最終的に人間辞める種族になりましたので神に抗います 作:塩なめこ
ちょっと穏やかじゃないね……
&月<日
俺たちはテレシア討伐の任を終え、グランデルから皇都アカモートへと帰還した。
メリア様は影妃の子であるため、今回の討伐の功が民衆に伝わることは無い。だが、議会に出席する議員や皇族たちには知れ渡る。
たった6人の若者が誰一人欠けることなくテレシアを討伐して帰還した。
この事実はメリア様を支持する者たちの士気を高め、発言力を強める効果をもたらすこととなった。
俺としては大満足の結果である。死にものぐるいで戦った甲斐が有るというものだ。
ちなみに皇太子妃殿下はメリア様帰還の報を受けて心底不機嫌そうだった。ロウランやアルヴィース(仮)からは特にこれといって反応はない。彼らにとってはやはり遊び感覚なのだろうか。
そういえばアルヴィース(仮)の身体はもう老年にさしかかっている。そろそろ予言官の入れ替わりという名の生まれ変わりを経てゲームで見なれた姿になるのかもしれない。
器用にやるものだ。彼も天の聖杯であるため、ヒカリがホムラの人格を作ったような感じで姿を変えているのだろう。
しかし、そうか。原作開始まであと30年と少ししか無いんだな。今のままいけばアイゼルたちが死ぬということにはならないだろうが……それでは足りない。俺はこの皇都に住む人や陛下、カリアン様を守りたい。
そのためにはまだ力が足りない。三聖はテレシアよりも強大な力を持っている。一人で大型テレシアを仕留められるようになってようやく最低限。彼らの立つステージの戸口に立てるのだ。
ここからが成長期。鍛えに鍛え抜かなければ。
+月♬日
シュルクたちが動く前に俺に何ができるだろうか。最近そう考えるようになった。
これまで皇太子であったソレアン様が、先代皇主陛下の老衰に伴い正式に即位なされた。それが俺に、とうとう原作開始が近くなってきたということを実感させたから……かもな。
できればモナド解放を阻止したい。
しかしそうなると問題になるのが機神兵という脅威である。
まず間違いなくモナドがなければ下層のホムスは死滅するだろう。大剣の渓谷での戦いに勝利できず、コロニー6もコロニー9も、ダンバンやシュルク達まで死んでしまう可能性が高い。
そして下層のホムスが死ねば……機神兵の矛先はハイエンターに向く。監獄島のザンザを狙うために動き出すはずだ。
その時ハイエンターは生き残れるのか?
多分、できる。そうなった時はロウランやアルヴィースが動き、ハウレスなどの隠し球で機神兵を圧倒するのではないだろうか。
だが、そうなった場合まず間違いなく彼らはモナドの解放を促すはずだ。その際ザンザの性格からしてテレシアになるような純血にはモナドを握らせないだろう。
また、皇都側もできるならモナドの使用は控えたいはず。伝承にあるように災いをもたらすかもしれない剣だ。信頼のおける制御できる人材に託すのではないだろうか?
モナド使用の意思決定の場にいて、混血児で皇都からの信用もある人物。……嫌な想像だが、メリアがあの剣を握るのか?
ありえない、とは言えない。
やはり、モナドの解放は避けられない。俺が一時的に介入したところで結果的にザンザの魂は目覚めると思う。
それに俺はホムス達にも生き残って欲しい。シュルクたちが犠牲になる未来なんて認められるわけが無い。
……だがそうなると、やはりザンザの思惑通りだ。
エギルに、機神界盟主に俺の知っていることを全てぶちまけられたらいいんだが……。
@月○日
今日両親から久しぶりに連絡があった。と同時に中々興味深い情報をもたらしてくれた。
早速アイゼルたちに共有する。他言無用って言われてた気がしたけど気にしない気にしない。
誤解されてる気がするが俺と両親の仲は普通である。すくなくとも表面上では。
俺が彼らとあまりお近づきになりたくないため、仕事や鍛錬が忙しいと言って会っていないだけであり、実は両親から嫌われている訳では無いのだ。
彼らは純血派で巨神教信者という、メリア様とは相容れない陣営に所属こそしているが、俺への家族の情というものはあるようで、それなりに愛情を注いでくれている。
結構メリア様の元で活躍していたため、俺自身も相当嫌われてるんじゃないかと思っていたのだが、そうでもなかった。
その理由も聞いてみれば納得である。
彼らはメリア様の敵であっても陛下の敵ではないのだ。
俺のメリア様護衛の任は陛下からの勅命であり、それに忙殺されながらもテレシア討伐などの功績を立てている俺は、彼らにとって自慢の息子だった。
俺はただ陛下の命に精一杯お応えしている……という見方をされていると知った時は驚いたものだ。いやほんと、目からウロコが落ちたよ。
その視点を知れたからこそ、それを利用することで何とか不仲にならずに済んでいるんだからね。
両親と絶縁しないのは、彼らがこちらにとって貴重な情報源だからである。だから不満を言われても頑張ってなだめ、普通の仲を保ち続けるのだ。あ、この計画の発案者はアイゼルです。
しかし、どう頑張っても全ての不満を解消することは不可能だ。
メリア様の近衛の立場に甘んじていることには何度も咎められた。それを活かして純血派の有利に動いてくれるのなら彼らとしても願ったり叶ったりなのだろうが、俺にその気は無い。
だから今は、暗殺をすれば陛下の勅命に反することになるからやっていないだけ、という体で彼らには納得してもらっている。タイミングはこちらで決めたいからとつけ加えたら、暗殺を促すようなことは言ってこなくなった。やったぜ。
まぁそれが収まったら収まったらで、今度は違う方向からのアプローチをしてきたけどね。今回の連絡もそれ関連だった。
ズバリ、巨神教への勧誘である。
テレシア討伐を完了したばかりのこの時期に精力的に勧誘してくるとか……。
両親にその気はないのだろう。がしかし、このタイミングでの誘いは絶対に何者かの陰謀が絡んでいる。大体のあたりをつけるなら光妃殿下が怪しいか。
今のメリア様陣営は、様々な功績により、結構揺るぎないくらいに磐石である。だからそこを崩しに来たんだろう。彼女の私兵ともいえる近衛の絆に楔を撃ち込むため、俺を引き抜こうというわけだ。
さーて、どうするかね。
@月◆日
とりあえずは入信する前に集会に参加してみないか、という誘いだったため、仲間たちと協議した結果乗ることにした。
敵情視察というやつである。この集会に参加しているハイエンターは、その全てがメリア様の政敵ということになる。どの議員が味方なのかを判断する術がほとんどない俺たち6人にとって、その判別の機会は魅力的に映ったという訳だ。
まぁその目的が果たされることは無かったが。
いやうん。参加者全員に仮面の着用義務があったんよ。ていうかそれが参加証だった。俺は両親にこれを渡されて終わったわって思ったよ。
これじゃ素顔とか分かるわけがねぇ。声も変声機が内蔵してあって当てにならねぇし。普通に相手が一枚上手だった。俺がアホすぎたのもあるだろうが。
一度議会の手で抹消を図られ、カルト認定された新興宗教が大々的に開かれてるわけがないんだよなぁ……。
集会の内容で特筆すべきことは無い。
今回から参加した奴らに自己紹介をさせたあとは、なんか巨神の素晴らしさとか純血種の素晴らしさとかを説いて、祈って終わった。初心者向けって感じよ。
ちなみに、何故この会に参加したのかを問われた時は、新たな視点を開眼するためとかそれっぽい意識高い系のことを言っといた。受けは良かったので大丈夫だろう。……大丈夫だよね???
@月/日
離宮で作戦会議。
ここは誰も近づかないので秘密のお茶会を開くのにはすごく適している。
とはいえ、俺が巨神教に近づいていることはメリア様には黙っているため彼女には気を配る必要があったが。
結構頻繁にやっているお茶会だが、俺たちが物騒な会議をする以外は普通のお茶会である。
個々人の近況だったり、街や議会で流れている面白おかしい噂話だったりをだべって菓子を食う。それだけであるが、メリア様は笑ってくれている。
その当たり前を仲間たちと享受できるこの瞬間が、俺にとってはかけがえのないものなのだ。
……俺たちがこうして集まる機会も、これからはなくなっていくだろう。
最近、近衛騎士団としてではなく、騎士として各人に任務が下ることが多くなってきた。
俺達ももう75歳を超えてしまった。つまりは一人前の騎士として認められるわけで、近衛以外の仕事も任される。それは自然な流れだ。
だが、どうにも配置がおかしい。
メリア様に最低一人は付けるようにはなっているものの、それ以外のメンバーが別々の部署、別々の場所に配属されることになっている。
どう見ても何者かが俺たちを引き離しにかかっている。以前危惧した通りだ。
とはいえ任務である以上俺たちに断る資格はない。もし断ってもテレシアを討伐した勇者ならできるだろうと言ってゴリ押されるだろう。ここに来て立てた武勲が足枷になってきている。
果たして、次にメリア様を含めた6人で一同に会するのは、いつになることだろうか。それまでに全員が生き残っていられるだろうか。
仲間たちのある未来における結末を知る俺は不安でならない。
因果は多分きっと、俺の介入によって変化した。
それにザンザが……三聖が対応してこないわけが無いのだ。
+月─日
今日も今日とて巨神教の集会に参加しつつ、騎士としての任務をクリアしていく日常を過ごすだけであった。
と書ければよかったんだが、今回の潜入では特筆すべきことがあった。
最近は騎士としての仕事が忙しくメリア様の傍に居られなかったことと、巨神教の集会への度重なる出席を評価され、巨神教幹部へのお目通りが叶ったのである。
しかしながら顔を窺うことは出来なかった。まだ少し警戒しているようで、仮面を外したのはこちら側だけだ。
彼らの前では仮面など意味をなさなくなっていた。そもそも両親が巨神教異端審問官で議員。その身内である俺は元々彼らにマークされていた上、テレシア討伐や最近の任務の功の影響で皇宮では有名人だ。彼らに顔が割れていないわけがなかった。
とはいえ正体を知られたことが全て不利に働く訳では無い。
俺を知っているということは俺の現在の立ち位置も把握しているということ。俺がそれをみだりに隠す必要は最早ない。だからこそ、俺は俺の現状を堂々と発言、利用することができた。
彼らからは2つのことを依頼された。
1つはメリア様の近衛としてあちら側の情報を巨神教に落とすこと。
メリア様支持派の議員に関しては巨神教の情報網でキャッチできるようなのだが、メリア様直属の親衛隊に関しては全くと言っていいほど情報が掴めないらしい。
だと言うのに彼らはどんどんと武勲をあげているため、膨張しないうちに情報戦でアドバンテージを取りたいというのが巨神教上層の意向だった。
巨神教内に身内がいて他の親衛隊メンバーよりも比較的情報が落ちてくる俺は、その足がかりとして絶好のカモだった。
当初は家族を利用して俺から内情を聞こうとしていたようだが、俺は思いの外巨神教に献身的だった。
ならば直接部下にしてしまった方がいいと判断した彼らは、こうして俺に接触を図ったわけだ。本当はそう見えるよう画策して動いているとも知らずに。
内心笑いながらこの申し入れを受け入れた。もちろん彼らに伝える情報はアイゼルやホグドと話し合って決めた偽のものだけである。せいぜい踊り狂うといい。
んで2つ目。結果だけ言うとこちらは折衷案で通してもらった。
異端審問官への勧誘が来たのだ。親と同じ仕事をしないか、と。
俺はもちろんそんなものにはなりたくなかった。守るべき味方を実力で排除することなど、いくら巨神教に近づくためとはいえ、できない。
だが、巨神教上層部はそれで納得などしてくれない。これは信頼するに足るかどうかを判別するための踏み絵だ。だから妥協する必要があった。
俺は異端審問官にはならなかった。だが、彼らを教え導く教官にはならざるを得なかった。
上層部にはこう伝えたのである。
俺が異端審問官になると、それが発覚した場合大変なことになる。巨神教がまだ皇都に存続していたことや、親衛隊という混血派の重鎮が敵であったことが知れ渡る。そうなれば皇都は皇族議員を問わず調査に乗り出すだろう。
だから俺は異端審問官になってはならない。しかし、巨神教には貢献したい。俺に捧げられるものは武力以外にはなく、実働部隊に入れないならその術を教えることしかできないだろう、と。
一斉捜査という揺さぶりは彼らにとてつもなく効いた。
両親は間違いなくこれに引っかかる。そして、巨神教異端審問官長たる光妃殿下にもその被害が及びかねない。
彼らにとって光妃様が関わっていることは誰にも知られてはいけない急所だ。だからこの指摘は痛かった。
そして俺はこのことを言っても違和感のない立ち位置にいる。きっと彼らには親を心配する息子というふうにしか映っていない。
まぁ、原作知識を持った転生者なんて突飛な想像ができる方が頭おかしいのだが。
と、そんなわけで俺は異端審問官教官とメリア様親衛隊、皇都アカモート騎士の三職を兼任することになった。きちぃ。
でもそのおかげで皇都に残ることが出来た。純血派議員が俺がメリア様の傍に居やすいように配慮してくれた形になる。
メリア様は……メリアはなんとしてでも守る。その結果彼女に嫌われようとも構わない。大事なのは彼女が孤独にならないことだ。
兄も父も仲間たちも彼女から奪わせはしない。
♬月&日
教官に任命されて何日か経ち、初の教導任務が下った。
初任務まで時間がかかったのは異端審問官を集めるのに時間がかかったためだ。
彼らは影の者。ひとつの場所に集中するだけでも危険なのである。
さて、そんな彼らに俺は何を教えられるのか。
人を殺す術は教えられない……というか教えたくなかったので、生き残る手段としての体術を学ばせた。
彼らは基本暗殺者だ。大々的に誰かと戦うという場面にはそうそう出くわさない。しかしもしそうなった時、勝てなければ、逃げ延びる事が出来なければ巨神教に足がついてしまう。
だからたとえ武器を無くしたり奪われたりしても戦える体術を教えるのだ。証拠を出来るだけ残さないようにするために。
……てな感じの大義名分を立てて鍛錬した。
そういえば俺含め全員が仮面をつけていたけど、それでも俺のことはバレバレらしい。
ハイエンターで槍を使ってる実力者なんて俺以外いないからね……。次からは持ってこないことにしよう。
あとタルコらしき少女とも会った。いやでも俺と歳が近かったからなんて曖昧なもので判断しちゃダメか。
仮面付けてるから断定ができない。せめて特徴的な紫ピンクの色がかかった髪でも見れれば分かるんだが。
◆月○日
やっちまったな。
一丁前に教官任務なんかやっていたら指導するはずの異端審問官見習いが暴発してしまった。
なんでこの若造が! とかこんなものに意味は無いだろ! だとか一人が言い始めると、それが起点となって教え子皆に伝播し、反旗を翻されたのである。……どこに行っても嫌われ者だなぁ俺。
まぁ、鎮圧したけどさ。
数で負けていたとは言え、暗殺者見習いに負けるほど今の俺は弱くない。槍なんて使う必要すらないだろう。殺すわけにもいかないので軽くあしらってやった。
ただ、その日はもう皆が皆冷静ではなかったので考えさせる時間を作るため忠告だけして解散にした。
でも本当に冷静でなかったのは俺の方かもしれない。もしこの事態が巨神教上層部にでも知れ渡れば、俺は良くてお役御免。最悪殺されるかもしれない。
憂鬱だなぁ……。念の為、アイゼルたちに宛てた手紙を書くことにする。遺書みたいなものだ。使われないことを祈る。
>月#日
先日の件で色々と準備していたが杞憂に終わった。
俺が弟子たちをボコボコにしたことは咎められることはなかった。実力を示したお陰なのか、彼らとの関係も冷えることはなく、逆に教官としての信頼を得ることに成功した。
スパイが信用を得たら何をするか。諜報活動である。
今回、異端審問官見習いとの問答で裏皇家の存在やその歴史についての情報を得ることができた。あまり表立って語られることでは無いため、なにか具体的な記録が残っている訳では無いそうだが……俺が文書にしちゃうもんね。
あとタルコの出生の秘密も知ることが出来た。タルコにホムスの血が混じったのは、父方が皇家の血を引いていたためだった。
皇家は遺伝子に刻まれたザンザの楔を解こうと必死になっていた。表皇家ではその努力が実を結びメリア様が生誕なさった訳だが、裏皇家でも同様だったようだ。
#月+日
今日はメリア様の傍で一日護衛を務める日。
歳も60を超えた彼女の一日はまず授業から始まる。
とはいえやるのは座学では無い。教えるべき知識はもう既に教えきっているためだ。
生きている時間が長いからか、人間換算12歳の少女でも大抵の事は学んでいるのだ。
故に今の彼女が学んでいるのは作法だったり、遊戯だったり、武術だったり。
最近の授業はもっぱら戦闘のための時間にあてがわれている。表も裏も皇家は鍛錬に継ぐ鍛錬だなぁ。
本来ならこのくらいの歳の皇族はマナーとかの指導が入るらしいのだが、メリア様は皇宮での会議に既に出席できるほどなのでする必要がない。
しかもメリア様は真面目なのであまり芸術に興味を持たれないため、残った武術を極めているのだと教育係の者は言っていた。
さて、教育の時間が終われば政務である。
とはいえ彼女は会議に出席するくらいしか仕事がないが。
軍を出動させるような問題は起こっていないし、経済も安定している。
父がいて兄がいる現在のメリア様がわざわざ出向かれて指揮を執る、なんて事態はそうそう起こりえないのだ。
だから今日も時間が余る。
何も無い時のメリア様は離宮に閉じ込められた様な生活を送る。
主に庭の花を愛でたり、景色を楽しんだり……。それしかすることが無いだけなのだが。
なのでやっぱり今日も俺は街へと彼女を連れ出してしまっていた。
大事な大事なハイエンターの希望であることは重々承知しているが、いくらなんでも過保護にしすぎである。見ていてこっちが辛い。
今はまだ食事や買い物を楽しんでいてもいいはずだ。皇族とはいえ人間だ。娯楽がなくては生きていけない。
それに皇族であるからこそ子供として甘えられる時間も短い。彼女には今しかない大切な時間を、子供らしく、少女らしく過ごして欲しかった。
だから交代で帰ってきたアイゼルに説教されるのは必要経費である。致し方なし。
+月▼日
今日はもう色々と突然だった。
エルト海のエーテルプラント。そこに大型のテレシアが出現したのだ。
これには本当に驚いた。巨神教ですらこのことは寝耳に水だったようで、教導任務のために集会に訪れた際は大混乱に陥っていた。
彼らにとっても管轄外のテレシアという存在は恐怖の対象なのである。
俺は予定を変更してメリア様のいる皇宮へと戻った。
皇宮では緊急招集がかかり、対応協議のための会議が開かれることになっていた。
もちろんメリア様も出席するので俺も護衛として参加した。
純血派側の陰謀でこの日も皇都にいる親衛隊は俺だけである。
アイゼルとガランはヴァラク雪山に。ダミルは巨神肩、ホグドはエルト海のシウェラート灯台にいる。応援要請して駆けつけられるのはホグドくらいである。
派遣地は俺の情報提供で予測できるため、急な任務が入って準備不足ということにはならないが、こういうハイエンター全体にとって緊急の事態では動きにくいな。これからは要反省だ。
会議は誰を派遣するかで紛糾した。
エルト海なので皇都警備隊を動かしてもいいのだが、テレシアと対するには如何せん実力が伴っていない。無駄な犠牲になることは目に見えている。
皇都周辺の機械兵器に頼ることも考えられた。しかし思考は読まれなくても単純に性能面でテレシアに遅れを取るため、足止めはできても完全沈黙は難しいだろう。
歴戦の兵士たちを集めて対するにしても時間がかかり過ぎる。
今回の案件は早急に解決する必要があった。なんせ出現場所が皇都のエネルギー源たるエーテルプラントだ。エーテルを食うテレシアを長時間置いておくと都市機能が麻痺しかねない。
結局、誰も彼もがその場にて実績ある者を頼らざるを得なかった。
皇宮は俺たちメリア様親衛隊の派遣を決定した。しかも招集するのに一週間は必要なところを3日で解決してこいとのお達しだ。酷い話である。
だがまぁ……俺は皇家に、メリア様に忠誠を誓った身。陛下にああも懇願されては動かないわけにはいかない。
約5年ぶりに、5年前よりも圧倒的に不利な状況でテレシアと対することになるとは。テレシアに対応出来る俺が皇都にいたのは不幸中の幸いと言える。
果たして勝てるのか。……やってみなければ分からないか。
評価、お気に入り、誤字報告、ここすき
お待ちしております