-安倍晋三
2022年7月19日
ビルマ暫定統治政府 ラングーン
帝國軍政庁
帝国軍政庁はビルマ政府庁舎の一部を間借りする形で置かれており、広いものではなかった。
執務室も決して広いと言えるものではなく、急ごしらえしたような形であった。
そんな見窄らしい執務室に一人の男がいた。
南方軍総司令官の楠見晋一である。
彼は南方軍においては重要な存在であり、2021年ビルマ侵攻の際には第28軍のヘリ部隊を指揮。ラングーンを僅かな期間で陥落させるなど大きな戦果を上げた。
結果、彼は戦後にビルマの軍政を任せられることとなり、現在に至る。
そして、今日は執務室のドアが叩かれていた。
「失礼します。南部地域の復興の進捗についてご報告に参りました。」
「入れ。」
「失礼します。」
入ってきたのは小柄な兵士であった。
「6月下旬に開始されたビルマ国南部の復興ですが、50%が完了しており、本国政府が方針として掲げている来年までのビルマ独立には間に合うものと思われます。」
「そうか。最後に南部の失業者について教えてくれ。」
「はい。復興作業に多くの失業者を参加させたことにより、失業率は10%ほど減少しております。」
「そうか。ありがとう。」
「失礼しました。」
そういうと、兵士はゆっくりと部屋を出ていった。
しばらくして、彼は机から仕事用のノートパソコンを取り出し、電源をつけた。
ログインすると、いつもどおりメーラーを開き、溜まりに溜まった本国からのメールを確認し始めた。
ネットを通じて届く東京の意思を忠実に執行することは彼の日常である。
そこには、このような文言があった。
------
【重要】南方軍の增强について
南方におけるアメリカ海軍第7艦隊の活發化に伴い、日本としては南洋での活動を活發化させる必要があります。
そこで、南方軍豫算の增加及び新兵器の導入を決定しました。
これにより、本年度中に新たに2個旅團を新編する豫定となっています。
また、それに伴い、陸軍からも人員の抽出を行います。
詳細については添付資料の通りとなっております。
今後とも、帝國のために盡くされんことを期待しています。
令和4年7月19日 國防省
※お問い合わせには對應いたしかねます。
※本件に關する報道關係者への情報開示につきましては嚴重な管理の下行う豫定です。
---
楠見はため息をつくと、再びメールを確認する作業に戻った。
それが終わると、彼はバルコニーに出た。
眼下に広がる街は復興の兆しを見せ始めている。
しかし、それはあくまで一部の地域に過ぎない。
未だ貧困に苦しむ人々が大多数を占めるのだ。
(俺は何をしているんだろうな……)
そんな思いを抱きながら、楠見は空を見上げた。
その瞳には曇天が広がっていた。