衣を着た紫水が歩いてきた。

 

「お前達今から温泉か?」

「あ、シスイ君お疲れ~」

「ええ。紫水美味しかったわよ」

紫水が声をかけると一花が労いの言葉をかけ、二乃が肯定と夕食の感想を言った。

 

「紫水君試作はどうでした?」

「仮だが幾つか検討する事になってる。ここの板長が試食して最終判断をしてもらう事になった。そうじゃないと、朝まで試行錯誤するハメになりそうだったからな」

五月に試作の事を聞かれ、紫水は試作が続きそうだったので、ここの板長に最終判断してもらう事で切り上げたと言った。

 

「ふぁあ~俺は先に寝るわ。おやすみ」

紫水は欠伸をし、そう言い部屋に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪がやんだ夜空に星がきらめき、源泉かけ流しの温泉からは、もうもうと湯気が立ち上がっている。

 

「ん~気持ちいい~!」

二乃が思わず声をあげた。

紫水と分かれた五つ子達は貸し切り状態の露天風呂に浸かっていた。

 

「紫水の美味しい夕食の後に温泉なんて凄く贅沢よね」

「はい。一生分の運を使ったと思います」

「大袈裟」

二乃が言うと五月が同意し、三玖が五月の言葉に呆れた。

 

「それにしても・・・今日のアイツ、絶対におかしいわ」

五人が輪になった湯船で、二乃が上杉を話題にした。

 

「上杉さん、普段旅行とか行かないのかな?」

「徹夜明けのテンションだったね」

四葉が言い、上杉が勝利した七並べの激戦を思い出して一花が苦笑する。

 

「とにかく、あのトラベラーズハイのアイツは危険よ。問題は誰がアイツの隣で寝るか」

五つ子の脳内にウルフ上杉が出現し、遠吠えをする。

 

「・・・あ~二乃、考え過ぎじゃない?私達ただの友達なんだし」

「そうだよ、上杉さんはそんな人じゃないよ!!」

少しの間のあと一花が言い、四葉も言った。

 

「じゃあアンタが隣でいいってこと?」

「う!?」

「上杉はそんなやつじゃないから、心配ないんでしょう?」

「それは・・・ちょっと・・・どうなんだろうね・・・」

二乃にやり込められら四葉は急に勢いをなくして、首まで湯船に沈み込む。頭に巻いたうさぎタオルもくったりしおれてている。

 

「それでは、二乃ならどうでしょうか?」

五月がどうぞ、と言う様に二乃に向かって両手を差しだした。

 

「は!?なんでアタシ!?」

「いえ、二乃なら殴ってでも抵抗してくれそうなので」

「・・・一花、アンタは気にしないでしょ」

「私に来たか~」

「ただの友達なんでしょ」

「うん。フータロー君はいい友達だよ?」

「ならいいじゃない」

「あの~上杉さんの事ばっか言っていますが・・・紫水さんの方は・・・」

誰が上杉の横で寝るかを押し付けていると、おずおずと四葉が言って来た。

 

「紫水?紫水なら大丈夫じゃない?」

「そうですね紫水君なら、間違いを犯さないと思いますし」

「いやいや。実はシスイ君の方が狼だったりして・・・」

紫水を信用している二乃と五月は否定するが、一花がもしかしてと言うと、五つ子の脳内にはウルフ紫水が出現し、遠吠えをした。

 

「ちょっとワイルドでありかも・・・」

「私達は生徒と先生・・・私達は生徒と先生・・・」

「2人共戻ってきなよ・・・」

変な妄想を始めた二乃と、呪文みたいに同じ言葉を繰り返す五月に一花は声をかえ、現実に戻す。

話がまとまりそうになった時、それまでじっと皆の話を聞いていた三玖が突然立ち上がって言う。

 

「平等・・・皆平等にしよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風呂から上がった五つ子達は、部屋の手前でヒソヒソと密談していた。

 

「・・・成程、考えたわね」

と、二乃が頷く。

誰かわからないよう同じ浴衣姿、同じ素顔に、同じ真ん中分けの髪型にした五人が意を決して部屋に入る。

電気の消えた部屋の一番隅っこの布団に上杉、紫水が並んで熟睡しており、紫水の横には衝立が置かれていた。

 

「衝立なんてなかったよね?」

「紫水の考えじゃない?」

「うん。そう思う」

「紫水さん男女同じ部屋は駄目って言ってましたもんね」

「流石紫水君、大人ですね」

五つ子達は紫水の配慮に感謝して眠りについた。

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