最終的に人間辞める種族になりましたので神に抗います   作:塩なめこ

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おまたせしました。

今回は決着&繋ぎ回です。
結構難産になりましたが楽しんで頂ければと。




その裏切り者の名は

 

 

「そこを退け!」

「退くのはおめぇらだ!」

 

 シュルクから暗殺者の一人を引き剥がしたラインは、彼女との攻防を長いこと続けていた。

 その理由はラインが扱うバンカー系装備と、暗殺者の振るう刃とがすこぶる相性の悪い組み合わせであったからだ。

 

 バンカー系の武器には剣のような刃と大きな折りたたみ式の盾が備わっている。それ故に巨大ではあるが、ホムスにとってはその巨大さこそが武器だった。

 

 バンカーは機神兵に特化した装備なのだ。

 刃を地面に突き刺して盾を広げることで機神兵の重い一撃を防ぐ。複数人が並んで突進することで巨大な機神兵を”転倒”させる。そのような対機神兵への運用を前提とした設計思想を持つのである。

 

 逆に言えば、このような一対一の対人戦ではあまり輝けない武器なのだが。

 

 

(まぁシュルクが戦うよりはマシだ。あいつは剣を習ってるが、人との戦い方は知らねぇ!)

 

 

 それでもラインがこの暗殺者を抑え込めているのは、本職が防衛隊員であったためだろう。

 今の彼は自身の役割を良く理解していた。肝心要なのはこの女をシュルクに近づけさせないこと。対応としては酒で酔った暴漢を取り押さえるようなものでいい。

 即ち、超近距離で盾を前面に押し出し続ければいいのだ。

 

 

「シールドバッシュ!」

「ぐっ、小癪な!」

 

 

 暗殺者の女の刃は短剣に近い。機動力が確保しやすい分重さや長さはない。故にバンカーの巨大な盾を貫くことは敵わない。

 だから彼女に取れる戦法はただ一つ、機動力で圧倒すること。一度後退して距離を取り、急接近して盾の側面から本体を狙う。だが……。

 

 

「ボーンアッパーッ!」

「ちぃ! この筋肉ダルマが!!」

「筋肉ダルマで結構! お前を足止めできんならな!」

 

 

 盾の奥に構える、筋骨隆々としたラインの体から放たれる一撃がそれを阻む。避けようとして再度距離を取れば、そうはさせまいとラインが盾を構えて突撃してくる。

 

 とまぁこんな具合で彼らは小競り合いを続けていた。

 暗殺者はラインの防御中心の戦法を打破できず、ラインはバンカー系武器の欠点と防御に重きを置いた戦い方のために暗殺者を仕留めきれない。

 

 

「うおっ!?」

「……っ! このエーテル粒子は、馬鹿な!」

 

 

 そんな鍔迫り合いをしていた時、彼らの元に緑色に光るエーテル粒子の波が殺到した。シュルクたちによって倒されたテレシアが最期の爆発の際に放ったものだ。

 

 

「くそ!」

「あ、やべっ!?」

 

 

 その事を瞬時に理解したのはテレシアを見慣れていた暗殺者の女の方だった。呆気に取られていたラインの隙を突き、彼の拘束から逃れると、一心不乱に光の波の中へと走り出す。

 

 狙うのは予言官アルヴィース。

 

 テレシアが討たれた以上、ここにいる者たち全てを亡き者とするのは難しい。誰かしら証人が残るのは確実だ。

 そして証人として生還してしまうと最も厄介なのがアルヴィースだ。

 

 他のホムスやノポンなら光妃殿下の力でどうとでもなるが、彼は立場上皇室に対して発言力がある。彼と被害者である影妃の子だけはここから帰してはならない。

 

 影妃の子はタルコが殺しているはずだ。ならばこの状況で自分は、その身を犠牲にしてでも彼を抹殺しなければならない───! 

 

 

「雷刃砲脚!!」

「しま───」

 

 

 そんな覚悟を持って必死に駆ける彼女は、しかし突如眼前に現れた男の蹴りによって阻まれ”崩れる”。続けて男は技を放つ。

 

 

「鉄功弾!」

「があ!!」

 

 

 渾身の力を込めた体当たりは”崩れた”彼女を吹き飛ばして”転倒”させる。

 そこへ後方から追いついてきたラインが、トドメとばかりに盾を構えて覆いかぶさり、完全に彼女を拘束した。

 

 

「まだまだ甘いな、ライン」

「やっぱ強ぇよ、アンタ」

「なんだよ、もしかして最初から俺をアテにしてたのか?」

「へへっ、まぁな」

 

 

 男の名はダンバン。1年前機神兵の大軍勢をモナドによって撃退し、ホムスを救った英雄。

 

 その強さはホムス最強と言っても過言ではない。

 モナドの負荷によって利き腕が使えなくなり、全盛期は過ぎてしまったものの、こと対人戦においてならシュルクら一行の中でも頭抜けた強さを誇る。

 

 彼は既にもう1人の巨神教の暗殺者との戦いを終わらせていた。

 若い頃、数多の戦友と交わしてきた訓練試合の数々。彼女たちが扱う武器と似たような、爪の得物を扱う友との戦い。

 それらの経験から培われた技術と才能が彼を英雄たらしめ、そして最強たらしめていた。

 

 

「ぐうう、離せ!」

「おおっと」

「暴れてもいいがよく状況を見た方がいい。()()()()()()()()()()()()

「なに───? あぁ、ああああああ……!!」

 

 

 言われて辺りを見てみれば。

 

 ダンバンによって気絶させられ、倒れ伏した仲間の姿。

 

 テレシアを討伐し終え、各々の武器を仕舞い始める敵の姿。

 

 そして背を床に着け、喉に杖の先を向けられているタルコと、毅然とした態度で立ち、杖を向ける影妃の子の姿が目に入った。

 

 暗殺者側の完全敗北である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぜだ……! 私は確実に虚を突き、懐に入っていたはずだ!」

「あぁ、確かに私はあの一瞬間違いなく驚嘆していたよ。だがそれはそなたが反属性のエーテルを使ってきたことに対してであって、私のエーテル弾を突破してくることに対してでは無い」

「読んでいたというのか!」

「そなたが”あやつ”の関係者であれば、それくらいのことはしてくるであろうとは思っていた」

 

 

 あの時、メリアは自身のエーテル弾を突破してきたタルコに最終手段を行使していた。

 

 エーテルを強化する雷のエーテル球は、いざと言う時に放つ最後の一発であったわけだが、保険としての機能はそれだけでは無い。

 

()()()()()()物理的な対抗策としても使用できるのだ。

 

 メリアは五体満足でタルコが近づいてきた時、エーテル弾の射出が間に合わないことを瞬時に理解した。だからあの時杖を振るったのはエーテル弾を発射するためではなく、()()()()()使()()()()()()だったのだ。

 

 

「雷の属性を付与された武具は相手の感覚を麻痺させる。あの瞬間私が何をしたか見えていなかったのは、そなたが一瞬気を失っていたためだ」

「馬鹿な! お前の攻撃をもろに喰らったと言うのか!? たとえエーテルを纏わせたとしても間に合うはずなど無かったのに!」

「雷のエーテルであれば間に合わせることが出来る。あの属性には気絶効果をもたらす他にもうひとつ、効果があることをそなたも知っているだろう」

「っ! ……瞬間的な速度上昇効果か」

 

 

 ダブルアタック、という効果を付与する雷のエーテルジェムが存在するように、雷のエーテルはエーテル効果の補助や、気絶効果、耐性の付与の他に瞬時であれば移動力を補助することが出来る。

 

 要はメリアはその効果を使用しただけに過ぎない。

 

 あの瞬間懐に飛び込んできたタルコを交わし、その腹に反撃の一撃を喰らわせた。ただそれだけなのである。

 

 

「くそ……っ! なぜだ、どうして私は勝てなかった! 貴様を殺すために全てを捧げてきたというのに……!」

「……敢えて私がそれを口にするならば、そなたは”あやつ”に囚われすぎていたから、だろうな」

「私が”先生”に囚われていた、だと……!?」

 

 

 本来であれば、メリアは最初の包囲からの攻撃で間違いなく絶命していたはずだ。

 

 この暗殺は完全に想定外の事態であったし、目の前に現れた巨神教の暗殺者を見て、あの時のメリアは狼狽し、戦いに赴ける状態ではなかった。

 なのに彼女たちの攻撃を紙一重で回避し、シュルクたちが来るまで持ちこたえられたのは、”彼”が伝授した技が彼女たちの根底にあったからだ。

 

 彼女と彼女に付き従う近衛たちは訓練の中でそれと何度も相対している。

 お互いに対策を重ね続け、研鑽し合った幼き頃の思い出。体に染み付いたその経験がメリアに既視感を覚えさせ、体を無意識のうちに動かした。

 そして最終的にはその精神までも立て直してしまった。

 

 その後のタルコとの一騎打ちでもそうだ。

 

 ”彼”に憧れ、追い付いたタルコは、まさに短剣を振るっていた”あの夜の彼”だっただろう。動きの隅々にまで”彼”の面影がチラつき、染み付いていた。

 

 だからこそメリアにはその戦い方が理解できた。予想できた。

 

 だって彼女は最強たる”槍を持った彼”と近衛たちが戦う試合を何度も見てきたから。そして彼女自身も”槍を持った彼”と何度も刃を交え、対策してきた。”彼”自身と近衛たちから技を教授されながら。

 

 もはやメリアとその近衛たちは”彼”のトレースでかなう相手では無いのだ。彼女たちは”彼”と対等のステージにいる。

 後を追い、追い付いたところで満足し、自分のものとして更に昇華できなかったのが、タルコの敗因だった。

 

 だがそんなものタルコが認めるはずがない。

 

 

「ふざけるなぁ! きさま、貴様は、どこまで私を侮辱すれば気が済むのだ!」

 

 

 敬愛する師匠の技でもってメリアを亡き者とする。それが二十数年間タルコを突き動かして来たものだった。そんな彼女にとって()()()()()()()()()()などという現実を突き付けたとて、侮辱にしかならない。屈辱にしかならない。

 

 

「……っ、タルコ様、どうかお逃げ下さい! はああああああああ!!!」

「うおっ!? 何やってんだ、暴れんな馬鹿!」

「!? 皆の者、そやつを見るな!」

 

 

 突如、ラインが組み伏せていた暗殺者の女が暴れ始める。

 ろくに動けない状態であってもエーテルを扱うことが出来るのが純血のハイエンターだ。彼女はその身に内包するエーテルを光として辺りに放出した。

 

 万全の体勢でないうえ、詠唱も属性の集中も行われていないそれに攻撃性はない。だが相手の視界を奪うには十分過ぎる光量だ。

 

 

「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!! 次こそは必ず、殺してやるぞメリアァァッッッ!!」

「な、待てっ!」

 

 

 ただ倒れ伏していただけのタルコはその目くらましに便乗して逃げ出す。

 メリアには逃げざるタルコの朧気な輪郭しか捉えることが出来ず、視界がクリアになった頃には、既にその姿はどこにもなかった。

 

 

「タルコと言ったか、あやつは……」

 

 

 とはいえ一件落着である。不穏分子を一人逃がしたとはいえメリアは無事で、テレシアは完全に沈黙し、二人の重要参考人を捕らえることが出来た。

 

 シュルクは未来を変えたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんとかメリアちゃんのピンチに間に合って、ほんとによかったも!」

 

 

 場所は戻り戻って皇都アカモートの白翼宮。シュルクたち一行は今回の事件での疲れを癒しながら、どのように今回の件が処理されるのか、その報告を待っていた。そしてその人は現れた。

 

 

「皆さん、お疲れ様です」

「ホグドさん」

 

 

 メリアの近衛の一人にして治癒術師のホグドが白翼宮の扉を開いてシュルクたちの前に現れた。

 

 今現在、彼以外の親衛隊員は護衛として謁見の間にてメリアと共にある。

 

 ホグドだけはシュルクたちが捕縛した巨神教の暗殺者たちの治療及び収容の仕事に従事する必要があった。

 

 彼は親衛隊員であると同時に皇都防衛隊員の中でも選りすぐりの回復アーツの使い手でもあるため、このような事態で現場の指揮を任されることが多いのである。

 

 ホグドがシュルクたちへの伝令員として彼らの前に現れたのは、そういった任務を終わらせて彼の手が空いていたためであるのと、彼自身がシュルクたちに真実を伝えるべきだと考えたからである。

 

 

「改めて感謝を。あなた方がいなければ今頃メリア様もここにはおられなかったでしょう」

「いいんです。僕達は自分がやりたいことをしただけなんですから。こちらこそメリアの大事な儀式を邪魔してしまってすみません」

「……メリア様は無事”証”を持ち帰り皇太子となりました。シュルク殿たちが気になさるようなことはなにもありません」

 

 

 そしてホグドはその後の顛末を語り始めた。

 被害者であるメリア本人とシュルク達と同行した予言官の証言。墓所詣での儀の宣誓の折、カリアンがある人物と巨神教の間者との密会を目撃していたという情報。

 これらの証言からその人物、カリアンの実母たる光妃殿下が今回の暗殺事件の主犯格として逮捕され、今現在その審判が行われているであろうことを告げた。

 

 

「なッ……!?」

「それじゃぁなにか? メリアの奴はこの国の皇妃さんに狙われたってぇのか!?」

「そういうことになります」

 

 

 ハイエンターの皇主には、同じハイエンターの光妃とホムスの影妃を娶る風習があること。その結果、ハイエンターの血はホムスとの混血が進み、混血と純血との間で小競り合いが起こっていること。

 そして、純血派のハイエンターの中でも特に過激な思想を持つ者たちの集まりが、巨神教と呼ばれる宗教団体を構築していることをホグドはシュルクたちに伝える。

 

 

「実行犯たるタルコという女もこの巨神教に所属しています。そして光妃殿下はその巨神教のリーダーだったのです」

「皇家にも深い関わりがある闇の組織か。……しかしいいのか? 俺たちのような旅の一団に、そんな国の恥部とも取れる裏事情を話しちまって」

「あなた方はメリア様を救ってくださった良き人たちだ。だと言うのに何に巻き込まれたのかも知らないまま、というのはおかしなことだと思いませんか? 

 そして何より、これを知っていて下さらないと、私がここに来た本当の目的を達せられない」

「本当の目的……ですか?」

 

 

 そう疑問を呈するシュルクたちをホグドは真っ直ぐ見据えると、深々とその腰を折って頭を下げた。

 突然のことに困惑するシュルクたち。しかし彼らが声をかけるよりもはやく、ホグドは彼らにとって衝撃の事実を暴露する。

 

 

「本当に申し訳ありません! 我々は、巨神教のリーダーが光妃殿下だと知っていながら、みすみす今回の事件を引き起こしてしまったのです!」

「え……?」

 

 

 一瞬思考が停止する。主犯格が誰か分かっていたというのなら、それはつまり事件そのものを未然に防げていたかもしれないということだ。

 

 

「な、なんでそれで止められなかったんだ! 分かってたんならさっさと捕まえちまえば良かっただろ!?」

「それができなかったのです。私たちは確かな情報筋からそのことを知り得ていましたが、証拠は何一つなかった」

「相手は国のお妃様。十分な材料なく告発すれば逆襲される危険性もあった……ってとこかな?」

「その通りですダンバン殿。……しかしそれでも私たちは私たちを許せない。最後の最後で私たちは何も出来なかった……っ!!」

 

 

 頭を下げながら、ぎゅっと拳を握りしめるホグド。彼の無念と悔しさがひしひしと伝わってくる。だがシュルクはこの話を聞いてひとつ疑問に思うことがあった。

 

 

「メリアにはそのことを話していなかったんですか? 墓所での彼女は、敵側に義母がいることを知らないようだった」

「……シュルク殿の推察通りです。私たちはこのことに関するものは何一つ、メリア様にお伝えしていません。メリア様の心情を鑑みて、私たちが独断でそのように決めたのです」

「心情……。過去のメリアに一体何が?」

 

 

 そのシュルクの疑問に答えるようにホグドは語り出す。彼らの罪。そしてメリアの中に潜む心の傷。その闇を。

 

 

「……メリア様の親衛隊には元々、私含め5人のメンバーが在籍していたのです」

「!?」

「あなた方はメリア様の友人として信頼に足る方々だ。だからどうか、知っておいていただきたい。

 私たち親衛隊とメリア様との間に何が起きたのか。

 皇都を追われた5人目の騎士、”カイン”の事を……」

 

 

 シュルクたちはこの時初めてその存在を耳にする。そして知る。

 過去30年の間に起こった巨神教とメリアを巡る出来事を。その裏で親衛隊がどのように動いていたのかを。

 ハイエンターに広く伝わる表向きの事情の全てを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 皇都よりはるか下方。

 巨神の腹に突き立てられた機神の大剣、その上空にて動く小さな点たち。

 

 それは機神界、ガラハド要塞から巨神界を目指すフェイスたちの一団だ。

 

 彼らの目的地は巨神の頭部。そこに位置する監獄島。

 彼らはそこに囚われているはずのある人物を抹殺する任を受け、大剣の柄の部分からこっち、高度を上昇し続けていた。

 

 

『調子いいねぇ。最初っからこうしてくれりゃァいいのによォ』

 

 

 その飛行集団の先頭を行くのは2()()

 片翼を担う《黒いフェイス》は、新調された機体の動作を確認するように左右に揺れる。

 

 さらに鋭く、強力になった爪。駆動系の一部変更や装甲の追加。そして盟主の槍の携帯などなど。

 これまでの《黒》の戦闘データがフィードバックされ、最適化及び機能が拡張がなされたことに彼はご満悦の様子だった。

 

 だが、現在全盛期の彼にも気に入らないことがひとつ。

 

 

『しかし、なんだぁ()()()()は?』

 

 

 視線を向ける先には2つの機影。

 この集団のもう片翼を担う青い機体と、白い機体がその不機嫌の種だった。

 もっとも気に入らない理由は───。

 

 

()()にしちゃあ、大仰な出で立ちしやがって』

 

 

 ───というなんとも身勝手なものであるため、疎まれていることを知ったとしても彼らにはどうすることも出来ないのだが。

 

 もしも彼に気に入られたいと思うのなら、それはもう戦闘で結果を残すくらいのことをしなくてはならないだろう。

 

 

『───おっと』

 

 

 搭載するレーダーで《黒いフェイス》はその存在を捉えた。

 始祖ハイエンターが巨神界上層へと侵入する異物に備えて設置していた自動機械群だ。

 

 自立飛行が可能な彼らはエルト海の対空防御を一手に担う。数々の砲門をこちらに向け、飛行しながら接近していた。

そして、射程圏内にフェイスの一団を捕捉すると間髪入れずにエーテルレーザーの一斉掃射を開始する。

 

 

『律儀じゃねぇか、機械の分際でよォ!!』

 

 

 機神界盟主から伝え聞いた通りの動作を見て《黒のフェイス》はそう評する。

 彼は巡航形態のままその機体を回転させて回避運動を取り、機体前方に伸びる砲身にエーテルをチャージする。

 

 溜め込まれたエネルギーは次第に雷の球体へと変化していき、十分な大きさになると自動機械群に向けて放たれる。

 

 これこそが一団の先頭を担う《黒いフェイス》の最初のお仕事だ。

《白いフェイス》や《量産型フェイス》と違って変形機構を有する彼は、その速度を落とすことなく迎撃することが出来た。

 

 彼はその特性を活かし、行軍速度を落とさずに一番槍として働く。

 

 それはもちろん、もうひとつの頭である《青いフェイス》にも課された仕事でもあって───。

 

 

『ほぉ? なかなか速ぇじゃねぇか』

 

 

 ───《黒》と同じく()()()()()()()彼は、前に突き立てたその槍でもって自動機械群の、その中央を穿つように一閃するのであった。

 

 

 そのスピードにさしもの《黒》も感心する。空中でこそ出せる、限定的な加速と分かりつつも、障害物をものともしない切れ味には舌を巻く。

 

 その三角形のようなシルエットから連想されるのは槍の穂先。彼の超スピードの後に残る()()()の残滓はさながら柄のようだ。

 

 

 

『────!』

 

 

 敵の一団の中央に穴を空けた《青いフェイス》は、その隙間を埋めるように殺到した自動機械群によって全方位からのレーザー照射に晒される。

 

 だが彼は巧みな回避運動でその全てを回避していく。そして機械群の中から脱出し、彼らを一望できる位置へと陣取ると、反転してもう一度突進を敢行した。

 

 全身から雷撃がほとばしる。

《青いフェイス》の装甲も、変形時鋭くなるように設計されているのだろう。

 迎撃機械兵は彼の槍に貫かれるか、彼の体に触れて切り裂かれるか、彼が放った雷撃によって爆散させられるかしてその機能を停止していった。

 

 

『おうおう働き者だねぇ。このまま任せてもいいが、それはいくらなんでも退屈すぎるぜぇ!!』

 

 

《黒》はその光景を見物しつつ、彼の突撃によって乱れた機械群に雷撃弾を放つ。

 ろくな陣形も取れない彼らは無駄に密集してしまい、その砲撃で一網打尽にされてしまう。

 

 

 

 横からは《青》の超加速と槍を用いた突進が。正面からは《黒》を含めたフェイスの砲撃を加えられ、機械群はジリジリと数を減らす。

 

 その戦況は終ぞ変わることはなかった。

 

 この空域での戦闘を終えた頃になってもフェイス側には目立った損害は認められず。

 

 ハイエンターの遺物達はフェイス相手にろくな戦果を挙げれないまま数を減らされ、その防衛網を突破されていった。

 

 

『───とりあえず、一発ぶち込まねぇとなぁァ。えぇ? ザンザさんよォ!』

 

 

 戦場はエルト海へと移り変わっていく。

 

 

 

 






少し短いですが次回へ続く。
ようやくここまで来ましたね。

青いフェイスの変形時の状態は描写した通りです。
変形時、機体の下側中央にでっかい槍をマウントしていて、三角形のようなフォルムをしていること以外の部分は読者様方の想像におまかせ致します。
デザイン画とか書けたら良かったんですけどね……。

最後にご報告をば。
ゼノブレ3に関しての設定は特に気にしないで今作は書かせていただこうと思います。
筆者自身プレイするのも今作完結後とかにしようかなとか考えてるんですよね。モチベの維持にもなりますし。
なので既プレイで気に入らない方は……大目に見てください!


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