絶対にマスターを堕落させたいカルテシアVS一般ラノベ主的マスター   作:織葉 黎旺

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弍欲目

『────ろ』

 

「ん……?」

 

 なんだ、と寝ぼけ眼を擦る。今日は休日なのでアラームなどは一切かけていないはずだ。ゆっくりと瞳を開けば、腰を曲げてこちらを見下ろす聖女の、整った微笑みがあった。

 

『起きろ、御主(マスター)。休日だからこそだらけてはならないぞ』

 

 なるほど。今日は彼女の日らしい。

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

「それにしても早過ぎないか……?」

 

 時刻は七時過ぎ。昨日は日付が変わった辺りで寝落ちしたので睡眠時間的には普通だが、何だったら普段の起床時刻より早起きしている。

 

『御主、私は覚えているぞ。連休で気が緩んだ後の週明けに、寝坊して遅刻していたのを』

 

「ぐ……それ出されると何も言えんくなるが」

 

『というわけで、剣を持て』

 

「脈絡なさすぎだろ、どういうわけだよ」

 

『? 早起きしてやることといえば、素振りだろう?』

 

「いや、何を馬鹿なことをみたいな顔で言われても」

 

 人に言うならまず自分から、とでも言うように、カルテシアは素振りを始めた。流石、相剣師としても活躍した()()()()()()はフォームから違う。なんというか、圧がある。

 

『フッ──!』

 

 彼女が手に持つ細長い剣が、目にも止まらぬ早さで前後に振られる。残像すら見える速さ。切りつけられればひとたまりもないことは、想像に易い。でもそれ、明らかに素振りで使うような剣じゃないと思うんですが? 

 

『実戦でも、扱う、剣を用いねば、意味がないだろう──!』

 

 素振りどころか見えない敵を相手に剣技まで魅せ始めたカルテシア。舞踊のようであり、間違いなく殺陣でもある。これ不味いやつだと察した俺は、彼女を諫めにかかる。

 

「おいカルテシア、そろそろペース落とさないと危な──」

 

『──むっ!』

 

「危なっ!!!!!」

 

 足を滑らせた彼女の手から、勢いよく剣が射出される。宙を舞ったそれは俺の頬を掠め、四畳間に突き刺さった。

 

「おい、カルテシア……」

 

『す、すまない御主。足払いをかけられた』

 

「はいはい、部屋が狭い上に汚くて悪かったな」

 

 剣を抜いて返してやる。借家なのでヒヤッとするが、精霊の行動は()()()()()現実世界に干渉されないようなので、フローリングの木目が増えるような事態にはならない。不幸中の幸いである。

 肝心の聖女はといえば、先程までの元気が嘘のようにしゅんと項垂れている。

 

『うう……御主にきちんとしろ、と言っておきながら私がこのザマとは……面目ない』

 

「まあ別にいいよ。弘法にも筆の誤りだし、剣豪にも剣先のねじ曲がりだよ」

 

『自分の身体であるはずなのに、どうにも思うように動かぬことがあるのだ』

 

「あー…………」

 

 そりゃあ当然である。それは彼女の本来の肉体ではないのだから。数々の勢力相手に単身でも善戦できるフルルドリスの身体とは、いくらなんでも素の馬力が違うということか。

 

 

『ぐわっ』

 

 しゃがみ込んだ拍子に、彼女は再び転けた。ドレスのはだけ方が危うかったので、目を背けながら手を掴む。

 

『あ、ありがとう御主……』

 

「別にいいよ」

 

 彼女の手は不気味なほど冷たかった。それが精霊特有のものなのか、彼女固有のものなのかはわからない。

 

「まあ、徐々に慣らしてけばいいよ」

 

『うむ……』

 

「とりあえず朝ごはん、食べる?」

 

『うむ……』

 

 カルテシアはご飯を一杯(だけ)食べた。食べたらなんか、元気が出たらしい。たぶんエクレシアの因子が上手いこと働いたのだと、俺は思った。









マスター……回避能力がラノベ主人公
カルテシア……妖眼さんの時は天然ポンコツお姉さん


フルルドリスa.k.a.妖眼の双剣士……背景ストーリーの強者。二号ライダー的な雰囲気。推しだから生きていてほしい……
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