絶対にマスターを堕落させたいカルテシアVS一般ラノベ主的マスター 作:織葉 黎旺
『マスター…………』
「なんだ…………」
『夜ご飯、揚げ物がいいです……』
「殺す気か」
思わずカルテシアを睨む。が、奴は何処吹く風と言わんばかりに、フローリングに張り付いていた。
『こんな時だからこそ、ガッツリ食べて精をつけないと……』
「夏バテって言葉知ってる?」
室内が死屍累々なのには理由がある。それは、ついさっきクーラーが壊れたからだ。流石にこの猛暑の中空調なしは死活問題なので、先程業者に連絡したが、明日にならないと来られないとのこと。なので、俺たちはフローリングにへばりついて無理矢理身体を冷やしていた。
「冷麦でも食いたいが、麺茹でたくないな……」
『冷やし中華とか美味しそうでいいですよね!』
「うん、さては俺の話聞いてないね?」
食に盲目すぎる。もう少し視野を広げてほしい。
「シャワー浴びてこようかな、汗流して体温下げてくる」
『いいなー、私もお風呂入りたいです。一緒にどうですか? お背中流しますよ?』
「どうですか、じゃないんだよな」
そこでふと、とある仮説を思いつく。デッキケースからカルテシアのカードを取り出して、冷凍庫に突っ込んでみる。するとカルテシア(精霊)がビクッと起き上がって、目を見開く。
『おお……! ひんやりして気持ちいいです……!』
「やっぱりそうか」
基本的には実体がない以上、依代自体の環境が影響を与えるのでは、という仮説が実証された。お手軽に寒暖差を調節できていいなあ、と少し羨んでいたら、カルテシアの顔がみるみるうちに青白くなっていった。
『ま、マスター……』
「どうした」
『め、めちゃくちゃ寒いです…………!』
「あ、悪い悪い」
より早く冷やそうと冷凍庫に入れたのが悪かったか。取り出してやろうと手を伸ばせば、背中に寒気が走った。
「うおっ!?!?」
『はあ、あったかい……さむいけど…………』
「ちょ、やめろ! 開けないから!!」
少しでも暖を取ろうとしているのか、後ろからガッツリとホールドされている。氷のような冷たさと、微かに感じる柔らかな感触への動揺を禁じ得ず、顔が火照るのを感じながらカルテシアを引き剥がした。
「はぁ……無駄に疲れた……」
『でも冷たくて気持ちよかったでしょう?』
「……………………」
『ちょうどいいと思うんですよね、冷蔵庫であれば』
「……………………………………」
無言でカードを冷凍庫に突っ込んだ。『ちょ、ちょっとマスター!!』と悲鳴を上げたカルテシアの氷手から逃げるように、部屋の中を駆け回る。シンプルに暑くなって最悪だった。