女王の君臨する鎮守府で   作:蒙古襲来

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2話で終わらず。特殊タグも入ってます。


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 大和、確かに君は他の艦娘に比べると体が大きいし力も強い。

 

 だけれどね、それが大和の良さかと言われれば、呉で君のことをずっと見守ってきた人たちはみな違うと首を横に振るだろうね、もちろん僕も含めて。

 

 大和、君は自分の良いところがいったい何なのか気が付いているかい?

 

 そうか、見当もつかない、か…。でもそれもそうだろうね、君にとってそれは当たり前のことなんだから。

 

 大和、君は優しい娘だ。どこかに困っている人がいたら走って行って手を差しのべることの出来る娘だ。

 

 …呉の港で産まれたばかりの頃を覚えているかい?あの頃は皆に怖がられてしまって友だちが出来ない出来ないと毎晩僕のところに来ては泣きじゃくっていたね。

 

 どうしてそんな昔のことを覚えているのかって…おいおい、そんなに怒らないでくれよ。

 

 それからしばらくして…今度は夜だけじゃなく昼間、ちょうど僕がお昼を食べようとする度に執務室に来ては幼い子どものようにわんわん泣いていたね、体はすごく大きいのに。

 

 あはは、叩かないでくれよ。

 

 でも、時には自分の体の大きさや強さを呪っていた君が…友だちを作ってその輪を広げていって、遂にはそれは鎮守府の枠を飛び越えて、地元の人たちにまで慕われるようになって…。

 

 きっと皆も気が付いたんだよ、大和は決して近寄りがたい、恐ろしい存在じゃないって。

 

 ………。

 

 あはは、ごめん。感傷に浸るつもりはなかったんだけど…君と過ごした日々のことが急に溢れかえってしまって…。

 

 ほら、泣かないで。そんなにメソメソしてたらまたあの頃と一緒になってしまうよ?

 

 うん、そう、それがいい。大和は笑っていた方が素敵だし僕は好きだよ。

 

 …さぁ、そろそろ出航の時間だ。

 

 大和、君は優しい娘だ。きっと新しい鎮守府でもうまくやっていけるさ。僕が、いやここにいる皆がそれを保証するよ。

 

 だから…

 

 だから安心して行っておいで 

 

 ……………

 

 …………

 

 ………

 

 ……

 

 …

 

 

 

 ★

 

 ぱちり。目が覚めるともう日は沈み、すっかり部屋は闇に染まっていた。

 

 隣には誰もいない。大和はぽつんと独りぼっち。

 

 懐かしい夢を見た…。気が付くと頬を何かが伝っていく。

 

 ああ、もう…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 か゛え゛り゛た゛い゛よ゛おおおおおおおお!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 無理!無理ですううううううううう!!!

 

 大和にはやっぱり無理でしたあああああああああ!!! 

 

 大和は優しい子だからやっていける?

 

 うわあああああああん!!!提督の嘘つきいいいい!!

 

 ぜっっっんぜん!!やっていけませんっ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダレカタスケテ

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

…思えばこの鎮守府に来てから何もかもうまくいきません!

 

 この鎮守府の皆さんとの初顔合わせの時、第一印象が大事だと思ってニコニコ笑顔で声を掛けようと意気込んでいたのに!!

 

 あれ、なんか大和の知らないうちにもうあちらこちらで仲良いグループ、出来上がってませんかぁ!?

 

 くっ!鏡の前で入念な笑顔チェックをして遅れたことが仇となりましたか…

 

 は、話しかけずらい…!一対一でなら喋れるのにグループトークとなると途端に置物になってしまうことで有名だった大和には荷が重すぎますっ!!

 

 そ、それでもここで臆していたら友だちなんて出来ません!大和、出ますっ!!!

 

 って…あれれ?

 

 ワイワイ ガヤガヤ キャッキャ ウフフ ワイワイ ガヤガヤ キャッキャ ウフフ ネエネエコレカラミンナデアソビイカナイ イイネ イイネ ソウシヨウ!

 

 あ、無理…

 

 無理ですうううううう!!!

 

 すでに出来上がった仲良しグループに大和が突っ込んでいけるわけありません!!

 

 しかももう遊ぶんですか?もう遊びに行っちゃうんですか!?

 

 大和とはコミュ力が違いすぎます(遠い目)

 

 ん?

 

 『ねえ、あの背の高い娘、ひとりなのかな?』

 

 『…ほんとだ。話しかけてみる?』

 

 なにやら聞き耳を立てていると後ろの方から嬉しい言葉が…!

 

 これは千載一遇のチャンスっ!とびきりスマイルは準備万端!!

 

 さぁ!いつでも話しかけてきてください!!!

 

 『…なんかあの娘の周り、誰もいなくね?』

  

 『ほんとだ。近づいて欲しくないのかな?』

 

 え、ちょ、ちょっと待ってください!大和、浮いてますか!?確かに半径一メートル以内に誰も近寄ってこないですけど、この場で浮いちゃってますか!?

 

 『…怖い人なのかも』

 

 『やめとこっか』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ぐはぁっ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局、初顔合わせであるオリエンテーションで誰とも会話出来ませんでした…。

 

 もうメンタルずたぼろです。さらに悪いことにそれからしばらくの間、大和はずっと独りぼっちでした。

 

 もうどれだけの日々をボッチで過ごしたでしょうか…。もう帰りたい…。

  

 で、でも…!ここで折れてしまったら呉のみんなに顔向けできません!!

 

 大和、頑張りますっ!!!

 

 しかし運命とは残酷なもので、大和は友だちの一人も作れずに運命の日を迎えてしまうのです。

 

 そう、あれは鎮守府で取っ組み合いの喧嘩が頻繁に起こっていた時期…

 

 大和は喧嘩は嫌いですし怖いので普段はコソコソ自室に籠っていましたが、その日おつかいから帰ると…なんかさすがにこれはというような大乱闘が起きているではありませんか!?

 

 こ、怖い…

 

 そう思って部屋に逃げ帰ろうとします。

 

 でも…

 

 『君は優しい娘だ』

 

 その時急にその言葉を思い出して。そしたら今まで喧嘩を見て見ぬ振りしていた自分に腹が立って…

 

 「みなさん、喧嘩はダメですうううううう!!!」

 

 怖いけど、もうなりふり構ってられない!大和は両手をぶん回して大乱闘の渦中に飛び込みました。

 

 そして気が付いたら…大和の周りには何人もの娘が倒れていました。

 

 え…?

 

 助けるように周りを見回しましたが、遠巻きに見ていた娘たちはまるで大和を怪物かのように怖がっています!!

 

 「…………」

  

 それから大和は逃げるようにその場を後にしました。あ、もうこれはもうダメだ、と直感で分かりました。もうここにはいられない、そう思いました。同時にひょっとしてこれで呉に帰れるかも…と安心したところもありました。

 

 ところが…

 

 大和が起こした今回の件は不問とされ、何もお咎めなし。それどころか立派な制服を着こんだ方々に「君はこの鎮守府になにか不満はないかね?あればすぐに対処しよう」と畏れられる始末…

 

 あ、じゃあ友だちが欲しいです

 

 なんて言えるわけがありません。恥ずかしいやら悲しいやらで特に何も言わずにその申し出を断りました。

 

 そして日常に戻ったわけですが、ああどうしてこんなことに…。でもなにも悪いことばかりではありませんでした。

 

 『大和さんと呼ばせてください!!』

 

 嬉しいことにここにきてようやく大和にも友だちが出来ました。や、やった!

 

 そ、それじゃあ…!さっそく楽しくお話でも… 

 

 『大和さんは深海棲艦をどうやって殺すのが好きですか?私は軽微なダメージをじわじわ与えていって嬲り殺すのが最近楽しくて!』

 

 ん?

 

 『この鎮守府は軟弱な奴が多い。一度私たちと死ぬ気でやり合えば覚悟の一つでもつくのだろうか?どう思う?』

 

 んえ!?

 

 『雪風に関わるとみんな必ず死んじゃうんです、敵味方関係なく…。でも大和さんならなんだかそのジンクスを破ってくれそうな気がします♪』

 

 へあぁっ!?

  

 あれ、なんか大和の思い描いていた友だちと違う…

 

 せっかく出来た友だちにこんなこと言うのも失礼な話ですが…ちょっとこの娘たちぶっそうすぎませんか!?

 

 それを裏付けるようにこの娘たちと一緒にいる時間が長くなるのに比例して周りからの怯えるような視線が痛い…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして決定的だったのは今日の出来事!!!

 

 

 

 

  

 

 

 

 それは新しく着任した提督に挨拶をしようとした時のこと。仮にも人、人に対してですよ?私たちが守るべき存在である人間に対してあんな態度取っていいんですかぁ!?

 

 あの場では内心驚いてしまってうまく対応出来ませんでしたが…やっぱり引っ掛かります。よし、ここは大和から矢矧たちにビシッと言ってあげないと…!

 

 でもなんて言ったらいいんでしょうか?せっかく大和を慕ってくれる友だちですし…

 

 …と、そんなことを考えていたら眠ってしまっていたという。

 

 ああ、このまま本当に呉に帰ってしまおうか…

 

 考えても考えても妙案は思い浮かばない。時間ばかりが過ぎていきます。

 

 そしてそれは大和にまた瞼を閉じさせ、深い眠りに落ちてしまうのには十分すぎるものでした。

 

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