絶対にマスターを堕落させたいカルテシアVS一般ラノベ主的マスター   作:織葉 黎旺

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一欲目

「らっしゃーせー」

 

 自動ドアを潜ると、入店のジングル音と店員の気だるげな声が出迎えた。ここはカードショップ──ではなく、普通のコンビニ。バイト帰りに飲み物でも買おうかな、と寄ってみたのだ。

 

「………………」

 

 サイダーを手に取った時、ふと視界の端に菓子コーナーが目に入った。スナック菓子、和菓子、つまみ等々が並んでいるのを見ると、夜ご飯を食べていないこともあって小腹が空いてくる。いや、しかし今月は遊戯王の新弾発売もあって出費が厳しいし、ここで散財するわけには──

 

『──聞こえますか』

 

 脳裏に声が響く。どこか威厳、というか神妙な印象を帯びたそれは、優しく言う。

 

『聞こえますか、人の子(マスター)よ。買うのです。己の欲に従い、貪るのです。甘味を』

 

「聖女のお告げとは思えない最悪のセリフ来たな」

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 決闘者(デュエリスト)なら誰もが浮かれる新弾発売日。俺もそのご多分に漏れず、家電量販店に開店凸して並び、転売ヤーとのCS0回戦に勝利したことで小躍りしながら帰宅し、意気揚々と箱を剥き始めた。

 

「くそー、プリシクなしかぁ!」

 

 ハイレートのカードが出なかったことを思わず嘆く。求めていたパーツはある程度出たからいいが、それでも物足りなさはある。

 

「だがまだ俺にはこれがある……!」

 

 初回生産限定でついている、「+1ボーナスパック」。もしかしたら、ここからトップレアを引き当てられる可能性も……!? 

 

「うお……!?」

 

 鋏で封を切った瞬間、赤と白のマーブルな光が勢いよく飛び出した。そういえば今弾の表紙であるブラックフェザー・ドラゴンの攻撃名は『マーブル・ストリーム』。つまり、それと同じ光を放ったこのパックから出るのは……!? 

 

 

 

『──クスクスクス』

 

 どこか上品な笑い声が響く。と同時に、手の中にあるカードから、妖しいシルエットが飛び出した。

 

『この私を引き当てるとは、さぞかし徳の高いマスターですね。きっと主もお喜びのことでしょう』

 

「なんだ……!?」

 

 幻覚かと目を擦る。幻聴かと耳を疑う。しかし彼女はそこにいた。

 

 

『お初にお目にかかります、マスター。私は、赫の聖女カルテシア』

 

「は……トップレアじゃん!!」

 

 よく見れば、手の中のカードは淡い銀色の光を見せている。プリズマティックシークレットレアの、美少女。メルカリで数万円は下らない。いや、売りはしないけど。

 

『私は……いえ、()()()は、マスターを堕落させるために来ました』

 

「え、なんで?」

 

『覚悟してくださいね、マスター?』

 

「いや、だからなんで??」

 

 

 

 *

 

 

 

 ということで、何故かカルテシアに纏わりつかれている。そしてめちゃくちゃ(無数の欲求に)誘惑されている。

 

『さあマスター、カロリーを摂りましょう。労働を終えた貴方にはカロリーが必須。しかも糖分も加われば鬼に金棒、お餅にきな粉……!』

 

「和に被れすぎだろ」

 

『和よりもきな粉を被りたいです』

 

 マジでくだらないことを言ったので無視をした。すると『ではアプローチを変えまして──』と弁当のコーナーを提示した。

 

『夜ご飯、まだ食べていませんよね?』

 

「ああ」

 

『買いましょう、これを』

 

 カルテシアが手に取った(実体化していないので厳密には取れてないけど)のは、某ガッツリ系麺チェーン店にインスパイアされた、味濃いめ油搦めニンニクマシマシみたいなラーメンだ。カロリーの暴力に加え、明日の周囲数メートルに誰も近づいてくれないことが確定する魔の食べ物である。

 

『明日がお休みである以上、マスターにはこれで英気を養い、精をつけて頂かなければ──』

 

「何の話?」

 

 休みだからこそ、胃に優しいものを食べてゆっくり休みたいのだが。()()()()()()()()()()()、と嘆息し、俺は飲料だけを籠に入れてセルフレジに向かう。

 

『な……! まってください、夜ご飯は!? 抜きですか!?』

 

「あーそっか、()()()()()()()()()。昨日のカレー残ってるから買わなくていいんだよ」

 

『……それはマスターお手製の…………?』

 

「そうだけど?」

 

『早く帰りましょう、マスター♡』

 

「ええ……?」

 

 腕を絡めるようにくっついてきたカルテシアに困惑しつつ、帰路に着く。四回にわたるおかわりによって、カレーは秒でなくなった。

 

 








マスター……一般大学生。鈍感さと自制心とツッコミのキレがラノベ主人公
カルテシア……四人の聖女がなんか混ざっちゃった的な奴。日替わりで人格が変わる。公式設定と違ってたら泣く。

エクレシア……カルテシアの中の聖女の一人。背景ストーリーの主人公兼ヒロイン。公式で腹ぺこキャラ。かわいい
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