最終的に人間辞める種族になりましたので神に抗います 作:塩なめこ
ゼノブレイド3、はやくやりたいですね。
Twitterでそれ関係のワード全部ミュートにしてます。
「影妃の子が命冥加に生き長らえるとは……」
皇都のバルコニーから、帰還した一団の姿を見て忌々しく呟く女性の姿があった。
現ハイエンター皇主の妻にして巨神教異端審問長である光妃その人である。
「申し訳ありませぬ」
その後ろに膝を突いて控える仮面を被った黒装束の女が一人。巨神教の暗殺者として一人前に育ったタルコだ。
「このタルコ、必ずや光妃殿下のご下命を果たしてみせます」
「この皇都で、”あの者”ですら失敗した任をそなたが?」
「私めはそれを果たすためにこれまで生きてきたのです」
光妃の疑問にタルコはきっぱりと言い放った。それが上辺だけのものではなく覚悟の伴ったものであることは、彼女を長い間見守ってきた光妃には理解できる。
「陛下もあの者の身辺には格別の配慮をくだされておる。近衛衆に加え親衛隊の隙をつけると言うのか? そなた一人で」
「身命を賭しまして、必ずや」
「……
「しかし……」
「くどい」
しかし現実は厳しい。巨神教異端審問官の長として、有効な駒に育った彼女を使い捨てるような真似はしない。
母親としても、無謀に生き急ぐ彼女の物言いを聞き入れる訳にはいかなかった。だからこそ強い言葉で突き放す。
「機会は必ず訪れましょう。あの者が皇位を欲するのなら」
そのようなやり取りをする2人に近づく影がまた一つ。
王宮を揺るがす暗部がまた策動し始めていた。
◆◆◆
エルト海。
巨神の後頭部に広がる巨神界でも最大級の水源地だ。
しかしそれ故に人が生活できるような土地は少なく、始祖ハイエンターがここに皇都を築くまでここには何も無かったのだという。
始祖ハイエンターがここに移り住んで来たのは、巨神後頭部付近に浮遊する監獄島が作られた頃と同時期らしい。
巨人族とともに協力し、巨神肩から採掘した浮遊石を用いた飛行ユニットを開発。それに大地を乗せた浮遊島をエルト海に浮かべたことでここは人の生活圏となった。
巨人族が滅びてから数年後、始祖たちはここに浮遊する都市、皇都アカモートを作り上げ、様々な防衛機構や施設を設置することでエルト海を完全に己の支配下に置いたという。
それが私の故郷に残る碑文によって解き明かされた建国の歴史だ。
テレシアを討伐し、機神兵を撤退へと追い込んだ私たちは、サイハテ村の頂上からここエルト海へと上がってきた。
浮遊島のテレポーターを行き来し皇都入口まで辿り着いた私たちは、今回の任務の仔細及びシュルクたち一行の来訪とその目的を伝えるため、近衛騎士の四人と共に先んじて皇都へと足を踏み入れた。
1ヶ月ぶりとなる帰参であるが、街の雰囲気は何ひとつとして変わっていない。
皇都は空中に浮かぶドームの中に街を建造した移動できる都市だ。
昔はその移動機能を用いて巨神の下層にまで足を運ぶことがあったそうだが、諍いの原因となるとして他種族との交流を絶ち上層で暮らすようになった現在では、その機能が活かされることは無い。
ドーム内の外周には広い道路が通り、そこには国民なら誰でも利用出来る輸送車が走る。そこを渡り終えれば王宮下層の庭園に辿り着く。
ここも国民に解放されている。希望の噴水、永遠の噴水付近は周囲に住む多くのハイエンターが訪れる憩いの場だ。
学者、議員、騎士と……皇宮で働く様々な階級の人々も暇をみつけては休みにくる。
丁度スクールが終わる時間だったのだろうか、皇宮へと続くリフトの上から下を見下ろせば、まだまだ小さな子供たちが水場や原っぱで遊んでいる姿が見えた。
私も幼少の頃はよくああして、
最初に連れ出したのは”彼”だった。
当時の私はと言えば読書に没頭していたため、外出することの必要性を感じていなかったのだが、場所を変えれば気分も変わると言って、手を引っ張っては希望の噴水のベンチまで来させられた。
そうして2人で座って別々の本を読む。
そんなことを数回重ねてから、この秘密の外出にダミルが加わった。
彼は読書をする私たちを他所に、どこかから持ってきた虫網を取り出しては公園で飛び回る蝶やバッタを捕まえていた。
そしてそれに加わるようにガランが来て、2人に無理やりベンチから連れ出された”彼”に代わって、私の隣にホグドが座るようになって。
最後にはアイゼルに見つかって叱られる。
でも”彼”はそれでも離宮から私を連れ出す。
最終的にアイゼルも諦めて、2人だけの秘密の外出は親衛隊の秘密の外出になった。
年々時が経つにつれて皆が成長してくると、外ですることも変わっていった。
ホグドは私の隣で草花の本を読まなくなり、学習の面で指導するようになった。
ガランやダミルは鍛えるために走り込みをし始め、アイゼルと”彼”はよく様々なことで勝負をするようになった。
かけがえのない時間だった。
しかし、更に時間が経つとそのような集まりを持つ機会も減って行った。
丁度このようなテレシアの討伐任務が終わった頃であっただろうか。
各員が騎士として仕事を持つようになり、私の下を離れるようになった。
多分その頃からだ。私の周囲がよそよそしくなっていったのは。
それでも2、3人で偶に外に繰り出す日はあったが。
……果たしてあの時から”彼”は私を裏切っていたのだろうか。
裏切っていたとしたのならどんな気持ちで私を街に連れ出したのだろうか。
「メリア様、皇主さまがお待ちです」
「……あぁ、皆の者参るぞ」
「はっ」
そんな風に考えに耽っていたら、私はいつの間にか謁見の間の前まで来ていた。今浮かんだことを心の中に押し留める。
今は父上……陛下に報告することを考えなければ。
テレポーターから階段をのぼり、玉座の前で部下たちと共に膝をつき頭を垂れる。
「第一皇女メリア・エンシェント、ただいま帰参つかまつりました」
「……面を上げよ」
「はい」
返事と共に静かに頭を上げ陛下の目を見つめる。
ソレアン・エンシェント。それが皇主陛下の、父上の名だ。
「歴戦の騎士団ですら討ち果たすことの出来なかったテレシアを再びそなたが倒してくるとは……。その実力、偽りのものではなかったという事だな」
ズキリ、とその言葉を聞いて心が鳴った気がした。
本当にそうか?
もう一人の心の中にいる冷たい私がそう問いかけてきた。
「私の実力ではありませぬ。ここにいる忠臣たちと助力してくれた者たちの力があっての事です」
「かまわぬ。そこにいる者たちが汝を支えるのは当然のこと。彼らを導く力もまたそなたの力だ。
また此度の任務中、機神兵の襲来もあったと聞く。現地の者と協力し、これを退けたのもまたそなたの力。謙遜する必要は無い」
「はい……」
頷きながらも、心の奥底では認めていなかった。
使う力だと? 最初の時も作戦を考えたのは”彼”とアイゼルだ。
今回だって私は最初シュルクたちの助力を拒んだ。そのうえ、テレシアを倒した時も、機神兵を退けた時も、その算段をしたのはシュルクやアイゼルだ。私はそれに従っただけに過ぎない。
自責の念が心を押し潰していく。もっと私に力があったなら。もっと私に知恵があったなら。
「不満か? ならばその気持ちを忘れずにいるがよい。そして邁進せよ。己が未熟を覚らせてくれた者たちへの感謝を忘れずにな」
陛下はそんな私の心を見透かしたように言う。
感謝、か。アイゼル、ホグド、ガラン、ダミル……そしてシュルクたち。
そうだ彼らの恩に今は報いらなければ。
「陛下、そのことですが───」
◆◆◆
「私が皇太子として認められるなど……」
皇主陛下との謁見を終え、離宮にて休まれるメリア様のお顔は暗い。
シュルク殿らが拘束され、予言官殿による審問が行われている最中である、という今の状況もその要因となっているのだろうが、一番の原因はやはり、皇主陛下が此度の任務でメリア様を皇太子として認めたことだろう。
今回の任務は”奴”の一件で疑われたメリア様、及び我ら親衛隊の実力を測るという意味合いもあった。
それが果たされた今、皇主陛下はメリア様を近々皇太子として認めるであろうことは我らも予想していた。
彼女は我らハイエンターの希望なのだから。
だが機神兵の乱入による影響で我ら独力でのテレシア討伐は果たされなかった。
その事実がメリア様の心に重くのしかかっているのだろう。
”奴”がこの皇都を去ってからというもの、メリア様はあまり笑うことが無くなり、自ら我らを頼ることも少なくなった。
多分、最も信頼していた者に信じられていなかったことが彼女をそうさせたのだろうと思う。
何故”奴”が裏切ったのか分からないメリア様は、”奴”が裏切った原因を模索したのだと思う。そしてそれが己の力不足にあると結論づけた。
裏切られたのは”彼”の心が離れたから。命を狙われるのは混血児である自分が無能であると思われているから。
もっと力や知恵があれば、皆を納得させられるだけの能力があれば。
他者を頼るのではなく己の力で結果を出さなければ───と。
皇主陛下や、兄君であるカリアン殿下の期待に応えられる皇太子になるためには、それが絶対の条件であると考えているようでならない。
事実は違う。
”奴”も陛下も、メリア様を支える者たちは皆とっくに彼女のことを認めている。断じて、未熟、非力だから支えているのではない。
極端な物言いをすれば、任務など民を納得させる功績を積だけの儀式なのだ。
今”奴”に関する事実を伝えられたならどれだけいいかと歯噛みする。
しかし、我々はまだ”奴”を陥れた者の特定に至っていない。その影すらも掴めていない。
下手に手紙を見せてしまえばどうなるかは明白だった。
己の無能が恨めしい。”奴”が帰還するのをただ黙って見ていることしか出来ないとは……!
「失礼します」
離宮へと2人の騎士が訪れた。伝令員だろう。予言官殿の審判が下ったか?
「メリア様、皇主陛下がお呼びです」
「陛下が? ……我らと共に皇都に参った一団の処遇はどうなったのだ?」
「予言官の審問の結果、かの者たちの拘束は解かれました。此度の召喚はそれとは別件とのことです」
「そうか……。報告ご苦労であった。すぐに参ろう」
とりあえず胸を撫で下ろした。メリア様にとって悪い結果にならなくてよかったとほっとする。シュルク殿らが助かったことは私としても喜ばしい。
しかし、このタイミングでそれとは別の重要な事案があるのか?
また何かこの皇都で起きようとしているのか……。
「それには我々も同行できるのか?」
「はい。近衛騎士の皆様にはメリア様を
「了解した。ではメリア様」
「あぁ」
任務を続けろ……か。我らに新たな辞令が下る訳では無いということか。
我らは剣を携え歩く。テレポーターを通過すればもうすぐそこは皇宮で、もう一度飛べば謁見の間だ。
そこで我らはその新しい事件の仔細を知る。
「議会両院の賛同を得て、そなたは皇太子候補になった。だがしかしあくまで候補。立太子を行うに際していくつかの儀式を行わなければならないことは理解しているか?」
「はい。承知しております」
「よろしい。此度の話というのはその儀式のことについてなのだ。今皇太子への試練として、墓所詣での儀を課すべきという声が挙がっておるのだ」
「墓所詣で、ですか?」
カリアン殿下の言う墓所詣で。それはかつて皇族の間で行われていた儀式のひとつだ。
新たに皇太子となる者が、エルト海に建てられたハイエンターの始祖達が眠る墓所へと参る。そこで始祖たちの霊から祝福を受けた者は皇太子としての資格が認められる、というものだ。
だがこの試練は廃れてしまった。墓所に向かった皇太子候補が幾人も亡くなってしまったからだ。
実力不足と言われればそれも仕方ない。しかしながら、皇太子は為政者になるのであって戦士になるわけではない。極論するなら武力など何一つ持っていなくてもいいのだ。
武力だけが皇太子の価値ではないし、資格でもない。そう思ったからこそ先祖たちはこの試練をおやめになった。
それを今復活させようというのか。
「さしあたり、まずそなたの意志を問いたい」
「やります」
跪きながら、カリアン様の問に即答するメリア様。
「ホムスとの混血児である私がハイエンターを統べるには、またその座を欲するのならば通らねばならぬ道だと考えます」
「その通りだ、我が後継者よ。ハイエンターを統べる者として、近道は楽な道にあらずと巨神界に示さねばなるまい」
「はい、陛下」
今、メリア様は戸惑われている。自身が本当に皇太子として相応しいのかどうかを。
だから先祖にその審判を問う墓所詣では、確かに今のメリア様にとって必要な試練、儀式であるかもしれない。
だがしかし、おひとりで危険な墓所へと向かわせてよろしいものなのだろうか?
それに立太子の儀の話が持ち上がること自体はやすぎる。少し前に両院で議決されたばかりだというのに、いくつかの儀式を行いもせずいきなり墓所詣でだ。
陛下はそれを近道だと仰ったが……何か急がねばならない理由があるというのか?
陰謀の影を疑うのはそれに関わりすぎたからだろうか。とにかく何か裏がないのかその日のうちに調べることにした。
しかし、その調査が終わるよりもはやく、立太子の儀が執り行われてしまった。
「それでは殿下。ここから先はおひとりで儀式に臨まれることになります」
「見送り、大儀であった」
「ご無事なるお帰りをお待ちしております」
民たちの前で皇太子候補として宣誓を終えたメリア様は、今我ら親衛隊と宰相であるロウラン様に連れられて墓所前まで来ていた。
我らの同道はこれ以上叶わない。
「過去の歴史上、資格無くして皇位を求めた者共はことごとく英霊に討ち斃されたといいます」
「……それが皇位を請求するということだ。そのまま墓所に葬られることになった者たちも覚悟の上でのことだったであろう」
「ご立派なお覚悟です」
……いや、よく良く考えればこの過保護さがメリア様の心を痛ませているのかもしれない。あの方ももう子供では無いのだ。
皇族として儀式をおひとりの力のみで果たす。その経験が必要なのやもしれない。
「お気をつけあそばせ、殿下」
だがそう思っても、一人の臣下としてメリア様の帰還を願わずにはいられない。宰相閣下と共に何事ないよう祈る。
メリア様は墓所の扉を開き暗闇の中へと下っていく。次第にその姿は見切れていき、最後には扉が閉まることで完全に我らの視界から消えた。
「それでは一足先に我らは帰還するとしましょう。アイゼル殿?」
「……はっ」
「お気持ちは察するけれど、それは杞憂というものです。私は何も心配などしてはおりません。テレシアを斃した殿下ならばきっと皇祖に認められることでしょう」
宰相はそう言ってにこやかに皇都へと続くテレポーターへ進んで行った。
確かに彼女の言う通りだ。それでも胸騒ぎはやまない。
◆◆◆
ハイエンター墓所は皇都や他の施設と違い巨神の大地に根差している場所だ。
皇都からほど近い海岸に入口を構え、そこから地下に入ると先祖たちが祀られた墓がある。
その中でも皇祖を祀った祭壇は幾重にもなる封印の先にある。
いかような試練が待ち受けているのか───気を引き締めて臨まねばならん。
くらい廊下を下っていく。下り終えると扉が墓所の入口を硬く閉ざしていた。その前にはなにかの端末がある。
『二五一二周期ぶりの来訪者よ。姓名と来訪目的を述べよ』
端末に近づくと機械的な声が語りかけてきた。二五一二周期ということは6世代か7世代……いや、もっとか? 本当に長い間誰もここを訪れていなかったのか。
ともかく、私は意志を持って問に対する応えを告げる。これはもう儀式なのだから
「メリア・エンシェント。皇位を継ぐ資格があるや否や、皇祖の霊にご判断いただきたく参った」
『来訪者の意図を了解した。これより貴君の遺伝情報を解析する』
扉の上、その中央にある緑色の水晶体から光が発せられる。
光は私の頭上に輪を作り出すと、その中を私の体が通るように輪を動かし、頭上から足先までを往復する。
輪が通り抜ける度に、その間を行き交う光の粒子が体を包み込んでいく。これが解析というものなのだろう。
結果がどうなったのか。それが分からぬまま光の照射は終わり、扉はひとりでに開いた。
解析結果も皇祖の祭壇で知ることができるのだろうとあたりをつけ、私はとっとと歩を進める。立ち止まっている暇などない。
墓所は更に地下へと続いていた。扉の先の坂を降り終えると広間に出た。
「ここは───」
大きな穴のような場所だった。壁面にはこれまた巨大な石造りの長方形の物体がズラりと並んでいた。よく目を凝らして見てみれば、名前のようなものが印字されていた事から先人たちの慰霊碑で間違いないだろう。その数はとても数え切れるものではない。
さながら『英霊たちの間』と言ったところか。部屋の中央には太い柱の上に作られた広間があり、柱の側面にも多くの石碑が作られていた。
足元のハイエンターの紋章に触れると、紋章が光り出して中央と扉を繋ぐ足場ができあがった。光の床の向こう側にある奈落がくっきりと見えるが、どうやら落ちる心配はないらしい。
慎重に、しかして恐れを見せぬように私は更に歩を進めた。
『───!』
「!」
そして、試練がその姿を表した。
天井から防衛機構が現れた。奴はこちらの接近を待ち構えるかのように、中央の広場で静かに滞空する。
あちらから仕掛けてこないのは、今『覚悟』を決めろということなのだろう。
大丈夫。私ならやれるはずだ。これまで戦ってきて学んだことを思い出し、全てここで出し切れ。
『普段俺たちはお互いを鍛えるために模擬戦を繰り広げてる訳だが、実際にメリアのような皇族や、近衛騎士が戦う相手は人型じゃないタイプの奴らだ。だから今回の遠征でメリアにはそういう敵との戦い方を覚えてもらう。そういうわけでアイゼルさん』
『何がアイゼルさん、だ。あといくら皇都の外にいるからとはいえ様をつけろ! ……コホン、いいですかメリア様。あなたの武器はエーテルアーツです。そこのバカが教えた杖による護身術はあくまで保険程度にお考え下さい』
「サモン・フレア!」
護身杖を構えて唱える。
場のエーテルと自身のエーテルを混ぜ合わせ、火のエーテルの塊を空中に作り出す。杖は火のエーテルを身にまとい、攻撃力を増す。
「サモン・アクア!」
続けて召喚するのは水の元素。頭上に現れたそれから発せられる癒しのエーテルが体を包む。これで準備は完了だ。
『通常、メリア様には我らの後方でエーテルの凝縮に集中していただくことになりますが、どうしても我らがお傍にいられない状況というものは起こりえます。これからメリア様にお教え致しますのはその時の対処法です』
私が一度に扱えるエーテルの元素は3つ。その枠2つを自身への強化に使い、残りのひとつを攻撃へと転じさせる。
「サモン・ボルト!」
ここの防衛機構のような、機械兵器相手に最も効果的なのが雷属性のアーツだ。しかしすぐに攻撃として放ってはいけない。当てる場所に気を配り、一発で最大限の効果を狙う。
『繰り出せるアーツには限りがありますからね。そして、その急所を探るのに最も重要なのが機動力と情報です。私からは主に後者について指南致したいと思います』
防衛機構の急所は知っている。あとはそれを現実と擦り合わせていくだけだ。
防衛機構からの攻撃が来る。それを私は奴を中心とした弧を描くように横に走ってかわす。かわしながらも観察することを止めない。
メインのユニットは真ん中の大きな丸。赤い光はセンサーだろうか。エーテルの集束も感じることから、あそこからエーテル弾を発射するのだろう。
物理攻撃を繰り出すのは本体に接続された弧を描くように曲がった2つのパーツだったはず。あれが腕のような機能を有している。
忘れてはならないのはあれが機械だという点だ。裏を取ったとしても生物ではありえない挙動でそのアームを振り下ろしてくるだろう。
また、後ろにはセンサーが無い分厚い装甲板があるようだ。エーテルアーツなら貫通できるかもしれないが。
さて、それらを鑑みて私が攻撃すべき場所はどこか。もう決まっている。
一点突破だ。
『山や草原をただ走るだけ……なーんて言ったら楽に聞こえるかもしれないがそんなことは無い。整備された皇都の道や離宮の庭と違って巨神肩はでこぼこだ。足に加わる力が全然違う。
メリアにはこの遠征中に野外での移動に慣れて欲しいと思ってる。ここでグイグイ動けるようになれば、皇都で走るような時にすごいスピードが出せるようになるぞ』
3、2、1───!
駆け出す。
狙う場所は防衛機構がエーテルを放った直後のコア部分。エーテルを射出した直後はこちらのエーテル攻撃に対する耐性もかなり低くなる。
相手が近距離戦をしてこない間合いを保ち、エーテル放出を促す。
『────!』
目論見通り、防衛機構はそのコアからエーテルを放った。
私はそれに合わせ、これまでの進行方向とは真逆の方向へと飛び、ギリギリのところでかわす。そして放つ、必殺の一撃を。
「貫け、バーティカルボルト!!」
『────!?』
コア部分へと走る雷撃。それはコアから全身へと駆け巡る。
雷が防衛機構の機能を狂わせたのか、浮遊していたアーム部分は力を失ったかのように地に落ちた。だがまだ仕留めきれてはいない。
『エーテルアーツの強みはその威力にあります。発動までに時間を要しますが、チャンスをものにする力は十分です。故に明確な隙が生まれたのなら───』
───一気に叩き込む。
「顕現せよ!」
残り2つのエーテル球を射出する。雷撃は水により強化され、最後は炎が敵の全てを焼却した。コア部分も浮く力を失い落ちる。
やれる。
これまで積み上げてきたものがあればこの試練も突破できる。あとはその姿を皇祖様がどのように評するかだが……。
私は私のできることをするだけだ。私が生きるために助力してくれた者や犠牲になった者たちの想いを無駄にしないようにするために。
私は歩を進め、英霊たちの墓石が並ぶこの広間を後にした。
◆◆◆
『テレシアが動き出したか』
『はい』
ここは巨神界ではないどこかの部屋。
その尾を蠢かしながら、彼の駒たちが収集してきた情報を閲覧する。
そこには《黒》を攻撃した翼を持つテレシアの映像記録と、モナドを持つホムスを追跡していた
『”奴”め、モナドとの接触を図るつもりか。……フェイスの調整は?』
『《黒》の修復は完了しています。《青》も調整が終了し、いつでも実戦投入可能です』
『《
『それは───』
男は考える。敵の狙いを。
『モナドを持つホムス……エルト海に上がったそうだな?』
『はい』
『だとすれば行く先は一つ……。もっとも、”奴”が解放するとも思えんが』
肉体と剣。それを揃えるわけにはいかない。ハイエンターはザンザの使徒が抑えていることが
『いずれにせよ、いかに小さき芽であろうと摘むに越したことはない。丁度試したいものもある』
彼の周りを浮遊する黄金の槍。それはただ不気味に緑色の光を発する。男の意志を反映するかの如く。
『これより巨神界侵攻作戦を開始する』
本当は墓所詣でを終わらせるつもりでしたが、長くなりそうなのでこの辺で。次回は原作よりも素早さが上がったメリア様VS最優の暗殺者になったタルコ戦です。一体何インのテコ入れが入ったのか……。
エギルの描写タイミングが原作とは前後してますが、機神界から巨神界に行く時間を考えるとこのタイミングでもおかしくはないかなと思って入れました。次の話に入れられるか怪しかったのもあります。
シュルク側の描写はほとんどカットです。気になる人は原作をプレイしような!!
あとゼノブレイドのムービーを見返していて一つ誤った描写をしていたので、これまでの話を少し修正致しました。
具体的にはソレアン陛下が皇主になったタイミングですね。墓所詣での儀の開始宣言時に二十有余年とか言ってました。すみません……。
というかそうなるとメリア様はおじいちゃんとおばあちゃんに会っててもおかしくはないんだなぁ……と。