最終的に人間辞める種族になりましたので神に抗います   作:塩なめこ

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ゼノブレイド3、発売日直前に間に合いました!!
なお、私が買うのはもうちょっと後になる模様。


たくさんの評価ありがとうございます。ハーメルンに投稿を始めて4年近くになりますが、過去経験したことの無いUA数とお気に入りにビビっております。日間ランキングも5位くらいになってたし。

誤字報告もありがとうございます!本当に助かっています!

今回はバトル&伏線回です。敵との対峙を流すのにはまだはやいです。




青いフェイス

 

 

(くそっ! やりづらい……)

 

 

 大恐竜───レオーネ・テレシアと相対するアイゼルは己の剣を振るいながらそう思う。

 

 あれからシュルクたちと共に探し出したマクナの大きなエーテル結晶の前で、アイゼルたちはテレシアと再び相見えた。

 

 ダミル、ガラン、ラインが正面からテレシアを引き付ける盾役に。

 シュルクやダンバン、アイゼル、リキはその間に様々な角度から攻撃を叩き込む火力役を。

 そして、その後方にエーテルアーツによる攻撃とエーテル場の形成によって皆を援護するメリアと、全員の生命線として回復を担当するホグドとカルナが控える布陣で彼らはテレシアと戦いを繰り広げていた。

 

 さすがに人数が増えたこともあって、今のところテレシアに対して有利に戦えている。

 しかしアイゼルの目からは、自分も含めたハイエンター組の動きがいつもよりも精彩を欠くように見えた。

 

 理由は分かっていた。

 自分たちの武具に装備されていたエーテルジェムから輝きが失われたためだ。

 青い機神兵のせいで彼らの武具は攻防両面で性能が落ちてしまい、そのズレが普段の動きと噛み合わず、影響を及ぼした結果だった。

 

 自分たちだけであったなら、やはりこの再戦でテレシアにやられていたかもしれない。その想像が容易いからこそ。

 

 

「──っ、モナドスピード!」

 

 

 彼らの防御面における不調を補えるモナドとシュルクの力に、アイゼルは驚いていた。

 

『疾』という文字が浮かび上がると共に、赤い剣は青い光を周囲に拡散させた。瞬間、この場にいた()()の速度が跳ね上がる。

 

 

「ライン、ガラン、ダミル、避けて!」

「あいよっ!」

 

 

 飛び上がったテレシアによる突撃はその圧倒的スピードの前に躱される。

 思考を読むテレシアに対して”受け”の選択肢を取るのは危険だ。より確実な方法はテレシアが対応できないほどの距離まで移動すること。

 人の運動能力では到底不可能なそれも『(スピード)』の力があれば実現出来る。

 

 

(それにしてもタイミングが絶妙だ。これが”未来視(ビジョン)”の力か)

 

 

 一度は乱れた陣形もこの速度があれば瞬時に再形成が可能だ。

 着地したテレシアに対して3人の盾の戦士が突貫する。それに合わせてアイゼルもテレシアの側面へと回り込む。

 

 

(とはいえ───)

 

 

 空中へと飛び上がりテレシアの羽の端を切り落とす。……がしかしテレシアは瞬く間にその羽を再生させ、空へ逃げてしまう。

 テレシアは周囲のエーテルエネルギーを吸収し、それを再生力としている。その吸収力はエーテルを枯渇させ生態系に変異を及ぼす程のもの。

 

 小型であれば首と胴を切り離したり、縦に一刀両断したりして絶命させれば済む話だが、大型だとそうもいかない。

 今のアイゼル達にはせいぜい羽の先を斬るか刃を差し込んで血を流させるくらいしかできず、その程度の傷はすぐさま治されてしまうため長期戦となっていた。

 

 流石のモナドでも欠如した火力面は補えなかった。

 このままでは戦闘の影響で周囲のエーテル場はどんどん枯渇していく上、こちらのスタミナ負けでやられかねない。

 

 物理攻撃で決め切るのは無理だろう。ならば。

 

 

「僕がテレシアの動きを止める! メリアは最大級の一撃を撃ち込むんだ!」

「ホグド、メリア様を援護しろ。ダミルとガランはそのままライン殿と連携してテレシアを押さえ込め。メリア様の準備が整うまで時間を稼ぐぞ!」

 

 

 エーテルエネルギーで存在ごと消滅させる。

 

 

「シュルク殿、ダンバン殿、行きますよ!」

「はい!」

「承知!」

 

 

 アイゼルはシュルクたちと戦場を共に駆ける感覚に懐かしさを覚えていた。

 そう、30年以上前に”彼”とこうして共にテレシアに相対し、そして同じように彼らは討った。

 成長した自分たちに成せないはずはない! 

 

 

「メリア様、私のエーテルをお使いください。ラウンドヒーリング!」

 

 

 ホグドはメリアを中心に水のエーテル場を作り出す。

 これは枯渇したエーテル場を活性化させると共に、メリアのエーテルエネルギーを最大限まで高めさせるだろう。

 

 アイゼルたちの役目はその高まった一撃を確実にテレシアにぶつけさせること。

 空中への逃げ道を封じ、地上に磔にすることだ。

 

 

「突撃が来るぞ2人とも!」

「奴の波動は俺が打ち消す。ガランとラインは奴の脚を的確に抑えてくれ!」

「おうさ! 任せな」

『─────!』

 

 

 空中を走っていたレオーネ・テレシアが3人に目掛けてエーテルを放出しながら突撃をしかける。

 レオーネ・テレシアの巨体もさることながら、奴が放つ波動は周囲の生物をエーテルに分解してしまうほど危険なものだ。

 それを打ち消すのは巨大な盾が持てる巨漢のダミル。彼はその盾にエーテルを集中させ、波動を中和する膜を構築すると、それを全面に押し出した。

 

 

「今だ2人とも、頭には当たるなよ!」

「ライン、合わせろ!」

「3、2、1───」

 

 

 テレシアに対して真正面に立つダミルの両脇を2人の男が駆け出す。

 彼らはレオーネ・テレシアの3つある頭の下をくぐり抜け、同時に敵の前足に自らの盾を叩き付けた。

 

 

「ぐっ!?」

「がっ!?」

 

 

 勿論、たった2人ではレオーネ・テレシアの巨大な質量による衝撃を受け止め切れない。吹っ飛ぶ。

 だが同時に、足の一部分に逆方向の力を加えられたテレシアは躓く。

 自身が前進する力との作用によって、テレシアはダミルの直上を前転するように回転しながら飛び越えてく。

 

 瞬時に浮力を操作して体勢を整えるがもう遅い。低空で勢いを弱められたテレシアの背にはもう、2人の戦士が飛び乗っていた。

 

 

「俺が左を!」

「では右を!」

 

 

 アイゼルとダンバン。

 2人は類まれなる剣技でもって両側に生えるレオーネ・テレシアの触覚を切り落としていく。すぐに再生するが構わない。彼らの目的はテレシアの動きを封じることだ。

 

 

『───!』

 

 

 狙い通り、レオーネ・テレシアは2人を振り落とそうとその場で体を揺さぶらせ、暴れる。

 背に乗る2人は振り落とされる前に直上へと飛び、アイゼルが追撃のエーテル弾を手から放ってその背に炸裂させた。

 

 

「さぁ、シュルク殿!」

「モナド、ブレイカーッッ!!!」

 

 

 爆発で更に地面へと叩き付けられたテレシアの体を、シュルクのモナドから発せられた緑の光が絡め取り、動きを封じた。

 

 

「──っ、はああああああああああ!!!」

 

 

 絶好のチャンスをメリアの金色に光り輝く瞳は捉えた。

 メリアは体からほとばしるほどのエーテルエネルギーを杖の先へと集約させると、一気にそれを解放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 光の渦がテレシアを包み込み、存在ごとこの世から消し去っていく。

 

 シュルクたちはテレシアに勝利した。しかし。

 

 

『その機神兵、君たちがテレシアを倒す寸前に現れたんだよね?』

『あぁ。あの攻撃が届いておったのなら、我々は奴を逃すことなく消滅させていただろう』

『それってエーテルを使ったアーツだった?』

『そうだが……それがどうかしたのか?』

『気になるんだ。そいつの目的が』

 

 

 戦いは終わっていない。

 

 メリアが見たという顔つきの機神兵はエーテルをメリアたちから吸収した。おかしいのはその後の行動だ。

 メリアたちを殺すことも捕まえることもなく去っていった。それはつまり、メリアたちを害することが目的ではなかったということだ。

 奴の目的、それがエーテルを取り込むことにあったのなら。

 

 

「っ!? みんな構えて!」

 

 

 周囲を警戒していたカルナが呼びかける。彼女は異変に気がついた。

 

 メリアが放ったエーテルの波動。それが光の奥で再度一箇所に集中し始めているのだ。

 それだけでは無い。消え去ったテレシアの緑のエーテル粒子までもがそこに吸い込まれるように消えていく。

 

 光の膜がシュルクたちの目の前から完全に消え去った時、彼らはエーテルの渦の中心にいた影の姿を見る。

 

 

「あれは!?」

 

 

 青い顔つき。

 

 全体的に他のフェイスよりも巨大で、全身は青い色の装甲で包まれている。瞳は大きく丸く、顔つき特有の仮面のような白い装甲は上に少し延びている。

 右腕はゾードや黒い顔つきと同程度の大きさだが、左腕は奴らのものよりも大きく太い。

 尻の辺りには大きく鋭い円錐状のエンジンが取り付けられており、肩からは薄くて小さなサブスラスターのようなものが突き出ている。

 そして、背には1本の槍と2つの立方体がかつがれていた。

 

 

「オイ! あれって全部エーテルシリンダーじゃねぇか!?」

「あの後ろのデカイのは貯蔵タンクってわけか」

「やっぱり、アイツの狙いはエーテルを集めることか」

『その通りだ。モナドを受け継ぎし者よ』

 

 

 その声に反応してシュルクたちは各々戦闘態勢に入る。『(エンチャント)』をかけるのも怠らない。全員が紫の光に包まれる。

 しかし、それを見ても青い顔つきは何もしない。背負う槍を手に取ることも無く、ただじっとシュルクたちを捉えていた。

 そして、その後方にメリアの存在を認めると彼は口を開いて言った。

 

 

『生きていたか、ハイエンターの者たちよ。しかしまさかモナドを振るう者と共にいるとは。ふふっ』

「何がおかしい!」

『いやなに…………。無知というものは恐ろしいものだなと思ってな』

 

 

 シュルクはメリアと機神兵のやり取りを聞きながら敵を観察することを辞めない。気になる点がいくつかあったからだ。

 

 まず、日頃から機神兵の装甲をいじってきたシュルクにしか分からないことであったが、今目の前にいるフェイスの装甲は古い。正確に言うなら奴の左腕以外は、とつくが。

 あれの装甲は、旅に出てからこれまでシュルクが戦ってきた機神兵のものよりも1世代か2世代くらい前のもの。シュルクがコロニー9付近で調達し、いじってきた機神兵たちと近いのだ。

 

 そしてもう1つ。この機神兵、顔つきであることに間違いは無いのだが、他のものと比べて特徴的な部位が欠如している。

 全身をくまなく巡っていた()()()()()()()()()()のだ。

 

 

「我々が無知であるだと?」

『そうだ。考えたことはないか? モナドの力はなんなのか。何がもたらしてくれるものなのか。少なくともハイエンターの始祖たちはそれを正しく理解していたよ』

「お前はこの剣の秘密を知っているのか!?」

『あぁ、知っている。モナドを受け継ぎし者よ、全ての事象には因果関係が存在する。そのような剣が何故この世に存在するのか、その意味をよく考える事だな』

 

 

 そう言い終えると青い顔つきは少しずつ高度を上昇させていく。ここから離れるつもりだろうか。

 

 

「オイ、逃げる気か!」

『言っただろ。俺の目的はエーテルの収集だ。お前たちよりもそこのエーテル結晶に用があるのさ』

 

 

 顔つきはおもむろに左腕をエーテル結晶の方へと向ける。すると手のひらの中心が開き、そこへ赤いエーテル結晶から発せられた光の粒子がどんどんと吸い込まれていった。

 次第にエーテル結晶の色が薄れていく。この速度は先程戦ったテレシアと同レベルのものだ。しかもこいつの場合、搾り取る対象を集中・選択・限定することが可能なようで更にタチが悪い。

 

 

「や、やめるも! ここから更にエーテルが無くなったら、何十年も生き物が住めなくなっちゃうも!」

『どの道枯渇したエーテル場はもう二度と完全な状態には戻らない。俺が何をしたって今更だろう?』

「マクナは皆の大切な住処だも! これ以上汚すんじゃないも!」

「リキの言う通りだ。マクナの安寧を脅かす存在を我らが見逃すと思うな!!」

 

 

 メリアが左手にエーテルを集中させ、上空を漂う機神兵に向かってアーツを放つ。

 

 

『無駄だ』

 

 

 だがしかし、それは奴にエネルギーを与えているようなものだ。奴は左腕をこちらに向けただけでそれをいとも簡単に消し去り、吸収してしまった。

 

 

『テレシアが暴れてくれたおかげでこれでもまだ足りないんだ。……そうだな、ノポンやハイエンターに危害を加えないと誓おう。それでもダメか?』

「そのような世迷い言を!」

「メリアたちを襲ったテメェの言い分なんか信じられるわけがねぇだろ!」

『ふむ……。ではこうしよう。俺はここから出ていく。その代わりそのモナドをこちらに渡してもらおうか』

「モナドを……?」

『モナドは万物の根源元素たるエーテルを操る神器。その剣に秘められた力さえあれば、俺もこんなことをする必要はない』

「へっ、結局はそう来るのかよ」

「誰がお前たちなんかに!」

 

 

 カルナが返答とばかりにエーテル弾を放つ。モナドエンチャントを受けているため、本来なら機神兵に対しても効力を発揮するのだが、やはり顔つきには通用しない。

 エーテル弾というのも相性が悪かったのだろう。弾に内包されたエーテルはモナドの紫の光ごと奴の左腕に吸収される。

 

 青い顔つきの背後からガコン、と音が鳴った。

 

 

『ほう、流石だな。いくらか貯まっていたとはいえ、モナドの力の一端を吸っただけでもう満杯か』

「な、なんだも!? アイツ腕が3本あるも!」

 

 

 背中の真ん中、槍の後ろから細いもう一本の腕が左腕に伸びていた。奴は左腕を曲げると、その背中の腕で左肘からエーテルシリンダーのカートリッジを取り出して、背中のタンクに内包された別のカートリッジと交換する。

 

 

『気が変わった。戦うというのなら戦ってやろう』

 

 

 背中の腕は交換作業を終えると、今度は槍を掴み、右腕の方へと持っていく。奴は右手でその長い柄の先を掴むと、サブアームとの連動で槍を回し、逆に向いていた刃先をこちらへと向け、臨戦態勢に入る。

 

 

 

 

 

 

 

「……ラインはああ言っているが、やれるかシュルク?」

 

 

 ダンバンは顔つきの動きに警戒しつつもシュルクにそう耳打ちした。

 

 顔つきにはモナドが効かない。それは周知の事実だ。ダンバンは戦闘になれば最後まで付き合うつもりだが、分が悪い中で無理に戦う必要は無いとも思っていた。

 

 今は一人の戦士ではない。このメンバー唯一の大人として、彼は冷静さを失わない。

 シュルクに考えがあるならばそれでよし。無いのなら、彼は撤退も視野に入れた戦法で戦うし、敵が見逃してくれるというのなら有難くそれに便乗するつもりでもあった。

 

 

「こうなったら引くに引けないでしょう。それに確かめたいこともあります」

「モナドの秘密のことか? 確かに奴は何か知ってそうな雰囲気だが……」

「いえ、確かにそれも気にはなりますけど、僕はあの顔つきの謎を確かめたいんです」

「顔つきの謎だって?」

 

 

 シュルクはこれまでの顔つきとの戦いを思い出す。

 黒との初戦ではフィオルンが付けた傷の部分にだけモナドが刺さった。

 ゾードとの戦いでは巨神のエーテル流に落とした後モナドが効くようになった。

 

 これらの戦いで共通するのは、モナドがつうじたのは、顔つきの赤い光が通っていない部分であったという点だ。

 今対峙している青い顔つきには赤い光はない。もしモナドで切り裂けない理由がそこにあるのなら、奴との戦いはそれを確かめる絶好のチャンスだろう。

 

 

「しかしシュルク。カルナのエーテル弾は、やはり奴には効かなかったぞ」

「それはあれがエーテル弾だったからだと思います。奴は赤い光こそ無いものの、エーテルを吸収する術がある。カルナの弾が効かなかったのはそのせいです」

「なるほどな。だがそれでもモナドが効くかどうか分からんぞ」

「ちょっと考えてみたんです。奴がエーテルを集める理由を。もしかしたら動くためのエネルギーが欲しいんじゃないのかなって」

 

 

 コロニー6を解放したため機神兵には巨神界に拠点がない。機械である以上補給は必須であるのにそのための場所がないのだ。

 

 だが青い顔つきはこのマクナで単独で動いている。機神界から最も遠いはずのここで、拠点からの補給もなく独立して動けるのには何か理由があるはずだ。

 そう考えた時、巨神から奪ったエーテルを自身の動力として変換する機構を備えている可能性にシュルクは辿り着いた。

 

 

「自給自足って言うんでしょうか。奴は動力にここのエーテルを使っている。他の顔つきと違って赤い光がないのは、もしかしたらあれにエネルギーを持っていかれるからなんじゃないでしょうか」

「……遠隔地で自立して動くための特別な機神兵。それが奴って訳か」

 

 

 偵察もしくは敵地での妨害工作を主目的としていそうな機体である。一年前の戦いでそんなことをされていれば防衛線など意味をなさなかっただろう。

 

 

「確証はありませんけど……戦えばそれも分かります」

「もしそれらが正しいとして、厄介なのはエーテルを吸収する力だな。特にメリアたちハイエンターからしたらたまったもんじゃないだろう。勝算はあるのか?」

「これも確証はありませんけど、きっとその機構はあの左腕にしかありません」

 

 

 全体的に機体の装甲が古いのにあの左腕だけは真新しい。他のパーツと比べても異質であり、大きさも右腕とは合わない。まるで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()かのようなアンバランスさだ。

 

 

「メリアから攻撃された時も、エーテル結晶からエーテルを吸い出す時も、奴は左腕しか使わなかった」

「隙をつけば倒せるかもしれない、というわけか。確かに勝算はありそうだ。上手く運べば奴からモナドの秘密も聞き出せるかもしれん」

 

 

 ダンバンは改めて青い顔つきを見つめる。

 シュルクの話が本当だとするなら、重要なのは彼やラインのような近接攻撃を主体とする者たちの動きだ。モナドの力を吸収されずに懐まで潜り込む必要があった。

 

 

 

 

 

 

 

『どうした? ぶちのめすんじゃなかったのか』

「うるせぇ! まだ勝負は始まったばっかりだ!」

 

 

 今シュルクたちは青い顔つきの両側を囲うような形で布陣していた。いや、させられていた。

 奴は右腕と背中の腕で長い槍を振り回し器用に距離を取りながらも、左腕で対処出来る人間を分別し、連携を阻害した。

 

 今奴の右側にはダンバン、ダミル、ガラン、ライン、アイゼルの5人が、左側にはシュルク、ホグド、メリア、カルナ、リキの5人がおり、それぞれフェイスの腕と戦っていた。

 まるで背中を合わせた2人の敵と戦っているような感覚だった。

 

 

「……っ、なぎ払いがくるよ!」

「! ライン、下がれ!」

「くそ、近づけねぇ」

 

 

「こっちを見るも!」

『見えているぞ』

「もももっ!?」

 

 

 槍がガランたち3人に、左腕がリキに迫る。

 前衛の3人はシュルクの未来視により攻撃を躱す。リキもその小さな体を活かして何とか躱した。しかし、リキの纏っていたモナドの力は吸収されてしまう。

 

 シュルク側はとにかくこれが厄介だった。

 近づけば剥がされるモナドエンチャント。リキの近接攻撃はこれで完全に通らない。

 モナドから発せられた光も例外なく奴の左腕によって吸収される。そのため、反対側のダンバンたちへのエンチャントはそのほとんどが遮断されてしまう。

 同じ理由でホグドとカルナのアーツも反対側に行き渡りにくく、ダンバンたちは強い攻勢に出ることが出来なかった。

 

 

「スリットエッジ!」

『残念だがそれも効かん』

 

 

 ならばとシュルクはモナドを振るうが、それも左腕によって防がれてしまう。やはり顔つきにモナドは通用しないのか。

 

 

(いや違う───。黒いのやゾードの時とは感触が違う。思いっ切り叩きつけたら、いつもは弾かれるのに、今回は受け止められている?)

 

 

 反発力がシュルクの腕には伝わっていない。彼らとは違う方法でこの青い顔つきはモナドを防いでいるのだ。

 

 

(やっぱりあの左腕がモナドの刃を吸い込んでしまっているのか。だから威力が……)

 

 

 モナドの刃もまたエーテル。あの腕があらゆるエーテルを吸収するのであればモナドの力を減衰させることも可能だろう。

 

 ガコン、とまた音が鳴った。左腕に装填されているエーテルシリンダーが充填した合図だ。

 

 

『おっと、もう3本目か。枯渇したエーテル場でそれほどのエーテルを放出するとは。モナド……末恐ろしいな』

「また空に逃げる気だ! メリア、カルナ!」

「了解した! アイゼルも合わせて撃て!」

「はっ!」

 

 

 奴は交換のため即座に上空へと逃げる。

 この間だけ奴はエーテルを吸収することが出来なくなるため、遠距離攻撃が可能な全員で追撃を放つのだが……。

 

 

『フン』

 

 

 右腕と背の腕による槍の回転によって作り出された物理的な壁が、放たれたアーツを防いでしまう。

 そうこうしている間に空へ逃がしてしまえばもはや手の付けようがない。対空砲でも持ってこないと顔つきの機動力に対応できなかった。

 

 

「どうするシュルク? 今のままでは奴に我らのエーテルを献上しているようなものだぞ」

「……エーテルアーツは吸収される。物理的な攻撃はモナドの力なしじゃ通らない。エーテルシリンダーの交換に入る時がチャンスではあるけど」

「奴も馬鹿ではないようです。あのような口ぶりなので騙されてしまいますが、シリンダーの限界を把握していなければあれほどはやく飛行態勢には移れない」

「せめて飛び上がれないようにできればいいんですけど……」

「ホグド、とりあえずガランとダミルを回復してやってくれ。今のうちにできるだけの事をしようや」

「……アイツが浮いてる間しか合流できないなんて不甲斐ないぜ。カルナ、俺も頼めるか?」

「分かったわ。ナイーブにならないでね、ライン」

 

 

 青い顔つきがシリンダーを交換している間に一度合流したシュルクたちはそそくさと迎撃の準備を進める。

 パーティー同士で作戦を相談したり、回復に努めるなか、シュルクは必死で突破口を探っていた。

 

 

(───剣を投げる? いや、モナドの力が吸い取られて弾かれるだけだ。一気にエーテルを叩き込んでもあの顔つきは対応してくる。やっぱり、飛び上がる前にどうにか動きを───)

 

 

「シュルク大丈夫かも? 考えすぎは良くないも!」

「シュルクは今必死になって俺たちが勝つ方法を考えてくれてんだ。余計なことは言わなくていいんだぜ勇者さま」

「でもでも、考えすぎると頭があつくなるも。冷ますべきだも!」

「バカはそうなるかもよ、シュルクはそんなことには「それだ!!」──なってない、よな?」

「シュルク殿、何か策が?」

「リキ、アイゼルさん、ちょっと力を貸して貰えませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さて、第4ラウンドだ。しっかりと搾り取らせて貰うぞ、モナド』

 

 

 空中から槍が降ってくる。

 シュルクたちはもう既に準備万端だ。モナドの紫の光を身にまとい、自分たちの中心目掛けて投擲された槍を躱す。

 

 土煙が上がる中青い顔つきは急降下で接近し、右手と背中の腕で槍の柄と石突を持つと、持てる最大限のリーチでもって大きく右へ薙ぎ払う。

 

 それを避けようと顔つきの右側にいたメンバーは更に横へと逃げる。完全に間に入られて瞬く間に分断された。

 

 

「サンダーバレット!」

「焼き尽くせ、フレア・インパルス!」

「モナドブレイカー!」

 

 

 左腕側に回ったシュルク、メリア、カルナの3人は、各々の最大火力のエーテルアーツを撃ち込む。無論、左手の中心に近づくと全てのアーツは力を失い、分解されて吸収されてしまうが、今回はこれでいい。

 狙いはいち早くエーテルシリンダーを交換させることにあるのだから。

 

 対して右側にはリキと左側の3人以外が青い顔つきに対してプレッシャーをかけていた。

 先程のかけ直されたエンチャントの効果時間内に青い顔つきに近づくことができれば致命の一撃を叩き込むことが可能だ。

 ガラン、ダミル、ラインの3人が前衛となって引き付け、残りの3人が機を窺っていた。

 だが───。

 

 

「やはりこの者、意外に器用だ」

「基本的には大振り。全員に槍を意識させて距離を取らせるように動かしていますが、振ったあとの隙を最小限に留めている」

「背中の腕はかなり小回りが効くみたいだな。こっちの拳とは違ってあれ単体で凶器になり得るのが厄介だぜ」

 

 

「冷静に分析してるとこ悪いんだけどよ、そろそろ決めてくれる!?」

「弱音を吐くのははやいぞライン。それとも一度下がるか?」

「ここは俺たちに任せてあっち組に行ってもいいぜ。あの3人みたく素早く動けるならな」

「冗談! こっちの方が性分に合ってるぜ。それはそれとしてあの3人にははやくアイツをぶった切って欲しいけどな!」

「そうか、なら踏ん張れよ! せぇーの───ッッッ!!!」

 

 

 3人の盾が横からくる槍を同時に捉えた。強い衝撃が体に加わるが、エンチャントのおかげで何とか耐えられる。

 槍の振る速度が僅かに遅れた。そこを見逃す3人ではない。ダンバン、アイゼルは剣を片手に駆け、ホグドは回復アーツを3人へばら撒く。

 

 

『やらせるか』

 

 

 石突を持っていた背中の腕が駆動する。

 勢いを殺されたと判断した青い顔つきは槍にこだわることをやめ、その拳で迎撃に出た。

 

 

「ちぃ!」

 

 

 アイゼルはその拳を避けるために後ろに下がらざるを得ない。だが、ダンバンは懐に入り込んだ。

 

 

「貰った!」

「……っ、ダンバンさん!」

「なに!?」

 

 

 しかしダンバンの後方から槍の石突が飛んできた。顔つきは機械特有の自由自在な関節を活かし、槍を引っ込めるように内側へと投げたのだ。

 たとえそれが刃先でなくても、巨大な槍はホムスの命を刈り取るのに十分だ。

 

 

「助かった、シュルク!」

「いえ───いい加減、こっちを見ろ!」

『見えていると言っている』

 

 

 シュルクはモナドを大きく縦に切り下げる。しかし顔つきの左手のひらで完全に受け止められてしまう。

 更にモナドは指で包み込まれるように捕まれ、その青い刀身を吸い上げられていく。

 

 

(そろそろ───)

『満杯か。4本目、有難くちょうだいする』

 

 

 顔つきは言いながら飛行態勢に入る。

 ガコン。

 音が鳴るのと同時に顔つきはモナドを手放し、その足を浮かせそして。

 

 

「ヒエヒエだもぉ〜〜〜!!」

「逃がしはしない、アイス・スプレッド!」

 

 

 空に羽ばたく前にその足を大地に縫い付けられた。

 

 

『しまった!』

 

 

 右側にいたアイゼルのアーツは槍の回転で防がれたものの、リキの氷の息吹は確実に顔つきの足を捕らえていた。

 気づかないのも無理はない。リキはずっと攻撃に参加せず、顔つきの動きをじっと観察していた。

 

 

『2人にはアイツの足を凍らせて欲しいんです。アイツが飛び上がる直前に予期せぬことが起きれば”崩れ”るでしょうから』

『じゃあリキはずっと機神兵のこと見てていいかも?』

『えっと……それはどうして?』

『隙をつくのに大事なのは見ることも! これ狩りの常識だも!』

 

 

 リキは生粋のトレジャーハンター。狙った獲物や同族から物を奪い取る技術に関しては秀でたものがあった。

 その技術の応用。青い顔つきがリキの存在を完全に失念した頃に、リキはこっそりと奴の足に近づいてその息吹を放った。

 それまで離れていたためにモナドの力を吸い取られることはなく、だからこそ奴を”転倒”まで持っていけた。

 

 

「今だシュルク!」

「うおおおおおお!! モナドバスター!!」

 

 

 一刀両断。

 

 足が凍りついたことで飛び上がれず、ブースターの反動で地面に腹から墜落した顔つき。その背中から伸びる第三の腕をシュルクは切り落とした。

 

 

『クソ!』

 

 

 青い顔つきは悪態をつきながら自らの片足を切り離した。残るスラスターのパワーを用いてその場で槍を外に向けて回転する。

 

 

「不味い、下がれ!」

 

 

 追撃に入っていたシュルク以外のメンバーは、ダンバンの掛け声を聞いて即座に顔つきから距離を取った。

 顔つきの対応がはやく、さらなるダメージを与えることは出来なかった。しかし。

 

 

「背中の腕ぶった切ったも!」

「これでもうシリンダーも交換できねぇぜ、ざまぁみろ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

()()で槍を持つしかない顔つきに、戦闘中にシリンダーを交換することは難しいだろう。片足を失ったせいで常に空中を漂っていないといけない上、バランスを取りづらく姿勢制御に問題が起こっている。

 エーテルを吸収する力はもう奴にはない。

 

 

『これ以上の単独行動は不可能か。……潮時だな』

「な、待ちやがれ! 卑怯だぞ!」

 

 

 たが彼は黒とは違う。拠点防衛のためのゾードとも違う。彼には引くという手が打てる。

 

 

『もう地に足をつけて立っていられないんだ。これ以上やってもせっかくのエーテルを無駄にするだけ。帰らせてもらおう』

 

 

 言ってどんどんと高度を上げていく。カルナやメリアがアーツを撃ち込むが、ちょうどエンチャントが解けてしまったが為に傷をつけられない。

 

 

『安心しろハイエンターの者。もうマクナに俺は現れない。モナドのおかげで最低限必要な分は揃った』

「必要な分はだと? 貴様、何を考えている!」

『答える義理も意味もない。とにかく俺はここには現れない。信じるかどうかは好きにすればいいさ』

「待て!」

『モナドの使い手! 一つ忠告をしておく。巨大な力に溺れれば仲間すら傷つける。その力に呑まれないようにせいぜい気をつけるといい』

「僕が、この剣で皆を傷つけるだって……?」

『力の意味をもう一度深く考えることだ。再びあいまみえた時、答えが出せたならその秘密を教えてやる』

 

 

 そう言って青い顔つきは高度を上げ、宣言通り大剣の渓谷方面へと飛び去って行った。

 

 

 マクナでの戦いは終わった。

 原生林を脅かすもの達は去り、メリアたちも晴れて皇都へと帰還する事が出来る。

 しかしシュルクたちには謎だけが残った。

 

 モナドの秘密。奴がこの森で行っていたことの意味。そして顔つきの謎。

 それらが明かされるのはもう少し先の話。

 

 まだ物語は”大きな流れの内”にある。

 





今更ですけど近衛騎士団組はオリキャラ扱いなんですかね……?

あと今回から原作死亡キャラ生存のタグをつけました。

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追記
モナドスピードの演出について書き忘れていたので補足をば。
モナドアーツは基本的にムービーと戦闘中の描写を総合した性能にしております。ですので、モナドブレイカーはエーテルの刃を投げる技と相手を束縛する技の両方が使えているわけです。
スピードの場合は、原作でのスピード覚醒時の演出的にどう見ても全員にかかっているので、この小説でも効果範囲は全域としています。

初見、モナドスピードが全員にかからなくて困惑したのはいい思い出です
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