最終的に人間辞める種族になりましたので神に抗います 作:塩なめこ
間髪入れずに投稿だ!
鋼鉄の船は空を往く。
それを中心に添えるかのように2機の顔つきが両翼を固めていた。
それに乗るのはフィオルンとカイン。
私たちの旅の目的である彼ら。
ガラハド要塞では逆に窮地を助けられ、今は《レジスタンス》なるもの達の拠点へと誘われている。
彼は果たして真実を語ってくれるのだろうか。
期待と不安を胸中に抱えながら、ただじっとモニターを見つめていた。
船の外の景色を映すそれの中心には、真っ青な空と海の中に浮かぶ黒い島があった。
機神の落ちた腕。
伝承では機神と相打ちになる間際、巨神が叩き斬ったとされるその島が《レジスタンス》の拠点だった。
「全機能正常……着水完了。到着したぜ、モナド使いの御一行さんよ」
操縦席の中央に座る男は指示を終えると、立ってそう言い放った。
モニターの外には壁に囲まれた湖と、この乗り物と似た船が見える。
「飛空挺がもう一機……。ここは一体───あ、えっと、貴方は──」
「───船長と呼んでくれ。この船……ジャンクス二番艦《ラビッシュ》を任されている。そしてここは《マシーナの里》だ。あんた達にとっては未知の秘境かもしれんが、とりあえず安全だけは保証する」
船長と名乗ったそのホムスの男は帽子を取り、パタパタと振りながら言う。そして、「そうだなぁ……」と呟いて辺りを見渡すと、一人のノポンを呼んだ。
「ゴモンの爺さん! この人たちの案内人をやってくれ」
「ももっ? いいのかも?」
「あぁ。幸い船に損傷は無い。あちらさんは修理の必要がありそうだがそれはマシーナ組の仕事だ。どうせ暇になるし、アンタならこっちでも顔が効くだろ?」
「ゴモンとしては彼らの技術も学びたいんだがも……。まぁ任せるも。ちょうどこっちにも用事があったしも」
「よし。ではヨロシク」
そう言って船長は案内人を用意すると、こちらを一瞥してから改めて席に座り、いくつかの指示を他の船員たちに飛ばす。
「えっと、貴方はこれからどこに?」
「あーすまん。この船はこれから《基地》に戻る。だがここのしきたりでな。一見様はご案内できん」
「……もしや、先程からカインたちの乗る機神兵の姿が見えないのは」
「あぁ、彼らはその《基地》に戻った。だが君たちはまだ入れられん」
「何故、でしょうか」
「機神界についてまだ何も知らないからだ。とりあえず、船を降りたまえ」
そこに答えはあるよ、と船長は言う。
私たちはゴモンというノポンに連れられて船を降りた。
そこで暮らす
◆◆◆
「長旅お疲れ様。ゆっくり休んでね」
「ありがとう、リナーダ。だけどここからがある意味本番だ。まだまだ頑張るよ」
機神の落ちた腕、ここには少し前に帰ってきたが、あの時は直ぐに上に上がらなくてはいけなかったから実質2年ぶりくらいの帰還になる。
リナーダの言う通りしばらくはゆっくりできるが、この後来訪するであろう人々のことを考えるとあまり余裕は無い。
「ラビッシュの方はもう戻ってきたのか?」
「ええ。船長によるとゴモンさんを案内役に付けたとか」
「了解」
ということはそろそろミゴールから
そこからどう転ぶかは分からない。なんせ”彼女”と彼らはまだ再会していないのだから。
俺はその本人の所へと足を運んだ。
「とりあえず無事で何よりだよ。ごめんな、助けに行くのが遅れちまって」
「いえ、元はと言えば私のワガママだったのです。こちらこそご迷惑をお掛けしました」
彼女は既にネメシスを降り、フェイスをメンテナンスするエンジニアと会話をしていた。やはり、未だ”彼女”にはなっていない。だが───。
「何か落ち着かないみたいだけど大丈夫か?」
「えぇ、実はそのことについて……お話があるのです」
メイナスがそう言った時、大抵は2人きりで話したいという意味になる。
俺たちはエンジニアたちにフェイスの修理、およびエギルのしかけた装置の解除を依頼して格納庫を後にした。
そして長い間使われることのなかった俺の部屋に彼女を通した。
「何か食べ物は……と思ったけどもう俺もマシーナだからお茶だけでいいのか。やっぱりまだ慣れないや」
「カイン……。やはり貴方は機械化するべきでは無かったのでは?」
「いや、これは必要な事だよ。じゃないと俺はこの先戦えない。───っと、あったあった。お茶じゃないけどホワイトプラムのジュースをどうぞ」
そう言って俺はコップに白い色のジュースを注ぎ差し出す。
メイナスはいそいそとしながらも、ありがとう、とお礼を言ってコップを口につける。
そんな彼女を見て俺も一口頂く。ホワイトプラムの味は前世のプラムとそう変わらないが、甘さはこちらの方が強い。実はホットにするとさらに美味になるのだが……なんだか今日は味が薄い。
これも機械化による影響か、味覚が薄れているようだ。味覚が無い……とまではならなかったのは幸いだ。俺は食事するのが大好きなのだ。楽しみを奪われてしまっては困る。
いや、いかんいかん。本題はメイナスの方だ。今更マシーナの体の感想を述べている場合では無い。
一息ついて落ち着いただろうか。そう思って顔を上げて彼女を見るが、まだソワソワしている。
「それで、どうしたんだ?」
「実は、この体の持ち主である少女が目覚めているのですが……」
「……なるほど」
いきなりぶっ込んできたな。まぁ、原作でもこのタイミングだったし、驚くことは無い。うん。主導権はメイナスのままみたいだけど驚くことはない。ジュースを一口飲む。
「この少女の記憶を見ました。彼女はあのモナド使いの少年の関係者だったのですが……」
「……彼に会いたいと叫んでる?」
「いえ、私の記憶の一部も共有したので現状には理解を示してくれています。ですが、流石にこの”想い”だけは隠せないようで……それに私も引っ張られているようです」
「それでずっとソワソワしてたのか」
「はい。この胸の苦しみは……そう、
ジュースを飲みながら思考する。
まぁ……当然の反応か。会いたい人に会おうと思えば会えるのにそれをこちらから押さえつけているのだ。反発しないわけが無い。
理性では分かっていても、心までは騙せない。心を共有しているメイナスにはそれが直に伝わっているはずだ。もしかしたら俺への怒りを募らせているのかも─────。
「あぁ、なるほど。これが”恋”というものなのですね」
「ぶふぉっ!? 」
そんなメイナスの一言で口に含んでいた白い液体が霧散する。何とかメイナスへの被弾は避けられたが───っていうか、何言っちゃってんだこの機神!?
「あっ、今私の中の少女が笑ってくれました。凄いですねカイン、そんな一芸も覚えていたなんて」
「ゲホッ、ゴホゲホッ……! ち、ちが……っ! これ、は……そういうんじゃなくて……っ!」
なんでこのタイミングでド天然を発動するのかなこの人はっ!
いや、焦ってはいけない。深呼吸深呼吸。息を整えろ。この場において真の敵は彼女の中に潜むもう一つの人格だ。メンツを保て……!
「ありがとうございます、カイン。貴方のおかげで彼女も少し気が楽になったようです。具体的には、貴方があまり怖い人でないことを実感できた、だそうで」
「中で何がどうなってんのかよくわかんないけどとりあえずお口チャックしようかメイナス! あと、中の人には『それは良かったですね!』とでも伝えといてくれる!?」
「ふふふっ……あら、いけません。また感情に流されてしまうところでした。とりあえずそうお伝えしますね」
んにゃろぅ……! 中で盛大に笑ってやがるな……!
こちとらそちらと違って”それ”に関して突き抜けてねぇっての。それにもうそんなことを考えていられる立場でもない。
しかしまぁ……完全にメンツは丸潰れだ。レジスタンスの頭がこれではイカン。何とか真面目な話に舵を戻すのだ。
「……コホン! んで? そこが結論じゃないだろ。わざわざ2人きりになったってことは俺に何か頼みたいことがあるんじゃないか?」
「えぇ、その通りです。それと、今後の方針についても私は貴方から聞かなくてはいけない」
「…………」
メイナスが改まってこういうことを言う時は大抵無茶な願いを言う時だ。
だがまぁ……多分彼女のこの善性があるからこそ、きっと彼らは共感して共に歩こうと決めたのだ。
だからやっぱり、彼女が作戦の要であると理解していても折れるしかなくて。
「私は”彼女”の自由にさせてあげたい。”彼女”────フィオルンを、彼らの元へと返しては頂けませんか?」
俺は彼女の眠りを許したのだった。
◆◆◆
「マシーナに、それにエギル───」
”エギルを斃してくれ”と───ミゴールより依頼されたシュルクは考える。
マシーナを滅ぼそうとした巨神。仲間を奪われたエギルは復讐を誓い、それを阻もうとする同胞までも殺す覚悟で機神兵を操っている。
シュルクはその生き方を悲しいと感じた。たとえ愛する人や故郷を襲った張本人だったとしても、怒りの気持ちとは別に悲しさをシュルクは覚えた。
だからこそ、どうすればいいのか分からない。
本当に彼は斃すべき存在なのかと語りかけてくる自分がいるのだ。
そもそも自分はそんなことをするためにここまで来た訳では無いのに。フィオルンを取り戻すためにここまで来たのだ。復讐のために来たのだ。
なのに、心は迷っている。
「フィオルン───」
彼女は今レジスタンスの拠点にいると言う。
レジスタンスの目的は未だ分からない。ミゴールには使いの者に直接聞いてくれと言われてしまった。
記憶を失った彼女は何を思い、何を感じて今戦っているのだろうか。
「フィオルン───」
会いたい。
この島に……すぐそこにいるのだと言うのなら、今すぐにでも会いたい。会って無事を確かめたい。
そんな気持ちに押されて自然と口から言葉が零れる。
「なに? 呼んだ?」
焦っているのだろう。そんなあるはずもない幻聴が聞こえるくらいに。
「ダメだダメだ。しっかりしないと。彼女にはきっと会えるってミゴールさんも言ってたんだし」
ぶんぶんと首を振って思考を落ち着かせる。何か白いものが視界の隅に映ったが気のせいだ。
待てばいい。待てばきっと彼女には───。
「だから呼んだかって聞いてるのっ!」
「───え?」
そしてやっと彼はその存在に気付いた。
あの時とは体の作りが変わってしまったけれど、あの時と同じ顔と声と口調で話す彼女の存在を。
「なんで……ここにフィオルンが……?」
「あれ、聞いてなかった? 私がレジスタンスからの使いだって」
そんなあっけらかんと、首を傾げながら言う彼女に。
シュルクは思わず抱きついてしまっていた。
「あらあら、アナタはいい仲間を持っているみたいね、フィオルン。こんなにも大切に想ってくれる人がいるなんて」
そして、傍らに佇むマシーナの一声で一瞬にして冷静さを取り戻すのであった。
「あっ……! ご、ごめん!!」
ばっ、とすぐさまフィオルンから腕を解いて後ずさる。確かにこんな人目の多い広場でやる行為ではなかった。
「あら、もういいの? 久しぶりに会えたのでしょう? 私のことは気にせずに続けてもいいのよ?」
「い、いえ……そんな……!」
「もう! リナーダさん、からかわないで! シュルクが困ってるでしょ!」
青い色をしたマシーナの女性は口に手をやって微笑みながら言う。それにフィオルンは抗議の声をあげるが、シュルクにはてんで話が入ってこない。
ただただ恥ずかしさに震えながらも、怒るフィオルンを見て彼女の生存を実感してしまっている。
「───本当に、生きてる。記憶も元に───!」
「フフッ、さっきまでのアナタも凄かったけど、こっちの彼も筋金入りね」
「ちょっと、リナーダさん! ───シュルクも戻ってきて!」
立ち尽くすシュルクとその様子をからかうリナーダ。そして恥ずかしさに悶えるフィオルン。
この光景は数分間続き、なんだなんだと集まってきたシュルクたちの仲間たちにも──特にラインとダンバンに──その生存を喜ばれ、さらに大事になっていく。
結局、フィオルンの怒鳴り声が隠れ里に響き渡るまで、話は一向に進むことは無かったのであった。
「コホン! それじゃあ本題に入らさせてもらうけど、いいかな?」
「フィオルン……本当に良かった───」
「い・い・か・な!?」
「おいやべぇってシュルク! 喜ぶ気持ちは分かるけどよ、今はとりあえず話を聞こうぜ?」「───う、うん。今ので流石に落ち着いた。フィオルンが怒ると怖いところ、変わらないね……」
ところ変わってジャンクスに戻った一同はようやくリナーダとフィオルンからレジスタンスの存在とその目的についての詳細を知る機会を得た。
今ここにいるレジスタンスのメンバーは3人。
案内役に残ったゴモンとマシーナの医師であるリナーダ、そして使いであるフィオルンだけだ。
ここにカインはいない。
そのことについてメリアやそれに付き従う騎士たちは訝しみながらも、とりあえず彼らの詳しい事情について聞く姿勢をとった。
「まずは我々のことについて。私たちレジスタンスは”今の”巨神界にも機神界にも属さない者たちの集まりです」
「どちらにも属さない……? それはつまり、機神兵の仲間でも俺たちホムスやハイエンターの仲間でもないということで合っているのか?」
「その通りです、ホムスの御仁よ」
レジスタンスのメンバーにはノポンやホムス、マシーナがいるがその全員に共通して言えることがこれだった。
今の機神界を牛耳るエギルの”巨神界の生物を滅ぼす”という目的には賛同できない。
だがしかし、今の巨神界の在り方全てを認める訳では無い。
そんな思想の持ち主たちが集ったのがレジスタンス。
「私たちは今の世界の”在り方”を認めない。それを変えるために戦う組織です」
「世界の”在り方”を認めない……? その言い分だと、そなたたちはそこのミゴール殿とは別の目的を持って行動しているように聞こえるが」
「はい。ここに住むホムスやマシーナたちは戦いに疲れた者たちです。
彼らとしては戦うことなく静かにすごしていたい。ですが、同胞であるエギルの行いに責任も感じている。だからあなた方に彼を斃すように協力を打診した」
「そなたたちは違うというのか?」
「えぇ、我々としてもエギルは止めたいと考えています。だけどそれは最終目標ではない」
「その最終目標とは一体……?」
ダンバンのその問に、リナーダはすぐには答えなかった。
フィオルンとゴモンを見る。フィオルンは”彼女”の意思も含めた首肯で返し、ゴモンもこれまで見てきた彼らなら話しても大丈夫であろうと頷いた。
「私たちの最終目標。それは巨神界の生命と機神界の生命も、全ての生き物が手を取り合って生きていくことのできる世界を創ること。
そしてそのために巨神───ザンザを斃すことです」
そしてリナーダはシュルクたちに言い放った。
「巨神が……ザンザ?」
「待ってくれ、どういうことなのだそれは! ザンザは監獄島に囚われていた巨人族のことでは無いのか!?」
「はい。しかし巨神でもある。これ以上詳しい話はここではできません。ですが、何故巨神を斃そうとしているのか、それはご理解頂けるかと思います」
「巨神はマシーナの存在を認めなかった。アンタ方は全ての生き物の平和を願っている。だからか」
巨神はマシーナを滅ぼそうとして太古の昔に機神界に戦いを挑んだと聞いた。であるならばその存在はレジスタンスにとっては邪魔でしかないのだろう。だが、色々と腑に落ちないことだらけだ。
「そもそも巨神は今は動いていない。復活の兆しがあるとは聞き及んでいるが……それは機神界が攻め込んでいるからじゃないのか?」
「いいえ、それは違います。元々エギルが巨神界を攻め込むのは巨神の復活を阻止するため。巨神は時が来れば自然と目覚めてしまう」
「それは何故……?」
「これは言い難い事なのですが……巨神の上で行われる生命の営みが巨神に力を与えるのです」
だからエギルは巨神の上に存在する生命を攻撃した。生き物が増えれば増えるほど巨神は力を増す。
巨神からエーテルを絞り出しているのもその一環。巨神から力を吸い取らなければ、いずれ循環が飽和を迎える。
そして目覚めてしまえば。
「巨神はきっと、この世界に住む全ての生命を根絶やしにする」
それはシュルクたちにとっては信じられない宣告だった。
そもそも、巨神と機神がおとぎ話の存在でないことをつい先日知ったばかりだ。巨神が自分たちの命を狙っていると言われても理解が追いつかない。
「何故だ。何故巨神はそのようなことをする?」
「巨神がエネルギーを求めているからです。あなた方の持つエーテルを全て自身へと還さなければ完全な復活は成されない」
「じゃあ何か! 俺たち巨神界の生命は巨神に食い潰されるためだけに生きてきたって言うのか!!」
ラインは激昂してリナーダに詰め寄る。が、フィオルンが間に入ってそれを阻んだ。
「だから、それが嫌で皆戦っているんだよ」
「フィオルン……」
「……これは事実を述べただけです。巨神にとってはそのように見なされていても、そんなもの認めるわけが無い」
「だから我らノポンもレジスタンスに協力しているんだも」
そこまで言われてしまえばラインも引き下がるしかない。
そして納得する。レジスタンスにホムスやノポン、マシーナが所属していることに。
彼らは本当に”今の”世界の在り方を認められないのだろう。
だが途方もない話だ。それが本当ならこの里で静かに暮らしたくなるのも分からなくはない。
正直な話、シュルクたちはリナーダの語ることが信じられなかった。だがフィオルンの存在が、彼女の語ることが真実なのだと訴えている。
それでもやはり、未だ実感の持てない話だった。
「カイン……カインは、その話を信じてレジスタンスに?」
「いいえ。彼は全てを知っていた。彼が私たちに語りかけてレジスタンスを作り上げたのです」
「ではまさか───!」
「はい。彼がレジスタンスのリーダーです」
そこでメリアは完全に理解が追いつかなくなった。
「色々な話を聞いてお疲れでしょう。我々と共に戦ってくれるかどうか。答えをすぐには求めません。よくお考えになってください」
そう言ってリナーダさんとゴモンさんは去っていった。
フィオルンは残った。
レジスタンスに所属することは無理でも、エギルを止めに向かうのであれば手を取り合える。彼女は決心がついたとき、彼らの拠点へと僕らを案内するためにここにいる。
ただまぁ、リナーダさんの顔を見るに僕たちのことを考えての配慮だったんだろうけど。
「フィオルンはこの話を知って彼らに協力していたの?」
「ううん、実は私も知ったのはつい昨日のことなの。私は要塞でシュルクたちを守ろうって思って目覚めた。それまでは別の人が私の体を操っていたから」
「別の人……?」
「うん。とっても優しくて強い人。今は私の中で眠ってる」
だから記憶が無くなったかのような振る舞いをしていたのだとフィオルンは言う。その”彼女”とは心の一部を共有していて、”彼女”の中にある記憶を見たことでフィオルンはレジスタンスの存在を知った。
「実はね、私がこうしているのはレジスタンスにとってあまり良くないことらしいの。私の中にいる人が彼らにとってとっても重要らしくて」
「なっ……!? じゃあ彼らは君を戦わせるつもりなの!?」
「私と言うより、私の中にいる人をね。”彼女”は私の体を使わないと自由に動けないから」
「そんなっ!」
それでは僕がどんな決断をしようと、フィオルンはまだ帰れないってことじゃないか! そんなの……!
「でもね、それを分かった上でリナーダやカインさんは私が私らしくいることを許してくれた。こうしてシュルクの隣にいることを許してくれた」
「フィオルン……」
「だからね、私あの人たちのことを信じることにしたの。彼らの……”彼女”の力になれるのなら、私のこの体いくらでも使って欲しい。
でも、それでシュルクが望まない戦いをしなくちゃならないなら、私はここを出ていくわ」
それがフィオルンの決意だった。
「…………」
一人考える。
フィオルンは生きていた。こうして再会もできた。僕の旅の目的は果たされたと言ってもいい。
だから今度は巨神界のためにエギルと戦わなくてはいけない。それはいい。
問題はレジスタンスのことだ。
彼らが悪人では無いのは分かる。
だが、彼らはまだ全てを語ってはいない。色々と分からないことだらけだ。
本当に巨神は復活するのか? 復活するとして、どうしてモナドを振るう僕に協力を求めるのか……。
「カインさん……か───」
フィオルンは彼を信じてみると言った。
レジスタンスの創設者であるカインさん。
ハイエンターを裏切った、アイゼルさんたち近衛騎士の元メンバー。
フェイスのユニットになりながらも、巨神界と機神界の生命のために戦っている。
要塞では確かに僕たちを助けてくれた。
メリアのためを思って汚名を着ることになるのを躊躇わない人物。
だが、彼は何故かフェイスとなって皇都を襲撃した。マクナでも戦ったのは彼のはずだ。
彼は何かを隠している。それもまた確かであった。
「っと、その話もうちょい詳しく聞かせてくれよ」
そんな僕の思考を断ち切ったのはフィオルンでは無かった。
背後から僕を呼ぶ声、これには聞き覚えがある。振り向いてみればそこには。
「ディクソンさん!」
「やっぱりここに居たな。んで、レジスタンスやらエギルやら……一体何があったんだ?」
特徴的な赤いハチマキを巻いた僕の育ての親がいた。
今回はシュルク側のお話がメイン。
次回は……。
あとオリキャラタグ追加しました。