五等分の料理人   作:マスターM

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想い

二乃はかつて住んでいたタワーマンションの玄関で父の帰りを待っていた。

 

(赤点は回避した。自分の気持ちにケリをつけるには・・・)

そこまで思ったところで、二乃の前に車が停まり後部座席のドアが開き、マルオが降りてきた。

 

「帰って来たか、二乃君」

「パパ、その()()付け、ムズムズするからやめてって言ってるでしょう」

「悪かったね。先程全員赤点回避の連絡をもらったよ。君達は7人でやり遂げたわけだ。おめでとう」

「あ、ありがとう・・・」

二乃はマルオの意外な言葉に戸惑ったが、全員赤点を回避したことで、紫水が本当の意味で料理人を続けれることに安堵した。

 

(こんな時にも紫水の事を考えるなんて・・・やっぱりアタシは・・・)

「どうやら上杉君を認めざるを得ないようだ。だから明日からはこの家で・・・」

「いいえ、もう少し新しい家にいることにしたわ」

自分の気持ちを改めて考えていると、マルオが元の家に戻るように言い切る前に、二乃はマルオの言葉を早口に遮り今の家にまだいると言った。

 

「・・・なんだって?」

「当然一花だけに負担はかけない。アタシ、アタシ達も働くわ。自立なんて立派な事したつもりはない。正しくないのも承知の上。でも、あの生活がアタシ達を変えてくれそうな気がする・・・少しだけ、前に進めた気がするの」

二乃の真摯な思いを、マルオはフッと軽く息を漏らして退けた。

 

「・・・理解できないね。前に進むなんて抽象的な言葉になんの説得力もない。君達の新しい家とやらも見せてもらったが・・・」

いつの間にかマルオは二乃を淡々とした口調で追い詰める。

 

「僕にはむしろ逆戻りにさえ見えるね。5年前に比べれば微かにマシ程度だ。そしてそれは東雲君の情けを受けているだけだ。もう5年前の暮らしは嫌だろう?いいかげん我儘は・・・」

鋭い目に二乃が圧倒されそうになった時、ブロロロロ・・・とエンジン音が近づいてきた。次の瞬間強烈なライトが二乃とマルオを照らす。

 

「なに・・・?」

眩しそうに目を細めた二乃の目に光の中から1台のバイクが現れた。

ブレーキ音を響かせ少し先で停まり、ライダーがヘルメットを上げる。

 

「やっぱりここにいたか二乃」

「紫水どうして・・・」

最初からアタリをつけて、現れた紫水に二乃は何故来たのか聞いた。

 

「なんとなく二乃が考えていた事はわかったからな。さあ行くぞ皆揃っている。二乃が来ないと祝賀会が出来ないからな」

理由を言いながら二乃にヘルメットを投げ渡す。

そのヘルメットをパシッと受け取る二乃。

 

「二乃・・・君が行こうとしているのは茨の道だ。上手くいく筈がない。後悔する日が必ず訪れるだろう。こっちに来なさい」

マルオが二乃に手を差しだす。二乃はヘルメットをギュッと胸に抱きしめて、強い眼差しでマルオを見る。

 

「パパ、アタシ達を見てて」

言い終わると、紫水のバイクに駆け出し、ヘルメットをかぶって後部シートにまたがった。

 

「行って!」

「ああ。中野さんまた今度時間がある時に話しましょう。失礼します」

マルオに一礼し、ブォンとエンジンをふかして走り去る。

 

「・・・江端。めでたいことに娘達全員、試験を突破したらしい。僕は笑えているだろうか」

「勿論でございます」

車の傍らに立った江端が慇懃(いんぎん)に答える。

 

「そうか・・・父親だからね。当然さ」

遠ざかっていくバイクを見つめるマルオの顔は、複雑な感情に歪んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「紫水なんでアタシがあそこにいると分かったの?」

「試験で赤点回避したのに、あんな真剣な顔をする事なんてたった一つだけだ。中野さんに何かを伝えたい事があると思っただけだ」

赤信号で停車したタイミングで、二乃がどうして場所が分かったのか聞く。

そして紫水は自身の考えを話した。

 

「そう・・・アタシの事ちゃんと理解してるんだ

「ん?何か言ったか?」

「何でもないわよ。ほら青になったわよ」

二乃の小声を聞き返したが、何でもないと言われ信号が青に変わったため、進むことを促された。

 

「ああ。しっかり掴まってろよ」

二乃が紫水の腰に腕を回ししっかり掴まる。

 

「自分でも分かる。アタシの心臓の鼓動が凄く速い。やっぱりアタシは紫水の事・・・好き」

小声でブツブツと言っていたが最後の言葉だけは、ハッキリと言う。

 

(言っちゃった・・・言っちゃった!まだ心の整理もちゃんと出来ていないのに!思わず言っちゃった!!)

「ん?今何か言ったか?風が強くよく聞き取れなかった」

「な、何でもない(よ、よかった聞こえて無くって・・・)」

思わず言ってしまった事に、二乃は慌てたが紫水が風が強く聞こえないと言うと安堵した。

だが二乃は恥ずかしさから、顔を紫水の背中に押し付けていた為に紫水の顔がほんのり赤くなっていることに気付かない。

 

(あれって告白?二乃が俺に告白・・・。恥ずかしさよりも、嬉しさが勝るって事は、俺は二乃の事を好きなのか)

二乃の告白は聞こえており、自分の気持ちを整理する為敢えて、聞こえないふりをしたのだ。

 

(同時に何故か五月の顔が浮かんだ。俺の中では二乃と五月は特別な存在なのか・・・)

運転しながら紫水は悶々と考える。




気持ちを伝えた二乃。

自分の気持ちを二乃の告白で自覚し始めた紫水。

この告白で変わり始める関係。

この想いの行方は・・・どうなる。

五月をLe lienで働かせるか

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