「行ったようだな」
「上杉君!?見ていたのですか?」
気まずい表情で紫水を見ている五月と四葉のところへ上杉が寄って来た。
「想像通りの手強そうな親父だったな」
「そうね。あの人が言っている事は正しい・・・。けど、正しさしか見ていないんだわ」
二乃も来て、非難の眼差しを父親の帰って行った方に向ける。
「責任重大になったな東雲」
「俺は出来る事しか言わない。四葉だけじゃない。一花も二乃も三玖も五月も全員が赤点を回避出来ると信じている」
上杉が紫水に言い、紫水は何ともないよ言う。
シャカシャカシャカ。深夜の台所でボウルをかき混ぜる音がする。
「まだ起きてたんだ」
寝室から一花が出てきた。
「一花・・・起こしてごめん」
三玖はパジャマの上にエプロンをつけ、チョコレート作りをしていた。
「どう調子は?そろそろフータロー君の好みを把握してきたんじゃない?」
三玖は上杉に様々なチョコを食べさせ、好きな味をリサーチしていた。
きたる2月14日に向けて。
一花が台所に回って覗くと、ドロドロの液状チョコがボウルの底で骸骨を描いていた。
「えーと・・・ドクロマーク出てるけど・・・」
「これは大丈夫なほうのドクロマーク」
「大丈夫なほうとは・・・」
苦笑を浮べる一花。
「シスイ君には相談しないの?前の時のコロッケはしてたのに」
「・・・シスイは忙しそうだし」
「そう言えばウチのクラスの女子達も、シスイ君に相談してたな」
そうバレンタインデーに向けて学校の女子の大半は紫水に相談し、紫水主催のチョコ作りが学校の食堂で行われていた。
紫水が担任の木村に相談すると、とんとん拍子で話が決まり、放課後の2時間だけ食堂が使えるようになった。条件としては開催日は教員のおやつを作る事が条件と言われ紫水は了承した。
「うーんシスイ君が駄目になると・・・、私も料理の腕はイマイチだしなぁ・・・あ、そだ!」
流し台に両ひじをついて思案を巡らすと、一花は三玖にニコッと微笑みかけた。
「私の知り合いに料理上手な人がいるんだ。その人に教えてもらいなよ」
「新学期が始まって一週間・・・せっかくの日曜日・・・これからって時に・・・」
1月14日。こたつを囲む5分の4人に、上杉は声を大にして言う。
「何故五月がいないっ!?この前『ぜひやってください!そして確かめてください!』って言ってたじゃん!」
両目に☆マークを浮べて下手なモノマネまでしてみせる上杉を、一花と三玖が宥める。
「ってか東雲の店も休みだったから、てっきり東雲も来てると思ったんだがな・・・」
「ん?シスイ君のお店しまってたの?」
「ああ。臨時休業って張り紙があった」
上杉の言葉に一花が聞くと上杉は張り紙がしていたと言う。
「紫水が休むのはわかるけど、お店を閉めるなんてね・・・」
「何かあったのかな?」
「これは只事じゃないですね」
二乃、三玖、四葉が紫水の心配をする。
「東雲の事は置いておいて、五月だ五月!」
「でも本当にどこ行ったんだろう・・・」
「ほら、五月はあれよ・・・今日は『あの日』なのよ」
首を傾げる四葉に二乃がボソッと言うと、姉妹に緊張が走る。
「あ!?なんだよそれ!ハッキリ言え!」
繊細ワードなど知らんばかりに上杉言う。
「直球に聞いてきた・・・」
「ノーデリカシーの名をほしいままにしてるね・・・」
呆れる三玖と一花。四葉が上杉におずおずと説明を試みる。
「あの・・・何と言うか、非常に言いづらいのですが・・・」
「なんだ?それは試験より大切なことなんだろうな?もしそうじゃないなら許さねぇぞ・・・」
ゴゴゴゴと四葉に圧をかける。
「いや、普通に母親の命日」
二乃があっさり言う。
「・・・いや・・・お前らだって同じ母親じゃ・・・」
「あはは・・・正確には今日じゃないんですが。お母さんが亡くなったのは8月の14日です」
「月命日ってやつか」
「そっ。あの子は律儀に、毎月14日に墓参りに行ってるのよ」
とある霊園
「紫水君?」
「・・・五月か」
喪服を着た紫水を見かけ、思わず声をかけた五月。
「紫水君何故ここに?」
「今日が命日なんだ両親の」
「え」
紫水の言葉に五月は硬直した。
「5年前の今日に交通事故で亡くなった」
「紫水君のご両親も5年前に・・・」
「ああ。お前達の母親と同じだな」
「ッ!?誰から聞いたのですか?」
「中野さんからだ」
「そうですか・・・」
少しの沈黙の後五月が言う。
「あの・・・私も手を合わせさせてもらってもいいですか?」
「ああ2人共喜ぶと思うしな」
五月は東雲家の墓の前に屈み手を合わせる。
「五月も誰かの墓参りか?」
「今日は母の月命日なので」
「そうか。お礼ってわけじゃないが、俺も手を合わせてもいいか?」
「はい」
立ち上がった五月に紫水が聞くと、五月は答え今度は紫水が五つ子達の母親の墓参りをする事になった。
「お、先客なんて珍しいな」
紫水と五月が並んで墓に手を合わせていると女性の声がした。
その方向に顔を向けると、手に供花を持ち、黒いスーツを着たメガネの女性が歩いてきた。
「えっと・・・初めまして」
「うげっ!?先生・・・?」
お化けでもみたかのように青ざめた女性。
ごとぱずのフレンド募集してます。
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