ID 47748359
「で?なんで家にいるんだ?」
夕食を食べ終えた後に上杉が何故五月が此処にいるのか聞く。
「ええっと、最初は紫水君の家にいくつもりでした・・・」
「俺も三玖もそう思った」
「しかし二乃が紫水君の家に向かったのを見て、どうするか悩んだ結果上杉君の家に行く事を決めました。紫水君以外他の姉妹は上杉君の家は知りませんから」
「成程な」
上杉は五月の言葉を聞いて納得した。
らいはが寝静まった後、上杉と五月は近所の公園に来ていた。
そこで五月は上杉が知らない以前の身の上を語る。
「母が今の父と再婚するまで私達は極貧生活でした。当然です、五人の子供を同時に育てていたんですから」
━私にとっては、貴方達五人が健康に過ごしてくれるのが何よりの幸せです。
母はそう言って、幼い五つ子姉妹を纏めてぎゅっと抱きしめたものだ。
「そして、女手一つで私達を育ててくれた母は体調を崩し・・・だから私は、母の代わりとなって皆を導くと決めたんです」
池の水面に、毅然とした五月の顔が映る。
「決めた筈なのに・・・上手くいかないのが現状です・・・」
柵に手をかけ、五月はしょんぼりとうなだれた。
「母親の代わりか。だからあの時二乃を平手打ちしたのか」
「はい」
「だったら俺は父親の代わりになろう」
「え?どういう意味?」
急に父親の代わりになると言われ五月は素で聞き返す。上杉は自分の言葉に急に気恥かしくなる。
「こ、こんな時に、お前等の父親は何やってんだって話だ!こういう時こそ父親の出番だろっ!・・・これも家庭教師の仕事として割り切るさ」
「・・・でも貴方が父親はちょっと・・・」
「うるせー、我慢しろ!」
照れて顔を背ける。
「ゼッ・・・ハッ・・・ゼッ・・・ハッ・・・ヒュゥゥ~・・・」
翌日の放課後のグラウンドで謎の呼吸音を発する上杉。
「なにをしている上杉?」
「ハッ・・・し、東雲か・・・。四葉の奴が陸上部の助っ人を引き受けたらしくってな、話の途中で練習に行こうとしたから追いかけたが・・・」
「すぐ力尽きたって事か?」
「ああ」
紫水が倒れている上杉に近づき、何をしているか聞くと、上杉は答えた。
「はぁ。四葉は俺が話す」
「今日は仕事が休みなのか?」
「いいや。今日も仕事だが、月曜日は短い時間、ショートシフトだからな。時間に余裕があるんだ」
「そうか。じゃあ頼む」
「任せろ」
紫水は軽く体をほぐすと四葉を追いかけた。
「よう四葉」
「し、紫水さん!?どうしてここに!!?」
「上杉から話を聞いてな。・・・大丈夫か?」
「な、なにがですか?」
紫水が四葉に声をかけると、四葉は走りながら驚いた。
「勉強にお前自身の事だ。無理してないか?」
「無理なんてしてませんよ・・・私がやりたい事をやっているだけです」
紫水は無理をしてないか聞くが、四葉は無理矢理作った笑顔で言った。
「・・・そっか。ならいい」
紫水は自分では四葉を止められないと悟り大人しく引き下がる。
「やめろって言わないんですね」
「四葉が考えて決めた事だ。他人がやめろと言ったところで、続けるもやめるのも決めるのは四葉自身だからな」
「ありがとうございます」
先程の作り笑顔ではない、本当の笑顔で言う四葉。
「じゃあ俺は二乃の勉強見るから行くな」
「はい!二乃の事お願いします!」
「ああ」
紫水は四葉から離れ帰路につく。
「ただいま」
「お帰りなさい」
紫水が家に入ると既に帰っていた二乃が居間でプリントを解いていた。
「それは?」
「え、ええっと・・・」
よく見るとそのプリントはセロハンテープが貼られており、問題も全て解けていた。
「(これが二乃が引き裂いた上杉のプリントだな。やっぱり二乃は・・・)優しいな」
「なっ!?き、急になによ!」
心で言っていたはずが最後の言葉だけは声に出ていた為、二乃は顔を真っ赤にして紫水に噛みつく。
「急に優しいって何言ってんのよ!?」
「あれ?声に出てた?」
「バッチリね」
「・・・スマン」
素直に紫水は謝った。
「なあ二乃。五月に謝らないか?」
「嫌!」
「まだ叩かれた事まだ根に持っているのか?」
「昔はあんなことする子じゃなかった。なんだか五月が、知らない子になったみたい・・・」
「なあ五月が代わったのは何時からだ?」
「5年前からね」
「そうか(母親が亡くなったから、自分が母親の代わりになると決めたんだろうな)」
五月に謝らないのかと紫水が聞くと、二乃は拒否し五月が代わったと言った。
紫水が何時から五月が代わったのかと聞くと、二乃は5年前と答え紫水は母親が亡くなった為五月が母親の代わりになろうとしたのだろうと思った。
「これはアタシの独り言。アタシ達が同じ同じ外見、同じ性格だったころ・・・まるで全員の思考が共有されているようで、居心地がよかったわ。でも、5年前から変わった・・・皆少しずつ離れていった・・・まるで五つ子から巣立っていくように、アタシだけを残して・・・。アタシだけが、あの頃を忘れられないまま。髪の長ささえ変えられない。だから無理にでも巣立たなきゃいけない。1人取り残される前に」
二乃の固い決意が伝わる。これが姉妹を大切にするがゆえの二乃の心理。
「いいのかそれで?」
「いいのよ。過去は忘れて前を向いていかなきゃ」
「そうか・・・」
紫水はそれ以上言わなかった。
翌朝紫水は早めに登校していた。
「お前が天才とは世も末だな」
「そうか?四葉の運動神経には目を見張るものがあると思うけどな」
グラウンドには朝練を終えた陸上部の面々と四葉がいて、四葉を褒める部長の江場の言葉に五月と一緒にやってきた上杉と、紫水が言う。
「う、上杉さんに紫水さん!?」
「あんたが部長か?期末試験があるのに大会の練習なんてご立派だな」
「江場さん。流石に試験前の練習は、少し自重したほうがいいと思うな」
「大切な大会なの。試験なんて気にしてらんないよ」
江場は全く悪びれない。むしろ笑みさえ浮かんでいる。
「あ?試験なんて?」
「わ~~~っ!大丈夫です!ちゃんとやってますよ!」
色をなして一歩踏み出した上杉の前に、四葉が両手を広げ割って入る。
「四葉無理してませんか?」
「うん、問題なし!」
心配する五月に、ほがらに答える。
「それに東雲君。貴方も料理なんてしてないで一緒に大会に向けて走らない?」
「はぁ?」
「「あ(まずい/よ)!!?」」
江場が料理なんてと言う言葉に、五月が低い声で反応し、上杉と四葉は冷や汗を出しながら五月を見る。
「料理なんてですか・・・」
「四葉!五月を止めろ!!」
「無理!無理ですよ!今の五月怖くって話かけれないです!」
雰囲気で五月がキレかかっているのを、上杉と四葉は察し、上杉が小声で五月を止めるように四葉に言えば、四葉は首を全力で左右に振り拒否する。
「江場さん。誘ってもらえるのはありがたいけど、江場さんが大会が大切なように。俺も店が大切なんだ」
「・・・そう。そう言われると諦めるしかないわね」
五月の雰囲気は紫水も分かっていた為、五月が爆発する前に紫水はやんわりと断った。
その後上杉も紫水も一緒に走るが、案の定上杉は即死に体になるが、走りながら四葉に問題を出す。全部微妙に間違っているが、予想以上に覚えている事に本当に両立させるつもりだと上杉は思った。
その夜、ぼーっと歯を磨きながら、四葉はもう一方の手に持っているスマホに目を落とした。画面には上杉へのメッセージの書きかけで『今日はすみませんでした。私本当は』で止まっていた。
「送らないの?」
四葉の後ろから、いきなり一花が顔を覗かせる。
「うわぁっ!?一花~心臓に悪いよ~・・・」
「私も歯磨き~」
「じゃあうがいしよーっと」
「待って」
コップに手を伸ばそうとした四葉の手を一花が掴む。
「もう・・・また歯ブラシくわえてただけで全然磨けてないじゃん。ほら、貸して。やってあげる」
渋い顔をしている四葉の手から、一花が歯ブラシを取り上げる。
「ほら無理してるから口内炎できてるよ」
「私、無理なんて・・・」
「こーら、喋らない。どれだけ大きくなっても、四葉は妹なんだから。お姉ちゃんを、頼ってくれないかな」
一花の優しい眼差しと温かい手が、四葉の口を開かせた。
「・・・私、部活やめちゃダメかな・・・」
「やめていいんだよ」
「や、やっぱりダメだよ!皆に迷惑かけちゃう!」
四葉は慌てて撤回した。今日の練習終わりに、休みの土日で合宿を行うと江場から言われたのだ。
四葉がそそくさと洗面所から出て行くと、一花はスピーカーモードにしてあった自分のスマホを手に取った。
「ちゃんと聞こえてた?」
『お子様パンツ』
『いや上杉そこじゃない』
四葉の様子を心配した一花が四葉からの本音を聞き出す事にして、それを上杉は五月のスマホで、紫水は自信のスマホをスピーカーで二乃と聞いていた。
「明日陸上部に行こうと思う。皆はどうする?」
『行くに決まってる!四葉を解放してやるぞ』
『アタシは・・・』
『・・・また明日連絡する』
一花が聞くと上杉はきっぱり言うが、二乃は躊躇い、紫水は一言言って電話を切る。直後三玖から明日家に行くとメッセージが来て、紫水は了解と返事した。
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