最終的に人間辞める種族になりましたので神に抗います   作:塩なめこ

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ゼノブレイド3が発売されると聞いて、DEが発売された頃に書いてた小説を復活させました。
ゼノブレイド3世界でメリアらしき存在が確認できたので、新たな設定が判明して矛盾が起きる前に投稿しちまえの精神。


原作前
幼年期


 〇月×日

 

 今日から日記を書いていこうと思う。もうそろそろ15歳になる記念……というのは両親から日記帳を買ってもらうための建前だ。本当は違う。

 

 俺が記録をつけていこうと思ったのは『ゼノブレイド』の世界に転生してきた前世持ちの転生者だと発覚したからだ。

 急に神さまからの天啓みたいな形で前世の記憶が蘇ったのだ。気分としては嬉しさ半分驚き半分といったところか。

 

 なんせあの超大作ゲーム、ゼノブレイドの世界だ。二体の巨大な神の骸が大地を構成しているという独特な世界観を持つ場所。

 前世ではその設定に惹かれ、各リメイク作品を最低でも三周するくらいにはハマった。Wii版なんて何回やったか覚えていない。

 その世界の一員として生きていけるのだから、浮かれてしまうのも無理ないと思う。

 

 とはいえ、あんまり楽観視もしていられないのだが。

 

 というのも、俺の頭には大きな大きな翼が生えていやがるからである。

 これを見たときかなり深い絶望を味わったね。有頂天だった俺の心はどん底まで叩き落とされたよ。

 自分がよりにもよってホムス(この世界でいう普通の人間)ではなく、ハイエンターだったんだから……。

 

 改めて、ゼノブレイドを知らない人に説明するつもりでこの世界についてまとめてみようと思う。

 

 まず大前提として、この世界は二体の巨大な神の躯によって構成されている。

『巨神』と『機神』。

生物が住む大地や自然は彼らの骸の上にあり、それぞれ『巨神界』と『機神界』に区分されている。

 

 それぞれの大地には特有の生態系が存在していて、機神側は無機物に近い生物が、巨神側には有機的な生物が生活、発展している。

 んで、俺が転生したハイエンターという種族は『巨神』にて生まれた種族だ。巨神の細胞が知性を持ったことで進化した奴らである。

 

 問題は、その進化元の細胞が人でいう白血球みたいなやつで、とある条件を満たすと進化元のそれ──―『テレシア』っていう化け物に帰化しちゃうってところですね……。

 

 この世界の生命体は原作で大体ひどい目に合うが、その中でもハイエンターはトップクラスと言っていいほどに悲惨な結末をたどる。

 それはズバリ、ハイエンター純血種の絶滅である。

 

 あのシーンはこのゲーム屈指のトラウマポイントなので、記憶に深く刻まれたプレイヤーは少なくないだろう。俺もその一人だ。

 将来あんなになると分かっていると頭を抱えてしまう。

 

 一応、純血種じゃないホムスとの混血種はテレシアへの帰化を免れ生き残ることができる。

 俺も混血種であって欲しいと思っていたのだが、両親はどっちもハイエンターだし純血種で間違いないですよねこれぇ。

 

 

 

 

 

 〇月〇日

 

 数日鬱でしたが諦めないことにしました。

 とは言っても絶望的状況に変わりないんだけどね! 

 

 とりあえず状況を整理してみよう。

 

 まず、今が原作ではいつ頃になるかだ。

 

 皇都アカモートがあるってことなので少なくとも原作開始前なのは確かだ。一回目の巨神と機神のドンパチはもう既に遠い過去のものになっていて、独自の技術で街を建造したということだからね。

 

 とはいえハイエンターは人間の約五倍という長寿命の持ち主。この世界でいう原始時代じゃないってだけで、原作よりもはるか昔の可能性は結構ある。

 

 そこで俺は閃いた。皇位に就いている人の名前から時代をある程度推察できるのではなかろうかと。

 何故かと言えばその皇族が原作のストーリーにものすごく関わってくるからである。なんならパーティーに血縁者が普通にいる。

 

 ハイエンターは王家の名のもとに三つの議会を置く政治体制をとっている。それ故に一族を束ねる皇族の名前を知らないものなどほとんど居ないだろう。

 皇族の名前を子供(16歳)が親に聞いても違和感はないはずだ。

 思い立ったが吉日。即行動に移してみた。

 

 

 ついこの前(一年)にソレアン様が立太子なされたばかりじゃないかって返ってきた。死にたくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 〇月△日

 

 

 ショックで寝込んだ。

 あの後今がどの時代なのかは親が丁寧に教えてくれたよ。数年前、ソレアン様がホムスの影妃を娶ったって忌々しく言いつつね! 

 

 ということで今現在原作の約90年前ということが確定しました。

 あとついでに両親は過激思想を持った純血派だということが分かりました! クソかな? 

 

 オイオイオイ、死ぬわ俺。いや、テレシアとして生きてくことになるかもだけど。

 おもっきし俺の生きてる間に原作が始まってラスボスが来ちゃうやん……。

 しかも両親純血派ってことで現在進行形でホムスのこと見下してるゾ。

 俺たちの唯一の希望だとわかっとらんのが哀れだ。ラスボスの謀略にまんまと乗せられている。悲しい。

 

 まぁぐちぐち言ってても俺がホムスとの混血児じゃないって事は変わらない。とにかく調べて整理して行動だ行動! 

 

 そうと決まれば解決しなきゃいけない問題の確認だ。

 まずどうにかしなきゃいけないのはハイエンターのテレシア化だ。

 

 ハイエンターがテレシアになる条件は一つだけ。

 体が耐え切れない程の高密度のエーテル(魔力みたいなの)を食らうことだ。

 確か、細胞の中のテレシア化因子が刺激されてテレシアになる。詳しい原理とかは知らんけど大体こんな感じだったはずだ。

 

 本来ならそこまで高密度なエーテルなんて食らう機会はそうそうないのだが、どっかのクソ神が皇都アカモート全域を覆えるほどのものを、100年後くらいに放出しやがるのである。屁みたいに。殺してぇ。

 

 ついでにその手下も自在にテレシア化できる装置を作りやがります。あいつも殺してぇ。

 

 んで、俺はこの問題を解決するにあたってどうすべきだろう。と思って考えてみた。ぱっと思いついた方法は3つだ。

 

 

 まず一つ目。それはラスボスを目覚めさせないこと。

 ラスボスが動かないと基本その手下たちも大っぴらには動けない。

 奴の手下たちは奴が目覚めるまでは巨神界の生命の味方なのだ。

 そうして仲間たちが油断している隙に、奴らはラスボスの復活のために裏で奔走する。準備が整ったら一気にドカン、ってわけだ。

 

 これを達成できた場合、少なくともラスボスの屁を食らうことは無い。手下も作った装置を広く使うようなことはしない……と思う。相当追い詰められない限りは。

 

 んで、この方法の問題点は俺がラスボスの手下と事を構えなきゃならないってことにある。

 この世界でラスボスの復活条件と敵の正体を知ってるのは俺だけだ。

 対して奴らは三人。うち一人は敵か微妙だけど、多分敵になると思う。

 

 そう考えると結構不利だ。

 なんせ俺はまだ未就学児なのに、一人は政界の一トップ。一人は王様の助言者。一人は世界中を旅して人脈を作ってきた武人だ。知恵と力だけでなく、地位も時間も足りない中水面下で孤独に戦うことになる。

 

 

 二つ目はテレシア化しない場所に籠るということ。

 実はこの一斉テレシア化計画を逃れる場所が一つある。

 この『巨神界』の外。もう一方の神の躯の大地たる『機神界』である。

 いや、そこに限らず巨神界にも安住の地はある。機神界攻略軍に参加せず、皇都アカモートのある巨神上層にいなければいいのだ。

 それさえすればラスボスの屁に巻き込まれることもないし、手下の作った装置に晒されることも無い。俺一人の安全は確実に買える。

 

 だがこれにもいくつか問題がある。

 まず、皇都脱走はハイエンター的にはあまりよろしく無い。

 基本ハイエンターは皇都周辺から出ることはできないのだ。

 

 巨神全体を支配していたハイエンターはある時期を境に巨神上層に籠った。それが劣等種ホムスから逃れるためだとか、血を混ぜないためだとかと純血派の中では言い伝えられているが、事実は違う。

 

 過去に起きた巨神と機神の戦争。それに疲れた古代ハイエンターは、戦うことを恐れて皇都のすぐ下に住むノポン族以外とは交流を断ったのだ。

 

 そのノポン族と会うのも、巨神上層に無い物資の輸出入だとか、野生のテレシアがノポン族の里周辺に行ってしまった時くらいで、実質鎖国状態。

 

 それを何百年も貫いたものだからハイエンターの伝統と化してしまった。

 伝統を重んじるハイエンターにとって、自ら皇都を出ようとするものは好まれず、白い目で見られる。そうならないのは王族関係者か軍関係者くらいである。

 

 そうして出ていった同胞は基本的に帰ってくることを許されない。つまり、安住の地を求めるならば故郷を捨てることを覚悟しなければならないのだ。

 

 また、機神界に籠るにしても、皇都から離れるにしても、物語の進行に対して干渉することはほとんどできなくなるだろう。

 それは起こるべきことから目を背け、助けられるかもしれない命を見捨てるということである。

 この方法は一番簡単で現実的だが、心情的にはあまり受け入れられるものでは無い。

 

 そして最後の方法は、俺というイレギュラーがなんやかんやしてテレシア化を防ぐ術をオリジナルで発明、発見することである。

 要するに行き当たりばったりってことだ。

 

 

 うーん、どれもクソだな!!! 

 

 

 

 

 

 

 〇月□日

 

 

 決めた。

 先日の案、1つめと3つめを同時に進めることにしよう。

 そうと決まれば走るだけ。俺は軍へと志願した。

 テレシア化を防ぐ手段を見つけるにしても、ラスボスの目覚めを妨げるにしても、エーテルへの理解を深めて研究に没頭しつつ、力を身につけなければならない。

 

 そうなるとハイエンターの俺に出来ることは軍で鍛えることしかない。辛い道のりになるだろうし、俺の安全は保証されないだろうな。

 

 でも俺には皇都の人を見捨てることはできなかった。

 クエストで触れ合った人々は友を思い、将来を夢見、みんなのため、人のため、趣味のために行動できる素晴らしき人たちだった。

 

 ……彼らの意識がみな消滅し、同胞に倒されなければならない未来を俺は認めない。知らず知らずのうちに家族や友を殺さねばならない未来など言語道断だ。

 

 せめて手に届く範囲の人々は助けたい。

 

 

 というわけで俺は明日から兵士養成所の寮に行くことになりました。

 ぜってぇぶっ倒してやるからなクソ野郎……! 

 

 

 

 

 

 ♦♦♦

 

 

 

 

 

 ○月◇日

 

 

 15年に渡る訓練の末、俺は晴れて一人前の兵士として任務に着くことになった。

 養成所にいた間はただひたすらに身体を鍛え、エーテルへの理解を深めた。

 なんせ挑むのはあの巨神様勢力だ。最低でも大型テレシアを一人で倒せるくらいの実力が必要だと思っている。

 ハイエンターのいい所は寿命の長さとエーテルの扱いに長けていることだ。その分心の発達がとても遅いが、俺は大人と変わらない精神が既にインプットされている。これを使わない手はない。

 

 焦らず騒がず落ち着いて。一歩ずつ着実に強くなることでいつかは高密度エーテルを受け止めれるようになるかもしれない。

 そんな淡い希望を抱いて訓練を続けた俺は養成所を第5席で卒業。

 

 その働きもあってか新兵には似つかわしくない任務を仰せつかった。皇太子ソレアン様直々ということからその重大さが分かるだろう。

 

 ズバリ、皇太子の娘であるメリアのお付騎士である。今回の卒業生上位10名の中からの選抜だ。

 

 これは殿下のメリアへ対する計らいだった。

 

 今年で10歳を迎えるメリアだが、人間換算でいうと2歳になるかならないか。

 物事を一人で決められる歳ではないというのに、寿命の違いから影妃様はおそらくひとり立ちする前に亡くなってしまうだろう。

 

 今年で30になる俺でさえ人間換算6歳。幼いメリアにとって母への死は心に深い傷を負わせることになることが予測される。

 

 故に、殿下は歳の近い俺たちをメリアの側に置いた。

 共に鍛錬を積み、ホムスへの理解があり、そしてメリアの幼馴染として一緒に成長していける俺たちなら、自分以上にメリアを育て上げてくれるだろうと殿下は仰ったのだ。ちなみに人数は俺含めて5人だ。

 この中田譲〇良い奴すぎる。初見で胡散臭いとか思ってた自分をもう一度殴りたくなった。

 

 

 閑話休題。

 

 

 そんなわけで俺は離宮勤めに。

 影妃様を守りながら友と共に鍛錬を積む日常の幕開けである。

 

 しかしこのメリアめちゃくちゃかわいいな……。

 正直、この15年間の気苦労は彼女の笑顔で吹っ飛んだ気がする。

 思い出したらやる気が出てきた。もう遅いけど今日はもう一セット修業してから寝ることにする。

 

 

 

 

 

 

 ○月✕日

 

 

 

 さて、そんなわけでメリア様親衛隊となったメンバーを紹介しよう。

 俺を含めて近衛騎士は5人。皆養成所で上位成績を修めた実力者たちた。ついでに、ホムスへの理解や視野の広い考え方のできることも選考基準になっている……と思う。

 

 一人目がアイゼル。養成所首席卒業者だ。剣の腕もエーテルの扱いもこのメンツの中ではトップ。皇室への忠義も厚く、勅命が下ったことに喜び泣いていたほどのナイトだ。

 その分仰々しくて頭でっかちなところがある。思慮深いし純血派では無いようだが、伝統を重んじるところがあるため、ハイエンターの文化を軽んじている俺を嫌っているかもしれない。メリアと遊ぶ度に説教される。

 

 次にホグド。コイツは養成所序列三位の実力者。

 回復アーツが得意で影妃様の傍にいることが多い。差別的な価値観が無く、人付き合いも良い。ノポンの友達がいるとか何とか。

 剣の腕もそれなりだ。俺に対しての態度はまぁまぁと言った所。アイゼルほど真面目ではないため、俺の行動にある程度目をつぶってくれている。とはいえハイエンターの騎士らしく礼儀正しいのは変わらない。

 

 3人目はガラン。俺のひとつ下の序列六位。

 彼は獰猛な騎士と言った感じの人物で、盾を持って前衛を張るヘイト稼ぎ要員だ。

 混血具合はまだまだだが、父親がホムスらしい。俺との仲は結構良いと思う。最後の一人のダミルと共に離宮で模擬戦をよくやったり、庭で虫取りしたりして遊ぶことが多い。しかし節度は守っているのでアイゼルからお叱りを受けたことは無い。

 

 

 そして最後はさっきもでてきたダミル。序列は9位

 ガランと一緒に前衛役を担当する男で一番筋肉質。その大きな体に分相応な大きな盾で俺たちを守る役目を担っている。親が探究院だったか記録院だったか……どちらかの議員で、親から期待を込められているらしい。

 

 そうした両親を持つためか視野が広い。公私を分ける俺と同じタイプのようで、離宮にいる間は結構バカ騒ぎする仲だ。

 

 以上4名が俺の仲間たちだ。確かこの4人原作でも名前だけは出ていたっけ。

 ……全員がマクナ原生林に出現したテレシアに存在ごと消されてしまう。

 そうならない為にも力をつけなければ。目標は一人で人型テレシア一体だ! 

 

 

 

 ○月□日

 

 

 親がうるさい。純血派だからメリアを暗殺しろだとか、陥れろとか言ってくる。やめて欲しい。

あとこの時初めて知ったんだが、彼らもまた巨神教異端審問官だったらしい。なるほどなるほど、光妃様という後ろ盾があるからそんな堂々としているわけだ。

 

 しかしやり取りを皇宮でやるのはやめて欲しいマジで。おかげで同僚のアイゼルに聞かれちまっただろ!

結果、彼にあらぬ誤解をもたれて決闘を申し込まれる事態になった。ホンマ……。

 

 どうやら殿下から俺にメリア護衛の命が下ったことに元々疑問を持っていたようだ。俺の親は純血派の中でもトップクラスの過激派で、しかも議員だ。アイゼルにもそのご活躍(笑)が耳に入っていたらしい。

まぁ異端審問官だからねぇ……。

 

 今までは殿下に何か考えがあると思って我慢していたようだが、今回の密談を聞いてしまって限界が来た。

 

 殿下からの勅命故、俺の任は簡単には覆らない。アイゼル一人が訴えたところで足蹴にされるだけ。

 そう考えた彼は、この決闘で俺に皇族を守る実力がないことを、圧倒的な実力で世に知らしめるつもりだ。そうして適正無しの烙印を押された俺をこの離宮から追い出すという算段だ。

 本人の潔癖気質からか全部教えてくれたよ。すげぇなお前。

 

 普通に親の知名度の高さにちょっと怒りを感じた。

 そしてアイゼルの考えに悲しみを覚えた。俺ってそんなに胡散臭そうに見えるの? 

 慰めてくれたのはガランだけである。もしかしたら他の2人も同じようなことを考えているんじゃないかな……。泣ける。

 

 誤解を解くためにも、面倒だがアイゼルの申し出を了承した。ここで実力を示して離宮に留まらなければ、彼らとの相互理解を深める機会などもう来ないだろう。

 

 別れるにしても、やるだけの事をやってから別れたいし。

 

 

 

 

 ○月▽日

 

 

 

 今日は決闘の日だった。

 結果から言おう。俺はアイゼルに負けた。

 しかし、近衛騎士を外されるということにはならなかった。アイゼルも勝負の後、なんだかんだで俺のことを認めてくれた。……個人的にはいいのかそれでと思う。

 

 なんせ負け方が負け方だ。ハイエンターの剣士ともあろうものがエーテルの暴走で自爆したのだ。いくら人間換算で6歳前後の少年と言えど、メリアの側仕えの騎士であるならばできなくてはならないこと。

 ぶっちゃけあの時は恥ずかしさで死にそうになったね。

 

 確かに、アイゼルとの戦いは暴走しなければいいとこまでいけていたと思う。でもあっちの攻撃が当たらなかったのと同じようにこっちの攻撃もまるで当たらなかった。なんなんだアイツ。

 素早さのステータスだけならあの5人の中じゃ一番だと自負してたのに軽々と避けたり受け流したり。自信なくしちゃうぜ。

 

 それに距離を離してもアーツで火球とか飛ばしてくるし……。こちとら物に纏わせたりしないとまともに扱えねぇってぇの! エーテルなんてものがなかった世界の奴がエーテルを自由自在に操れるかボケ! 

 

 もっと安定度を上げなければ。エーテル防御の土属性で相手だけじゃなく自分のアーツも打ち消しちまったら元も子もないよ。

 

 

 

 

 

 〇月+日

 

 

 先日の決闘で俺たちメリア親衛隊の能力が各所に知れ渡ったらしい。まだ35にも満たないというのに、初の討伐任務を命じられた。

 標的はエルト海に生息するスピカル族。その一小隊規模の制圧だ。

 

 奴らの討伐依頼は定期的に軍に入ってくる。

 基本、皇都周辺には自動防衛装置があるため街が襲われるという事態にはならない。

 しかし、彼らが増殖し過ぎると、エーテルプラントやシウェラート灯台などの皇都外部の施設を利用する軍人や役人、エンジニアに被害が出ることがあるのだ。

 故に、増えすぎないように間引きを行う。

 

 ぶっちゃけ言って余裕だった。

 メリア様親衛隊はそんじょそこらのスピカルには負けない。あの岸に住んでるヤツらは怪しいかもだけど……。

 はやく片付いたんでエルト海であるブツを掘ってきた。エーテル結晶である。俺はこいつを使ってエーテルの制御が上手くならないか試してみることにした。

 手に入ったのは土と風と水。明日からはこれを使った実験をしよう。

 

 

 

 〇月^日

 

 エーテルの純度がクソだ! 

 やっぱり精錬してあげないと使い物にならなそう。

 

 エーテル結晶は属性ごとに様々な効果を持つ。土なら防御系だし、水なら治癒力の促進系。風なら素早さ関係。

 そんな具合にある程度傾向が纏まって結晶化しているが、自然のままでは使えない。

 絵の具をぐちゃぐちゃに混ぜたかのように、様々な性質が細かく分散して混ざってしまっているためだ。

 

 ゲームではエーテル結晶を溶かして成分を抽出し、ジェムという結晶に再構成することで純度を高めていた。

 イメージとしては石油からプラスチックを作るみたいな感じだ。温度とか濃度とかで結晶内の性質を区分してそれぞれで再構成してる……みたいな? 

 

 しかし俺はまだ35歳のわんぱく坊主。ジェムの精錬炉なんて持ってない。故にハイエンターのエーテル操作能力のゴリ押しでどうにか出来ないか試したが……やっぱりダメみたいだ。

 

 うーむ……どうしても欲しいのだが大人になるまで待たなきゃダメかなぁ。

 どうやら俺にはエーテルを使った物質強化の才能はあるようなのだ。

 アイゼルやメリアがやっているように何も無いところから炎だとか氷だとかは出せなくても、身体能力の強化や武器の強化といった既にある物質を依代にするタイプのアーツは護衛5人の中で突出して上手かった。

 

 だからジェムにもそう言うアーツをかけてゲームではできなかった効果を発揮できないか試したかったのだが……。

 

 あんまり頼りたくないけど親に誕生日プレゼントでもねだってみるか? 

 いや無理だな。俺ほとんど家に帰ってないし、親密度も高くないし……。嫌いって訳では無いんだけどな……。

 

 

 

 

 

 

 

 〇月♪ 日

 

 得物を変えることにした。

 ほかの4人から見ても俺には剣の才能はないらしい。

 具体的にはそれなりに扱えるところまでいくが達人にはなれないとのこと。

 ということで十数年を共にした片手剣とおさらばし、俺は新しく槍を手にした。

 

 槍にした理由はいくつかある。

 まず第一に、俺は戦闘中、近接攻撃とエーテルアーツの併用が苦手なことにある。

 

 ハイエンターの騎士の多くが取り回しのいい片手剣を使うのは近距離から中距離への切り替えがしやすいためである。

 本来ならハイエンターはエーテルを手に込めるだけでアーツが使える。炎の玉だとか氷柱をとばすとか、そういうファンタジーな技が本当に簡単に繰り出せるのだ。しかも攻撃力が高い。

 中にはそもそも剣なんか使わずに盾だけ装備して戦う奴もいるくらいだ。

 

 しかしこれに俺は当てはまらない。無から有をつくるタイプのアーツの発動に五分ほど時間を要する落ちこぼれなのだ。アーツなんか使わず物理で殴った方が活躍出来る脳筋野郎である。

 

 故に第二の理由、物理火力に全振りした方が強いという結論に行き着いたわけだ。

 エーテルアーツを使わないなら片手を空けておく必要も無い。

 片手剣という武器の中では火力があまりないものを使う必要が無い。

 ならば両手で扱える大剣や槍でもなんら支障はない。

 中距離に対応できる槍の方が戦い方にも幅が出るのでは? 

 

 そんな感じの議論を仲間たちとした結果、俺は晴れてランサーとなったのだった。

 これで火力役なのに火力がないという俺の弱点もある程度克服されることになるだろう。

 いや、ようやくパーティーの一員としてしっかりとした立ち位置に収まることができるようになる……と言った方がいいか。

 

 盾役はガランとダミル。回復要員はホグド。そして物理アタッカーが俺でエーテルアタッカーがアイゼルだ。いい感じだな! 

 なお、アイゼルは剣の腕前も良いことをここに書いておく。

 

 ……やっぱり俺居場所ない? 

 

 

 

 

 〇月"日

 

 

 驚いたことに俺には槍の才能があったらしい。今までよりはマシという程度で槍に変えたが、ハマり役だったようで。

 なんとあのアイゼルから十本勝負で一本取れたのである。凄い進化だ。これは極めれば極まるところまで行くかもしれん。要練習っと。

 

 勝因はやはり相手との間合いが絶妙だったのだろう。剣ではギリギリ届かず、かといってアーツを撃つには近すぎる。

 対人戦ではこの距離感を大事にして戦わなければいけないだろう。

 逆に残り九本の敗因はまさにこれだ。小回りの効かない超インサイドの戦いになると一気にきつくなる。

 

 これに対応するため腰の辺りに短剣を装備しておこうと思う。ついでに盾を持つことの無くなった左手の篭手も改良したい。

 具体的にはガチガチに固めて敵の攻撃を受け流せるくらいの強度が欲しい。これでインサイドは今よりも良くなるだろう。

 

 そういえばまた新しく俺たちに任務が下った。いつも通りスピカルの討伐依頼かと思ったらアンセルの方だった。

 今回はメリアの護衛役で人が減るらしいがまぁなんとかなるだろう。

 

 しかしあれだな。まだまだハイエンターの中じゃ子供もいい所なのにどうしてこんなに仕事が来るんだ? 

 俺の前世の記憶じゃこの頃の子供が外でモンスターと戦うのは結構危ない行為だったと思うんだが。クエストとかでそんな愚痴を聞かされた覚えがある。

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 ×月〇日

 

 

 メリア様26歳、人間換算5歳。

 俺たち護衛組46歳、人間換算9歳になった。

 

 まだまだ全員ちっぽけである。だというのにやはり仕事は舞い込んでくる。

 更にメリア様の教育も本格的に始まり、2,3人そちらに人員を割かなくてはいけなくなった。

 今までは役割分担でどうにかなっていた戦闘も、全員が全員それなりに動けないとキツくなってきている。

 具体的には俺とホグドの組み合わせの時がヤバい。回復役の彼にヘイトがいかないようにしつつ火力を出し、さらに被弾率も下げなければならない。どれかが欠けるとどっちかが即ダウンする。

 

 そんなわけで現在は素早さ上げに力を入れている。やはりゼノブレは素早さゲー。敵の攻撃を避けてカウンターという流れができるとかなり楽だ。できるとは言っていない。

 

 今日は改善策としてあるものを頂いた。携帯式ジェムクラフトだ。ようやく手に入れた。武器屋のおっちゃんには感謝してる。

 

 しかしジェムを作るのは結構時間がかかるらしい。描写はなかったが体力も結構いる。それにひとりじゃ鋳造できない。

 精錬に絆が大事ってマジだわ……。ダミルとやっても全然上手くいかねぇ。タイミング大事。

 

 

 

 

 ×月□日

 

 

 舞い込んでくる仕事が多い理由が明らかとなった。純血派の仕業である。またお前らか。

 まだ幼いうちに多くの失態を経験させ、メリア様が動かせる手駒を減らそうと考えていたらしい。

 最悪死ぬことも想定してると聞いてびっくりだ。大の大人が子供相手にやることじゃねぇ。

 

 しかし予想に反して俺たちは全ての仕事を片付けた。そうなると積み上がるのは失態ではなく名誉ばかりである。

 また、齢50に満たない子供たちが戦っていたという事もこれまでなかったため、俺たちは天才集団として将来を期待されるまでに至った。

 

 そうなると面白くないのが純血派。次こそはと意気込んであれやこれやと更に危険な討伐依頼をこしらえているようだ。

 

 何が酷いってそれを話していたのがうちの両親だって話よ。だから純血派の策略だとも知れたのだが……。休みのうちに家に帰ろうと思ってたけど宮勤めに戻ります。二度と帰るか! 

 

 俺は過去の経験からまた誤解が生まれぬよう、事の顛末をアイゼル達に包み隠さず話した。そうしたら今は敢えて乗っておいてやろうと返答が来た。

 

 手柄を取らせてくれるならそれでいい。名誉を得れば立場が良くなるのはメリア様だ。そのうち彼らは自分たちがやったことを後悔するだろう。

 

 そんなふうに皆高笑いしてた。

 

 あとお前の親は有用だから定期的に帰って情報を抜いてこいとアイゼルに命令された。

 帰りたくねぇ〜〜〜〜〜〜。

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

□月/日

 

 時が進むのは早いもんでメリア様がとうとう50歳になられた。

 俺たちは70歳だ。数字だけ見ると老年っぽいが人間換算で14歳。中坊真っ只中と言った具合だ。

 

 しかし皇室において50という数字は区切りを迎える歳である。つまるところ政界への本格参入が始まるのだ。

 メリア様には未だ発言力はないものの立場はある。内外問わずそう言った大人な仕事が舞い込んでくるようになる。ご多忙になるであろうことは明白だ。

 

 影妃様はもう数年前に亡くなられた。彼女の支えとしてより一層精進しなければ。

 

 とはいえ俺たちももうそろそろ大人の仲間入りを果たす。70代になれば本当に一人前の騎士だ。メリア様の護衛という命令以外にも、個人個人に任務が下るようになってくる。

 もしかしたら誰も彼女の傍にいられないということも有り得るだろう。

 

 故に彼女に一人で戦える技を教えている。仕事の合間に無理のない範囲でだが、根が真面目でそれなりの才能もあったためメキメキと力をつけている。

 

 鍛錬の時間に見せてくれる彼女の屈託のない笑顔がとても尊い。

 俺たちを信頼してくれるからこそ、彼女はのびのびと好き本当の姿を見せてくれる。

 ……あの笑顔を守るためにも、俺も本格的に行動を起こさなければ。

 

 俺も、大人になるのだ。

 政界に巣食う『敵』と相見える時は近い。

 

 






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