この素晴らしい世界であなたに幸福を! 作:エリス様にはやんでれの素質があります
1、行き倒れに救済を!
「どうすっかなぁ」
冒険者ギルドの酒場にて、無料の水を飲み干して項垂れる。
昨日の飲み過ぎ食い過ぎで金がないのだ。
ジャイアントトード討伐二日目、順調だった昨日とは裏腹に転生以来最大の危機に陥っていた。
どういうわけかというと……それは二時間前まで遡る。
『ごめん、ちょっと話があるんだけど』
クリスのその一言から始まった。
『今日外せない用事が出来ちゃって……今日のジャイアントトード討伐着いていけなくなっちゃったんだ、ホントにごめん!』
とのことである。
その後錯乱する俺を置いて立ち去ってしまったクリス。
埋め合わせはすると言っていたが……このクエスト残り期限明日までなんですけど!?
昨日のエリス様との会話では、この世界の冬ごもりはどれだけ今の内にお金を稼いでおくかが肝になるという。
そうして稼いだお金を出し合って何人かで一つの部屋を借りてどうにかして冬を越すのがこの世界の駆け出し冒険者らしい。
間違っても馬小屋で過ごすことの無いようにと念を押された、もしそうした場合また天界でエリス様と会うはめになるそうな。
それは良いですねと笑ってたらエリス様に怒られてしまった。
ともかく、今の内に金を稼げるだけ稼ぐ必要がある。
ここでは雪も降るらしいし、そんな中クエストとかただの自殺だ。
エリス様はどうしようも無くなった時のために頼れる人を作るか、最悪冬場でも働ける仕事に就く事を考える必要もあるとも言っていた。
後者の場合冒険者は休業ということになるので論外になる。
俺は冒険者で居たい。
というわけで冒険者活動二日目にて早速追い詰められた訳なんだが……ぱっと思い付いた策は三つある。
一つはまぁ、クリスの帰りを待ってから行くというのなんだが……問題はクリスがいつ帰ってくるかわからないところにある。
明日には帰ってくるとは思うがそれが夕方とかだったらクエスト期限に間に合わない可能性が出てくる。
二つ目は俺一人で行く事。
カエルの特徴はある程度掴んだ、事前準備さえしっかりとすれば問題なく倒せるだろう、たぶん。
ただこの方法だと事故った場合即死である。
飲み込まれて終わり、カエルの胃の中で二度目の生涯を終えることになる。
この方法を取るならもう一つくらい保険が欲しいところだ。
三つ目……仲間を募る。
ゲームとかアニメとかである必須と言えば必須で、お約束。
半パーティー状態のクリスが居るため、今回限りのパーティーになるがカエル二匹を狩るだけなら駆け出しを抜けた冒険者なら小遣い稼ぎに来てくれる可能性がある。
報酬も半分持ってかれそうだけど。
「やっぱパーティーを募るのが無難か? でも報酬も減るだろうし、その分け前で揉めたくないしな……喧嘩なら100パー負けるし」
何か良い手はないか?
こう、ある程度俺でも戦える手段を確立できるような……
まずクリスを参考にしてみよう。
素早い動き、ナイフ捌き、
ん? スキル?
「そうじゃん、せっかくファンタジーに来たのに大事なこと忘れてるじゃん」
そう、スキルだ。
冒険者カードを取り出して表記を良く見る。
スキルポイントが2ある。
俺の職である冒険者は一応、全てのスキルを取得可能という利点がある。
それを生かして、こう、何というか良い感じに戦えるスキルを教えて貰って取得すれば良いんじゃないか?
そうと決まれば早速行動だ!
と、意気込んでいたのが先程。
色々親切な冒険者にちょっと
つまり作戦は成功した、様に見えたのだが。
「まさか、こんなにもスキルの要求ポイントが高いとは」
片手剣1ポイント、まぁこれは良いとしよう。
問題は魔法だ、初級魔法というくっそ便利そうだけど戦闘には役に立たないというこれは1ポイント。
次に中級魔法、ここからようやく戦闘に使えるらしい。
これが失敗だった。
「取得ポイント10って何だよ……」
今のレベルが3でポイントが2って事は1レベ上がるごとに1ポイントの計算になる。
つまりあと8レベ上げて、しかもそれを全て中級魔法につぎ込む必要があるって事だな!
いや、無理おっしゃる。
結論、1ポイント系を組み合わせれば行けんことも無さそうだが2ポイントじゃムリ!
スキルツリーすら見えないのに今からビルドを考えろってのも頭がおかしくなりそうだ。
無限にスキルポイント使えればなぁ。
というわけで一先ず保留。
片手剣スキルと片手盾スキルの組み合わせか、毒スキルと潜伏スキルの組み合わせとか色々考えられるが効果が薄かった場合取り返しがつかなくなる。
と、なると1か2か……
煮詰まってきたな、少し歩くか。
水路の方とかまだ行ってない場所を軽く散歩してこようと席を立ち、歩き出したら足にぎゅむっという何とも言えない感触を感じた。同時にぐぇっという声も。
「へ?」
何を、俺は今何を踏んだ?
恐る恐る足下を確認する。
そこには……
「い、行き倒れだーーっ!?」
えぇ!? 街中で行き倒れとかリアルに存在するの?
そもそも街中っていうかここギルド内なんですけど!?
お、落ち着け、取り乱すな……まずは冷静に息を確認するんだ。
オレ、トドメ、サシテナイヨネ?
「あ、あのー」
「……」
「い、生きてますかー?」
「おなかがすきました」
「へっ?」
今なにか聞こえたような……
もう一度耳を澄ましてみる。
「く、空腹で動けません。ごはんをください」
確かにか細い声で空腹で動けないと聞こえた。
マジで空腹で行き倒れていたのかと驚愕したが良く見るとかわいい年下っぽい女の子だったので今日の馬小屋代から削ってごはんを恵むことにした。
しばらくして運ばれてきた料理を目の前に、目の前に涙を目尻に貯めながら感謝の言葉を俺に告げながらジャイアントトードの唐揚げを口に頬張るロリっこがいる。
真っ赤な目が特徴的で黒とんがり帽子といい黒マントといいこう、中二病の考えたかっこいい魔法使い! みたいな格好なやつだ。
ここはファンタジーだしこういうのがデフォなのかもしれない。
残ったエリスを数えながら目の前のロリっこの食いっぷりを観察する。
というかギルド内で倒れてるやつがいるのに回りは何をしてたんだよ。
そうだ、まともそうなやつは俺が酔わしたんだった。
そうでなくとも人は少ないし、もしかしたら酔っぱらいが倒れてると誤認されていたのかもしれない。
いや、こんなにもロリだしそれはないか?
うーん、わからん。
「ふぅ、助かりました」
ようやく人心地ついたらしいロリっこが丁寧にお辞儀をする。
「いいって、いやよくは無いんだけどそれよりも君は?」
そう言うと目の前の魔法使い風ロリは不気味な笑い声を上げる。
何か嫌な予感。
「ふっふっふ、よくぞ聞いてくれました。我が名はめぐみん! アークウィザードを生業とし、最強の魔法、爆裂魔法を操る者!」
なんだこの名乗りは……バカにされてる?
めぐみん? オンラインゲームのニックネームか何かか?
「うん……そういう設定なのはわかったけど本名教えてくれる?」
「なっ!?」
2、これが今必殺の───!
「『エクスプロージョン』ッ!」
本名めぐみん(マジでこの名前らしい)の爆裂魔法がのんきに空を眺めていたカエルに炸裂する。
同時に爆風と轟音が体を叩き付け一瞬だけ前後不覚に陥りかけた。
なんつー威力……撃ち終わって十数秒経つというのに未だに巨大な煙が空を渦巻いていた。
「いや本当に、こんなん普通引く手数多だろ……確かに使いどころは限られるかも知れんけど」
俺はめぐみんとの邂逅の後、色々話し合って結果食事のお礼にクエストに付き合って貰っていた。
報酬の取り分けは8:2で纏まり、カエルの買い取りはそれぞれ仕留めた人が貰うという話になった。
最初は最上級職のアークウィザードで食うに困るとか何があったんだとか、何でパーティー組んでないんだ地雷か? とか疑ったがとんだ勘違いだったようだ。
「凄いじゃないかめぐみん! この調子でもう一匹頼む! はは、これじゃあ俺なにもしてないし四割めぐみんに渡さないとな!」
次の繋ぎを作るために報酬は正しく分けた方がいいだろう。
クリスがいるとはいえ、有能な人物とは仲良くするべきだと偉い人は言っていた。
「…………」
「めぐみん?」
返事がない。
嫌な予感がする。
「め、めぐみん?」
めぐみんが居る筈の後ろに振り返る。
いない……いや、下だ!
「……めぐみんさん? なぜ倒れてるんです?」
そこにはうつ伏せとなり一切の身動きをしないめぐみんの姿があった。
ん? 何かモゴモゴ言ってるな。
「我が必殺の究極奥義たる爆裂魔法は、その絶大な効果と引き換えに全身全霊の力を使い果たします。つまるところ……もう一歩も動けません……えへへ」
なぁに恍惚としてるんだコイツぁ!?
成る程、今更ながらこのロリがパーティー組めなくてクエストに行けなかった理由が分かったぞ。
こんな爆撃みたいな魔法を使ったら動けなくなるとかもう実質縛りプレイみたいなもんだろ。
こんなん冒険者じゃなくて軍隊が兵器運用するレベルだろ。
ただ一つ疑問なのは。
「ま、まぁ? こんなヤバイ魔法使えるんなら他の魔法も使えるんだろうし? 基本そっちを使うんなら……ありっちゃありか?」
「使えません」
「え」
「私、爆裂魔法以外使えませんよ……良いじゃありませんか、こんな素晴らしい魔法があれば他の魔法なんて塵芥も同然です」
「……ソウダネ!」
思ったよりヤバかった。
「それよりカズマ? すみせんがおぶって貰えませんか? しばらく全く動けませんし、何やら地面から振動が響いて……」
「ゲコ」
カエルが地面から出てきた!?
今の振動で起きて来たのか?
あっ、めぐみんをロックオンした。
「ヤバイです動けません助けてください助け、あっ……ひぁ! ……んーっ!?」
あっ、食べ……食べられたー!?
ゆっくりと飲み込まれていくめぐみんを助けるべく、俺はショートソードを掲げてカエルに突貫した。
3、ヌルヌルのネバネバ
「知ってますか? カエルの中って結構やわらかいんですよ」
「……」
「生臭いのを我慢すればもしかしたら良い避寒場所になるかもしれませんね」
もう日もくれた夕方。
どうにかカエルを倒してめぐみんを救出した俺達は息も絶え絶えに町へと帰ってきた。
背負っためぐみんの身体中にベットリと付いたでろでろでねとねとな粘液が、俺の一張羅のジャージに染み込んでくる。
臭いのを我慢して運んでやっているのにめぐみんはカエルの中は程よく暖かかった等要らない情報を呟いてくるのを我慢していると。
「ねぇ、見てあれ……」
「なにあのヌルヌル!?」
「あの男の方って盗賊の子と一緒にいた子じゃ」
目茶苦茶風評被害が聞こえてきて……心が折れそうだ。
「はぁ、取り敢えずギルドに行ってクエスト報告……その後報酬を分けて解散だな」
ちゃちゃっとこのヤバヤバアークウィザードと別れなければ……
「……何を言ってるんです?」
「いやぁ、この臨時パーティーももうおしまいだと思うと感慨深いナー! またどこか会えたらヨロシクナー!」
もう少しでギルドだ。そこまで行けばめぐみんを放流して俺は逃げれる!
クリスという前例が居たから分かる。このめぐみんはイロモノ中でもかなりのキワモノだ。
「私達、もうパーティーですよね?」
キラリとめぐみんの目が真っ赤に光った気がした。
多分それは錯覚ではない、めぐみんの握る手が明らかに強くなった。
握られた手をどうにかして引き剥がそうとするが……勝てない!?
意外に強い筋力に苦戦し、ギルド前までつく頃には俺はもう完全に諦めモードに入っていた。
取り敢えず明日また会う約束をすることで今日は解散することになった。
動けないめぐみんは受け付けさんが水で丸洗いした後動けるようになるまで治療室で寝かせてくれるらしい。
安心した俺は非常に疲れたので日課をすることなく床に付いた。
あー、明日のクリスへの