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2月14日の早朝。五月は霊園に足を運び、母の眠る墓に手を合わせていた。
「本当に毎月いるんだな」
「俺も五月を見習って、月命日も来るようにしたしな」
五月が顔をあげると、いつの間にか紫水と上杉が傍にいた。
「紫水君はともかく、何故あなたが・・・」
紫水も上杉も線香を手向け、五月と肩を並べて墓前に立つ。
「全員家庭教師案ですが、いい傾向にあります。教わる以上に、教える事で咀嚼できることもあると実感できました」
遊園地に行った日、観覧車のゴンドラで上杉と四葉のマンツーマン授業をしている時に思いついたのが全員家庭教師案だ。
「紫水君。上杉君。教えた相手にお礼を言われるのは、どんな気持ちですか?」
「なんだよ・・・恩着せがましいな」
「シンプルに嬉しいな」
五月の問いかけに上杉と紫水が答えた。
五月は四葉に料理を教えた時の事を思い出していた。
━わっ!凄い分かりやすいよ!五月ありがとう!
嬉しそうな四葉の笑顔を見た瞬間、五月の胸に沸き上がった喜びと感動!
「私は・・・あの時の気持ちを大切にしたい」
五月はもう一度、母の墓に手を合わせた。
「(お母さん、私は・・・)先生を目指します」
「決めたなら後は突き進めばいい」
「その前に今度の試験で赤点回避だ」
「はい・・・」
五月の決意に紫水は背中を押すが、上杉は現実を叩きつけた。
五月は意気消沈した。
一度家に帰り、身支度を終えた紫水は学校に向かおうとドアを開けると、一花が立っていた。
「おはようシスイ君」
「おはよう。どうしたんだ?」
「ちょっとね。通学路や学校じゃ渡しづらいし。はい、バレンタインデーの贈り物!」
一花が紫水にラッピングされた包みを渡す。
「ありがとうな。開けてもいいか?」
「いいよ」
礼を言って開けてもいいか聞いて、一花から許可をもらい包みを開けた。
「これは名刺入れか?」
「そうだよ。シスイ君に合うの選んだんだ」
「ありがたく使わせてもらう」
そう言い紫水は今使っている名刺入れから名刺を取り出し、一花からもらった名刺入れにいれた。
その後一花が先に学校に向かい、少し時間をおいてから紫水は学校に向かった。
紫水が下駄箱を開けるといくつかの包みや箱が置かれていた。
「バレンタインデーの贈り物か。ん?手紙?」
手紙を開くと、『チョコ作りのお礼』と書かれていた。他にも『ありがとう』や『自信作』などと書かれていた。
「ふっ。皆律儀だな」
微笑んで言う紫水。
「おはようございます!紫水さん!」
紫水が贈り物を鞄に入れていると四葉が来た。
「おはよう四葉」
「紫水さん、これバレンタインデーの贈り物です!」
四葉が紫水は箱を差しだす。
「ありがとうな。開けてもいいか?」
「はい!」
紫水が箱を開けると、キーケースが入っていた。
「キーケースか・・・丁度買い替えようとしていた所だったから、ありがたいな」
「喜んでいただけたようで、なによりです」
贈った物が喜ばれて嬉しそうに笑う四葉。
「あ、シスイ」
「おはよう三玖」
階段を昇ると三玖が駆け寄ってきた。
「おはよう。これバレンタインデーのチョコ」
「ありがとう」
「自信作だから、食べてみて」
「ああ」
三玖が自信作のチョコを食べてほしいと言われ、紫水は一口食べる。
「美味いな。この一口で三玖の努力がわかる」
「シスイにそう言ってもらえるともっと頑張れる」
紫水の言葉に三玖はさらに料理を頑張ろうと思った。
紫水が教室に入ると、女子達が紫水に迫る。
「東雲君これバレンタインデーのチョコ!」
「一生懸命作ったよ!」
「皆ありがとうな」
紫水は一人一人丁寧に礼を言って、受け取る。
「おはよう紫水。朝からモテモテね」
「おはよう。初めてあんなにもらったから緊張した」
「そうなの?意外ね」
「まあ、年に数回引っ越しを繰り返していたからな。親しい女子どころか男子もいなかったからな」
「そうなのね」
二乃は表面上は冷静に話しているが、内心はソワソワしていた。
「紫水放課後時間はある?」
「ん?ああ、今日はオフだから時間はある」
「そう。・・・なら放課後付き合いなさいよ」
「ああいいぞ」
「アタシは少し用事があるから校門で待てて」
「わかった」
放課後の約束をして互いの席についた。
放課後紫水は校門で二乃を待っていると、数人の女子から贈り物をもらった。
「お待たせ紫水」
数分して二乃が来た。
「いや大丈夫だ。用事は終わったのか?」
「ええ。それじゃ行きましょう」
「何処に行くんだ?」
「少し寄りたい所があるの。そこに行きましょう」
「ああ、わかった」
二乃が行きたい所に向かう。
「ここよ」
「へー雰囲気がいいカフェだな」
二乃が行きたかったのは、カフェだった。
「前に見つけて気になっていたのよ」
「そうか」
2人はカフェに入った。
「いらっしゃいませ!何名様ですか?」
「2名です」
「2名様ですね?ご案内します」
2人は奥の席に案内された。
「ご注文がお決まりになりましたら、お呼び下さい」
一礼して店員が下がる。
「紫水何にする?」
「そうだな・・・軽く摘まめるホットケーキにするか」
「アタシはこのオススメケーキセットにするわ」
「よし、店員さんを呼ぶか」
注文する物を決めて、店員を呼ぶ。
「お決まりでしょうか?」
「ホットケーキ一つと」
「オススメケーキセットを一つで」
「はい。ホットケーキお1つとオススメケーキセットお1つですね?セットの飲み物はいかがいたしますか?」
「紅茶でお願いします」
「畏まりました」
注文をすると、大きなハートのグラスに、ハート型に交差したストローが入ったジュースが運ばれてきた。
「こちらバレンタインデー限定で、カップルのお客様にサービスでお出ししているドリンクです」
「な、な、な・・・」
カップルと言われ二乃の顔が赤く染まる。
「ごゆっくりどうぞ」
「・・・飲みづらかったら、俺が全て飲むが?」
「・・・量が多いし、アタシも協力するわよ」
何とも言えない雰囲気になり、紫水が全部飲もうかと提案すると、二乃も協力すると言う。
数分もすればホットケーキとオススメケーキセットが運ばれてきた。
(このジュースのせいで味がわからないわよ・・・)
なんともいえない雰囲気の中、2人は注文した物を黙々と食べる。
食べ終わった後お会計を済ませてカフェを出て帰路につく。
「あ、そういえばさっき渡そうと思ってたんだけど・・・はいこれバレンタインデーの贈り物」
二乃はそう言って鞄から包みと箱を出して、紫水に差しだす。
「ありがとうな。2つもいいのか?」
「ええ。前の家出のお礼とお詫びも兼ねてよ」
「気にするな。っと言っても気にするからな。ありがたく貰っておく。開けてもいいか?」
「ええ」
まず箱を開けるとチョコが入っていた。
「食べていいか?」
「もう紫水のだから、いちいち聞かなくってもいいわよ」
「それじゃ、いただきます」
一口食べる。
「これはビターチョコか」
「ええ。どうかしら?」
「流石二乃だな。完璧な調合でいい苦さだ」
「そう(よかった・・・)」
素っ気ない返事だが、内心では安堵していた。
「もう一つは・・・ハンドクリームか」
「そうよ。因みにアタシが愛用してる物だから、効果は保証するわよ」
包みを開くとハンドクリームだった。
二乃も使っているハンドクリームで効果は保証すると言った。
「紫水君」
紫水が家に着くところで、家の前で待っていた五月が紫水に駆け寄ってきた。
「紫水君遅かったですね?どこか行っていたのですか?」
「ああ。ちょっとカフェに寄っていた」
「・・・二乃とですか?」
「そうだが、どうしてそう思ったんだ?」
「なんとなくです・・・」
何処かに行っていたのかと聞くと、カフェに行ったと言うと五月は二乃と行ったのかと聞くと、紫水は頷き何故そう思ったのか聞くと、なんとなくと五月は答えた。
「まあそれは置いておいて、・・・はい、バレンタインデーの贈り物です!」
五月は箱を取り出し紫水に差しだす。
「ありがとうな。開けてもいいか?」
「はい!久しぶりに作りましたが、自信はあります!」
「ホワイトチョコか・・・うん美味い」
箱を開けるとホワイトチョコが入っており、五月は自信はあると言い、紫水は一口食べると素直な感想を言った。
「では紫水君また」
「ああ。チョコありがとうな」
「はい!」
紫水からの礼に満面の笑みを浮べて帰る五月。
「今年のお礼は気合を入れないとな」
紫水はホワイトデーに向けて気合を入れた。
五月をLe lienで働かせるか
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塾講師のみ
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塾講師と両立