五等分の料理人   作:マスターM

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クリスマス

冬の寒空に落ち葉が舞う。

約束通り駅全大会に出場した四葉は、陸上部を優勝に導いた。

 

「それじゃあ紫水また後で」

「ああ。店長には話を通しているから大丈夫だ」

12月24日。二学期の終業式が終わり、帰ろうとする紫水に二乃が言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「メリークリスマス。ケーキはいかがですかー」

雪のちらつくクリスマスイブ、上杉はサンタの衣装を着て、紫水が紹介したケーキ屋のアルバイトをしていた。呼び込みに覇気がなさすぎるせいか、皆知らん顔で通り過ぎていく。

 

「ハァ・・・」

と上杉が憂鬱な白い息を漏らした時━━━

 

「すみません」

「はい!・・・えっ」

振り返った上杉の目に、五つ子達の姿が飛び込んできた。

 

「お前等・・・」

「ケーキの配達って出来ますか?家に届けてほしいのですが」

と五月が言う。

 

「はぁ!?配達なんてやってないけど・・・」

話声が聞こえたのか、店から店長が出てくる。

 

「上杉君。こっちはもういいから、行ってあげなよ」

「ちょ!?店長っ、そんなこと・・・」

「上杉君!」

店長はみなまで言わせずケーキの箱を上杉に持たせ、ドヤ顔で「メリークリスマス」と言い、ウインク&サムズアップした。

 

「えぇ~(このバイト辞めようかな・・・でも東雲の口利きで、家庭教師の時よりも低いけど、いい給料もらってるしな・・・)」

上杉は一瞬辞めようと思ったが、給料面がいいので踏みとどまった。

 

 

上杉はサンタ衣装のままケーキの箱を提げ、五つ子達の後についって行った。

 

「おい、お前等の家はこっちの道じゃあないだろ」

タワーマンションとは逆の紫水の店の方に歩いている。

 

「いいの!?このまま次の人に任せて、アタシ達を見捨てるの!?」

五月が新しい家庭教師の履歴書を見せ、上杉は無関心を装っていると、二乃がキッと睨み言った。

 

「俺は二度のチャンスで結果を残せなかったんだ!一回目は東雲が庇ってくれたけど、次の試験だって上手くいくとは限らない。だったらプロに任せるのが正解だ。これ以上、俺の身勝手にお前等を巻き込めない・・・」

上杉は歯ぎしりながら言う。自己嫌悪と悔しさで、五つ子の顔を見ていられない。下を向き、ケーキの箱を持つ手をぎゅっと握りしめる。

 

「そうね・・・アンタはずっと身勝手だったわ。せのせいでしたくもない勉強させられて、必死に暗記して公式覚えて・・・でも問題解けたら嬉しくなっちゃって・・・」

そこで二乃はビシッと上杉を指さす。

 

「ここまで来たら最後まで身勝手でいなさいよ!謙虚なアンタなんて気持ち悪いわ!」

「・・・悪い・・・でも、もう戻れないんだ。俺は辞めた・・・お前等の家に入るのさえ禁止されている・・・」

「それが理由?」

力なくうなだれる上杉に一花がそう聞く。

 

「ああ・・・早く行こうぜ」

投げやりに言うと、上杉の手から一花がケーキの箱を取り上げた。

 

「もういいよ。ケーキの配達、ご苦労様」

「いやまだ・・・」

「ここだよ」

一花は10階建ての少々庶民的なマンションを指さした。

 

「ここが私達の新しい家」

「え・・・?どういう意味だ・・・」

「借りたの。私だってそれなりに稼いでるんだから。・・・まあシスイ君の口利きでここ安く借りれたんだけどね・・・。今日から私達はここで暮らすの。これで障害はなくなったね」

「嘘だろ・・・たったそれだけの為に・・・」

「言いましたよね?大切なのは、何処にいるかではなく・・・」

「5人でいることなんです!」

呆然としている上杉に五つ子は前のマンションのカードキーを取り出し、同じく取り出したハサミでカードを切る。

 

「たった2回で諦めないでほしい・・・。今度こそ、私達は出来る・・・フータローとならできるよ!」

三玖が上杉に近づきながら言う。

 

「無茶苦茶だ・・・お前等後先考えて行動しやがれ・・・。これだから馬鹿は困る・・・なんだか、お前等に配慮するのも馬鹿らしくなってきた。・・・俺もやりたいようにやらせてもらおう。俺の身勝手に付き合えよ?最後までな」

吹っ切れたように言う上杉に一花、三玖、四葉、五月が笑顔で応える。

 

「よし!じゃあケーキを冷蔵庫に入れて行こうか!」

「「「「賛成!」」」」

「え?行くって何処に?」

一花が何処かに行こうと言うと残りの4人が賛成し、何処に行こうとするのかわからない上杉は困惑する。

 

「そんなの」

「決まってるじゃない?」

「紫水君の家でクリスマスパーティーですよ!」

困惑している上杉に一花、二乃、五月が言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後ケーキを冷蔵庫に入れ6人は紫水の家についた。

そして部屋に入ると・・・

 

「あ!お兄ちゃんに五月さん達いらっしゃい!!」

らいはが料理を運んでいた。

 

「らいは!?来ていたのか!!?」

「うん!師匠に連絡をもらって」

「し、師匠?」

真っ先に上杉がらいはに声をかけ、らいはが言った師匠と言う言葉に疑問符を浮べた上杉。

 

「紫水さんのことだよ~。師匠の手伝いで一緒に料理した時に凄い動きで思わず弟子入りしちゃった」

「まあ勢いにも負けたのもあるが、中々磨けば光る原石だから許可してしまった」

らいはの後ろから紫水がそう言いながら出てきた。

 

「パーティーの準備は終わっている。らいはちゃん皆を居間に連れて行ってほしい。俺はメインの仕上げにかかる」

「わかりました!お兄ちゃん皆こっちだよ!」

らいはの案内で居間に行くと・・・

 

ツリー型のポテトサラダに、じゃがいもガレット、一口サイズのピザ、カルボナーラ、パイシチュー、スペアリブのほろほろ煮込み、唐揚げ、ブッシュドノエルが並んでいた。

 

「おお!美味しそう!」

一花が目を輝せながら言う。

二乃達も同じ気持ちか首を縦に振る。

 

「師匠がもう直ぐメインを持って来るから、皆座って」

らいはの言葉に従い上杉達は席に着いた。

そして5分後・・・

 

「待たせたな。これがメインディッシュのローストビーフだ」

紫水の手には綺麗な赤身のローストビーフが並んでいた。

 

「美味そうだ!」

滅多に食べれない肉に上杉は興奮する。

ローストビーフをテーブルの真ん中に置き、紫水が一人一人のワイングラスに飲み物を注ぎ、最後に自分のグラスに注ぎグラスを掲げた。

 

「上杉と五月が限界みたいだから、挨拶は省いて・・・メリークリスマス!」

『『『メリークリスマス!!』』』

紫水が言うと、全員がグラスを掲げ、料理に手を伸ばす。

 

「このポテトサラダどこから食べようかな」

「表面はカリッとしてて、中はホクホク。シンプルだけに紫水の腕の高さがでてるわ」

「このピザ餃子の皮だ。こういう使い方あるんだ・・・」

「このカルボナーラ凄く濃厚です!」

「パイ生地がサクサクで、その下のビーフシチューにつけて食べるとさらに美味しさ倍増です♪」

「すげぇ肉がトロトロだ」

「作り方見てたけど、凄いジューシーな唐揚げ」

全員メインディッシュのローストビーフ以外を一口食べ、ある程度摘まむと、皆同時にローストビーフに手を伸ばす。

 

「凄い柔らかい!」

「端切れまでパサついてない」

「凄くジューシー」

「このソースをつけるとお肉がフルーティになります!」

「幸せです!」

「ケーキも上手いぞ!」

「チョコの味が甘すぎないのに、味が濃厚だよ」

それどれが感想を言い、クリスマスパーティーは賑やかに終えた。

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