絶対にマスターを堕落させたいカルテシアVS一般ラノベ主的マスター   作:織葉 黎旺

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惨欲目

 

 

「ただいま」

 

『おかえりなさいませ、マスター』

 

 学校から帰ると、カルテシアが微笑みとともに出迎えてくれた。四畳間の中心にあるテーブルにコップを二つ置き、冷蔵庫から取り出した麦茶を注ぐ。

 

『お外、暑かったでしょう? どうぞ』

 

「ああ、ありがとう」

 

 首を傾げつつ、コップを口に運ぶ。日光に焼かれた肌に冷気が染み渡って美味い。次いで、目の前にお菓子の盛られた皿が現れた。

 

『お茶請けもどうぞ』

 

「は、はあ。どうも」

 

 困惑感を滲み出しながらも、出された物を無碍にするのも申し訳ないので食べる。ポテチ、普通に美味しい。が、優しさへの感謝や感動より疑念が勝る。

 

「カルテシアは食べなくていいのか?」

 

『適宜頂いておりますので』

 

 煎餅をお上品にカリカリ齧りながら、カルテシアが答えた。

 

 

 

 

 

 

「…………お前、エクレシアじゃないな」

 

『あら、誰の話かしら?』

 

「惚けても無駄だぜ。アイツなら、俺にお菓子を出す前に半分くらいはつまむし、お煎餅はバリバリいい音を立てて食べる」

 

『………………はぁ』

 

 釣り上がった口角から、あからさまな溜息が漏れる。

 

『別に、隠していたつもりではないのですよ』

 

 細められた目元には、嘲りの色が浮かぶ。

 

『ええ。少し趣向を凝らしてみただけなのです。どうにもわたくし、()()()()から距離を置かれているようですので……』

 

 芝居がかったような口調、動作。流石元祖闇堕ち聖女、国ごと劇的(デスピア)に生まれ変わっただけある。

 

「別に距離を置いてはいないよ。ただちょっと苦手なだけで」

 

『うふふ、ならよいのですわ』

 

「……そういうところだぞ」

 

 ぬるりと隣に寄ってきて、彼女は腕を絡めてきた。体温もその瞳も、恐ろしく冷たい。凶導の白聖骸(ドラグマ・アルバスセイント)の真骨頂はここからと言わんばかりだった。

 

「汗かいてるし、離れてくれ」

 

「そんなもの気にしません。いえ、むしろ放っておけない。大切なますたあが暑さで倒れたらと思うと、ああ、胸が張り裂けるようです! なので、わたくしの身体を冷房代わりに涼んでくださいませ」

 

「クーラー付けたから、じきに冷えるよ」

 

『おいたわしや、ますたあ。学業などという些事のせいでこの炎天下に放り出されるなんて──いいのですよ、貴方さえ命じてくだされば、わたくしはいつでも俗世を終わらせる覚悟です。あるいはこの狭い部屋の中で、いつか天に召されるまで添い遂げるというのも──ええ、想像するだけで震えてしまいます』

 

「悪かったな、狭い部屋で」

 

 嫌味ったらしく返せば『もう、つれない人』と余計にくっついてくる。どうにもやりづらいタイプである。

 

「……だがカルテシアとこの距離感で過ごせるなら、狭い部屋も悪くないな」

 

『! まあ、ますたあ……!』

 

 

「いや、冗談だけど」

 

 カルテシアが、唖然という言葉がよく似合う表情で固まった。それを眺めていれば、深紅の瞳からほろほろと大粒の雫がこぼれる。

 

『うう……ぐすっ…………』

 

 それを見てしまえば、罪悪感だとか困惑感だとかがごちゃごちゃに混ざりあった心境で慰めに係るしかないわけで。

 

「え、ちょ、まって、ごめんカルテシア! ずっとからかわれてばっかだったからちょっと仕返ししたくなっただけで────」

 

『──わたくしはずっと本気だったのに?』

 

「えっ…………」

 

『わたくしはずっと、思いを寄せた殿方へと必死に()()()()()していたというのに……?』

 

「っ、その、まさか本気だなんて思ってなくて────」

 

『──うふふ、冗談ですわ』

 

 舌を蛇のようにちろりと見せ、カルテシアは微笑んだ。

 

 

「それは……全部がってこと?」

 

『それはもう、ご想像にお任せいたします』

 

「──はあ」

 

『でも、ますたあと一緒にいたい気持ちだけは本物ですので……』

 

「────はあ」

 

『溜息ですか? それとも困惑でしょうか?』

 

「どっちもだ」

 

 いつも通り、疲れさせられてしまった。「ふふふふふふふ」──と、より距離を詰めてきたカルテシアを見て、こいつが一番曲者だなあ、と嘆息した。

 

 









マスター……絡まれ方がラノベ主人公
カルテシア……混ざったことをわかってる人とあんまりわかってない人がいる



白聖骸ちゃん……混ぜた側なので当然自覚あり。そこを逆手にとって遊んでる。
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