五等分の料理人   作:マスターM

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遊園地

ボロボロの黒い物体から、ドクロマークの煙がボンと立った。

 

「うーん・・・」

三玖が唸っていると、ガチャッと玄関のドアが開き、制服姿の二乃が帰って来た。

 

「あれ?一人で何してんのよ?」

「二乃・・・今日は学校で勉強会のはずじゃ・・・」

「一花に呼ばれて戻ってきたのよ」

「え・・・一花の言っていた人って・・・」

三玖が顔をしかめる。

外廊下の窓のカーテンの隙間から、一花がこっそり中を覗いていた。

それを見た三玖は一花が言っていた、料理上手な人は二乃だと理解した。

 

「何これ?美味しくなさそうだし、滅茶苦茶じゃない。こんなのあげて誰が喜ぶのよ。アンタは味オンチと不器用のダブルパンチなんだから、おとなしく市販のチョコ買ってればいいのよ」

小馬鹿にして笑い、ボロクソに三玖の手作りチョコをこき下ろす二乃は、チラリと三玖の様子をうかがう。

 

「うるさい!」

頬を膨らませ、きゅっとこぶしを固める三玖。何時ものように言い返してくるだろうとおもいきや・・・。

 

「うるさい・・・」

目にいっぱい涙を溜め、消え入りそうな声をだすではないか。

 

「ヒッ・・・!」

言い過ぎてしまった事に気付いて、二乃は青ざめた。

 

「でも料理は真心って言うし、手作りには意味があるのよね。それに少し下手っぴのほうが愛嬌あるし、これなんて虫っぽくて可愛いわ」

超早口で、さしてフォローになっていないフォローをする二乃。

 

「最近、フータローがコロッケ以外の私の料理を食べてくれない・・・心当たりはある・・・不器用なのも知ってる・・・だけど作りたい・・・思わず食べたくなるようなチョコを・・・教えて下さい。お願いします」

「・・・」

二乃に向かって三玖は深々と頭を下げた。

二乃は、調理台の上の三玖が作ったチョコに向き直った。

 

「油分と分離してるわ。湯煎の温度が高いのね。それに生クリームを冷たいまま使ったでしょ?舌触り最悪・・・全く面倒くさいわ」

頭を下げたまましょんばり聞いている三玖に、「準備しなさい」と声をかける。

三玖は驚いて頭を上げ、嬉しそうに笑顔になった。

 

「・・・うん!」

元気よく返事をすると、二乃と並んでボウルと泡立て器を手に取る。

そんな三玖を見て、二乃はフッと笑った。

 

「そいえば二乃はシスイにチョコを渡さないの?」

「な、何言ってんのよアンタは!?」

三玖からの不意打ちに狼狽える二乃。

 

「何で紫水なのよ!?」

「だって二乃、林間学校からよくシスイの話するし、家出の時も真っ先にシスイの家に行くし」

「そ、それは・・・」

三玖の指摘に二乃は口をもごもごさせる。

 

「・・・林間学校の時は紫水に助けられたし、家出の時は知り合いで近場だったのが紫水の家だっただけよ」

「でも二乃、シスイのお店で働いている時凄くイキイキしてた。料理を学ぶこと以上に嬉しそうだった」

「・・・」

三玖の追撃に口を閉ざす二乃。

 

「二乃がどう思っているかわからないけど、渡すだけでもいいと思う」

「・・・そうね。紫水には勉強に料理と何かと世話になってるし、渡すだけ渡してみるわ」

三玖に言われ二乃は紫水にチョコを渡す事を決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二月上旬

 

上杉は国語の問題集を手に、熱弁を振っていた。

 

「いいか、よく聞け。ここでは作者の気持ちを答えるというより、読者のお前らが感じた事を書くわけで・・・(くそっ、行き詰ってる・・・)」

何の反応もないと思ったら、五つ子達は何ラウンドも終えたボクサーのようなグロッキー状態だ。それでも三玖は勉強に取り組む姿勢を見せているが・・・。

 

「上杉流石に皆集中力の限界だろう」

「・・・ああ(それに何がわからないのかわからない!どう教えたらいいのかわからない!IQの差とはなんと残酷っ!)」

紫水に咎められ、歯を食いしばって天を仰ぐ上杉を二乃がジトッと見る。

 

「よくわからないけど、失礼なこと言われてる気がするわ」

「シスイ君も言ったけど集中力の限界だよねぇ」

一花は器用で飲み込みが早いが、やはり仕事との両立で疲労困憊の様子。

 

「連日勉強漬けですからねぇ」

不器用な努力家だけに、疲れも人一倍の五月。

 

「わ、私はまだできるよっ!」

四葉は強がるが、体力はあっても、肝心の頭が動かないのではいかんともしがたい。しかし成果は出ているが、確実に赤点を回避するにはあと一押ししたいと思う上杉は、『良い教師になる為のいろは』をぱらぱらめくり、ある一文に目を留めた。

 

「『詰め込み過ぎは逆効果』・・・時には飴も必要か・・・」

教師にも思いきりが必要。上杉はビシッと人差し指を立て、五つ子達に宣言した。

 

「午後からはオフにしよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次はあれに乗りましょう!」

「五月ちゃん・・・ちょっと待って・・・」

「おーい五月、一花を休ませてやれ。代わりに俺が付き合う」

恐怖系はダメなくせに絶叫系にはめっぽう強いと分かった五月が、ぐったりしている一花の腕をグイグイ引っ張り、次のアトラクションに向かおうとするのを紫水が止め、一花の代わりに付き合うと言う。

 

「あ、ありがとうシスイ君・・・」

「一花は座って休んでいろ。三玖、一花に水でも買ってきてやれ」

「うん」

「紫水君早く行きましょう!」

紫水に礼を言う一花に、紫水は三玖に水を買ってくるように言うと三玖は頷き、五月は紫水の腕を引っ張っていく。

 

上杉が五つ子達を連れだしたのは、電車で小一時間の場所にある遊園地である。

午後だけでも勉強の事を忘れ、思う存分羽を伸ばせと上杉の言葉通り遊園地を楽しむ五つ子達。

 

「しっかし恰好つかないね、フータロー君」

「うぐっ!」

「入園料を払う前に、紫水が払っちゃうし」

そう上杉が入園料を払う前に紫水が先に入園料を払っていたのだ。

言い出しっぺの上杉が払わず紫水が払った事に上杉は恰好つかなく凹む。

 

「ええい!凹んでいる場合じゃねぇ!お前らも今日は勉強の事は忘れて遊び回れ!五月みたいに!!」

「あんな絶叫系ばっかは嫌よ」

「同感」

「うん」

五月みたいにと言う上杉の言葉をそのままの意味で受け取った、二乃は否定し、三玖も一花も頷いた。

 

「そう言う意味じゃねーよ!?」

「あれ?そう言えば四葉はどこかしら?」

上杉のツッコミをスルーし、四葉がいない事に二乃が気づいた。

 

「お腹痛いからトイレだって」

三玖がスマホのメッセージを確認して伝える。

 

「何故直接言わない・・・じゃあ俺も便所」

何気なく顔を上げた上杉は小走りで駆けていく。

 

「紫水君次はあれに乗りましょうよ!」

「はいはい」

二乃達の前を、紫水の腕を引っ張る五月が通り過ぎる。

無意識に紫水の背中を目で追う二乃を、三玖が横目でチラッと見やる。

 

「・・・何よ?」

三玖の視線に気付いた二乃が、髪をいじりながら問い返す。

 

「・・・別に」

フイッと顔をそむける三玖。

 

「・・・」ニヤニヤ

ニヤニヤした目で二乃を見る一花。そして五月の方をみて更にニヤニヤする。

 

遊園地で遊びリフレッシュ出来た五つ子達は次の日の勉強も頑張ろうと思った。

五月をLe lienで働かせるか

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