プルプルプルプル
「ん?電話?知らない番号だが出てみるか」
朝の仕込みを終え、制服に着替えていると知らない番号から着信が来ており、取り敢えず出てみる事にした紫水。
「はい。東雲です」
『はじめまして、東雲紫水君であってるかね?』
「はいそうですが・・・貴方は?」
『失礼した。僕は中野マルオと言う』
「中野?失礼ですが、一花さん達のお父様でしょうか?」
『ああ、そうだ。今日頼みがあって君に電話させてもらった。単刀直入に言おう、娘達の家庭教師になってほしいんだ』
「家庭教師?それなら既に上杉を雇っているのでは?」
『確かに上杉君も雇っているが、君は編入試験全科目満点だったそうじゃないか。それに君は慎吾の息子だからね』
「父を知っているのですか!?」
『学生の時の親友さ。彼が亡くなった時僕は海外にいて、日本に戻って来た時に慎吾の死を知ったんだ。その時には君はその町にいなく、所在も分からなかったが、編入試験の名前で君だと気づいたんだよ。君の仕事の事も知っているから無理にとは言わないが』
「分かりました。引き受けましょう。あ、後今メモは取れますか?」
『取れるが、どうしてだい?』
「墓の場所をお伝えしようと思いまして」
『・・・ありがとう』
電話に出てみると五つ子達の父親で、上杉と共に家庭教師になって欲しいと言って来た。その事に紫水が質問をすると、紫水が親友の息子で仕事の事も知っているので強制はしないと言うが、紫水は父の親友の頼みなので受ける事にし、両親の墓の場所を教えた。
「お、上杉おはよー」
「東雲か・・・おはよう」
紫水が学校に着くと丁度上杉も登校して来て、挨拶をした。そこに黒塗りの外国車が停まった。
「カッコいい車だな・・・100万はするだろうな・・・」
「この外車が100万な訳ないだろ。軽く見積もっても2500万前後はするだろうな」
「2,2500・・・ま、万?」
上杉の家は貧乏で五桁以上の金銭感覚はかなりアバウトになる。
と、ドアがガチャと開いた。
「なんですか、ジロジロ不躾な・・・。紫水君おはようございます」
車から出て来た五月が、上杉をキッと睨みつけてから、紫水に挨拶をした。
「おはようございまーす!」
「またアンタ!?おはよう紫水」
「あ、フータロー君!シスイ君!」
「・・・おはよシスイ」
続いて四葉は普通に挨拶をし、二乃も上杉を睨んでから紫水に挨拶をし、一花は普通で三玖に至っては紫水のみ挨拶をした。
「おはよー五人共」
紫水が挨拶を返すと、五つ子達は上杉の前を何事もなく通り過ぎていく。
「えっ、あ!?お前等、また逃げて・・・」
言い終える前に五つ子達は既に校舎に続く階段を駆け上がっている。
「よく見ろ俺は手ぶらだ!害はない!」
手に持っていた参考書を投げ捨てて、五人に安全安心をアピールする上杉。
「騙されないわよ!」
「油断させて勉強を教えてくるかも・・・」
二乃と三玖は上杉を詐欺師扱いしている。
「お前等一体俺を何だと思ってるんだ・・・」
上杉も階段を上がり、紫水も上杉に並んだ。
「私達の力不足は認めましょう。ですが、自分の問題は自分で解決します」
「勉強は一人でも出来る・・・」
「そうそう」
先頭にいた五月が背を向けたまま言って、三玖、二乃と続いた。
「そうか!じゃあテストの復習は当然したよな?」
上杉の言葉にビクッとする五月、目を逸らす一花、笑顔が固まる四葉、知らん顔の二乃、背を向けている三玖の表情は分からないが、この反応はと思う上杉と紫水。
「・・・問一、厳島の戦いで毛利元就が破った武将を答えよ」
試しに問題を出してみると、五月が振り返ってフッと余裕の笑みを浮べるが、直ぐ頬を真っ赤にして、屈辱に耐えるようにプルプル震えている。
そして五人一斉に走って主に上杉から逃げた。
「なあ上杉。さっきの問題に三玖は正解しているのに何で答えなかったんだろうな?」
「え?」
紫水の言葉に上杉は表紙に『五つ子卒業計画』と題した自作の攻略ノートをめくった。そこには第一回実力テストのそれぞれの正解・不正解を〇×で記した表に目を通すと・・・。
「…本当だ。三玖だけ正解している」
「だろ?」
「ってかお前よく知っていたな」
「昨日見たからな」
「そ、そうか(見たのは一瞬しかも流し読みだったはず・・・コイツの頭どうなってるんだ?)」
上杉が確認すると確かに三玖が正解しており、気づいた紫水に聞くと、紫水の規格外の記憶力にちょっと引いた上杉。
「ああ、それと俺もあいつ等の父親から家庭教師の依頼を受けた。まあ仕事もあるから頻繁に行けないけどな」
「お前も家庭教師するのか?それに仕事?」
紫水は上杉に自身も家庭教師を引き受けたが仕事もあると言うと、上杉は仕事と言う言葉に疑問を感じた。
「ああ、レストランのオーナーシェフをしていて店は近々オープン予定だ」
そう言い仕事の名刺を上杉に渡した。
「お、オーナーシェフって凄いな・・・店名が『
「ああ、店でお客様の出会い、従業員同士の絆、近所と繋がりがあればいいと思ってLe lienと名付けた。そう言えばなんで上杉は家庭教師を?」
上杉がその名刺を見て店の名の意味を言うと、紫水はその理由を話し、上杉がどうして家庭教師をしているか聞いた。
「・・・俺の家は借金を抱えていて、その借金がなくなる可能性があいつ等の家庭教師なんだ」
「そっか・・・」
事情を知った紫水はそれだけ言った。
「そうだ上杉これを」
紫水が取り出したのは以前、教師の高松にも渡したチラシだった。それとは別にチケットもあった。
「これは?」
「プレオープンの招待チケットだ。よかったら土曜日に来てくれ。そのチケットはコース料理限定だが、料金はかからない。試作の料理を提供するのに金を貰う訳にはいかないからな。一枚で六名まで案内可能だから、家族で来ると良い。ああ、人数と、苦手や嫌いな物、アレルギーなどあれば教えてほしい」
「待て待て待て!!こんな貴重な物いいのかよ!?」
紫水がチケットを渡すと上杉は狼狽えた。
「ああ、同じ家庭教師だろ?仲良くやろうぜ」
そう言い紫水はチケットを上杉に握らせた。
「サンキュー。家族は3人で苦手な物やアレルギーはない」
「了解だ。土曜日限定だが、時間制限はないから好きな時間に来てくれ。フロントにそのチケットを見せれば大丈夫だ」
「分かった」
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