最終的に人間辞める種族になりましたので神に抗います   作:塩なめこ

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おまたせしました。
ハイラルを再び救ってました。

今回は閑話です。短いです。



機神界突入

 

 ガラハド要塞での戦いから、シュルクたちが落ちた腕を訪れて5日が経過した。

 

 マシーナという種族の存在、カイン率いるレジスタンスの目的、巨神と機神の過去の戦い、ザンザとメイナスの存在、巨神の使徒などなど──。

 

 情報の濁流に混乱しながらも戦いの準備を進めてきた彼らは今、落ちた腕を出発しようとしていた。

 

 

「ディクソンが発ってから2日。そろそろ巨神界連合軍の方にも使徒の情報と例の武装のことが知らされたことだろう」

「あぁ、今こそ出立の時だ。機神界盟主───エギルを止めに行くぞ」

 

 

 メリアの号令に頷くメンバーたち。その中にはカインの姿もある。

 

 

「さて、それじゃあ俺が案内人だ。よろしく頼むぜ」

「……なんかあんた、この前と雰囲気違くないか?」

「今はレジスタンスのリーダーじゃないからな。公私は分けるタイプなのさ」

「だから胡散臭いとか言われるんだぞ、お前は」

 

 

 うるさいわい! とアイゼルに反論するカインを尻目に、ギャップでドン引きするライン。ハイエンターの騎士として学んだ処世術はレジスタンスでも活かされていたのであった。

 が、それはそれとして。

 

 

「なぁダンバン、いいのかよコイツ連れて行って」

「……あまり信用できないのは確かだが、メリアが大丈夫だと言ったんだ。俺は彼女を信じる」

 

 

 ダンバンは言ってメリアを見る。一昨日の夕方、彼女と話してからカインと一悶着あったようだが、ヨリは戻せたらしい。カインとアイゼルの様子を見て微笑むメリアから、彼は改めてそのことを実感した。

 それはラインも感じていたが、あれからどうやって仲直りしたのか理解できず、いまいちスッキリしないのだ。

 

 

「結構深刻そうに見えたんだけどな」

「きっと、いっぱいいっぱい話したんだも。それで大体どうにかなるも」

「なんで得意そうなんだよ、おっさん」

「あぁ、そうだな」

「……?」

 

 

 胸を張るリキに続き、ダンバンも頷く。

 ラインは一人置いてけぼりにされている気がしたが、あまり深く考えない質なので、まぁいいかと頭の片隅に追いやることにした。なお、この後結局気になってメリア本人に聞きに行き、彼女から「ぶちのめしてやった」と返答されて更に混乱することになるのだが、それはまた別のお話。

 

 

「それで、僕達はどこに向かえばいいんでしょうか」

「あぁ、目指すは機神界帝都アグニラータだ。そこにエギルはいる」

「この前の映像で見たところよね……。どうして彼はそこに?」

「損傷したヤルダバオトを修理できるのが、今やあそこしかないからだ」

 

 

 正確に言うなら、その作業をする場所は機神界帝都のすぐ下にある中央工廠なのだが、そこから一番近い司令所となるとアグニラータ以外にはなかった。

 ガラハド要塞での戦いでカインが加減はしたと言っても、それは彼が死なない最低限まで火力を落としただけに過ぎない。中破以上は免れないだろう。となれば簡単な修理でどうにかなる状態では無い。

 しかも今のガラハド要塞は巨神界連合軍と相対する最前線。おちおちとそんな所で修理作業はやっていられない。それがカインの推測だった。

 

 本当はエギルがアグニラータにいる真の目的は別にあり、それをカインも知っているのだが……それをここでシュルクたちに伝えたとしても信用されなさそうなので、彼はもっともらしいことを言うに留めた。

 

 

「腕の人差し指から機神界へと侵入できる。そこからは機神界を登っていくことになるだろうな」

「この高さをかよ。これまた大変な旅になりそうだ」

 

 

 ラインは空を見上げながら言う。大剣の隙間から覗く赤い目をした機神の顔は、遥か大空の向こうだ。何日かかるか想像しただけで途方に暮れたくなる。

 

 

「安心していい。コロニー9から皇都まで上がるよりはマシだろうから」

「何故です?」

「機神の内部はエギルによって改造され、機械化されているからだ。昇り降りはエレベーターになる」

 

 

 足の辺りは小刻みに昇降機が設置されているせいで面倒くさいが、腰から胸にかけてはかなり楽だ。巨神界のようにわざわざ腰周りを探索する必要もない。

 

 

「途中から青空や太陽の下に一切出られなくなるから、精神的ストレスが少ないとは言えないけどな」

「そんなことでへばるような奴はここにはいねぇよ」

「それもそうか」

 

 

 愚問だった。彼らはこれまで巨神界をその身一つで歩んできた者たちだ。今更そんなことで挫けるわけが無い。

 エギルを止めるため、新たなる旅が今、始まる。

 

 

 

 

 

 

 

(なんて、意気込んでみたは良かったけど……)

 

 

 少ししくじったかもしれない。カインはこれまでの旅路をそう省みた。

 考えてみれば、これは機械の体になってからは初めての旅。普通なら慣れさせながら歩くものだ。

 それをいつもの一人旅の感覚でやってしまった。しかもこの体には疲れがほとんどたまらない。案内役なのにドカドカと先を進みまくった結果。

 

 

「も、もう足が動かないも……。疲れたも〜!!」

「お、俺もだぜ……」

 

 

 機神の腿の辺りでフィオルン以外の全員が音を上げたのだった。

 

 

「……ここらで休憩にしよっか。丁度、そこが空いているし」

 

 

 ここでカインはようやく休むことを決断した。

 

 ぶっちゃけ、カインはテンションが上がっていた。

 シュルクら豪華メンバーが同道する旅に、ゼノブレファンのこの男は童心に帰ってしまっていたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺も手伝おうか?」

 

 

 結局、この先陽の光を浴びる機会もそうないからと、僕たちは今日1日ここで過ごすことに決めた。皆は旅の準備を進めつつ思い思いの時間を過ごしていた。

 僕は皆の武器の点検を請け負った。ラインのバンカーを手にいざ始めようと、そんな時に、カインさんに言葉を投げかけられたのだ。

 

 

「えっと……」

「基地で新調したみたいだったから。機神界の技術、まだ理解できてないところもあるんじゃないかと思って」

「弄れるん……ですか?」

 

 

 しまった。

 カインさんのキョトンとした顔を見て発言したことを後悔する。さすがに失礼な物言いだったかもしれない。まだほとんど話したこともないのに。

 だが。

 

 

「───ふっ、ははっ!」

「えーっと……」

「いやごめん。そうか、そうだよな。シュルクからはそう見えるか……。あぁ、重ねてすまない。呼び捨てで大丈夫?」

「それは大丈夫ですけど……」

 

 

 旅に出発する前にラインが言っていたけど、本当にこの人はギャップが酷い。ガラハド要塞で対面した時のそれからは想像できないフランクさだ。本当にアイゼルさんたち騎士団の一員なのかとも思ってしまうほどに。

 

 

「俺はこれでも"イケる"口でね。騎士団に居た頃はアイツらの武器の整備を、レジスタンスに来てからは基地の設計なんかをやってたんだ」

「そういえば、前にメリアがそんなことを言っていたっけ……」

 

 

 マクナで会った頃に聞いた。僕たちと出会う前、彼らの武器に使われていたエーテルジェムは、昔仲間が作ったものだったのだと。

 考えてみればその仲間とはカインさんの事だ。今の今まで気がつかなかった。

 

 

「そう。だからやれるよ。で、最初の質問に戻るけど、手伝おうか?」

「───はい。お願いします。正直、この辺りの部分の調整を完璧にできるか不安だったんです」

 

 

 そう言って指し示すのはバンカーの刃の部分。使用者であるラインの使用感を損なわないよう、基本的な機構は変わっていないけれど、それ以外の部分には機神界の高度な技術が使われていた。

 硬い金属の加工技術。特に精密さにおいて、機神界に勝る技術はこの世界には存在しないだろう。そう評していいほどに、この刃にはきめ細かく、何層にも渡って金属が編み込まれていた。

 

 

「その判断は正しい。こういう部分は変に研ぐとかえって性能を落としかねない」

「えぇ。凄いです、機神界の技術は。僕らじゃここまでの小型化はまだ無理だ」

「そうだな。俺も助けられているよ」

 

 

 言って、カインさんは左腕を誇示するかのように回す。当然だけれど、彼の機械の体にも機神界の技術が使われている。フィオルンも……そうだ。

 

 

「……やっぱり、話がしたいんじゃないか?」

「え?」

「聞きたいこと、あるんだろ。できれば2人っきりの時に。……見てれば分かるよ」

 

 

 驚く僕を他所に、カインさんは黙々とバンカーのパーツを分解し、作業を進めていく。変形機構を行うフレーム部分を取り出し、僕の前に置く。そして刀身を外し、その状態を見ながら続けて言った。

 

 

「実を言うとだ。シュルクにこうして声をかけたのは、俺も君と話がしたかったからなんだ」

「話って……」

「色々と。機神兵のこととか、モナドのこととか。……彼女のこととかね」

 

 

 彼の視線の先にあるのはダンバンさんと話す彼女──フィオルンだ。

 

 

「それは……彼女を帰さない理由、ですか?」

「……聞いてたのか」

「はい」

 

 

 堕ちた腕で彼女は言った。レジスタンスにとって重要な役割が自分にあるのだと。

 

 

「怒らないのか?」

「何にですか?」

「彼女をあの体にしたことに、だ。ああいう風にさせないことだって俺にはできた」

「それ、初めて聞きました。でも僕があなたへ怒りを向ける理由にはならない」

 

 

 もし許してくれるのなら、レジスタンスの力になりたいと言ったのはフィオルン自身だ。身体の自由は無くとも、心の中でレジスタンスを見てきた彼女が選択した未来。僕にそれをどうこうする権利はない。

 それにカインさんたちがいたからこそ、彼女とこうして共にあることができる。彼らがいなければコロニー9で永遠の別れになっていたかもしれない。ゾードやムムカの様にフィオルンもエギルの手足として働く"敵"になっていたかもしれない。

 

 

「───強いな、シュルクは」

「え?」

「正直に言うとぶたれる覚悟はあったんだ。それくらいのことをしたと思うし、それくらい君が怖かった」

「そんな……僕を怖いだなんて」

「相手が自分をどう思っているのか、知らないのは怖い。俺は小心者だからそういうのが気になって仕方がない。だから、もう仲直りできないんだとか、帰れないんだとか、勝手に考えちまう」

 

 

 本当はそんなことないのに。言ってカインさんはメリアを見た。

 少し、彼のことが分かった気がする。彼もまた長い逃亡生活の中でメリアにどう接していいか分からなくなっていったのだろう。自責の念が強すぎるが故に。

 

 

「どうでしょう。僕も独りだったらカインさんのように考えていたかもしれません」

「そうか?」

「えぇ。全てを話せ、力になる。そう言ってくれる仲間たちがいたからこそ、僕はこうしてここにいるのかもしれない」

 

 

 だから大切だと思う、この仲間たちは。

 もしも独りで旅立っていたなら。もしもラインやカルナを未来視で見た通りに死なせてしまっていたなら。僕はいまどうあったのだろう。それは考えるだけでも怖い。

 

 

「皆を守りたい。皆の故郷を守りたい。だから僕は、たとえこのモナドが危険な存在であっても、この剣を手に戦うんです」

 

 

 ぎゅっと、背負う紅い剣を握りしめる。

 レジスタンスで見たあの映像──ホログラムの巨神が持っていたものは間違いなくモナドだ。巨神はその力で機神界を蹂躙した。

 この剣があの映像にあるような姿になるのだとしたら、正直怖い。だがそれでも僕は。

 

 

「シュルク、さっきのお返しという訳でもないけど、その剣のことについていくつか教えておこうと思う」

「何か知っているんですか!?」

「おぉっと、食い付きがいいな……。だがすまん。これは推測だ」

「構いません」

「分かった。……まずモナドの現状を確認しよう」

「現状……?」

()()()()()、シュルクは機神兵との戦いの中でモナドを発現させた。そうさせたのはなんだ?」

「それは……フィオルンが、皆が戦っているのに、僕が何も出来ないことが嫌で、それで……」

 

 そう、ただあの時あったのは守りたい、力になりたいという意志だったと思う。それに応えるかのようにモナドは力を解放してくれた。

 

 

「それだよ。本当にそれだけでモナドが発現するのか?」

「え?」

 

 

 カインは機神界を覆うアポクリファ(反モナド場)がそんなに甘いものだとは考えていなかった。

 アポクリファ(反モナド場)とは、モナドが発するエーテル波を真逆のエーテル波で打ち消し、その機能を停止させる機構だ。

 空間的に働くが故に、ガラハド要塞ではモナド自身とモナドから発せられたエンチャントの効果が消え去った。

 

 

「俺はエギルの技術力と執念に一定の信頼を置いている。だから思う。アイツの切り札がこんな中途半端なもんなわけがないってな」

「中途半端?」

「あぁ。多分今のモナドは本調子じゃないんだろうが、それでもシュルクは力を発揮できている。……エギルは巨神への復讐心の塊のような奴だ。そんな奴がモナドの弱体化だけで満足するとは思えない」

 

 

 事実、モナドを完全な機能停止に追いやっている。それがホムス一人の意志程度で破れるのだろうか? 

 

 

「えっと、今の予言官のアルヴィースが言ってたんだけど、モナドは僕と共に成長するらしいんだ。だからそれがエギルの予測を上回ったんじゃ無いかって、僕は考えてるけど」

「多分違う。俺はヴァネアを通してエギルの動向を察知することができたから知ってるんだが、アイツがアポクリファ(反モナド場)を作り始めたのは一年前の話だ」

「それって……」

 

 

 ダンバンさんたちが大剣の渓谷で戦っていた頃とピッタリ一致している。

 

 

「当時のエギルはモナドの登場に焦っていた。まさかホムスの中で使いこなせる奴がいるとは思わなかったんだろう。ダンバンの登場に呼応して、急遽フェイスとアポクリファ(反モナド場)の建造に乗り出した。

 ……でだ。あの戦い以来シュルクがモナドを手にするまで誰もモナドを使っていなかった訳だが、どうやってエギルはモナドを封じ込めるエーテル波なんてもんを見つけられたんだ?」

「……僕と戦った機神兵のデータを使ったんじゃないの?」

「全く無いわけじゃないだろうが、不十分だ。俺も似たようなことを戦闘でするから分かる」

 

 

 カインの言う戦法とは、メリアが言っていた、エーテルアーツを反属性のエーテルアーツで消し飛ばすもののことだろう。アレをするにはエーテルアーツを瞬時に、細かく分析しなければいけないと聞いた。

 

 

「……つまり、機神兵のカメラで計測するには性能が足りないってこと?」

「正解。それができるなら今モナドが使えないはずだろうしな」

「確かに……そうだ」

 

 

 これまで機神界で戦ってきた機神兵の観測データで対応できるなら、エギルはすぐにでもしたはずだ。それなのに、僕のモナドは放置されている。それはエギルが手を出せる状況でないということを意味している。

 

 

「エギルがどうやってモナドのデータを手に入れたのか……正確なことは分からない。だが奴はシュルクの持つモナドの行き着く先を知っている」

「それって───」

「あぁ、巨神が振るったモナドだ」

 

 

 エギルはあの映像を生で見ている。モナドの脅威を知っている。そんな彼がアポクリファ(反モナド場)を作るに際して、あのモナドを封じ込めようと考えなかったはずがない。

 一年前の戦いの時からモナドの成長を見越していた。だからこそ、ダンバンさんから僕の手へと渡り、新たな能力を目覚めさせたモナドをも封じ込めたのだ。

 

 

「なのに何故今モナドが使える?」

「そんなこと言われても、僕はただ……」

 

 

 皆を護りたいと願って精一杯やっているだけだ。その想いにモナドが応えてくれているだけで、僕自身は特別何かしているわけではない。

 

 

「分かってる。だからこそ言える。今のモナドは巨神のそれとは本質からして違うんだ」

「本質から違う?」

「そう。エギルはモナドの行き着く先をあの巨大な剣だと考えてアポクリファ(反モナド場)を作った。なのにモナドが起動できているということは、シュルクのモナドの行き着く先はきっとあの剣じゃないんだ」

「つまり、巨神のモナドとは違う成長を遂げているってこと?」

「そうだ」

 

 

 ここで一通り点検を終えたのか、カインさんはバンカーのパーツを置いて立ち上がった。

 

 

「今のモナドはシュルクのモナドだ。だから恐れなくていい。護るためにその力を使おうとする意志があれば、きっとあの時とは違う未来を勝ち取れるはずだ」

「新しい……未来」

 

 

 呟いた言葉にカインさんは笑顔で応えた。そして話すべきことは話したと言わんばかりにフィオルンたちの元へと歩いていく。

 彼は戦いの中で僕の恐れを見抜いていたのかもしれない。なんだか励まされてしまった。

 

 

「恐れず、意志のままに、か……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これでシュルクは自分のモナドにいち早く気づけるだろうか。そのタイミング次第で今後の展開が変わっていく。いざその時が来てから休める時間はほとんどないのだから。

 

 アポクリファ(反モナド場)の力が働いているうちに色んな戦いを経験させておくべきか……それとも。

 

 まぁいいや。今彼にできることは全てした。俺は俺の役割を完遂するだけだ。

 

 

「できれば俺の力だけでどうにかしなくっちゃな」

 

 

 視界の隅で物陰に隠れた”何か”を意識しながら考える。

 機神界に来てから感じ取った尾行者の気配は2()()

 

 片方は彼。もう片方は───。

 

 

 

 

 





モナドのエーテル波どこで取ったんだよと最初は思ってましたけど、タイミングは関係ないなと思い至りました。
あんな災害級の物体、どうにかできるならどうにかしたいですよね。

最近忙しいので次の投稿は遅くなると思います。
緑のアイツがやってきます。

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