最終的に人間辞める種族になりましたので神に抗います 作:塩なめこ
お久しぶりです。月一投稿が続けられて何よりです。
ゼノブレイド3、一周年おめでとうございます。皆さんはトリニティBOXをお手に取ったでしょうか。
私は買えてません(血涙)
機神界フィールドの最上。中央工廠へと続くエレベーターの直前に広がる空間でそれは現れた。
「伏せて!」
シュルクが叫び声を発した直後、彼のいた場所が真っ赤に燃える。ほぼ直上から、彼目掛けて一発のエーテル弾が放たれたのだ。
幸いにもシュルクの未来視により直後は避けられた。衝撃波に目を伏せながら武器を展開する皆に続いて、俺も背負っていた槍を引き抜く。
「機神兵の攻撃か!? だが、どこから!?」
そんなダンバンの声に応えるかのように、下手人は舞い降りる。
『よく避けたものだな。流石はモナドの使い手!』
「顔つきの機神兵か!」
褐のゾードのような量産型のフェイスでは無い。見たことの無い顔をした緑色の機神兵がそこにはいた。
「あれにも人が乗っているぞ、シュルク!」
「どうする?」
「戦う、でも殺さない!」
「承知!!」
シュルクの指示の元駆け出すアイゼル。彼によって戦端は開かれた。
だがしかし緑のフェイスはそれに相対することなく、飛び上がって大きく距離を開いた。
「何!?」
『悪いがここで排除させてもらう』
「不味い!!」
再びシュルクが叫ぶ。
アイゼルへ放たれる凶弾を未来視で視たのだろう。だが心配はいらない。それがエーテルで生成されたものであるのなら。
「俺が受け止めてやる!!」
「カイン!?」
『ハァッ!!』
アイゼルの前に割り込んで左手を緑の顔つきに向けた直後、衝撃が走る。
リニアレーザー。
緑のフェイスだけが持つ二門のレーザー砲から放たれたそれは、光速のまま俺の左手へ突き刺さった。
その稲妻のようなエネルギーはどんどんと左手に吸い込まれていく。レーザーそのものによるダメージは皆無と言っていい。
だが放たれた粒子が完全に消える訳では無い。その粒子たちの運動によって発生した慣性はまだ残っている。
体を襲う浮遊感から直感する。このままでは吹き飛ばされる───!
「こなくそっ……! 逆噴射だあああああっ!!!」
力に抗うように吸収したエーテルを推力に変換し、放出する。俺の基本戦法はそのまんま返しだが、この距離だ。どうせ反撃はできないから全部使っても問題は無い!
「きゃぁっ!?」
「もももっ!?」
「ぐぇっ!?」
「ぬぅっ!?」
「うわぁっ!?」
あ、やべ。
後ろにはシュルク達がいるんだった。
「エネルギー放射口変更……! ダミル、ガラン、ライン! 誰でもいいから受け止めてくれ!!」
左腕を中心として、手の付け根や肘、左肩などから噴射していたエーテルを足へと回して周囲への拡散を防ぐ。代わりに弱まった上半身の抵抗力は仲間にどうにかしてもらうしかない。
「う、浮くぅ!?」
「相変わらず世話が焼ける……! ガラン!」
「あぁ!」
浮く体を押さえつけるような力を背中に感じる。ちらりと視界の端に映ったのはダミルが持つ大きな盾。盾を支えにダミルとガランが俺の体を支えてくれていた。これなら……っ!
「押される感覚が無くなった? 凌いだかっ!?」
「あぁ、だが──!」
言い終える前に槍を引き抜き、その柄にガランとダミルを引っかけると、スラスターを噴かせて無理やり横へと避けた。
この通路にある壁の裏へと倒れるように隠れ込む。顔を上げて自分たちが居たところを見れば、そこには放たれた二射目のリニアレーザーが走っていた。
次第に青く太い光の線が消え、レーザーの向こうにいたシュルクたちの姿が見えた。俺が一射目を受け止めていた間に壁に隠れてくれていたようだ。
「カイン、大丈夫か!?」
「平気だ。そっちの被害は?」
「アンタが受け止めてくれたおかげでなんともないさ。おっさんは衝撃で飛んでっちまったけどな」
ラインが親指で指す先には黄色の球体が居た。逆さまになったリキだった。最初の逆噴射であんなとこまで……。
「……でもあそこなら射程外だ。撃たれる心配は無い」
「あの顔つきのことを知っているのか?」
「武装だけなら」
ダンバンの問に答えるように、俺はガドの乗る機体について知る限りのことを話した。
緑のフェイス、その最大の特徴は両肩部に搭載された二門のレーザー砲だろう。
威力はムムカの乗っていた《黒》のプラズマキャノンと同等、あるいはそれ以上のものを有している。しかも、砲身はいくつかの形態に変形でき、4種類の弾丸を切り替えて使用することが出来る特別性だ。
1つは、両肩の砲身の間でエーテルを増幅させ、最大火力の一撃を放つ砲撃モード。はじめの一撃、シュルクに向かって撃ってきたのがこれだ。
2つ目は片方の砲塔だけを延長し、スナイパーライフルのように速く鋭い一撃を放つ狙撃モード。
3つ目はアイゼルに向けて放たれた、リニアレーザー発射モード。狙撃モードよりも射程は劣るが、2連射可能かつ直立した状態で扱うことができる。
最後は中距離用のプラズマキャノン連射モードだ。使われれば一帯を薙ぎ払うように青い球体が降り注いでくることだろう。
「射撃特化っていう機体コンセプトだからか近接戦闘用の武器は装備していない。近距離戦に持ち込めれば量産型よりも戦いやすくなるはずだ。まぁ、搭乗者の技量にもよるけど」
「……」
「正確無比な一撃だった。しかも速い」
アイゼルの意見に俺も頷き賛同する。
アイゼルが飛び出して行ったのは緑のフェイスが距離を取ってすぐの事。
エネルギーの充填を会話中に終えていたとしても、着地して射撃体勢に入り、撃つまでの速さは並外れている。
「フェイスさえあれば奴の射撃も完封できるんだが、今の俺じゃ一発が限界だ」
「そうだ! その手があるじゃねぇか! アンタかフィオルンの顔つきを持ってくれば」
「言っただろ、目立ち過ぎるって。確かに呼べないこともないけど、それは一度きりの切り札だ。ここでやるわけにはいかない」
フェイスへの通信は今も繋がっている。ヴァネアが機神界全域に張り巡らされた機神兵への命令系統に、遠隔操作の回線を割り込ませてくれたためだ。だがそれも一度使用すればエギルにバレるだろう。
これはヴァネアと合流できた後でないと意味が無い。でなければたとえこの場を切り抜けられても補給ができず、お荷物になりかねない。
機神表面の対空網の突破も容易ではないため帰還させる訳にもいかない。ここに放置していくなど論外だ。俺たちが離れた後、愛機が無抵抗のまま鉄クズにされる光景など見たくもない。
「モナドは剣。近づかなくては始まらない。だがそのためにはあの狙撃を突破しなくてはいけない。……刺客としてこれほど脅威なものもないな」
「えぇ、ですが希望はあります。幸い、ここには隔壁が多い。この人数です。二手に別れて照準を散らすのが得策かと」
「うむ。となればどのようにして分けるかだが……」
メリアはこちらに視線を向けた後、ちらりとシュルクを見た。
そうだ。その選択は正しい。
「シュルク、お主の未来視で奴の攻撃を予測することは可能か?」
「うん。多分……大丈夫」
「多分って、お前なぁ。射撃のタイミングが分かるならそうそう当たることはねぇよ。もちっと自信持て!」
「……それはそうなんだけど」
「……シュルク?」
まだ確証は得られていないか。いつもよりもネガティブ思考なシュルクに幼馴染の2人は違和感を覚え始めている。だが、そんなシュルクにこそこの戦いは必要だ。
今のシュルクに未来視の感覚を覚えさせる相手として、緑のフェイスはうってつけだ。奴の射撃が驚異であればあるほど未来視は発動する。そして、それが二度三度と繰り返されれば……。
「事故は心配するな。二手に分かれるのはお互いがお互いのフォローをするためでもある。そこは俺たちがカバーするよ」
「威勢のいいこと言いやがって。お前こそ俺たちがいなきゃ吹き飛ぶんじゃねぇのか?」
「安心しろダミル。次は大丈夫だ」
さっきので威力は確認した。そのエネルギー量も。一発は確実に受け止められる。
「決まりですね。あとはどう分けるかですが」
「シュルクが視えるのは発射タイミングだけだ。カインのように防げるわけじゃない。万一の時のために動きの速い者で固めるべきだろうな」
「……では私、ダンバン殿、フィオルン殿、メリア様、リキ殿、アイゼルがシュルク殿とともに」
「ガラン、ダミル、ライン、カルナがこっちだな」
班分けは済んだ。全員に目配せをし、シュルクの号令を待つ。
「いくよっ!」
ザッ、と全員が隔壁の裏から飛び出した。俺たちは右、シュルク達は左から緑のフェイスめがけて走り出す。さて、初撃はどっちにくるかな?
「カルナ、見えるか?」
「ええ。砲塔は──―シュルク達のほうだわ!」
言われて左の一団を見る。彼らはすでに次の隔壁に到達していた。さすがに動きの速いメンバーで固めただけはある。だが、こちらよりもあちらのほうが人数が多い。発射タイミングを完璧に掴めていなければ、これ以上の進軍は難しいだろう。
なんて考えていたら、一筋の閃光が視界を横切った。フェイスからのリニアレーザーだ。
「──―避けたか?」
「あぁ、完璧だった。光でよくは見えなかったが、ダンバン殿を囮にして誘発させたな」
「流石だぜ、シュルク!」
それを聞いて唇の端が吊り上がる。あとはこちらが仕損じらなければ問題はない。
「さぁて、喜んでる暇はねぇぞ。機神兵だ!」
「砲撃タイプか……。近づいて排除するぞ!」
「ライン、モナドがなくたってお前はやれるよな?」
「たりめぇだガラン。新しいバンカーの力、見せてやるぜ!」
♦♦♦
『────』
殲滅対象が視界から消えた。それでもなお彼は集中を緩めない。隔壁から姿を現したその時に、確実に葬りされるように。
こうなることは彼らに初撃をかわされた時点で予測していた。隔壁があるこの場で彼が仕掛けたのは、ここから先にスナイピングできる場所がないためだった。
ここから先、帝都アグニラータまでの間に、このような横に長い通路は存在しない。複雑な構造の工廠地帯は射線がここ以上に通しにくく、連続しての攻撃が行えない。
それではダメだ。シュルクたちに対して一撃だけでは足りない。
先程のシュルクの未来予測のような回避を見て、緑のフェイスはそう確信した。
奇襲は彼らには通用しない。であるならば、少しでも有利な状況を作り出し、プレッシャーをかけてミスを誘って狩り取るしかない。
『────』
隔壁の裏で爆煙があがる。同時に、配下の機神兵の反応が消えた。
来る───。
外側2枚目の隔壁。次に彼らが進む先は、少し前にある内側3枚目の隔壁だろう。その移動する瞬間を狙い撃つ。
先程計測した彼らの身体情報と運動能力。地図から算出される経路に当てはめ、彼らの急所の移動経路を割り出す。
そこに照準を合わせ、彼は息を止めた。同時にエーテルが砲身に充填され、増幅を開始する。
チャージが完了するのに1秒もかからない。だが緑のフェイスにはとても長く感じられた。集中力が高まるのに比例して世界はスローに、身体は冷たく、けれど本能に刺激され、高揚感は熱を上げて高まっていく。
小さい何かが視界を通り過ぎていった。大方石でも投げて囮としたかったのだろう。
だが、標的の情報と何ら合致しないそれは有効な囮にはなり得ない。緑のフェイスが持つ様々な瞳が、撃つべき的へと正確に導いてくれる。
『────!』
そして、彼は引き金を引いた。視界に現れた敵へと放たれたレーザーは確かに命中した。
だがそれは決定打にはならない。
消え去った光の奥で動く白い羽が、その事実を緑のフェイスへと突き付ける。
ハイエンターにして、自身と同じ身体の男、カイン。
彼の持つエーテル吸収能力の前に、渾身の一撃は消え去っていた。
『────』
認識を改めるべきか。言葉にはしないが、心の中で緑のフェイスは考える。
こちらの射撃タイミングを完璧に掴んでくるモナド使いよりも、こちらの方が仕留めやすいだろうと思っていたのは誤りだった。
確かに、カインたちの一団に対してはレーザーが当たる。しかしそれだけで消し去るにはいたらない。脅威度は同等レベルだ。
カインに二度、攻撃を防がれたことで緑のフェイスは確信した。
射撃戦重視の緑のフェイスの一撃を、易々と受け止められるあの左腕はいくらなんでもおかしい。吸収機構があるのはまだいい。吸収したあとで平然としていられるのが異常なのだ。
いくらエーテル保有量が高いハイエンターと言えど、増幅したレーザーを丸々取り込めるほどではないはずだ。青いフェイスに乗っている時になら、搭載したエーテルタンクへの貯蔵や、別のエネルギーに変換して吐き出すなどできるから、まだ分かるのだが。
『────』
いや、奴も同じようにエネルギーを吐き出しているのか。
カインたちが通った場所の床が融解しているのを見て、緑のフェイスはそう結論付けた。
レーザーを完璧に吸収できているはずならできないもの。しかもその範囲もレーザーの照射痕にしては広すぎる。別の何かによって溶けたとしか考えられない。
カインは吸収した端からエーテルを熱エネルギーにして放出しているのだ。
レーザーを受け止めるための推進力にもしているから全てでは無いだろうが、そうしないと彼はレーザーを止められないのだ。であるとすれば。
『───やはりか』
緑のフェイスは視点を配下の機神兵のカメラへと切り替える。カインたちの一団と戦っているはずの、その機神兵の視界には、カインの姿がない。
それを見て、緑のフェイスは嬉しさのあまり呟いていた。
カインは戦っていない。いや、戦えないのだ。変換した熱を冷ますまで彼はまともに動くことができない。今のレーザーでもうギリギリなのだ。
ならば、仕留められる。少し充填する時間さえあれば、カインの左腕を貫く事が出来る。
『───ッ』
だが、それでもまだ半分。もう半分が仕留められない。
緑のフェイスが視界を自身の瞳に戻した時、シュルクたちは外側4枚目の隔壁まで迫ってきていた。
ここにある隔壁は左右で9枚ずつ。通路内側に4枚、外側に5枚だ。距離的に狙撃のチャンスは残り一回だろう。内側4枚目に達した時点で中距離戦闘モードに切り替えないと、反撃が間に合わなくなる。
数の差はやはり緑のフェイスにとって不利に働いていた。
せめてもう一機、自らの意思で動けるフェイスがいれば、この人数相手でも問題なく対処できただろうに。
もう特化型のフェイスは彼以外存在しない。黒は消え、ネメシスと青は敵に回った。
それでも自分はエギルの悲願を果たすために戦い続けるのだ。自身の脳裏に刻まれた、あの悲しみしかない日々の記憶が、再び現実とならぬように。
(機神界の惨状を知りながら、エギル様を裏切った鬼畜が。まずはお前から消し炭にする)
決断は済ませた。
確実に数を減らす。たとえこの身が果てようとも、引き換えに奴らの命をいくつか葬りされるなら無駄ではない。
照準をカインたちの通り道に置く。
二度の射撃で更に集まったデータにより、彼の射撃体勢は完成度を増す。
もう彼には、どこに撃てばカインの守りを突破できるのか分かっている。
正確すぎるのはダメだ。逆に読まれやすい。だから敢えてズラす。
『───!』
「なっ、野郎……!」
飛び出してきたカインに向けて放たれたレーザーは、カインの進行方向の少し後ろへ飛んでいく。彼には良くてかする程度だろう。
だが、彼の後ろから現れるラインたちにはモロに当たるだろう。緑のフェイスが放ったのは、集団であるが故に生まれる先頭と後方の動きのズレを読み切った一撃だった。
「くそがぁ!」
しかし、それもカインは防ぐ。翼によるエーテル感知能力と機械の体の運動能力を掛け合わることで生まれる反応速度は異常だった。
ただまぁ、それすらも緑のフェイスにとっては計算のうちなのだが。
『果たして全てを受け止め切れるかな』
「────!」
「カイン! クソっ!」
次の瞬間、ラインの目の前からカインの姿は消えていた。
彼は内側第二隔壁まで吹き飛ばされ、身をうちつけていた。
緑のフェイスはカインの左手の性能を見抜いていたのだ。
ただのエーテルアーツ程度なら、左手をその方向に向けるだけで消しされる。だが、緑のフェイスが放ったような高濃度のエーテルレーザーはそれでは対処しきれない。
範囲が……いや、正確に言うのなら速さが足りないのだ。
エーテルを分解し、レーザーとしての形を失わせた上で吸収する。当然、この過程には時間を有する。エーテルが移動する速度は一定であるため、時間は、カインへのエーテル流入口から、吸収するエーテルまでの距離が近ければ近いほど短くなる。
レーザーは光速だ。その速さは尋常ではない。しかもそのエーテルは高密度。左手の位置が悪ければ分解・吸収機構が間に合わないのだ。
現状、緑のフェイスが放つパルスレーザーに対して、カインの吸収が間に合うのは、左手のひらを中心とした半径3m程度の円を底面とした高さ2m前後の円柱の範囲だけ。この範囲内にレーザー全てを抑え込まなくては、レーザーの一部がカインを通り過ぎて後方のラインたちへと命中してしまう。
つまり、カインはパルスレーザーに対して、真正面から左手のひらで受けなくてはラインたちを守りきれないのだ。
だが、カインは何とか先程の一撃を吸収し切った。咄嗟に左手を伸ばしたため間に合った。ただ、万全の状態ではなかった。
地に足がついてない状態で受け止めたものだから、レーザーから手に伝わる慣性と、吸収したエーテルの放出による運動エネルギーに耐えきれず、吹っ飛んだのだ。
『終わりだ』
「くっ……!」
もうラインたちを守る盾はない。二門目の砲塔から放たれるレーザーで彼らは消える。
ラインの視界を閃光が走った。
「あれ、なんともねぇ……?」
だがそれはラインたちの目の前を走っていっただけだった。幸い、後方にいるカインにも命中していない。
「「メリア様っ!」」
ガランとダミルが叫ぶ。
彼らの視線の先にはフェイスに向けて杖を向けたメリアの姿があった。彼女が遠距離からアーツを放ち、フェイスの体勢が”崩れた”ことで射線が逸れたのだ。
『邪魔を……っ!』
「シュルク、ダンバン!」
「うん!」
「承知!」
メリアの掛け声に合わせて2人が駆け出す。緑のフェイスは”崩れた”体勢を立て直す時間のせいで射撃による迎撃が間に合わない。
『ちぃ……!』
仕方なく、手の甲のクローを展開させ、シュルクたちに叩き込む。
だが、枷が外れたモナドの力とダンバンの素早さの前には敵では無い。身を翻して打撃を避けると、シュルクは爪を根元から両断し、ダンバンは左膝関節に一撃を入れる。
『ぐぅぅ!』
膝をやられてしまえば飛ぶしかない。緑のフェイスはエーテル弾を中距離戦闘用に切り替えると、後方に飛び上がりながら乱射した。
「貫け、バーティカルボルト!」
「切り裂け、レイザーウィンド!」
「凍てつけ、アイススプレッド!」
しかしそれはメリア、ホグド、アイゼルのエーテルアーツに相殺されてしまう。今の一瞬で左のメンバーが全員追いついたのだ。
「ここまで近づけばもう撃てまい」
「うむ。カルナ、カインの様子は……カルナっ!?」
後方の安全を確保したメリアは、傷ついたカインの元へ向かっているであろうカルナの方を見た。しかし、カルナは銃を背負ってこちらに一直線に走って来ていた。咄嗟の行動だったのか、ラインたちも驚きの表情を浮かべて彼女の後を追っている。
そして、全員の前に躍り出たカルナは言った。
「ガド! ガドなんでしょ! お願い答えて! 姿を見せて!」
「なっ───!」
カルナの叫びに応えるように、膝を折った緑のフェイスの背部から、一人の人間が現れた。
緑の装甲に包まれた肉体。赤い瞳の義眼。姿は変われどそれは紛れもなく。
「ガド───。やっぱり、生きていてくれたんだ……」
ガド。カルナの恋人にして、コロニー6の襲撃事件から行方不明であった男。それが緑のフェイスの正体だった。
嬉しさのあまり、涙を流すカルナとは対照的に、ガドは冷ややかにシュルクたちを見据える。そしてカルナの存在など始めからなかったかのように言った。
「モナドは破壊する。それがエギル様の望み」
「ガド!?」
「エギル様だって!? まさか貴方はエギルに!?」
それはシュルクたちにとってどうしようもない現実だった。
もしエギルに彼が操られているのだとしても、シュルクたちにできることは無い。カインやフィオルンはレジスタンスの関与によってこちらに引き戻すことができたが、エギルが直接手を加えているであろうガドを取り戻す術をシュルクたちは知らない。
「ガド!? なんでそんな事言うの! 理由があるなら話して!」
「この世界は歪んでいる。歪みの元を断ち、本来在るべき姿に昇華させるのが私の務め───否、世界の望み!」
その宣告は一層厳しい現実をカルナに突きつける。
彼を殺すことはできない。シュルクたちは、フェイスの機体にコアとなる人間を生かす循環機能があることを知っているから、これ以上攻撃することができなかった。
たとえガドだけを生かしても、今すぐこの場で処置を施すことはできなければ、数時間のうちに彼は死んでしまう。そして、その設備はここには無い。
「今、断ち切ろう。その歪みを!」
浮き上がる緑のフェイス。シュルクたちに向けられた砲塔には、既にエーテルが充填されていた。この会話の間に、もう準備していたのだ。
「ガド! 止めて!」
彼を止めるようにカルナは銃を構える。しかし、突如として突きつけられた現実と向けられた本物の殺意を前にして、彼女は直ぐに銃を取り落としてしまう。
「ガ───ド────」
「カルナァァァ!!」
カルナを守るようにして体を盾にするライン。そんな彼以外の全員は迎撃が間に合わない。
超濃度のエーテル弾がシュルクたちに向けて放たれる。標的との距離は極至近だ。そのエネルギーが減衰することはない。
「うおおおおおおおおお!!!」
そして、後方から猛スピードで突進してきたカインの左手と接触し、炸裂した。
長い通路全体を爆煙で覆いながら。
「───終わったか」
発射と同時に飛び上がり、爆発範囲から逃れた緑のフェイスはシュルクたちがいたはずの場所を見てそう呟いた。そのまま彼はフェイスに搭乗し、その場を後にする。
彼が見た場所。そこには、黒く焼け焦げた一本の左腕が、ただただ無惨に転がっているだけだった。
それ以外には何も無い。
前話投稿時、ランキングにのったおかげで、更に多くの人にこの作品を読んでいただけました。ありがとうございます。
小説という形を通して私の考察を楽しんでいただければ幸いです。
評価・感想・ここすき、お待ちしております。
特にここすきは見ていて楽しいので気軽にやっていただけると……。